Short Story
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相変わらず、なんて書類の多いことだろう。
庁舎内の廊下を、分厚い資料に目を通しながら移動する。本当は座って読みたいところだが、そんな余裕などないほど、公安の仕事は忙しいのだ。無意識のうちに溜め息がでる。
廊下を響かせる自分のヒールの音。その音は一秒を刻む速さよりも勿論、断然速い。
ふと顔を上げると、前方には両サイドに部下を引き連れ、同じく資料に目を落としている降谷零がいた。
「ねえ、降谷」
声をかけると、本人より先に部下の顔が驚愕と怪訝の混じった顔で見てきた。どうせ呼び捨てした事に驚いているのだろう。
まあ、無理もない。自分は何年も潜入捜査で潜っていて、つい一昨日こちらに戻ってきたばかりなのだから。
いきなり顔も知らない女に自分の上司を呼び捨てにされたら、そんな顔にもなるだろう。
ちょっと遅れて、当の本人も落としていた視線を上げた。
「はい、なんでしょう…って、あっ、えっ!…お久しぶりです!お戻りになられたのですね。挨拶に行けず、すみません。ほら、お前たちも挨拶しろ!」
微笑を零しながら、降谷は再会の挨拶を交わした。
向ける表情は明るく努めているが、以前よりやつれただろうか。睡眠不足も見てとれた。
彼の両サイドの部下は、未だに頭の上にハテナマークが浮かんでいて、ちょっぴり面白い。
「そんな堅苦しい言葉やめてよ。小さい頃からの付き合いでしょ」
降谷とは幼馴染なのだ。幼稚園、小学校、中学も、高校も大学も同じ学校だった。
まるで兄妹のように、同じ時を過ごしてきた。
だが恋人という関係ではない。私たちの関係をいうなら、家族というのが一番ピッタリする。
「いえ、そうは言われましても…。…ううん、やはり敬語は慣れないな。でも貴女、潜伏中にも評価は上がり続け、階級も上がったんだよ?今じゃ僕よりも偉い人になっちゃって…。」
警察学校を出てからも変わらず同じ部署に行き、立場も同じくらい。この張り詰めた空間のなかで、気が許せるのは彼くらいのものだ。
「そんなの、貴方とそれほど変わらないよ。あーあ、昔はあんなに可愛くて、よく喧嘩するヤンチャな子だったのに、いつの間にかこんな屈強な部下を連れるようになっちゃって。
ああそうだ、聞かせてあげようかな。この前思い出した降谷の恥ずかしい思い出話なんだけどね、」
「わ、わ!いったい何十年前の話をする気だ!やめてくれ、部下の前で!」
顔を紅くして手をブンブン振り、制止する降谷。隣の部下達は降谷の意外な面を見れて、表情を和らげていた。
「ふふふ、そうそう、その顔。貴方にはその素の笑い顔の方が素敵。あまり険しい顔は似合わないわ」
「…あなただって」
何か言いたげに口を開いた降谷。しかしその先は出てこなかった。
「お互い大変だけど、頑張ろうね。辛くなったら私のところに来て。話くらいは聞いてあげるからね。その隈とやつれた顔で部下に心配かけないこと」
呆れたように笑ってやったら、彼も、ふ、と唇に弧を描き再度口を開いた。
「…あなたも、何かあったら僕を頼って良いんですからね。隠してるつもりだろうけど、溜め込んでるのはお見通しだからな」
ああやはり、彼と一緒にいるのは落ち着く。
お互い微笑をもらし、じゃあまた今度ゆっくりお話ししましょう、と告げ仕事に戻った。
短い再会時間だったが、何だか気持ちが軽くなり疲れが和らいだ気がした。
「さて、今日も仕事頑張るか。」
━━後日、降谷との関係の噂に頭を抱えるのは、また別の話。
庁舎内の廊下を、分厚い資料に目を通しながら移動する。本当は座って読みたいところだが、そんな余裕などないほど、公安の仕事は忙しいのだ。無意識のうちに溜め息がでる。
廊下を響かせる自分のヒールの音。その音は一秒を刻む速さよりも勿論、断然速い。
ふと顔を上げると、前方には両サイドに部下を引き連れ、同じく資料に目を落としている降谷零がいた。
「ねえ、降谷」
声をかけると、本人より先に部下の顔が驚愕と怪訝の混じった顔で見てきた。どうせ呼び捨てした事に驚いているのだろう。
まあ、無理もない。自分は何年も潜入捜査で潜っていて、つい一昨日こちらに戻ってきたばかりなのだから。
いきなり顔も知らない女に自分の上司を呼び捨てにされたら、そんな顔にもなるだろう。
ちょっと遅れて、当の本人も落としていた視線を上げた。
「はい、なんでしょう…って、あっ、えっ!…お久しぶりです!お戻りになられたのですね。挨拶に行けず、すみません。ほら、お前たちも挨拶しろ!」
微笑を零しながら、降谷は再会の挨拶を交わした。
向ける表情は明るく努めているが、以前よりやつれただろうか。睡眠不足も見てとれた。
彼の両サイドの部下は、未だに頭の上にハテナマークが浮かんでいて、ちょっぴり面白い。
「そんな堅苦しい言葉やめてよ。小さい頃からの付き合いでしょ」
降谷とは幼馴染なのだ。幼稚園、小学校、中学も、高校も大学も同じ学校だった。
まるで兄妹のように、同じ時を過ごしてきた。
だが恋人という関係ではない。私たちの関係をいうなら、家族というのが一番ピッタリする。
「いえ、そうは言われましても…。…ううん、やはり敬語は慣れないな。でも貴女、潜伏中にも評価は上がり続け、階級も上がったんだよ?今じゃ僕よりも偉い人になっちゃって…。」
警察学校を出てからも変わらず同じ部署に行き、立場も同じくらい。この張り詰めた空間のなかで、気が許せるのは彼くらいのものだ。
「そんなの、貴方とそれほど変わらないよ。あーあ、昔はあんなに可愛くて、よく喧嘩するヤンチャな子だったのに、いつの間にかこんな屈強な部下を連れるようになっちゃって。
ああそうだ、聞かせてあげようかな。この前思い出した降谷の恥ずかしい思い出話なんだけどね、」
「わ、わ!いったい何十年前の話をする気だ!やめてくれ、部下の前で!」
顔を紅くして手をブンブン振り、制止する降谷。隣の部下達は降谷の意外な面を見れて、表情を和らげていた。
「ふふふ、そうそう、その顔。貴方にはその素の笑い顔の方が素敵。あまり険しい顔は似合わないわ」
「…あなただって」
何か言いたげに口を開いた降谷。しかしその先は出てこなかった。
「お互い大変だけど、頑張ろうね。辛くなったら私のところに来て。話くらいは聞いてあげるからね。その隈とやつれた顔で部下に心配かけないこと」
呆れたように笑ってやったら、彼も、ふ、と唇に弧を描き再度口を開いた。
「…あなたも、何かあったら僕を頼って良いんですからね。隠してるつもりだろうけど、溜め込んでるのはお見通しだからな」
ああやはり、彼と一緒にいるのは落ち着く。
お互い微笑をもらし、じゃあまた今度ゆっくりお話ししましょう、と告げ仕事に戻った。
短い再会時間だったが、何だか気持ちが軽くなり疲れが和らいだ気がした。
「さて、今日も仕事頑張るか。」
━━後日、降谷との関係の噂に頭を抱えるのは、また別の話。