長編
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春。
東京ドームを囲む櫻は満開を迎え、その花びらが風に舞う中、開演を告げる「Overture」が鳴り響いた。
地響きのようなコール。
数万本のスティックライトが櫻色に染まり、巨大な光の海を作っている。
その舞台裏、メインステージへと続く階段の下で、ゆめは暗闇の中に立っていた。
ゆめ「………………」
心臓の音がうるさい。
衣装の袖を握りしめる指が、微かに震えている。けれど、その震えは孤独から来るものではなかった。
まつだ「……大丈夫。ゆめちゃんなら、できる」
背後から松田里奈が、そっとゆめの背中に手を置いた。
続いて、三期生の面々が、二期生の先輩たちが、一人、また一人とゆめの肩や背中に手を重ねていく。
ひかる「……いってらっしゃい。最高の景色、見に行こう」
森田ひかるが力強く頷く。
その瞬間、せり上がるステージが動き出した。
光の中に飛び出した瞬間、ゆめの視界を埋め尽くしたのは、圧倒的な「肯定」の光だった。
自分の過去を知り、傷を知り、それでもここにいてほしいと願うBuddiesの叫び。
ゆめ「……っ!」
一曲目、二曲目と進むにつれ、ゆめの身体から余計な力が抜けていった。
指先の一つ一つの動きに、かつての孤独を、そして今の幸せを乗せていく。
彼女が踊るたび、その軌跡に櫻の花びらが舞っているような錯覚を覚えるほど、その表現は凄絶で、美しかった。
そして、ついにその時が来た。
本編ラスト、新曲「愛を綴る」。
静寂の中、ピアノの旋律が流れ出す。
センターに一人立つゆめに、真っ白なスポットライトが落ちる。
ゆめ(……わたしは、だれにも、あいされないとおもっていました)
心の声が、歌声となって解き放たれる。
ひらがなでしか綴れなかった幼い感情が、研ぎ澄まされた大人の言葉となって、ドームの隅々まで染み渡っていく。
サビ。
メンバーたちがゆめを突き放し、彼女が一人で舞台の端へと追い詰められる。
けれど、彼女はもう泣かなかった。
彼女は力強く、自らの足でセンターへと戻り、両手を大きく広げた。
ゆめ「……みんな、だいすきだーーー!」
歌詞にはない、彼女自身の魂の叫び。
その瞬間、後ろにいた全メンバーが、ゆめの元へと駆け寄り、彼女を包み込むようにして一つの大きな輪を作った。
客席からは、割れんばかりの拍手と、嗚咽に近い歓声が上がる。
ゆめの頬を、涙が伝う。
それは、悲しみでも、恐怖でもない。
「自分は、ここにいてもいいんだ」という、生への確信の涙だった。
最後の音が消え、ドームに静寂が戻った時。
ゆめは深く、長く、客席に向かって頭を下げた。
ゆめ「……ありがとうございました。……わたし、いま、とっても、しあわせです」
マイクを通さずに叫んだその言葉は、確かに、そこにいたすべての人の心に届いた。
東京ドームを囲む櫻は満開を迎え、その花びらが風に舞う中、開演を告げる「Overture」が鳴り響いた。
地響きのようなコール。
数万本のスティックライトが櫻色に染まり、巨大な光の海を作っている。
その舞台裏、メインステージへと続く階段の下で、ゆめは暗闇の中に立っていた。
ゆめ「………………」
心臓の音がうるさい。
衣装の袖を握りしめる指が、微かに震えている。けれど、その震えは孤独から来るものではなかった。
まつだ「……大丈夫。ゆめちゃんなら、できる」
背後から松田里奈が、そっとゆめの背中に手を置いた。
続いて、三期生の面々が、二期生の先輩たちが、一人、また一人とゆめの肩や背中に手を重ねていく。
ひかる「……いってらっしゃい。最高の景色、見に行こう」
森田ひかるが力強く頷く。
その瞬間、せり上がるステージが動き出した。
光の中に飛び出した瞬間、ゆめの視界を埋め尽くしたのは、圧倒的な「肯定」の光だった。
自分の過去を知り、傷を知り、それでもここにいてほしいと願うBuddiesの叫び。
ゆめ「……っ!」
一曲目、二曲目と進むにつれ、ゆめの身体から余計な力が抜けていった。
指先の一つ一つの動きに、かつての孤独を、そして今の幸せを乗せていく。
彼女が踊るたび、その軌跡に櫻の花びらが舞っているような錯覚を覚えるほど、その表現は凄絶で、美しかった。
そして、ついにその時が来た。
本編ラスト、新曲「愛を綴る」。
静寂の中、ピアノの旋律が流れ出す。
センターに一人立つゆめに、真っ白なスポットライトが落ちる。
ゆめ(……わたしは、だれにも、あいされないとおもっていました)
心の声が、歌声となって解き放たれる。
ひらがなでしか綴れなかった幼い感情が、研ぎ澄まされた大人の言葉となって、ドームの隅々まで染み渡っていく。
サビ。
メンバーたちがゆめを突き放し、彼女が一人で舞台の端へと追い詰められる。
けれど、彼女はもう泣かなかった。
彼女は力強く、自らの足でセンターへと戻り、両手を大きく広げた。
ゆめ「……みんな、だいすきだーーー!」
歌詞にはない、彼女自身の魂の叫び。
その瞬間、後ろにいた全メンバーが、ゆめの元へと駆け寄り、彼女を包み込むようにして一つの大きな輪を作った。
客席からは、割れんばかりの拍手と、嗚咽に近い歓声が上がる。
ゆめの頬を、涙が伝う。
それは、悲しみでも、恐怖でもない。
「自分は、ここにいてもいいんだ」という、生への確信の涙だった。
最後の音が消え、ドームに静寂が戻った時。
ゆめは深く、長く、客席に向かって頭を下げた。
ゆめ「……ありがとうございました。……わたし、いま、とっても、しあわせです」
マイクを通さずに叫んだその言葉は、確かに、そこにいたすべての人の心に届いた。