長編
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文化祭二日目の夜。
校舎は静かで、昼のざわめきが嘘みたいだった。
向井純葉は、片付け途中の教室で椅子を整えながら、ふと昼間のことを思い出す。
——文化祭を、一緒に回った。
昼。
男装カフェのシフトが終わったあと。
てん「……少しだけなら」
その言葉に、純葉は嬉しそうにしすぎないよう、必死で頷いた。
いとは「うん。」
屋台の列。
人が多くて、肩が何度も触れる。
純葉は、触れないように少し距離を取ろうとして、
それでも天が一歩詰めてきたことに、心臓が跳ねた。
てん「はぐれたら困るでしょ」
それだけの理由なのに、指先が近い。
焼きそばを半分こして、
甘すぎるチョコバナナに顔をしかめて。
いとは「甘っ」
てん「文句言いながら食べてるじゃん」
笑い合う。
ただそれだけなのに、「特別」って言葉が、ずっと喉に引っかかっていた。
写真を撮るか、迷った。
いとは「……撮る?」
天は一瞬考えてから、首を振った。
てん「今日は、覚えてたい」
純葉は、何も言わずに頷いた。
——だからこそ。
夜の教室に戻る。
天は窓際に立ったまま、動かない。
いとは「てんちゃん」
てん「なに?」
いとは「今日、楽しかったね」
天は、少しだけ笑った。
てん「……うん」
でも、その声はどこか慎重だった。
てん「壊したくないんだよ」
いとは「なにを?」
てん「この関係」
てん「昼みたいな時間が、なくなるのが怖い」
純葉は、一歩近づく。
いとは「私ね、壊れるのも怖いけど」
いとは「何も言わずに、終わる方がもっと怖い」
てん「……いとははさ」
てん「私が一歩引いてるの、気づいてた?」
いとは「うん」
てん「それでも来たよね」
いとは「うん」
迷いはなかった。
てん「好きになると、全部変わっちゃいそうで怖い」
いとは「じゃあさ」
てん「?」
いとは「変えなくていい形で、一緒にいよ」
いとは「無理に進まなくていい。でも、止まらなくてもいい」
天は、ゆっくり息を吐いた。
てん「……それ、ずるい」
いとは「ごめん」
てん「いや」
天は、ほんの少しだけ近づく。
てん「ありがとう」
夜風が、カーテンを揺らす。
壊さないために、離れるんじゃなくて。
壊さないために、少しだけ前に進む。
二人は、まだ言葉にしないまま、
同じ方向を見ていた。
校舎は静かで、昼のざわめきが嘘みたいだった。
向井純葉は、片付け途中の教室で椅子を整えながら、ふと昼間のことを思い出す。
——文化祭を、一緒に回った。
昼。
男装カフェのシフトが終わったあと。
てん「……少しだけなら」
その言葉に、純葉は嬉しそうにしすぎないよう、必死で頷いた。
いとは「うん。」
屋台の列。
人が多くて、肩が何度も触れる。
純葉は、触れないように少し距離を取ろうとして、
それでも天が一歩詰めてきたことに、心臓が跳ねた。
てん「はぐれたら困るでしょ」
それだけの理由なのに、指先が近い。
焼きそばを半分こして、
甘すぎるチョコバナナに顔をしかめて。
いとは「甘っ」
てん「文句言いながら食べてるじゃん」
笑い合う。
ただそれだけなのに、「特別」って言葉が、ずっと喉に引っかかっていた。
写真を撮るか、迷った。
いとは「……撮る?」
天は一瞬考えてから、首を振った。
てん「今日は、覚えてたい」
純葉は、何も言わずに頷いた。
——だからこそ。
夜の教室に戻る。
天は窓際に立ったまま、動かない。
いとは「てんちゃん」
てん「なに?」
いとは「今日、楽しかったね」
天は、少しだけ笑った。
てん「……うん」
でも、その声はどこか慎重だった。
てん「壊したくないんだよ」
いとは「なにを?」
てん「この関係」
てん「昼みたいな時間が、なくなるのが怖い」
純葉は、一歩近づく。
いとは「私ね、壊れるのも怖いけど」
いとは「何も言わずに、終わる方がもっと怖い」
てん「……いとははさ」
てん「私が一歩引いてるの、気づいてた?」
いとは「うん」
てん「それでも来たよね」
いとは「うん」
迷いはなかった。
てん「好きになると、全部変わっちゃいそうで怖い」
いとは「じゃあさ」
てん「?」
いとは「変えなくていい形で、一緒にいよ」
いとは「無理に進まなくていい。でも、止まらなくてもいい」
天は、ゆっくり息を吐いた。
てん「……それ、ずるい」
いとは「ごめん」
てん「いや」
天は、ほんの少しだけ近づく。
てん「ありがとう」
夜風が、カーテンを揺らす。
壊さないために、離れるんじゃなくて。
壊さないために、少しだけ前に進む。
二人は、まだ言葉にしないまま、
同じ方向を見ていた。