長編
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放課後の被服室は、いつもより人が多かった。
机の上には、レンタルのジャケット、シャツ、ネクタイ。
鏡の前では、髪をまとめたり、前髪を分けたりする姿があちこちにある。
れい「え、ちょっと待って。普通にかっこよくない?」
最初にざわつきを起こしたのは、村山美羽だった。
黒のジャケットに細身のパンツ。
ネクタイを緩めたその姿は、いつものふわっとした雰囲気とはまるで違う。
みう「……見すぎ」
低い声でそう言った村山美羽は、視線を逸らしながらも耳が赤い。
れい(やば……想像以上だ)
美羽を“男役”として見るのが、こんなにも落ち着かないなんて思ってなかった。
みう「玲はどうするの?」
れい「……私は執事系でいく」
そう言って袖を通した大園玲は、意外なほど様になっていた。
「ちょっと、2人とも並んで」
誰かが写真を撮る。
シャッター音の奥で、玲の心臓が早く鳴った。
れい(……隣に立たれるの、反則でしょ)
被服室の反対側。
いとは「天、ネクタイ逆!」
てん「え、ほんと?」
慌てて直す山崎天に、向井純葉が手を伸ばす。
いとは「貸して」
自然な動作で、ネクタイを結び直す純葉。
その距離が、やけに近い。
てん「……近くない?」
いとは「今さらでしょ」
そう言いながら、純葉は天の首に視線を落とした。
いとは(……男装、似合いすぎ)
王子様、って言葉が頭をよぎる。
クラスの誰かが言っていたのを思い出して、胸がちくりとした。
いとは「完成〜」
鏡に映る天は、確かに“王子”だった。
いとは「……やば」
思わず漏れた純葉の声に、天が振り返る。
てん「何が?」
いとは「……なんでもない」
でも、その瞬間から、純葉は天を直視できなくなった。
りか「……みおちゃん」
呼ばれて振り向いた的野美青は、短く整えた髪に、シンプルなシャツ姿。
余計な装飾はないのに、不思議と目を引く。
みお「どう、かな」
珍しく不安そうな声。
りか「……うん」
石森璃花は一瞬言葉を失ってから、ぎゅっと拳を握った。
りか「すごく、似合ってる」
それだけ言うのが精一杯だった。
りか(みおちゃん、こんな顔するんだ)
誰にも向けていないはずの表情なのに、自分だけが見てはいけないものを見ている気がして、胸が苦しくなる。
そして。
ひかる「ほの……」
誰よりも遅く、更衣室から出てきた田村保乃。
黒のベストに白シャツ。
前髪を軽く流し、いつもより少しだけ鋭い目つき。
一瞬、被服室の空気が止まった。
ひかる「……え」
声を失ったのは、森田ひかるだった。
ひかる(なに、これ)
かっこいい。
可愛い。
近づきたくて、でも見られたくない。
全部の感情が一気に押し寄せて、思考が追いつかない。
ほの「どう? 変じゃない?」
照れたように笑う保乃。
その笑顔が、ひかるの胸を決定的に締めつけた。
ひかる「……変じゃ、ない」
やっとのことで出た声は、少し震えていた。
ひかる「むしろ……」
そこで言葉が止まる。
“かっこいい”
その一言を言うのが、なぜか怖かった。
ほの「ひーちