山川宇衣
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山川宇衣にとって、ゆめはいつだって少し先を歩く人だった。
幼なじみのふたりの年齢差はふたつ。
宇衣が小学校に上がる頃、ゆめはもう三年生。
宇衣が中学生になってやっと同じ校舎に通える!と胸を躍らせたのも束の間、翌年にはゆめが卒業してしまう。
高校でも同じことを繰り返した。
追いつけたと思った瞬間に、また離れていってしまう。
その絶妙な距離感が、子どもの頃からずっともどかしかった。
そして今、ゆめは地元の宮城を離れて東京の大学に通っている。
高校三年の夏、久しぶりに帰省したゆめと地元のカフェで会ったときのことだ。
ゆめ「ういはどこの大学に行くか決まったの〜?」
ストローでアイスラテをかき混ぜながら、ゆめが何気なく尋ねてきた。
うい「うーん……まだ決まってないかな」
ういは手元のグラスに視線を落とし、すまし顔で答える。
だけど内心では、心臓が跳ね上がっていた。
うい(本当は、もうずっと前から決めてる。……ゆめと同じ大学に行くんだから!)
もちろん、そんな本音は口が裂けても言えない。
サプライズにして驚かせたいという気持ちと、もし落ちたら恥ずかしいという気持ちがあったからだ。
ゆめ「まぁ、ういの学力ならどこでもいけるか〜」
うい「いやいや、そんなことないよ」
宇衣は控えめに微笑んだが、その裏でどれほど受験勉強に打ち込んできたか、ゆめは知る由もない。
2歳年上のゆめの後ろ姿を追いかけて、勉強もずっと頑張ってきたのだから。
季節は巡り、春。
無事に志望校。
つまりゆめの通う東京の大学の合格通知を受け取った宇衣は、行き先の大学をゆめに明かさないままにしておいた。
電話がかかってくるたび、ゆめはわかりやすく不満を漏らしていた。
ゆめ「なんで教えてくれないの!?!」
ゆめ「私とういの仲なのにぃぃい」
受話器の向こうで本気でいじけるゆめの声を聞くたび、宇衣はニヤニヤしそうになる口元を必死で抑えた。
うい「入学式が終わったら教えるから、もうちょっとだけ待ってて」
そう言ってかわし続け、ついに迎えた入学式当日。
桜の舞うキャンパス。
新しいスーツに身を包んだ新入生たちで溢れ返る広場で、ういはスマホを取り出した。
うい:今、大学の中庭にいるんだけど、ちょっと出てこれる?
ゆめ:えっ!? 宮城から東京に出てきてるの!? どこ!? 今すぐ行く!!
数分後、人混みをかき分けるようにして走ってきたゆめの姿が見えた。
少し大人びた私服姿のゆめは、辺りを見回して宇衣を見つけると目を丸くして駆け寄ってくる。
ゆめ「うい! 嘘、本当に東京来てるの!? っていうか、なんでスーツ着て……」
息を切らせながら首をかしげるゆめに向かって、宇衣は胸を張って鞄から学生証を取り出してみせた。
そこには、ゆめが毎日通っている大学の名称と宇衣の顔写真がしっかりと印字されている。
うい「ふふ。今日から後輩になりました、山川宇衣です」
ゆめ「え……えええええっ!?!? 嘘でしょ! ここ!? 私と同じ大学!?」
うい「嘘じゃないよ。ずっと秘密にしててごめんね」
ゆめは口ぐせのように開けたまま、手元の学生証と宇衣の顔を何度も往復して見つめた。
やがて、その驚きは大きな笑顔へと変わる。
ゆめ「な〜んだよそれ!! だからあんなに意地悪して教えてくれなかったの!?」
うい「びっくりした?」
ゆめ「びっくりしたどころじゃないよ! もう、最高に嬉しい……っ!」
そう言うやいなや、ゆめは周りの目も気にせず宇衣の身体をギュッと抱きしめた。
ほんのりと香る、ゆめの優しい匂い。
東京の春風の中で、宇衣の胸はキュッと締め付けられる。
うい「……ゆめ、苦しいよ」
ゆめ「ういが意地悪するからでしょ! でも……ほんとに頑張ったんだね。すごいよ、うい」
耳元で囁かれた言葉に、宇衣の頬がカッと熱くなった。
小・中・高と、追いついたと思ったらすぐに離れていってしまった2年の月日。
だけど、大学の4年間は違う。
ゆめが卒業するまでの2年間、ふたりは同じキャンパスで、同じ時間を過ごすことができるのだ。
うい「……ずっと、追いつきたかったんだよ」
ゆめ「え?」
腕の中でボソッと呟いた言葉に、ゆめが身体を離して首を傾げる。
うい「なんでもない! これからは毎日キャンパスで会えるんだから、覚悟してね」
ゆめ「ふふ、望むところだよ。よし、じゃあ先輩として、キャンパス案内と美味しいランチごちそうしてあげる!」
嬉しそうにういの手を引いて歩き出すゆめ。
繋がれた手のひらから伝わる温もりが、宇衣にはたまらなく愛おしかった。
もう、離れたりしない。
追いついたこの場所から、ふたりの新しい物語が始まっていく。
幼なじみのふたりの年齢差はふたつ。
宇衣が小学校に上がる頃、ゆめはもう三年生。
宇衣が中学生になってやっと同じ校舎に通える!と胸を躍らせたのも束の間、翌年にはゆめが卒業してしまう。
高校でも同じことを繰り返した。
追いつけたと思った瞬間に、また離れていってしまう。
その絶妙な距離感が、子どもの頃からずっともどかしかった。
そして今、ゆめは地元の宮城を離れて東京の大学に通っている。
高校三年の夏、久しぶりに帰省したゆめと地元のカフェで会ったときのことだ。
ゆめ「ういはどこの大学に行くか決まったの〜?」
ストローでアイスラテをかき混ぜながら、ゆめが何気なく尋ねてきた。
うい「うーん……まだ決まってないかな」
ういは手元のグラスに視線を落とし、すまし顔で答える。
だけど内心では、心臓が跳ね上がっていた。
うい(本当は、もうずっと前から決めてる。……ゆめと同じ大学に行くんだから!)
