ハロウィンちっくな魔界遠征
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「魔力が主成分の香水?」
「そ。つけるとその者が思い描く悪魔の姿になるってシロモノらしいぜ」
そう言ってダンテが目の前に置いたのは、紅色の液体で満たされた小さな香水瓶。
付随された効力がなんとも言えぬファンタジーくさいのが気になるところだが、色を除けばパッと見は普通の香水瓶だ。
……パッと見は。
「えー、なんか半信半疑ー」
悪魔の姿に変身できるなんて怪しすぎる。
でも、あたしだったらどんな姿の悪魔になるだろう……とも思ってしまう。
こんなこと考えてても、使う予定ないけどね。
なぜなら、見ただけではただの香水瓶なんだけど、その中から漂うのは紛れもなく悪魔が全身から放つ魔力そのもの。
攻撃性もおどろおどろしさも感じないが、この身に流れる天使の血が勝手に体を身構えさせる。
「魔力で作られてるっていうのは本当らしいね」
「ああまあ……さすがにディーヴァにも、魔の気配ビンビンしてるのわかるか」
「色だけで危なさそうだって誰でも思うよ」
紅色どころか、血の色にしか見えない。
血が入った瓶……どう考えても薄い桜の鬼の話に登場する●若水ですねわかります。
「こんなのどうしたの」
「悪魔にもらった」
「え!?」
「悪魔を倒したら報酬に悪魔にもらった」
悪魔を倒して、なのに悪魔にお礼をもらう?
ディーヴァあたま混乱しちゃううう!
「意味わかんないんだけど…悪魔倒したのに報酬も悪魔からってどゆこと??」
疑問符を頭の上にいくつも出現させるあたしの肩にダンテが手をポンと置いた。
そして、小さい子に言い聞かせるように言う。
「ディーヴァ、世の中には悪い悪魔と良い悪魔がいるんだ。オレみたいな善良な悪魔ってのは少ないけどちゃんといるんだぜ」
「え?ダンテって善良な悪魔だっけ」
つい本音が出ちゃうことってあるよねー。
口を押さえた時には遅し。
ダンテの口元がにこぉ……と歪んだ。
こわい。
「ナマ言ってんのはどの口だ?この口か?ん??」
「いひゃい」
ダンテの手にちょーっと強めに挟まれた唇が、アヒルのくちばし形に変わった。
その強さ、跡がつきそうにヒリヒリした痛みだったとだけ。
「コイツをくれた悪魔なんだが、これもくれた」
「……なにこの紙切れゴミ?」
オシオキを終えたダンテが懐からぴらりと長方形の紙を取り出す。
なんだかよくわからない言語で書いてあるらしいのはわかった。描かれた絵柄を見ても、よくわからない。やけにサイケデリックな模様だ。
「ゴミじゃねぇよ。魔界の社会科見学できるってチケットさ」
「社会科見学?」
社会科見学というと、学生が工場だとか役場だとかに遠足のように赴いてその仕事がどんなものか見学するようなものが思い浮かぶ。どこぞのチョコレート工場がおすすめ。
でも、魔界でそれはどうなんだろう。
そんな場所、魔界に似合わないし、第一あるのだろうか?
その答えはダンテが示してくれた。
「そいつは魔界の一等地に建ってるビル内の会社社長なもんで、助けてもらった礼にと、香水とチケットをくれたんだ」
「一等地?社長?」
社長なんて、あたしのパパみたいだと思った。
助けたお礼に物をくれるような礼儀正しい人…この場合は悪魔だけれど、そんな人が社長という役職についているとくれば、頭の中で思い浮かぶのは今は亡き父親である。
パパもそんなタイプの、礼儀正しくてー、優しくてー、帰りにチーズスイーツたくさん買ってきてくれる人だった。
チーズスイーツは関係ないって?
