食べすぎには御注意を。
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「あちらの席の人達、甘いですね」
ほとんどの客は気がつかなかったが、こちらでお忍びデートを楽しみに来た…いや、視察をしに来た2人の内、1人は気がついていた。
フォークでケーキを口に運び続けたまま、無表情で言い放つ。
無表情というか、これでも微笑ましく見ているつもりなのだが、その表情は端から見れば鉄仮面そのもの。
目の前にある大量のケーキもちゃんと美味しいと思って食べているいるのかどうかわかったものではない。
「そうなの?」
「男の方なんかは、灼熱地獄に落とし甲斐がありそうな熱々の溺愛っぷりですね」
ククク、と凶悪そうな顔でこんなことを言うこの男の趣味は、拷問という名の仕事だ。
彼の名前は鬼灯。
閻魔大王第一補佐官を務めており、地獄の黒幕、鬼よりも鬼などと言われ、上司である閻魔大王からも恐れられている鬼神である。
仕事のひとつである拷問は、彼の趣味と実益をかねていて拷問中毒になっているといえよう。
鬼灯の向かいに座るのは、こちらも鬼神である。
彼とは反対に非常に温厚そうな空気を身にまとう女性だ。
彼女は桔梗。
鬼灯と同じ、閻魔大王の補佐官を務めている。
とはいっても、閻魔大王の補佐というよりは、鬼灯の補佐をすることの方が多いのだが。
2人は今、現世の視察にと、ケーキバイキングに訪れていた。
現世、ということで人間に鬼神だとばれぬよう2人はキャスケット帽を目深にかぶっている。
そうでないと頭に生える角や、ファンタジーものでお馴染みとなったエルフのような尖った耳が見えてしまうからだ。
桔梗はキャスケット帽から流れ落ちる艶やかな黒髪を後ろにさらりと流しながら、鬼灯に疑問を投げかけた。
「私達2人揃って視察なんて珍しいよね。来ちゃって大丈夫なのかな?」
「まあ大丈夫でしょう。たまにはいいんじゃないですか」
そう言ってのんびりと、目の前のスイーツの皿を空にしていく鬼灯。
鬼灯も桔梗もとても有能だ。
地獄に有能な人材が不在、ということは、だ。
もしかしたら今頃てんやわんやになっているかもしれない。
桔梗は知らぬことだが、今回の視察…実は鬼灯が一緒にスイーツを食べに行きたいと思い立って実現したことである。
だからこそ、鬼灯は知らぬふりをしてのんびり食べているのだった。
「これ、美味しいですね」
「鬼灯ったらよっぽど気に入ったのね。おかわり持ってこようか?」
「いえ、次は皿の枚数も増えますので自分で取りにいきます」
鬼灯はかなりの大食らいである。
どう考えてもダンテより食べている。
なのに、腹は膨らむ気配をみせないので、その胃はブラックホールなのではないのか…そう思う。
「あ、鬼灯。頬にクリームがついてる」
「ああ、すみません」
自然な流れで桔梗は鬼灯の頬についたクリームをナフキンで拭き取った。
鬼灯の方も顔を差し出してされるがままだ。
この2人も十分甘く感じるのは気のせいだろうか。
「む。桔梗、何を食べているのですか?」
「え、プリンだけど」
「………」
鬼灯は大食らいだが苦手な食べ物がある。
その1つがプリンだった。
いつも険しい感じのする顔だが、機嫌が悪かったり、嫌そうな顔をする時はさらに険しい顔になる鬼灯。
眉間の皺が深い谷を刻んでいる。
無言で自分の皿に向き直り、楽しみにしていたデザートに取り掛かる。
動物の耳や表情がついたマカロンに、金魚の形の練りきりだ。
鬼灯は顔に似合わず動物が大好きであり、視察の際には必ず動物園に寄って帰る。
更にいうと、地獄では金魚草というとても個性的かつ鳴き声が独特な植物を育てているのだ。
金魚の練りきりはその金魚草の顔に見えて愛着がわいたのかもしれない。
「このマカロンや練りきり………」
じっ………。
その視線が少し怖い。
マカロンや練りきりが生きているとしたら、冷や汗をダラダラ書き続けていたことだろう。
「……かわいいですね」
長年の付き合いである桔梗には、鬼灯の頬が微かに朱に染まったのがわかった。
そんな鬼灯に桔梗もつられて笑顔になる。