もちろん、そんな本音は口が裂けても言えない。
サプライズにして驚かせたいという気持ちと、もし落ちたら恥ずかしいという気持ちがあったからだ。
ゆめ「まぁ、ういの学力ならどこでもいけるか〜」
うい「いやいや、そんなことないよ」
宇衣は控えめに微笑んだが、その裏でどれほど受験勉強に打ち込んできたか、ゆめは知る由もない。
2歳年上のゆめの後ろ姿を追いかけて、勉強もずっと頑張ってきたのだから。
季節は巡り、春。
無事に志望校。
つまりゆめの通う東京の大学の合格通知を受け取った宇衣は、行き先の大学をゆめに明かさないままにしておいた。
電話がかかってくるたび、ゆめはわかりやすく不満を漏らしていた。
ゆめ「なんで教えてくれないの!?!」
ゆめ「私とういの仲なのにぃぃい」
受話器の向こうで本気でいじけるゆめの声を聞くたび、宇衣はニヤニヤしそうになる口元を必死で抑えた。
うい「入学式が終わったら教えるから、もうちょっとだけ待ってて」
そう言ってかわし続け、ついに迎えた入学式当日。
桜の舞うキャンパス。
新しいスーツに身を包んだ新入生たちで溢れ返る広場で、ういはスマホを取り出した。
うい:今、大学の中庭にいるんだけど、ちょっと出てこれる?
ゆめ:えっ!? 宮城から東京に出てきてるの!? どこ!? 今すぐ行く!!
数分後、人混みをかき分けるようにして走ってきたゆめの姿が見えた。
少し大人びた私服姿のゆめは、辺りを見回して宇衣を見つけると目を丸くして駆け寄ってくる。
ゆめ「うい! 嘘、本当に東京来てるの!? っていうか、なんでスーツ着て……」
息を切らせながら首をかしげるゆめに向かって、宇衣は胸を張って鞄から学生証を取り出してみせた。
そこには、ゆめが毎日通っている大学の名称と宇衣の顔写真がしっかりと印字されている。
うい「ふふ。今日から後輩になりました、山川宇衣です」
ゆめ「え……えええええっ!?!? 嘘でしょ! ここ!? 私と同じ大学!?」
うい「嘘じゃないよ。ずっと秘密にしててごめんね」
ゆめは口ぐせのように開けたまま、手元の学生証と宇衣の顔を何度も往復して見つめた。
やがて、その驚きは大きな笑顔へと変わる。
ゆめ「な〜んだよそれ!! だからあんなに意地悪して教えてくれなかったの!?」
うい「びっくりした?」
ゆめ「びっくりしたどころじゃないよ! もう、最高に嬉しい……っ!」
そう言うやいなや、ゆめは周りの目も気にせず宇衣の身体をギュッと抱きしめた。
ほんのりと香る、ゆめの優しい匂い。
東京の春風の中で、宇衣の胸はキュッと締め付けられる。
うい「……ゆめ、苦しいよ」
ゆめ「ういが意地悪するからでしょ! でも……ほんとに頑張ったんだね。すごいよ、うい」
耳元で囁かれた言葉に、宇衣の頬がカッと熱くなった。
小・中・高と、追いついたと思ったらすぐに離れていってしまった2年の月日。
だけど、大学の4年間は違う。
ゆめが卒業するまでの2年間、ふたりは同じキャンパスで、同じ時間を過ごすことができるのだ。
うい「……ずっと、追いつきたかったんだよ」
ゆめ「え?」
腕の中でボソッと呟いた言葉に、ゆめが身体を離して首を傾げる。
うい「なんでもない! これからは毎日キャンパスで会えるんだから、覚悟してね」
ゆめ「ふふ、望むところだよ。よし、じゃあ先輩として、キャンパス案内と美味しいランチごちそうしてあげる!」
嬉しそうにういの手を引いて歩き出すゆめ。
繋がれた手のひらから伝わる温もりが、宇衣にはたまらなく愛おしかった。
もう、離れたりしない。
追いついたこの場所から、ふたりの新しい物語が始まっていく。
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