最強男とのボンボヤージュ(牛山夢)
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気付くと土の天上が見えた。
先程まで正門にいたのに、どうして土の中に?
「お。目覚めたかい」
「!」
倒れる直前まで一緒にいた男が顔を覗き込んできた。一瞬びっくりしたが、彼の顔を見ると心の底から安堵した。また助けてくれたようだ。
「あの、ここは…」
「あぁ、ここは地下室だ。あの後塀の外から次々と大砲が撃ち込まれてな…でも大丈夫だ、外の騒動は終結しているから」
「ありがとうございます、何度も…」
「いや構わん、いつか大人になったら礼してくれ」
「?」
そう言うと彼は朗らかな笑顔を見せた。大人になったら礼の意味は分からなかったが、彼の笑顔は存外可愛らしく、思わず私も笑顔になった。
「お、笑ったな。いいじゃないか、やっぱりあんたは美人になる!」
意外とおちゃめな人なのかもしれない。
「牛山」
「あ」
彼の背中越しに白髪のお爺さんがこちらを覗いてきた。お爺さん、と形容したもののその眼光は鋭くまた出立からして普通の人間ではないことが分かった。私が軽く息を飲むと、そのお爺さんは私を一眼した後、存外柔和な微笑みを浮かべた。
「お嬢さん、単刀直入に聞こう。お嬢さんの叔父はこの網走監獄の犬童典獄で合っているかな?」
「……はい」
「私のことやそこの男のことは見覚えあるか?」
「…いや、無いです」
「ここのことは?」
「地下室、ですか?知りませんでした……なにせ叔父は囚人や看守さえ私と会わないようにしているようだったので…」
お爺さんは口角を少し上げたまま質問していたが、その目の奥は冷たく、返答一つ間違えることもできない緊張感を感じた。
「……っ」
「フン……どうやら嘘はついていないようだ」
お爺さんがそう言うと、一気に場の雰囲気が緩いだようだった。
部屋の影から色んな人が出てきた。
「信じて大丈夫でしょうか?もっと用心した方がいいのでは?拷問はぜひ私に任せてください」
「おい家永、この子を食いたいだけだろ」
「犬童典獄は私へ固執していたが、規律の鬼と呼ばれるほど規律に厳しい面もある。例え姪だとしても部外者へ一つも情報を漏らす事は無かったのだろう」
こんな狭い地下室に、こんなに人がいたのか。全員血まみれで、こんな所では治療も追いついていないようだった。みな仲間のようだが、同じように外から逃げてきたのだろうか。
「しかし、いずれにしてもこの子はこの騒動を知ってしまった。第7師団に見つかってしまえば……」
「…犬童の姪だ」
「まさか見捨てるつもりですか?連れていけばいい。せっかく美人になるんだから」
「牛山様はそればかりですね」
「いいや、永倉。姪だからこそ……」
「………」
そのお爺さんは私に近寄り、身を屈めて手を引いた。
「見てもらいたいものがある」
少しフラつきつつ、着いていくと、何かの図が書かれた壁の前に立たされた。そしてその壁には、横にいるお爺さんの写真が、大きく飾ってあった。
「お爺さんと叔父は知り合いだったんですか?」
「知り合い……まぁそうだな。長い付き合いだった。毎日のように顔を合わせていたのに、お嬢さんの叔父はこんな地下室に私の写真を飾っていたようだな」
「仲が良かったんですね」
「……フ、そうとも取れるか」
お爺さんが手を伸ばし、写真の中の自分の顔の輪郭をなぞった。私はその仕草を横から覗き、お爺さんが目を細めたのを見た。
「しかし犬童典獄はこの騒動で命を落としてしまった」
「えっ………!」
まさか叔父が亡くなってしまった?極悪人の囚人さえ従えてしまうあの犬童典獄が?
少しも信じられなかったが、お爺さんは目を伏せて続けた。
「この騒動を起こした犯人、陸軍第7師団は網走監獄を皆殺しにし、目撃者を消し去ることで騒動の証拠隠滅を謀るつもりだ。お嬢さんは不運にも巻き込まれてしまい、その目撃者になってしまった」
陸軍第7師団という聞き慣れない言葉が出てきたが、どうやら命を狙われる立場ということは分かった。
しかしやはり、叔父が亡くなり自分の命が狙われる急展開を、どこか他人事のように感じていた。
「お嬢さん、用心棒を付ける手立てはあるか?犬童の親戚であれば、金はあるだろうが…」
「あ……いえ、うちは分家なので……」
「それでは、命を狙われ続ける生活は大変そうだな」
「はい……」
命を狙われる実感が無いため、生返事をしてしまう。その様子に軽く息を吐いたお爺さんは、写真の一点をトンと指差した。その仕草は少し傲慢で、なぜだか従わざるを得ない気持ちになった。そこには名前が書いてあった。
「これも何かの縁だ。私たちに着いてきなさい」
文字の羅列を目でなぞった瞬間、私は硬直した。
「私は土方歳三だ」
#1
ー血塗られた人生の転機ー
「お嬢ちゃん、親は心配するだろうが…」
「あ、や、私成人してます」
「!?」
先程まで正門にいたのに、どうして土の中に?
