事務所に帰るとリアラもディーヴァも、揃ってこちらを向いた。
呼び止めたのを２人とも覚えていたようだ。

「で、呼び方がいつものダンテになってたよねキミタチ」
「どういうことか説明…してくれますよね？」

笑顔の般若がそこには立っていた。
まとう空気は髭の倒したムンドゥスのそれに匹敵する。

ダンテ達はジャンピング土下座で謝り倒した。

「お互い記憶がないふりして子どもらしく振る舞おうぜ！
　…ってなりましたすみません」

しばしの沈黙、そのあとに。

「へぇ～ぇ？なるほど～」
「ほほ～ぉ。そぉなんだぁ…」

ニコニコとしたままのリアラとディーヴァがそう言った。

怒らないのだろうか。
てっきり頭ごなしに怒られるかと思っていたので拍子抜けしてしまう。


「怒ってない…のか？」

ドキドキしながら聞いてきた髭をその腕にだきよせて、リアラは呟いた。

「怒ってますよ。
　小さい体なのに、悪魔に向かっていくなんて無茶して…」
「リアラ……」
「私、かなり怒ってます」

頬をふくらまして怒ってはいるが、それが心配しての怒りだと思うとたまらなく嬉しく感じた。



若も同じことをディーヴァに聞いた。

「ディーヴァ、お前も怒ってるのか」
「うん、もちろん」
「リアラみたくオレを心配してなんだよな、ごめんな」
「え、違うけど？」
「えﾞ…」

なんと。
こちらは心配だから怒っているとかそういう話ではないとのこと。

ディーヴァはさらりと答えを返す。
ダンテは顔をひきつらせた。

「それどころかお仕置きするよ？」

お仕置き…。
あーんなことやこーんなことをされてしまうに違いない。
それが愛しのディーヴァから与えられるのなら、オレはそれが苦痛でもかまわない。

「オレはエロいお仕置きがいいな」

にやにやとダンテは笑う。
５歳児には似合わぬ顔をしていた。

ぶっちん。
また何か切れた音が。

そして真っ黒の空気を垂れ流すディーヴァ。

「………うふふふふ。
　本当は元の姿に戻ったら、びしばしお仕置きしてやろうと思ったけど我慢できないなあ。
　今からお仕置きするから、ダンテ…逃げないでよね！」
「…？え、えっ！？」

ディーヴァはダンテのお尻をむんずと掴み、引き寄せた。
そして半ケツ状態にされたかと思いきや……。

スパパパパパーン！！

ディーヴァによるお尻百叩きという刑が執行された。

「ぎゃああああ！！
　親父にもやられたことないのに！！」
「問答無用！」



そして再びリアラと髭である。
ディーヴァに思いきりスパンキングを受ける若を横目に、髭はリアラに心からの謝罪を入れた。

「悪かった、許してくれリアラ…　怪我までさせて…俺、恋人失格だ」
「……しょうがないですね、今は許してあげます」

心からの謝罪に苦笑してリアラは髭を許してやった。
今度は髭からリアラに抱きつく。

その腕はまだリアラの体全体を覆うほど大きくなく、早く元に戻りたい思いにかられた。

「でも……」
「ん？」

髭の頭を撫でながら、リアラは追加を入れた。

「元の姿に戻ったら覚悟しておいてくださいね？」

にっこり笑うリアラの感情の奥にはいまだ怒りの念がこもっていた。

若のように、今お仕置きされた方がもしかしたらよかったかもしれない、髭はそう思うのだった。