長編
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最初に言い出したのは、間違いなく自分だった。
いとは「てんちゃんも男装やるでしょ!?」
文化祭の企画会議。
軽い気持ちだった。
背が高くて、雰囲気もある。
似合うのは分かってた。
——でも。
「天くん! こっち向いて!」
「写真一枚だけ!」
廊下に立つ山崎天は、完全に“王子様”だった。
男装用のジャケット。
前髪を分けた額。
柔らかい笑顔。
いとは「……後悔」
思わず、向井純葉は小さく呟く。
いとは(想像の、何倍もダメ)
「いとは?」
隣にいた守屋麗奈が気づく。
れな「どうしたの?」
いとは「……自業自得」
れな「?」
説明する気はなかった。
天の周りに集まる視線。
楽しそうな声。
いとは(なんで、こんなに嫌)
文化祭準備中。
てん「いとは、これお願い」
天が自然に声をかけてくる。
いとは「……はいはい」
近づくと、ふわっと香るシャンプーの匂い。
いとは(距離、近い)
てん「ありがとう」
にこっと笑われる。
いとは(やめて)
心臓がうるさくなる。
いとは「てんちゃんさ」
純葉は、つい聞いてしまう。
いとは「楽しい?」
てん「うん」
即答。
てん「普段より、話しかけられるし」
その言葉に、胸の奥がぎゅっとなる。
いとは「……そっか」
いとは(楽しいんだ)
自分以外と。
男装カフェの接客練習。
てん「いらっしゃいませ、お嬢様」
少し照れながらも、天は完璧に“王子”を演じる。
いとは「……反則」
思わず声に出た。
てん「え?」
いとは「なんでもない!」
慌てて誤魔化す。
てん「いとは、変だよ?」
天は首を傾げる。
てん「今日ずっと」
——分かってる。
自分でも。
いとは「……疲れてるだけ」
また嘘。
休憩時間。
天が誰かに呼ばれて離れる。
その背中を見ながら、純葉は拳を握った。
いとは(取られたくない。でも、そんなこと言えない)
自分が天に“役”を与えた張本人。
いとは「……バカ」
誰にも聞こえない声。
その時。
「いとは」
振り向くと、天が戻ってきていた。
てん「さっきから、元気ない」
真っ直ぐな視線。
てん「……いとはってさ」
一瞬、間を置いて。
てん「私のこと、嫌い?」
——心臓が止まりそうになる。
いとは「は!?」
てん「だって」
天は少し不安そうに笑う。
てん「避けられてる気がして」
いとは(違う。好きだから)
いとは「……嫌いなわけない」
絞り出すように言う。
てん「じゃあ」
天は少しだけ、距離を詰めた。
てん「なんで、そんな顔してるの?」
優しすぎる。
逃げ場がない。
いとは「……てんちゃんが」
そこまで言って、言葉が止まる。
いとは(言ったら、戻れない)
てん「?」
いとは「……なんでもない」
また逃げた。
天はそれ以上追及しなかった。
でも、その背中は少しだけ寂しそうだった。
夜。
スマホに残る、男装した天の写真。
いとは(私が、選んだのに。私が、苦しくなってる)
文化祭当日が近づくにつれ、純葉の後悔は、確信に変わっていく。
——この気持ちは、
“友達”のものじゃない。
そう、認めるしかなかった。
いとは「てんちゃんも男装やるでしょ!?」
文化祭の企画会議。
軽い気持ちだった。
背が高くて、雰囲気もある。
似合うのは分かってた。
——でも。
「天くん! こっち向いて!」
「写真一枚だけ!」
廊下に立つ山崎天は、完全に“王子様”だった。
男装用のジャケット。
前髪を分けた額。
柔らかい笑顔。
いとは「……後悔」
思わず、向井純葉は小さく呟く。
いとは(想像の、何倍もダメ)
「いとは?」
隣にいた守屋麗奈が気づく。
れな「どうしたの?」
いとは「……自業自得」
れな「?」
説明する気はなかった。
天の周りに集まる視線。
楽しそうな声。
いとは(なんで、こんなに嫌)
文化祭準備中。
てん「いとは、これお願い」
天が自然に声をかけてくる。
いとは「……はいはい」
近づくと、ふわっと香るシャンプーの匂い。
いとは(距離、近い)
てん「ありがとう」
にこっと笑われる。
いとは(やめて)
心臓がうるさくなる。
いとは「てんちゃんさ」
純葉は、つい聞いてしまう。
いとは「楽しい?」
てん「うん」
即答。
てん「普段より、話しかけられるし」
その言葉に、胸の奥がぎゅっとなる。
いとは「……そっか」
いとは(楽しいんだ)
自分以外と。
男装カフェの接客練習。
てん「いらっしゃいませ、お嬢様」
少し照れながらも、天は完璧に“王子”を演じる。
いとは「……反則」
思わず声に出た。
てん「え?」
いとは「なんでもない!」
慌てて誤魔化す。
てん「いとは、変だよ?」
天は首を傾げる。
てん「今日ずっと」
——分かってる。
自分でも。
いとは「……疲れてるだけ」
また嘘。
休憩時間。
天が誰かに呼ばれて離れる。
その背中を見ながら、純葉は拳を握った。
いとは(取られたくない。でも、そんなこと言えない)
自分が天に“役”を与えた張本人。
いとは「……バカ」
誰にも聞こえない声。
その時。
「いとは」
振り向くと、天が戻ってきていた。
てん「さっきから、元気ない」
真っ直ぐな視線。
てん「……いとはってさ」
一瞬、間を置いて。
てん「私のこと、嫌い?」
——心臓が止まりそうになる。
いとは「は!?」
てん「だって」
天は少し不安そうに笑う。
てん「避けられてる気がして」
いとは(違う。好きだから)
いとは「……嫌いなわけない」
絞り出すように言う。
てん「じゃあ」
天は少しだけ、距離を詰めた。
てん「なんで、そんな顔してるの?」
優しすぎる。
逃げ場がない。
いとは「……てんちゃんが」
そこまで言って、言葉が止まる。
いとは(言ったら、戻れない)
てん「?」
いとは「……なんでもない」
また逃げた。
天はそれ以上追及しなかった。
でも、その背中は少しだけ寂しそうだった。
夜。
スマホに残る、男装した天の写真。
いとは(私が、選んだのに。私が、苦しくなってる)
文化祭当日が近づくにつれ、純葉の後悔は、確信に変わっていく。
——この気持ちは、
“友達”のものじゃない。
そう、認めるしかなかった。