長編
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文化祭二日目の午後。
男装カフェは人が途切れず、教室の中は熱気に包まれていた。
藤吉夏鈴は、必要最低限の動きしかしなかった。
かりん「……いらっしゃいませ」
かりん「……こちらへどうぞ」
声は低く、表情は動かない。
それが“意識してやっている”ことだと、ほとんどの人は気づかない。
——守屋麗奈を除いて。
れな(やっぱり、私にだけだ)
昨日からずっと。
夏鈴は麗奈と目を合わせない。
隣に立っても、半歩分の距離を空ける。
「夏鈴くん、クールだね〜」
夏鈴は曖昧に会釈するだけ。
麗奈は、その背中を静かに見ていた。
いとは「ちょっと裏手伝ってくれる?」
れな「うん」
廊下に出た瞬間、胸の奥が少し重くなる。
いとは「かりんちゃん、様子変じゃない?」
れな「……うん。避けられてる」
いとは「それ、しんどくない?」
れな「しんどいよ」
一拍置いて、心の中で続ける。
れな(でも、追わずにはいられない)
フロアに戻ると、夏鈴が一人で水を飲んでいた。
れな「……かりんちゃん」
名前を呼ぶと、夏鈴の肩が一瞬だけ揺れる。
かりん「なに」
短い返事。視線は合わない。
れな「少し、話したい」
かりん「今は——」
れな「今じゃないと、逃げるでしょ」
夏鈴は言葉を詰まらせ、そのまま裏へ向かった。
控室。
ドアが閉まる音が大きく響く。
かりん「……何」
壁にもたれ、天井を見たまま。
れな「ねぇかりんちゃん。私が“追われるの苦手”なの、知ってるよね」
夏鈴の表情が、わずかに変わる。
麗奈は続けた。
れな「強く来られると、距離取りたくなるし。気持ちぶつけられすぎると、関係ごと壊しちゃう」
かりん「……」
れな「なのにさ」
一歩、距離を詰める。
れな「今、私から来てる」
夏鈴の喉が小さく鳴った。
れな「それがどういう意味か、分かる?」
れな「本当は私も怖いよ。追う側になるの」
夏鈴は、初めて麗奈を見る。
れな「でも、かりんちゃんが逃げるの見てたら……何もしない方が、もっと怖くなった」
夏鈴は拳を強く握る。
かりん「……だから来るなって言ってる」
低く、押し殺した声。
かりん「私が、本気になるから」
れな「もう、なってるでしょ」
静かな声。
れな「じゃなきゃ、私もこんなことしない」
夏鈴は目を閉じた。
かりん「……私さ。好きになると、相手の全部守りたくなる」
れな「うん」
かりん「でも、守れる保証なんてない。壊すかもしれない」
だから距離を取った。
だから逃げた。
れな「私はね」
夏鈴の前に立つ。
れな「壊れるかどうかより何も始まらない方が嫌」
真っ直ぐな目。
れな「逃げられる方が、よっぽどつらい」
長い沈黙のあと、夏鈴が息を吐く。
かりん、「……ずるい」
れな「知ってる」
かりん「そんな言い方されたら、逃げられない」
麗奈は、少しだけ笑った。
れな「逃げなくていいよ。今すぐ答え出さなくても」
かりん「……もう避けない」
その一言で、麗奈の胸が少し軽くなる。
ドアの外から声がする。
「夏鈴ー!戻ってー!」
かりん「行こう」
れな「うん」
二人は並んで歩き出した。
まだ恋人じゃない。
でも——
逃げる理由は分かり合って、追う覚悟だけは、もう揃っていた。
男装カフェは人が途切れず、教室の中は熱気に包まれていた。
藤吉夏鈴は、必要最低限の動きしかしなかった。
かりん「……いらっしゃいませ」
かりん「……こちらへどうぞ」
声は低く、表情は動かない。
それが“意識してやっている”ことだと、ほとんどの人は気づかない。
——守屋麗奈を除いて。
れな(やっぱり、私にだけだ)
昨日からずっと。
夏鈴は麗奈と目を合わせない。
隣に立っても、半歩分の距離を空ける。
「夏鈴くん、クールだね〜」
夏鈴は曖昧に会釈するだけ。
麗奈は、その背中を静かに見ていた。
いとは「ちょっと裏手伝ってくれる?」
れな「うん」
廊下に出た瞬間、胸の奥が少し重くなる。
いとは「かりんちゃん、様子変じゃない?」
れな「……うん。避けられてる」
いとは「それ、しんどくない?」
れな「しんどいよ」
一拍置いて、心の中で続ける。
れな(でも、追わずにはいられない)
フロアに戻ると、夏鈴が一人で水を飲んでいた。
れな「……かりんちゃん」
名前を呼ぶと、夏鈴の肩が一瞬だけ揺れる。
かりん「なに」
短い返事。視線は合わない。
れな「少し、話したい」
かりん「今は——」
れな「今じゃないと、逃げるでしょ」
夏鈴は言葉を詰まらせ、そのまま裏へ向かった。
控室。
ドアが閉まる音が大きく響く。
かりん「……何」
壁にもたれ、天井を見たまま。
れな「ねぇかりんちゃん。私が“追われるの苦手”なの、知ってるよね」
夏鈴の表情が、わずかに変わる。
麗奈は続けた。
れな「強く来られると、距離取りたくなるし。気持ちぶつけられすぎると、関係ごと壊しちゃう」
かりん「……」
れな「なのにさ」
一歩、距離を詰める。
れな「今、私から来てる」
夏鈴の喉が小さく鳴った。
れな「それがどういう意味か、分かる?」
れな「本当は私も怖いよ。追う側になるの」
夏鈴は、初めて麗奈を見る。
れな「でも、かりんちゃんが逃げるの見てたら……何もしない方が、もっと怖くなった」
夏鈴は拳を強く握る。
かりん「……だから来るなって言ってる」
低く、押し殺した声。
かりん「私が、本気になるから」
れな「もう、なってるでしょ」
静かな声。
れな「じゃなきゃ、私もこんなことしない」
夏鈴は目を閉じた。
かりん「……私さ。好きになると、相手の全部守りたくなる」
れな「うん」
かりん「でも、守れる保証なんてない。壊すかもしれない」
だから距離を取った。
だから逃げた。
れな「私はね」
夏鈴の前に立つ。
れな「壊れるかどうかより何も始まらない方が嫌」
真っ直ぐな目。
れな「逃げられる方が、よっぽどつらい」
長い沈黙のあと、夏鈴が息を吐く。
かりん、「……ずるい」
れな「知ってる」
かりん「そんな言い方されたら、逃げられない」
麗奈は、少しだけ笑った。
れな「逃げなくていいよ。今すぐ答え出さなくても」
かりん「……もう避けない」
その一言で、麗奈の胸が少し軽くなる。
ドアの外から声がする。
「夏鈴ー!戻ってー!」
かりん「行こう」
れな「うん」
二人は並んで歩き出した。
まだ恋人じゃない。
でも——
逃げる理由は分かり合って、追う覚悟だけは、もう揃っていた。