DMC×黒執事
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廊下の一角、ひっそり存在する扉を開けると下へと続く階段が現れる。
ここがセバスチャンに初日教わった、ファントムハイヴ家が有する大きな書庫である。
地下扱いになるそこはもちろん日の射さぬ場所であるが、しかし電気はきちんと通っていて明るく、怖くは感じない。
困る事といえば人が滅多に入らないのか、あまり掃除はされていないようにも見受けられる事か。
埃を立てぬよう、静かに降りて行くディーヴァ。
「わあ、さすがファントムハイヴ家の書庫。いっぱいある……」
目の前に広がるのはちょっとした図書館が開けそうなほどの書棚。
シエルも勤勉だ。
だから彼の読み終えた書籍も棚には突っ込んであるだろう。
しかし、その数や書籍の年代具合を見れば、かなりの昔からそこに存在していたのがわかる。
ここを調査するのは骨が折れそうだ。
「うーん。えっと、……」
たくさんある書籍と書籍の間を練り歩いて、目的となりうる棚の場所を目指す。
「おじいちゃんなんて言ってたっけ……こんなことならもっと詳しく聞いとけばよかったなー」
実家の稼業などは詳しく聞いた覚えがないが、イギリスでのミドルネームや祖先が貴族の端くれだった事ならサラッと聞いてある。
何よりこの屋敷は遠縁の私物だったのだから。
とりあえず、歴史のお勉強のようで聞いていて楽しかったのもあり、今もはっきりと内容を覚えていた自分、偉い。
「確か、祖先のことだから、ファントムハイヴ家、貴族の始まり……」
歴史や自伝、家督に関連する棚を見ていると、やはりそれらしき物がいくつか見つかった。
その中には、系統樹のような物も。
「あ、家系図書いてありそうなのはっけん!…………って、届かない…」
やけに古ぼけた貴族や家系図に関する書籍があるのに気がついたが、それがあるのは棚の一番上。
シエルくんか誰かは知らないが、どうせ見ないからと上に突っ込んだのだろう。
背の低いディーヴァには取るのはちょっと無理そうだった。
しかたない、入り口にある脚立がわりの椅子を持ってこよう。
そう思った瞬間、手がスッと横から伸びてきて、取ろうとしていた書籍を抜き取っていった。
「どうぞ」
「!!」
振り返ればものすごく近く、唇まで数センチという距離でセバスチャンの紅茶色の瞳と目があった。
「びっくりしたぁ……!」
この悪魔気配消しすぎ。
ダンテも気配を消して近づいてパーソナルスペースに入ってくる時があるが、それはダンテだから許されることであって、他人……ましてや他の悪魔が許されることではない。
おっと、忘れていたが敬語をつけていい直さねば。
「びっくりした、じゃないですか、でもありがとうございます……」
でもなんでセバスチャンさんはここにいるのだろう。
まだ剪定の次の仕事は始まったばかりで、ここに来ようとでもしない限り、そこまで急ぐ必要もないはずなのだ。
「あの、何故ここに……セバスチャンさんのお仕事は終わったんですか?」
「ええ、終わったので手伝おうと思いまして」
手伝うと言うくせ、手に持った本はディーヴァに与えずそのまま。
所在なさげにブラブラと宙に泳いでいる。
「え、えっと……その本、くれない……のですか?」
渡す気がないのか、ディーヴァの手の届かないところに持ち上げ、ただただ無言。
この、間近で見つめあったままの静寂がつらい。
あと、ダンテにでも見られたらと思うとつらいだけじゃなく、こわい。
その静寂を破ったのはセバスチャンだ。
「ところで…気になっていたのですが……」
「は、はいっ!なんでしょうか!!」
「敬語……坊ちゃんには外して私相手には外してくれないのですか?」
少しだけ悲しそうに鼻を鳴らして、こちらの目をじっと見つめてくるセバスチャン。
