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Short Story

「はーうざいうざい五月蠅いどうでもいい」

 本丸に帰り、執務室に入ると近侍の鶴丸国永が机の前に筆をもって座っていた。

「どうした、随分とご乱心だな」
「人間関係が面倒なことになってるの」
「ほお……」

 カタン、と筆を置きこちらを向く。

「まあ私は関係ない……こともないけど、そんな気にしてないのに、というか私は飛び火くらってるだけだな!」

 私は鶴丸の隣に敷かれたもう一枚の座布団に腰を卸した。

「まあまあ」

 そういって彼は私にいきなり抱きついてきた。
 私の心の中の真っ黒さとは正反対に、ふわふわで真っ白。

「これで少しは落ち着けるかい?」

 私はぐうの音もでない。彼の背中に腕を回した。

「きみの大好きなものに包まれているんだ、幸せだろう」
「自信満々ね」
「それくらい愛されている自信があるからな」
「異論はない」
「それで、俺はきみを困らせる輩の首を取ってくればいいのかい?」

 彼の声は極めて冷静だった。
 うん。と一言頷けば、きっと明日その人の姿を見ることはないだろう。

「首なんていらない」
「きみは優しいんだなあ」

 私の背中をぽんぽんと優しく叩かれ、宥められる。
 焚き染められた白檀の香の香りが心地良い。

「落ち着くまでこうしていようか」
「……うん」
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