長編
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文化祭二日目の夕方。
中庭は人が少なく、少し冷たい風が吹いていた。
的野美青は、ベンチに座って空を見ていた。
男装のまま、ネクタイを緩めている。
みお(……楽なんだよな)
男装していると
強くいられる。
迷わず話せる。
好きな気持ちも、隠さなくていい。
でも——
みお(これ、本当の私じゃない)
りか「みおちゃん」
声をかけたのは、石森璃花だった。
みお「……りか」
璃花は隣に座る。
りか「ここ、静かでいいね」
みお「うん」
短い返事。
それ以上、言葉が続かない。
りか「ねぇみおちゃん」
みお「なに」
璃花は少し考えてから言った。
りか「今日のみおちゃん男装してるとすごく堂々としてる」
美青の指が、ネクタイに触れる。
みお「……そう見える?」
りか「うん。正直、かっこいいって思った」
胸がちくっと痛む。
みお(まただ)
みお「……それさ」
りか「?」
みお「私、男装してる時だけちゃんと話せてる気がする」
璃花は黙って聞く。
みお「普段の私は、自信なくて、言いたいことも言えなくて」
みお「でも今は、“みおくん”だから言える」
りか「……じゃあ」
少し不安そうに聞く。
りか「この時間が終わったら、そのみおちゃんはいなくなるの?」
美青は、答えられなかった。
沈黙が、肯定になってしまう。
りか「私ね」
声が震える。
りか「思っちゃったんだ。このまま“みおくん”でいてほしいって」
美青の胸が締めつけられる。
みお「……」
りか「言ったあとで分かった。それって、本当の美青ちゃんを否定してるみたいだって」
璃花は俯く。
りか「ごめんね」
みお「謝らないで」
ゆっくり言う。
みお「それ、嬉しかった」
りか「……え?」
みお「私を、“なりたい姿”として見てくれたって思ったから」
一拍置いて。
みお「でもさ」
声が弱くなる。
みお「そのままだと、戻れなくなる」
りか「戻れなくなる?」
美青はネクタイをつまむ。
みお「この姿に頼って、本当の自分を置いていきそうで」
璃花は、少し考えてから言った。
りか「じゃあ……外してみよ」
みお「……今?」
りか「うん。今じゃないと、ちゃんと話せない気がする」
少しの間のあと、美青はうなずいた。
ネクタイを外す。
ジャケットを脱ぐ。
いつもの制服姿の、美青。
みお「……ほら」
苦笑する。
みお「急に、弱くなる」
璃花は首を振る。
りか「弱いんじゃないよ」
一歩近づく。
りか「こっちのみおちゃんの方が、ちゃんと伝わる」
みお「……伝わる?」
りか「うん」
りか「強がってないし、無理してない」
りか「そのままのみおちゃんが、好き」
美青の目が揺れる。
みお「……私さ男装してないと、好きって言えないと思ってた」
りか「今は?」
美青は、真っ直ぐ見る。
みお「今は言える」
一歩、近づく。
みお「りかが好き」
りか「……うん」
りか「私も、みおちゃんが好き」
文化祭は、いずれ終わる。
男装も、仮面も、外れる。
それでも——
仮面の下にあった気持ちは、一番本物だった。
中庭は人が少なく、少し冷たい風が吹いていた。
的野美青は、ベンチに座って空を見ていた。
男装のまま、ネクタイを緩めている。
みお(……楽なんだよな)
男装していると
強くいられる。
迷わず話せる。
好きな気持ちも、隠さなくていい。
でも——
みお(これ、本当の私じゃない)
りか「みおちゃん」
声をかけたのは、石森璃花だった。
みお「……りか」
璃花は隣に座る。
りか「ここ、静かでいいね」
みお「うん」
短い返事。
それ以上、言葉が続かない。
りか「ねぇみおちゃん」
みお「なに」
璃花は少し考えてから言った。
りか「今日のみおちゃん男装してるとすごく堂々としてる」
美青の指が、ネクタイに触れる。
みお「……そう見える?」
りか「うん。正直、かっこいいって思った」
胸がちくっと痛む。
みお(まただ)
みお「……それさ」
りか「?」
みお「私、男装してる時だけちゃんと話せてる気がする」
璃花は黙って聞く。
みお「普段の私は、自信なくて、言いたいことも言えなくて」
みお「でも今は、“みおくん”だから言える」
りか「……じゃあ」
少し不安そうに聞く。
りか「この時間が終わったら、そのみおちゃんはいなくなるの?」
美青は、答えられなかった。
沈黙が、肯定になってしまう。
りか「私ね」
声が震える。
りか「思っちゃったんだ。このまま“みおくん”でいてほしいって」
美青の胸が締めつけられる。
みお「……」
りか「言ったあとで分かった。それって、本当の美青ちゃんを否定してるみたいだって」
璃花は俯く。
りか「ごめんね」
みお「謝らないで」
ゆっくり言う。
みお「それ、嬉しかった」
りか「……え?」
みお「私を、“なりたい姿”として見てくれたって思ったから」
一拍置いて。
みお「でもさ」
声が弱くなる。
みお「そのままだと、戻れなくなる」
りか「戻れなくなる?」
美青はネクタイをつまむ。
みお「この姿に頼って、本当の自分を置いていきそうで」
璃花は、少し考えてから言った。
りか「じゃあ……外してみよ」
みお「……今?」
りか「うん。今じゃないと、ちゃんと話せない気がする」
少しの間のあと、美青はうなずいた。
ネクタイを外す。
ジャケットを脱ぐ。
いつもの制服姿の、美青。
みお「……ほら」
苦笑する。
みお「急に、弱くなる」
璃花は首を振る。
りか「弱いんじゃないよ」
一歩近づく。
りか「こっちのみおちゃんの方が、ちゃんと伝わる」
みお「……伝わる?」
りか「うん」
りか「強がってないし、無理してない」
りか「そのままのみおちゃんが、好き」
美青の目が揺れる。
みお「……私さ男装してないと、好きって言えないと思ってた」
りか「今は?」
美青は、真っ直ぐ見る。
みお「今は言える」
一歩、近づく。
みお「りかが好き」
りか「……うん」
りか「私も、みおちゃんが好き」
文化祭は、いずれ終わる。
男装も、仮面も、外れる。
それでも——
仮面の下にあった気持ちは、一番本物だった。