Short Story
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「むり……眠い……」
「頑張れ、あと少しだ」
「なんで電車なんかで帰るのよ……車はどうしたの……」
「車検にだしてしまった」
ガタン、ゴトン、と不規則に鳴る音。揺れる体。定員オーバーなのに詰め込まれる人間。終電間際の電車内は狭い、苦しい。そしてなにより眠い。
「ジンから車奪っちゃえば良かったのに……」
「その代償に命を奪われかねないがな」
彼のバリトンボイスが、心地よく響く。余計に睡魔を煽る。流石に立ちながら寝たくない。たぶん、寝れないことはない。ぎゅうぎゅうになった車内では、自分の重心を他人に預けながらバランスを保っているようなものだ。
「そしたらジンを撃っちゃえばいいんだよ……」
「ユイ、だいぶ眠いんだな」
寝言の扱いをされた。私は至って本気なのに。
というか、先程からまるでコントのように赤井に突っ込まれてる気がする。
「ああもう眠い。眠すぎる。はやく着いて」
いま瞼を閉じたら本当に意識を手放してしまいそうだ。ダメだと思ってるのに、鉛のように重たい。それに車内空調の風で、目が乾燥する。
ため息を小さく吐きながら、5秒だけ、そう思いながら目をつぶる。ああ、眼球が癒される。目を閉じただけで、少しはラクになる。
今日もなかなかハードなスケジュールだった。組織での配属先が、NOCの集まりで本当に良かった。本職は違えど、同じ潜入捜査官という括りだけでもだいぶ気が助かる。
しかし、私の知ってる限りでもNOCの存在は多数だ。大丈夫なのかこの組織は。
「おい。寝るな。危ない」
「……寝てない」
「嘘をつくくらいなら耐えろ」
ガタンッ、と大きく揺れる。足場の悪いこの状況で、バランスを崩したら──。
その危険が起こる前に、私の腰に腕が回された。この腕が素知らぬ男だったら今すぐ張り倒してやったが、隣の赤井秀一という男が私のことを見下ろしながらため息をついた。
「だから危ないと言っただろう」
「はいはいごめんなさい、ありがとう」
「なんだその態度は」
そして鼻で笑われた。馬鹿にするというよりは、呆れた、というような感じで。
「……なんか、赤井さんってお兄ちゃんみたいだよね」
「これ以上面倒な妹が増えてたまるか」
「妹になりたいとは言ってないでしょう?というか、やっぱり妹さんいるんだね」
長男のような振る舞いは、たまにだけど見る。『ライ』としてはあんまりだけど、『赤井秀一』としては結構な頻度で、と言ってもいいくらいだ。
「弟もいるぞ」
「わあ、そんなに個人情報喋っちゃっていいの?」
こんどは舌打ちが降り注いだ。そこまでしなくてもいいじゃん。
「お前はもう寝てろ」
さっきまで寝るな寝るなと言い続けたくせに。
「それじゃ、お言葉に甘えてー」
「お、着いたな」
コントじゃねえんだぞ。
私は思わずそうツッコミたかった。
「……はやくベッドで安眠したい」
「もうちょっとの辛抱だな」
彼は腕をほどくことなく、私はエスコートされて電車を降りた。さすがアメリカの空気を吸った者はやることが違う。だが周りのくたびれた人間たちは、もはや私達のことはどうでもいいみたいだ。むしろ避けるように道を開けた。
「まって、これから歩いて行くとか言わないよね。もちろんタクシー呼ぶよね。バーボンとか呼ぶよね。というか、最初から車呼べば良かったんじゃん!」
「彼を呼ぶなら警察署に電話かけないとだな。相変わらずの残業と徹夜だろう」
「ああもう!この社畜!」
「俺たちも十分そうだろう」
煙草の箱を取り出す彼の左手から、一本拝借して口に咥える。そういえば、お腹も空いていた。
