狼とうさぎの1週間
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今日で半獣化7日目。
つまりは呪いが解ける日である。
最終日なので彼女達をいじり倒して遊ぼうと考えていた男達はいない。
昨日に引き続いて合言葉付きの依頼が入り、出かけていったのだ。
髭と若、どちらも行きたくない、傍にいると駄々をこねていたのだが、どっちが残っても悪戯確定とわかっていたリアラとディーヴァによって無理やり外へ出されてしまったのである。
そしてリアラはディーヴァを昨日怪我させてしまったこともあり残ることにした。
いつもはぎゅうぎゅう詰めで座っているソファーが今日はゆったりとリラックスした状態で使える。
2人にソファーに身を沈みこませてくつろいだ。
「ふふっダンテさん達がいないと平和だね」
「うん、たまにはこんな日があってもいいよねぇ…」
「そうね。あ…そうだわ、ちょっと豪華なお茶会とかしようか?」
「いいね!鬼の居ぬ間に…ってやつだね!鬼じゃなくで変態半魔だけど。こうなったらストロベリーサンデー用の苺も全部いただいちゃおっと」
少しディーヴァが毒舌になっている。
これはストレスがたまっているに違いない。
「…ディーヴァちゃん、もしかしてストレス溜まってイライラしてる?」
「うん♪」
にっこりと笑顔で言い切るところがリアルさを醸し出している。
ディーヴァのストレスの発散方法は簡単だ。
ひたすら気が済むまでお菓子を作ること、ただそれだけである。
「じゃあ、ちょうどこの間買ってきた材料もいっぱいあるし好きなもの作ろうか」
***
この家では苺といったらストロベリーサンデーであるが、今日はショートケーキにしてみた。
そしてリアラの好物のミルクレープに、ディーヴァの好物のプリン。
他には夏らしくオレンジを使ったケーキや、さわやかなブルーが涼しげなソーダゼリー。
思いつく限りのお菓子を作り、2人…というよりディーヴァはスッキリとした表情だった。
リアラは完成したお菓子の量に若干ひいている。
「はぁー満足した!」
「ものすごい量になったけど、これ…全部食べるの?」
「まさか!苺とか使ったのばれちゃうけどダンテ達に残しておこうと思って」
「そっか、良かった…」
大量のお菓子をプレート皿に少しずつ並べた。
綺麗だが、ダンテ達なら「こんなちょっとずつじゃ満足しない」と文句を垂れそうである。
その話をしてカラカラと笑いあいながら、2人はディーヴァのとっておきの上質な茶葉で淹れたアイスティーを準備する。
そしてきちんとセッティングしたアフタヌーンティーセットを囲み、ここに小さなお茶会が始まった。
「ストロベリーサンデーもいいけど、たまにはショートケーキも美味しいね」
「うん。ミルクレープもすごく美味しいよ、ありがとう」
「リアラお姉ちゃんはミルクレープ好きだもんね。あと、このソーダゼリーもリアラお姉ちゃんの瞳の色を意識したんだよ」
「こんなに綺麗な色してるかな?」
「綺麗だよ~ダンテさんとかもよく綺麗って言ってるでしょ?」
「ふふ、そうね。私ソーダ系の味も好きなの。ありがとう、美味しいよ」
互いに作ったお菓子の感想を言いながらお茶会は進む。
ここで話は半獣化した今回の出来事に移行した。
「いきなり獣の耳が生えるんだもん、びっくりしたよ」
「あの時私をかばわなければ、ディーヴァちゃんは半獣化をまぬがれたのにね」
「…そうかもしれないけど、咄嗟に体動いちゃうしやっぱり大切なお姉ちゃんだから」
「ありがとう」
リアラはこの話を聞いてまたじーん、と感動した。
ちゅー、とアイスティーをすすりながらディーヴァが続ける。
「耳が生えたことよりもからかわれたり悪戯されたり…そっちの方がやっかいだった気がするよ」
「うん、それは言えてる。ネロがいなかったらどうなってただろうね」
「その辺は考えたくないや。バニーガールの服とかどこから持って来たんだろうね。あんなの着せられて正直、殺意沸いたもん」
「さあ、どこからだろう。殺意までいかないけど、私もちょっと腹が立ったよ。あんなミニチャイナドレスとかよく持ってこれたものだわ!」
こっちでは笑みの中に殺意を含ませ、片やプリプリと怒りながら思いだした。
コスプレなんてもうこりごりである。
「あ、でもリアラお姉ちゃん似合ってたよ!狼耳もかわいかったし。あたしも触りたかったのにいっつもダンテさんが独り占めしちゃうんだから!」
「ディーヴァちゃんこそ。私も触りたかったけど、若が1人で撫でてるから全然触れなかったし。私のは魔獣化すれば同じ毛質が触れるからいいけど呪いが解けたらもううさぎの耳とはお別れなのよね…」