この悪魔がそんな細かいことを気にしていたとは思いもせなんだ。
「え。だって、あの……その……」
シエルに敬語をつけないのは、彼がそれを望んだから…だけではなく、年下だからというのもある。
セバスチャンにはそんなこと言われていなく、なんとなく烏滸がましいし、悪魔にタメ口なんて怖くてとてもとても。
本を傍へ置きやったセバスチャンは、ディーヴァへと手を伸ばす。
ディーヴァの顔へと。
それによってセバスチャンの影がディーヴァにかかった。
……近い。
その手をはたき落した挙句、ディーヴァはそこから逃げるように後退した。
後退したところで体がトンと当たるのは、本棚という逃げ場のない袋小路だったのだが。
「…………」
「ご、ごめんなさい……」
冷たくも嬉々とした目がディーヴァを見下ろす。
ダンテは慣れてるし、大好きな人だから平気だけど、でも。
天使の血が入っている自分が、完全なる悪魔であるセバスチャンにどうやっても感じてしまう感情は、それは……。
「『恐怖』を感じていますね?」
「っ!」
考えていたことを正確に当てられた。
表情が、胸の鼓動が、動揺を隠しきれていない。
冷や汗が滲み出る中、カツン、カツン……とセバスチャンの足音が近づいてくる。
視界いっぱいにセバスチャンが映り込む。
ディーヴァの退路は絶たれた。
「嗚呼……やはり可愛いですね、なんと好ましい。……生贄にされた子羊のようですよ?」
「こ、子羊……ヒッ!」
金縛りにでもあったかのように、今一度伸びてきた手は振り払えなかった。
唇で咥え、外した手袋の中。
細く長く、冷たい指が、ダンテにのみ許されていたディーヴァの頬を、するりとなぞりあげる。
ディーヴァを撫でる左手の甲には、シエルと契約しているシルシ……悪魔の逆ペンタクルが仄明るく光っていた。
「好ましいと言ったでしょう?それはもう、食べてしまいたいくらいには好ましいのですよ、私達悪魔にとって、ね」
手にばかり気を取られていたが、ディーヴァは初めてセバスチャンの目を魅入られたように見つめ返した。
ここがセバスチャンに初日教わった、ファントムハイヴ家が有する大きな書庫である。
地下扱いになるそこはもちろん日の射さぬ場所であるが、しかし電気はきちんと通っていて明るく、怖くは感じない。
困る事といえば人が滅多に入らないのか、あまり掃除はされていないようにも見受けられる事か。
埃を立てぬよう、静かに降りて行くディーヴァ。
「わあ、さすがファントムハイヴ家の書庫。いっぱいある……」
目の前に広がるのはちょっとした図書館が開けそうなほどの書棚。
シエルも勤勉だ。
だから彼の読み終えた書籍も棚には突っ込んであるだろう。
しかし、その数や書籍の年代具合を見れば、かなりの昔からそこに存在していたのがわかる。
ここを調査するのは骨が折れそうだ。
「うーん。えっと、……」
たくさんある書籍と書籍の間を練り歩いて、目的となりうる棚の場所を目指す。
「おじいちゃんなんて言ってたっけ……こんなことならもっと詳しく聞いとけばよかったなー」
実家の稼業などは詳しく聞いた覚えがないが、イギリスでのミドルネームや祖先が貴族の端くれだった事ならサラッと聞いてある。
何よりこの屋敷は遠縁の私物だったのだから。
とりあえず、歴史のお勉強のようで聞いていて楽しかったのもあり、今もはっきりと内容を覚えていた自分、偉い。
「確か、祖先のことだから、ファントムハイヴ家、貴族の始まり……」
歴史や自伝、家督に関連する棚を見ていると、やはりそれらしき物がいくつか見つかった。
その中には、系統樹のような物も。
「あ、家系図書いてありそうなのはっけん!…………って、届かない…」
やけに古ぼけた貴族や家系図に関する書籍があるのに気がついたが、それがあるのは棚の一番上。
シエルくんか誰かは知らないが、どうせ見ないからと上に突っ込んだのだろう。