仕事で来たと言えども、鬼灯のこんな顔を見られただけで今回の視察は成功だと思えた桔梗だった。
ほとんどの客は気がつかなかったが、こちらでお忍びデートを楽しみに来た…いや、視察をしに来た2人の内、1人は気がついていた。
フォークでケーキを口に運び続けたまま、無表情で言い放つ。
無表情というか、これでも微笑ましく見ているつもりなのだが、その表情は端から見れば鉄仮面そのもの。
目の前にある大量のケーキもちゃんと美味しいと思って食べているいるのかどうかわかったものではない。
「そうなの?」
「男の方なんかは、灼熱地獄に落とし甲斐がありそうな熱々の溺愛っぷりですね」
ククク、と凶悪そうな顔でこんなことを言うこの男の趣味は、拷問という名の仕事だ。
彼の名前は鬼灯。
閻魔大王第一補佐官を務めており、地獄の黒幕、鬼よりも鬼などと言われ、上司である閻魔大王からも恐れられている鬼神である。
仕事のひとつである拷問は、彼の趣味と実益をかねていて拷問中毒になっているといえよう。
鬼灯の向かいに座るのは、こちらも鬼神である。
彼とは反対に非常に温厚そうな空気を身にまとう女性だ。
彼女は桔梗。
鬼灯と同じ、閻魔大王の補佐官を務めている。
とはいっても、閻魔大王の補佐というよりは、鬼灯の補佐をすることの方が多いのだが。
2人は今、現世の視察にと、ケーキバイキングに訪れていた。
現世、ということで人間に鬼神だとばれぬよう2人はキャスケット帽を目深にかぶっている。
そうでないと頭に生える角や、ファンタジーものでお馴染みとなったエルフのような尖った耳が見えてしまうからだ。
桔梗はキャスケット帽から流れ落ちる艶やかな黒髪を後ろにさらりと流しながら、鬼灯に疑問を投げかけた。
「私達2人揃って視察なんて珍しいよね。来ちゃって大丈夫なのかな?」
「まあ大丈夫でしょう。たまにはいいんじゃないですか」
そう言ってのんびりと、目の前のスイーツの皿を空にしていく鬼灯。
鬼灯も桔梗もとても有能だ。
地獄に有能な人材が不在、ということは、だ。
もしかしたら今頃てんやわんやになっているかもしれない。
桔梗は知らぬことだが、今回の視察…実は鬼灯が一緒にスイーツを食べに行きたいと思い立って実現したことである。
だからこそ、鬼灯は知らぬふりをしてのんびり食べているのだった。
「これ、美味しいですね」
「鬼灯ったらよっぽど気に入ったのね。おかわり持ってこようか?」
「いえ、次は皿の枚数も増えますので自分で取りにいきます」
鬼灯はかなりの大食らいである。
どう考えてもダンテより食べている。
なのに、腹は膨らむ気配をみせないので、その胃はブラックホールなのではないのか…そう思う。
「あ、鬼灯。頬にクリームがついてる」
「ああ、すみません」
自然な流れで桔梗は鬼灯の頬についたクリームをナフキンで拭き取った。
鬼灯の方も顔を差し出してされるがままだ。
この2人も十分甘く感じるのは気のせいだろうか。
「む。桔梗、何を食べているのですか?」
「え、プリンだけど」
「………」
鬼灯は大食らいだが苦手な食べ物がある。
その1つがプリンだった。
いつも険しい感じのする顔だが、機嫌が悪かったり、嫌そうな顔をする時はさらに険しい顔になる鬼灯。
眉間の皺が深い谷を刻んでいる。
無言で自分の皿に向き直り、楽しみにしていたデザートに取り掛かる。
動物の耳や表情がついたマカロンに、金魚の形の練りきりだ。
鬼灯は顔に似合わず動物が大好きであり、視察の際には必ず動物園に寄って帰る。
更にいうと、地獄では金魚草というとても個性的かつ鳴き声が独特な植物を育てているのだ。
金魚の練りきりはその金魚草の顔に見えて愛着がわいたのかもしれない。
「このマカロンや練りきり………」
じっ………。
その視線が少し怖い。
マカロンや練りきりが生きているとしたら、冷や汗をダラダラ書き続けていたことだろう。
「……かわいいですね」
長年の付き合いである桔梗には、鬼灯の頬が微かに朱に染まったのがわかった。
そんな鬼灯に桔梗もつられて笑顔になる。
仕事で来たと言えども、鬼灯のこんな顔を見られただけで今回の視察は成功だと思えた桔梗だった。