「男の人が獣耳すきな気持ち、なんとなくわかった気がする」
「そうだね。何となく、だけどね」
頷きあって会話は進む。
フォークも進む。
「あとあのフードつきTシャツはいい想い出になったわね」
「うん、リアラお姉ちゃん、ありがとう。これからも出かける時とか着ようかな」
「私こそありがとう。色違いのおそろいって本当の姉妹になった気分だわ♪…あ、そうそう。気がつかなかったけど眠る時も半獣化してるんですって。ディーヴァちゃんが徹夜してソファーで寝ちゃった時にそうなってたのよ?寝顔とうさぎの耳ですごくかわいかったわ。写真に撮っておけばよかったな…」
「それは勘弁してほしいかな。てれちゃうよー」
ちなみにダンテ達が2人の寝顔を写真におさめたことは全く知らない。
知ったらどうなることやら…
その後も2人は他愛のない話を沢山話した。
話は尽きることはなかったがそろそろ皿の上が空になろうとしている。
ディーヴァは最後に食べようと残しておいたショートケーキの苺をおもむろにつまみあげた。
「うーん、苺…全部使わないでもう少しとっておけばよかったかな。…ダンテ、大丈夫かなあ」
「私も心配…ダンテさんも若も強いけど、無茶してばっかりだから…」
ふとダンテ達を思い出した。
2人は今依頼先で悪魔と戦っているだろう。
とても強い2人だが、時折無茶するし、危ない目にあって帰ってきたりしてリアラとディーヴァをびっくりさせるのだ。
その度、心配しすぎて心臓が止まってしまいそうになる。
公共物は壊してしまっても、いつかはまた作りなおせばいい。
でも、すぐに傷が治ると言っても、死んでしまったらもう命はそこで終わり。
戻らないのである。
リアラとディーヴァは、ダンテ達さえ無事に帰ってきてくれればそれでいいのだ。
「早く帰ってこないかなぁ…」
ディーヴァがぼそっと呟きながら、テーブルの上につっぷした。
その様子にクスっと笑って、リアラは頬杖をつきアイスティーの残りをすすった。
「若がいないとやっぱり寂しい?」
「え!いや、その…うん。でもお姉ちゃんもでしょ」
「そうだね。こういう日もいいかなって思うけど、やっぱりダンテさんがいて、ディーヴァちゃんがいて、若がいないと静かすぎてちょっと寂しいね」
「うん。…そろそろお茶会もお開きにしよう?」
「じゃあ、2人が帰って来た時のために、食事の準備始めちゃいましょうか!」
そう言って2人はお茶会セットの片付けを始め、キッチンへと向った。
つまりは呪いが解ける日である。
最終日なので彼女達をいじり倒して遊ぼうと考えていた男達はいない。
昨日に引き続いて合言葉付きの依頼が入り、出かけていったのだ。
髭と若、どちらも行きたくない、傍にいると駄々をこねていたのだが、どっちが残っても悪戯確定とわかっていたリアラとディーヴァによって無理やり外へ出されてしまったのである。
そしてリアラはディーヴァを昨日怪我させてしまったこともあり残ることにした。
いつもはぎゅうぎゅう詰めで座っているソファーが今日はゆったりとリラックスした状態で使える。
2人にソファーに身を沈みこませてくつろいだ。
「ふふっダンテさん達がいないと平和だね」
「うん、たまにはこんな日があってもいいよねぇ…」
「そうね。あ…そうだわ、ちょっと豪華なお茶会とかしようか?」
「いいね!鬼の居ぬ間に…ってやつだね!鬼じゃなくで変態半魔だけど。こうなったらストロベリーサンデー用の苺も全部いただいちゃおっと」
少しディーヴァが毒舌になっている。
これはストレスがたまっているに違いない。
「…ディーヴァちゃん、もしかしてストレス溜まってイライラしてる?」
「うん♪」
にっこりと笑顔で言い切るところがリアルさを醸し出している。
ディーヴァのストレスの発散方法は簡単だ。
ひたすら気が済むまでお菓子を作ること、ただそれだけである。
「じゃあ、ちょうどこの間買ってきた材料もいっぱいあるし好きなもの作ろうか」
***
この家では苺といったらストロベリーサンデーであるが、今日はショートケーキにしてみた。
そしてリアラの好物のミルクレープに、ディーヴァの好物のプリン。
他には夏らしくオレンジを使ったケーキや、さわやかなブルーが涼しげなソーダゼリー。
思いつく限りのお菓子を作り、2人…というよりディーヴァはスッキリとした表情だった。
リアラは完成したお菓子の量に若干ひいている。
「はぁー満足した!」
「ものすごい量になったけど、これ…全部食べるの?」
「まさか!苺とか使ったのばれちゃうけどダンテ達に残しておこうと思って」
「そっか、良かった…」
大量のお菓子をプレート皿に少しずつ並べた。
綺麗だが、ダンテ達なら「こんなちょっとずつじゃ満足しない」と文句を垂れそうである。