背の低いディーヴァには取るのはちょっと無理そうだった。
しかたない、入り口にある脚立がわりの椅子を持ってこよう。
そう思った瞬間、手がスッと横から伸びてきて、取ろうとしていた書籍を抜き取っていった。
「どうぞ」
「!!」
振り返ればものすごく近く、唇まで数センチという距離でセバスチャンの紅茶色の瞳と目があった。
「びっくりしたぁ……!」
この悪魔気配消しすぎ。
ダンテも気配を消して近づいてパーソナルスペースに入ってくる時があるが、それはダンテだから許されることであって、他人……ましてや他の悪魔が許されることではない。
おっと、忘れていたが敬語をつけていい直さねば。
「びっくりした、じゃないですか、でもありがとうございます……」
でもなんでセバスチャンさんはここにいるのだろう。
まだ剪定の次の仕事は始まったばかりで、ここに来ようとでもしない限り、そこまで急ぐ必要もないはずなのだ。
「あの、何故ここに……セバスチャンさんのお仕事は終わったんですか?」
「ええ、終わったので手伝おうと思いまして」
手伝うと言うくせ、手に持った本はディーヴァに与えずそのまま。
所在なさげにブラブラと宙に泳いでいる。
「え、えっと……その本、くれない……のですか?」
渡す気がないのか、ディーヴァの手の届かないところに持ち上げ、ただただ無言。
この、間近で見つめあったままの静寂がつらい。
あと、ダンテにでも見られたらと思うとつらいだけじゃなく、こわい。
その静寂を破ったのはセバスチャンだ。
「ところで…気になっていたのですが……」
「は、はいっ!なんでしょうか!!」
「敬語……坊ちゃんには外して私相手には外してくれないのですか?」
少しだけ悲しそうに鼻を鳴らして、こちらの目をじっと見つめてくるセバスチャン。
この悪魔がそんな細かいことを気にしていたとは思いもせなんだ。
「え。だって、あの……その……」
シエルに敬語をつけないのは、彼がそれを望んだから…だけではなく、年下だからというのもある。
セバスチャンにはそんなこと言われていなく、なんとなく烏滸がましいし、悪魔にタメ口なんて怖くてとてもとても。
本を傍へ置きやったセバスチャンは、ディーヴァへと手を伸ばす。
ディーヴァの顔へと。
それによってセバスチャンの影がディーヴァにかかった。
……近い。
その手をはたき落した挙句、ディーヴァはそこから逃げるように後退した。
後退したところで体がトンと当たるのは、本棚という逃げ場のない袋小路だったのだが。
「…………」
「ご、ごめんなさい……」
冷たくも嬉々とした目がディーヴァを見下ろす。
ダンテは慣れてるし、大好きな人だから平気だけど、でも。
天使の血が入っている自分が、完全なる悪魔であるセバスチャンにどうやっても感じてしまう感情は、それは……。
「『恐怖』を感じていますね?」
「っ!」
考えていたことを正確に当てられた。
表情が、胸の鼓動が、動揺を隠しきれていない。
冷や汗が滲み出る中、カツン、カツン……とセバスチャンの足音が近づいてくる。
視界いっぱいにセバスチャンが映り込む。
ディーヴァの退路は絶たれた。
「嗚呼……やはり可愛いですね、なんと好ましい。……生贄にされた子羊のようですよ?」
「こ、子羊……ヒッ!」
金縛りにでもあったかのように、今一度伸びてきた手は振り払えなかった。
唇で咥え、外した手袋の中。
細く長く、冷たい指が、ダンテにのみ許されていたディーヴァの頬を、するりとなぞりあげる。
ディーヴァを撫でる左手の甲には、シエルと契約しているシルシ……悪魔の逆ペンタクルが仄明るく光っていた。
「好ましいと言ったでしょう?それはもう、食べてしまいたいくらいには好ましいのですよ、私達悪魔にとって、ね」
手にばかり気を取られていたが、ディーヴァは初めてセバスチャンの目を魅入られたように見つめ返した。