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鬼滅の刃

「ねぇずこちゃあああん!」
「たんじろおおお」
 鶏よりもうるさい叫びが朝を知らせる。
 私と善逸は、炭治郎と禰豆子ちゃんが眠る部屋の障子に駆け込んだ。
「ど、どうしたんだ二人とも。朝から大声で怒鳴らないでくれ……」
「むむー」
 私は寝間着のままの、まだ眠そうな炭治郎を布団の上に乗っかって抱き締めた。
「だって善逸が!善逸があ!」
 その善逸はというと、まだ半分寝ている禰豆子ちゃんに抱きついていた。
「善逸!この期に及んで浮気までするの?!」
「うるさいなあ!それならそっちだって炭治郎から離れろよ!」
「──二人ともうるさいっ!」
 キーンと耳に響く炭治郎の一喝。
 禰豆子ちゃんはいまだウトウトしていた。


「それで。朝から一体何があったんだ」
 布団を畳んで、畳に正座をした炭治郎にそう問われる。
「善逸が任務に行きたいって言うんだもん」
「……そんなことで喧嘩したのか?」
 数秒ほど無音の空気が流れた。
「……炭治郎は善逸が任務に行きたいって言うことに、疑問と恐怖を感じないの?」
「ちょっと?!それはあまりにも酷くない!」
「確かに。それはおかしいな。善逸、どこか具合でも悪いのか?」
「炭治郎まで?!」
 善逸は珍しく大きなため息をついた。
 だって、普段から任務は怖い嫌だ行きたくないと言っている、あの善逸が自分から行きたいと言うのだ。まさか、ついに自害の意味を込めて任務にあたるとか考えていたら……。
「ああもう。もういいよ。俺は今日の任務いかない」
「それはダメだぞ善逸」
「どーすりゃいいんだよ俺はッ」
 私はせめてもの抵抗に、善逸の羽織の端を掴んだ。
「……嫌な予感がするから、行ってほしくない」
 善逸は一瞬怯んでから、私の手に両手を重ねて再び口を開いた。
「約束まであと少しなんだ。あと鬼を一人倒せば、結婚を許してくれるんだろ」
 その声は至極真面目で、彼の低い声は心に響いた。
「……それは……誰との約束?」
「貴女ですけどオ?!」
「すまないが二人とも、痴話喧嘩なら自室でやってくれ。禰豆子の教育に悪い」
「ちょ、炭治郎、見捨てないで!私そんな話ししてたっけ!炭治郎!」
「仮にも恋人の前で他の男を頼らないでくれる?!」
 禰豆子ちゃんは堪えきれなかったのか、再びぽすんと横になって寝てしまった。
 私たちの一日は始まったばかりだった。
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