Short Story
「死が怖い、と」
鶴丸が私の発した言葉を反芻した。
夜が近づくと死への恐怖が増す。
このまま目が覚めず、死んだらどうしよう、と。
私は布団に仰向けで寝たまま、頭だけを枕元に座る彼の方へ向けた。
「鶴丸はこういう人間を何人も見てきたんだしょう?」
私を見下ろす目が微かに伏せられた。
「きみ、こういう話題は止そう。驚きも楽しみもない」
それもそうね、と答えて私は目を瞑った。
しっかりと息を吸って、吐く。
「……いい香りだね」
「もっと近くで嗅ぐかい?」
いたずらっぽく言う鶴丸が掛け布団に手を置いた。
「きみが許すなら、俺はもっときみの近くにいたい。朝まで、いや次の夜がきて、もう来ない朝を迎えるその時まで」
私は目を閉じたまま頷いた。
「さあ、安心して眠れ。俺はいつまでもここにいるし、どこまでもついていくからな」
その言葉を聞いて、私はもう一度大きく息を吸って、ゆっくりと吐いた。
体中が彼の香りに満たされる気がした。