そこ大事、すごく大事。
「ああ。オフィス街の真ん中なんだが、下の階の何階かはショッピングモールになってるらしいぞ」
ダンテによると、魔界には魔帝がいるような暗黒の地もあれば、悪魔の性質や体質によっては命取りな極寒の地、灼熱の地もあり、人間社会のように比較的文明の栄えた地もあるのだという。
今回の場所はその、一等地にあるオフィス街、そのひとつの大きな会社のあるところだそうだ。
買い物できるところもあると聞いて、びっくりである。
人と変わらないじゃん。
「ほぇー、魔界にもオフィス街とかショッピングモールがあるんだね……」
どんな設定だ。興味はないと言ったら嘘になる。
だが楽しそうと思う反面、魔界という場所だからか恐ろしくも感じる。
好奇心は猫をも殺すのだ。
というか、今回ダンテが助けたっていうその悪魔はどうやって人間界と行き来しているのだろう……。
ダンテが魔界へ助けに行ったわけじゃないだろうし。
気になったけど、あたしは突っ込まないことに決めた。
「とはいえ、お礼だけでなく、新たな依頼にも繋がってんだけどなー」
ダンテがボソッと呟く。
新たな依頼とな。でもこれももう突っ込みたくない……。
「まあいいや。んじゃ行くぞ」
「行くって、魔界に?今から?」
「ああそうだぜ」
どうせ行くならバージル探しも兼ねればいいのに、と言ってみればバージルがいそうな魔界の区域方面には繋がっていないらしい。残念でならない。
「今回はそんなわけで比較的危険性のない魔界に行くわけだが」
今まで魔界に行く機会が何回かあった。
兄弟喧嘩の末テメンニグルから行くことになった、魔界の入り口かその先にちょびっとだけ足をつけただけという感じの場所。
違う世界でお世話になった人達と、おみくじを駆使する悪魔に連れられて行った魔界小旅行。
そのどれもが、今回よりは危険性はあったと思う。
「それでも相手は悪魔だし魔界だからな。
さすがに天使とバレたら大変なことになるのはわかってるよな?」
「うん」
そりゃあね。
天使は悪魔にとって相反する種族。
獲物でもあり、天敵でもある。
「そこは気をつけろよ。オレがいるからってあんまり安心するな」
しっかりと言い聞かせるように、ダンテがこっちを見つめて言う。
ダンテが一緒でも安心できないなんて、かつてないこと。
あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。
「つーわけで、香水つけようぜ」
「う、うん……」
一気に恐怖心を植え付けられた気がしたが、香水の匂いも結構気になるところ。
その辺の要らない紙を持ってくると、ダンテがまずはひと吹き、シュッとつけてくれた。
とりあえずどんな香りなのかを、嗅いでみなくては始まらない。
あまりにも臭かったら嫌だし。
「匂いは……と。良くも悪くもないな」
「ほんとだ。色的に血の匂いがすると思ってたー」
二人して紙に鼻を近づけ、くんくんと嗅いでみる。
そこからふんわりと香るのは、イランイランベースにミントを極々少々、エンドノートにムスクのような甘い香りが立ち昇るといった感じか。
蠱惑的かつ肉感的な香り、とでも言えばいいのだろうか。
え、蠱惑的も肉感的も表現としては一緒だって?確かに似てるかも。
ミントは好き。
でも、全体的に考えるとこういった香りの香水はなかなか買わない。
どちらかというと、フルーツやフローラルなどといった香りを好むからだ。
ダンテも同じく、ディーヴァと似たり寄ったりな香りが好きである。他に候補を挙げるとすればダンテが好むのはシトラス系か。
というか、香水自体買わない方である。
「そ。つけるとその者が思い描く悪魔の姿になるってシロモノらしいぜ」
そう言ってダンテが目の前に置いたのは、紅色の液体で満たされた小さな香水瓶。
付随された効力がなんとも言えぬファンタジーくさいのが気になるところだが、色を除けばパッと見は普通の香水瓶だ。
……パッと見は。
「えー、なんか半信半疑ー」
悪魔の姿に変身できるなんて怪しすぎる。
でも、あたしだったらどんな姿の悪魔になるだろう……とも思ってしまう。
こんなこと考えてても、使う予定ないけどね。
なぜなら、見ただけではただの香水瓶なんだけど、その中から漂うのは紛れもなく悪魔が全身から放つ魔力そのもの。
攻撃性もおどろおどろしさも感じないが、この身に流れる天使の血が勝手に体を身構えさせる。
「魔力で作られてるっていうのは本当らしいね」
「ああまあ……さすがにディーヴァにも、魔の気配ビンビンしてるのわかるか」
「色だけで危なさそうだって誰でも思うよ」
紅色どころか、血の色にしか見えない。
血が入った瓶……どう考えても薄い桜の鬼の話に登場する●若水ですねわかります。
「こんなのどうしたの」
「悪魔にもらった」
「え!?」
「悪魔を倒したら報酬に悪魔にもらった」
悪魔を倒して、なのに悪魔にお礼をもらう?
ディーヴァあたま混乱しちゃううう!
「意味わかんないんだけど…悪魔倒したのに報酬も悪魔からってどゆこと??」
疑問符を頭の上にいくつも出現させるあたしの肩にダンテが手をポンと置いた。
そして、小さい子に言い聞かせるように言う。
「ディーヴァ、世の中には悪い悪魔と良い悪魔がいるんだ。オレみたいな善良な悪魔ってのは少ないけどちゃんといるんだぜ」
「え?ダンテって善良な悪魔だっけ」
つい本音が出ちゃうことってあるよねー。
口を押さえた時には遅し。
ダンテの口元がにこぉ……と歪んだ。
こわい。
「ナマ言ってんのはどの口だ?この口か?ん??」
「いひゃい」
ダンテの手にちょーっと強めに挟まれた唇が、アヒルのくちばし形に変わった。
その強さ、跡がつきそうにヒリヒリした痛みだったとだけ。
「コイツをくれた悪魔なんだが、これもくれた」
「……なにこの紙切れゴミ?」
オシオキを終えたダンテが懐からぴらりと長方形の紙を取り出す。
なんだかよくわからない言語で書いてあるらしいのはわかった。描かれた絵柄を見ても、よくわからない。やけにサイケデリックな模様だ。
「ゴミじゃねぇよ。魔界の社会科見学できるってチケットさ」
「社会科見学?」
社会科見学というと、学生が工場だとか役場だとかに遠足のように赴いてその仕事がどんなものか見学するようなものが思い浮かぶ。どこぞのチョコレート工場がおすすめ。
でも、魔界でそれはどうなんだろう。
そんな場所、魔界に似合わないし、第一あるのだろうか?