「お。目覚めたかい」
「!」
倒れる直前まで一緒にいた男が顔を覗き込んできた。一瞬びっくりしたが、彼の顔を見ると心の底から安堵した。また助けてくれたようだ。
「あの、ここは…」
「あぁ、ここは地下室だ。あの後塀の外から次々と大砲が撃ち込まれてな…でも大丈夫だ、外の騒動は終結しているから」
「ありがとうございます、何度も…」
「いや構わん、いつか大人になったら礼してくれ」
「?」
そう言うと彼は朗らかな笑顔を見せた。大人になったら礼の意味は分からなかったが、彼の笑顔は存外可愛らしく、思わず私も笑顔になった。
「お、笑ったな。いいじゃないか、やっぱりあんたは美人になる!」
意外とおちゃめな人なのかもしれない。
「牛山」
「あ」
彼の背中越しに白髪のお爺さんがこちらを覗いてきた。お爺さん、と形容したもののその眼光は鋭くまた出立からして普通の人間ではないことが分かった。私が軽く息を飲むと、そのお爺さんは私を一眼した後、存外柔和な微笑みを浮かべた。
「お嬢さん、単刀直入に聞こう。お嬢さんの叔父はこの網走監獄の犬童典獄で合っているかな?」
「……はい」
「私のことやそこの男のことは見覚えあるか?」
「…いや、無いです」
「ここのことは?」
「地下室、ですか?知りませんでした……なにせ叔父は囚人や看守さえ私と会わないようにしているようだったので…」
お爺さんは口角を少し上げたまま質問していたが、その目の奥は冷たく、返答一つ間違えることもできない緊張感を感じた。
「……っ」
「フン……どうやら嘘はついていないようだ」
お爺さんがそう言うと、一気に場の雰囲気が緩いだようだった。
部屋の影から色んな人が出てきた。
「信じて大丈夫でしょうか?もっと用心した方がいいのでは?拷問はぜひ私に任せてください」
「おい家永、この子を食いたいだけだろ」
「犬童典獄は私へ固執していたが、規律の鬼と呼ばれるほど規律に厳しい面もある。例え姪だとしても部外者へ一つも情報を漏らす事は無かったのだろう」
こんな狭い地下室に、こんなに人がいたのか。全員血まみれで、こんな所では治療も追いついていないようだった。みな仲間のようだが、同じように外から逃げてきたのだろうか。
「しかし、いずれにしてもこの子はこの騒動を知ってしまった。第7師団に見つかってしまえば……」
「…犬童の姪だ」
「まさか見捨てるつもりですか?連れていけばいい。せっかく美人になるんだから」
「牛山様はそればかりですね」
「いいや、永倉。姪だからこそ……」
「………」
そのお爺さんは私に近寄り、身を屈めて手を引いた。
「見てもらいたいものがある」
少しフラつきつつ、着いていくと、何かの図が書かれた壁の前に立たされた。そしてその壁には、横にいるお爺さんの写真が、大きく飾ってあった。
「お爺さんと叔父は知り合いだったんですか?」
「知り合い……まぁそうだな。長い付き合いだった。毎日のように顔を合わせていたのに、お嬢さんの叔父はこんな地下室に私の写真を飾っていたようだな」
「仲が良かったんですね」
「……フ、そうとも取れるか」
お爺さんが手を伸ばし、写真の中の自分の顔の輪郭をなぞった。私はその仕草を横から覗き、お爺さんが目を細めたのを見た。
「しかし犬童典獄はこの騒動で命を落としてしまった」
「えっ………!」
まさか叔父が亡くなってしまった?極悪人の囚人さえ従えてしまうあの犬童典獄が?
少しも信じられなかったが、お爺さんは目を伏せて続けた。
「この騒動を起こした犯人、陸軍第7師団は網走監獄を皆殺しにし、目撃者を消し去ることで騒動の証拠隠滅を謀るつもりだ。お嬢さんは不運にも巻き込まれてしまい、その目撃者になってしまった」
陸軍第7師団という聞き慣れない言葉が出てきたが、どうやら命を狙われる立場ということは分かった。
しかしやはり、叔父が亡くなり自分の命が狙われる急展開を、どこか他人事のように感じていた。
「お嬢さん、用心棒を付ける手立てはあるか?犬童の親戚であれば、金はあるだろうが…」
「あ……いえ、うちは分家なので……」
「それでは、命を狙われ続ける生活は大変そうだな」
「はい……」
命を狙われる実感が無いため、生返事をしてしまう。その様子に軽く息を吐いたお爺さんは、写真の一点をトンと指差した。その仕草は少し傲慢で、なぜだか従わざるを得ない気持ちになった。そこには名前が書いてあった。
「これも何かの縁だ。私たちに着いてきなさい」
文字の羅列を目でなぞった瞬間、私は硬直した。
「私は土方歳三だ」
#1
ー血塗られた人生の転機ー
「お嬢ちゃん、親は心配するだろうが…」
「あ、や、私成人してます」
「!?」
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