その話をしてカラカラと笑いあいながら、2人はディーヴァのとっておきの上質な茶葉で淹れたアイスティーを準備する。
そしてきちんとセッティングしたアフタヌーンティーセットを囲み、ここに小さなお茶会が始まった。
「ストロベリーサンデーもいいけど、たまにはショートケーキも美味しいね」
「うん。ミルクレープもすごく美味しいよ、ありがとう」
「リアラお姉ちゃんはミルクレープ好きだもんね。あと、このソーダゼリーもリアラお姉ちゃんの瞳の色を意識したんだよ」
「こんなに綺麗な色してるかな?」
「綺麗だよ~ダンテさんとかもよく綺麗って言ってるでしょ?」
「ふふ、そうね。私ソーダ系の味も好きなの。ありがとう、美味しいよ」
互いに作ったお菓子の感想を言いながらお茶会は進む。
ここで話は半獣化した今回の出来事に移行した。
「いきなり獣の耳が生えるんだもん、びっくりしたよ」
「あの時私をかばわなければ、ディーヴァちゃんは半獣化をまぬがれたのにね」
「…そうかもしれないけど、咄嗟に体動いちゃうしやっぱり大切なお姉ちゃんだから」
「ありがとう」
リアラはこの話を聞いてまたじーん、と感動した。
ちゅー、とアイスティーをすすりながらディーヴァが続ける。
「耳が生えたことよりもからかわれたり悪戯されたり…そっちの方がやっかいだった気がするよ」
「うん、それは言えてる。ネロがいなかったらどうなってただろうね」
「その辺は考えたくないや。バニーガールの服とかどこから持って来たんだろうね。あんなの着せられて正直、殺意沸いたもん」
「さあ、どこからだろう。殺意までいかないけど、私もちょっと腹が立ったよ。あんなミニチャイナドレスとかよく持ってこれたものだわ!」
こっちでは笑みの中に殺意を含ませ、片やプリプリと怒りながら思いだした。
コスプレなんてもうこりごりである。
「あ、でもリアラお姉ちゃん似合ってたよ!狼耳もかわいかったし。あたしも触りたかったのにいっつもダンテさんが独り占めしちゃうんだから!」
「ディーヴァちゃんこそ。私も触りたかったけど、若が1人で撫でてるから全然触れなかったし。私のは魔獣化すれば同じ毛質が触れるからいいけど呪いが解けたらもううさぎの耳とはお別れなのよね…」
「男の人が獣耳すきな気持ち、なんとなくわかった気がする」
「そうだね。何となく、だけどね」
頷きあって会話は進む。
フォークも進む。
「あとあのフードつきTシャツはいい想い出になったわね」
「うん、リアラお姉ちゃん、ありがとう。これからも出かける時とか着ようかな」
「私こそありがとう。色違いのおそろいって本当の姉妹になった気分だわ♪…あ、そうそう。気がつかなかったけど眠る時も半獣化してるんですって。ディーヴァちゃんが徹夜してソファーで寝ちゃった時にそうなってたのよ?寝顔とうさぎの耳ですごくかわいかったわ。写真に撮っておけばよかったな…」
「それは勘弁してほしいかな。てれちゃうよー」
ちなみにダンテ達が2人の寝顔を写真におさめたことは全く知らない。
知ったらどうなることやら…
その後も2人は他愛のない話を沢山話した。
話は尽きることはなかったがそろそろ皿の上が空になろうとしている。
ディーヴァは最後に食べようと残しておいたショートケーキの苺をおもむろにつまみあげた。
「うーん、苺…全部使わないでもう少しとっておけばよかったかな。…ダンテ、大丈夫かなあ」
「私も心配…ダンテさんも若も強いけど、無茶してばっかりだから…」
ふとダンテ達を思い出した。
2人は今依頼先で悪魔と戦っているだろう。
とても強い2人だが、時折無茶するし、危ない目にあって帰ってきたりしてリアラとディーヴァをびっくりさせるのだ。
その度、心配しすぎて心臓が止まってしまいそうになる。
公共物は壊してしまっても、いつかはまた作りなおせばいい。
でも、すぐに傷が治ると言っても、死んでしまったらもう命はそこで終わり。
戻らないのである。
リアラとディーヴァは、ダンテ達さえ無事に帰ってきてくれればそれでいいのだ。
「早く帰ってこないかなぁ…」
ディーヴァがぼそっと呟きながら、テーブルの上につっぷした。
その様子にクスっと笑って、リアラは頬杖をつきアイスティーの残りをすすった。
「若がいないとやっぱり寂しい?」
「え!いや、その…うん。でもお姉ちゃんもでしょ」
「そうだね。こういう日もいいかなって思うけど、やっぱりダンテさんがいて、ディーヴァちゃんがいて、若がいないと静かすぎてちょっと寂しいね」
「うん。…そろそろお茶会もお開きにしよう?」
「じゃあ、2人が帰って来た時のために、食事の準備始めちゃいましょうか!」
そう言って2人はお茶会セットの片付けを始め、キッチンへと向った。