その答えはダンテが示してくれた。
「そいつは魔界の一等地に建ってるビル内の会社社長なもんで、助けてもらった礼にと、香水とチケットをくれたんだ」
「一等地?社長?」
社長なんて、あたしのパパみたいだと思った。
助けたお礼に物をくれるような礼儀正しい人…この場合は悪魔だけれど、そんな人が社長という役職についているとくれば、頭の中で思い浮かぶのは今は亡き父親である。
パパもそんなタイプの、礼儀正しくてー、優しくてー、帰りにチーズスイーツたくさん買ってきてくれる人だった。
チーズスイーツは関係ないって?
そこ大事、すごく大事。
「ああ。オフィス街の真ん中なんだが、下の階の何階かはショッピングモールになってるらしいぞ」
ダンテによると、魔界には魔帝がいるような暗黒の地もあれば、悪魔の性質や体質によっては命取りな極寒の地、灼熱の地もあり、人間社会のように比較的文明の栄えた地もあるのだという。
今回の場所はその、一等地にあるオフィス街、そのひとつの大きな会社のあるところだそうだ。
買い物できるところもあると聞いて、びっくりである。
人と変わらないじゃん。
「ほぇー、魔界にもオフィス街とかショッピングモールがあるんだね……」
どんな設定だ。興味はないと言ったら嘘になる。
だが楽しそうと思う反面、魔界という場所だからか恐ろしくも感じる。
好奇心は猫をも殺すのだ。
というか、今回ダンテが助けたっていうその悪魔はどうやって人間界と行き来しているのだろう……。
ダンテが魔界へ助けに行ったわけじゃないだろうし。
気になったけど、あたしは突っ込まないことに決めた。
「とはいえ、お礼だけでなく、新たな依頼にも繋がってんだけどなー」
ダンテがボソッと呟く。
新たな依頼とな。でもこれももう突っ込みたくない……。
「まあいいや。んじゃ行くぞ」
「行くって、魔界に?今から?」
「ああそうだぜ」
どうせ行くならバージル探しも兼ねればいいのに、と言ってみればバージルがいそうな魔界の区域方面には繋がっていないらしい。残念でならない。
「今回はそんなわけで比較的危険性のない魔界に行くわけだが」
今まで魔界に行く機会が何回かあった。
兄弟喧嘩の末テメンニグルから行くことになった、魔界の入り口かその先にちょびっとだけ足をつけただけという感じの場所。
違う世界でお世話になった人達と、おみくじを駆使する悪魔に連れられて行った魔界小旅行。
そのどれもが、今回よりは危険性はあったと思う。
「それでも相手は悪魔だし魔界だからな。
さすがに天使とバレたら大変なことになるのはわかってるよな?」
「うん」
そりゃあね。
天使は悪魔にとって相反する種族。
獲物でもあり、天敵でもある。
「そこは気をつけろよ。オレがいるからってあんまり安心するな」
しっかりと言い聞かせるように、ダンテがこっちを見つめて言う。
ダンテが一緒でも安心できないなんて、かつてないこと。
あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。
「つーわけで、香水つけようぜ」
「う、うん……」
一気に恐怖心を植え付けられた気がしたが、香水の匂いも結構気になるところ。
その辺の要らない紙を持ってくると、ダンテがまずはひと吹き、シュッとつけてくれた。
とりあえずどんな香りなのかを、嗅いでみなくては始まらない。
あまりにも臭かったら嫌だし。
「匂いは……と。良くも悪くもないな」
「ほんとだ。色的に血の匂いがすると思ってたー」
二人して紙に鼻を近づけ、くんくんと嗅いでみる。
そこからふんわりと香るのは、イランイランベースにミントを極々少々、エンドノートにムスクのような甘い香りが立ち昇るといった感じか。
蠱惑的かつ肉感的な香り、とでも言えばいいのだろうか。
え、蠱惑的も肉感的も表現としては一緒だって?確かに似てるかも。
ミントは好き。
でも、全体的に考えるとこういった香りの香水はなかなか買わない。
どちらかというと、フルーツやフローラルなどといった香りを好むからだ。
ダンテも同じく、ディーヴァと似たり寄ったりな香りが好きである。他に候補を挙げるとすればダンテが好むのはシトラス系か。
というか、香水自体買わない方である。