彼が火をだして、私の方のタバコを先に点ける。そして自分の方にも火をつけ、ふう、と大きく一息ついた
「頑張れ、あと少しだ」
「なんで電車なんかで帰るのよ……車はどうしたの……」
「車検にだしてしまった」
ガタン、ゴトン、と不規則に鳴る音。揺れる体。定員オーバーなのに詰め込まれる人間。終電間際の電車内は狭い、苦しい。そしてなにより眠い。
「ジンから車奪っちゃえば良かったのに……」
「その代償に命を奪われかねないがな」
彼のバリトンボイスが、心地よく響く。余計に睡魔を煽る。流石に立ちながら寝たくない。たぶん、寝れないことはない。ぎゅうぎゅうになった車内では、自分の重心を他人に預けながらバランスを保っているようなものだ。
「そしたらジンを撃っちゃえばいいんだよ……」
「ユイ、だいぶ眠いんだな」
寝言の扱いをされた。私は至って本気なのに。
というか、先程からまるでコントのように赤井に突っ込まれてる気がする。
「ああもう眠い。眠すぎる。はやく着いて」
いま瞼を閉じたら本当に意識を手放してしまいそうだ。ダメだと思ってるのに、鉛のように重たい。それに車内空調の風で、目が乾燥する。
ため息を小さく吐きながら、5秒だけ、そう思いながら目をつぶる。ああ、眼球が癒される。目を閉じただけで、少しはラクになる。
今日もなかなかハードなスケジュールだった。組織での配属先が、NOCの集まりで本当に良かった。本職は違えど、同じ潜入捜査官という括りだけでもだいぶ気が助かる。
しかし、私の知ってる限りでもNOCの存在は多数だ。大丈夫なのかこの組織は。
「おい。寝るな。危ない」
「……寝てない」
「嘘をつくくらいなら耐えろ」
ガタンッ、と大きく揺れる。足場の悪いこの状況で、バランスを崩したら──。
その危険が起こる前に、私の腰に腕が回された。この腕が素知らぬ男だったら今すぐ張り倒してやったが、隣の赤井秀一という男が私のことを見下ろしながらため息をついた。
「だから危ないと言っただろう」
「はいはいごめんなさい、ありがとう」
「なんだその態度は」
そして鼻で笑われた。馬鹿にするというよりは、呆れた、というような感じで。
「……なんか、赤井さんってお兄ちゃんみたいだよね」
「これ以上面倒な妹が増えてたまるか」
「妹になりたいとは言ってないでしょう?というか、やっぱり妹さんいるんだね」
長男のような振る舞いは、たまにだけど見る。『ライ』としてはあんまりだけど、『赤井秀一』としては結構な頻度で、と言ってもいいくらいだ。
「弟もいるぞ」
「わあ、そんなに個人情報喋っちゃっていいの?」
こんどは舌打ちが降り注いだ。そこまでしなくてもいいじゃん。
「お前はもう寝てろ」
さっきまで寝るな寝るなと言い続けたくせに。
「それじゃ、お言葉に甘えてー」
「お、着いたな」
コントじゃねえんだぞ。
私は思わずそうツッコミたかった。
「……はやくベッドで安眠したい」
「もうちょっとの辛抱だな」
彼は腕をほどくことなく、私はエスコートされて電車を降りた。さすがアメリカの空気を吸った者はやることが違う。だが周りのくたびれた人間たちは、もはや私達のことはどうでもいいみたいだ。むしろ避けるように道を開けた。
「まって、これから歩いて行くとか言わないよね。もちろんタクシー呼ぶよね。バーボンとか呼ぶよね。というか、最初から車呼べば良かったんじゃん!」
「彼を呼ぶなら警察署に電話かけないとだな。相変わらずの残業と徹夜だろう」
「ああもう!この社畜!」
「俺たちも十分そうだろう」
煙草の箱を取り出す彼の左手から、一本拝借して口に咥える。そういえば、お腹も空いていた。
彼が火をだして、私の方のタバコを先に点ける。そして自分の方にも火をつけ、ふう、と大きく一息ついた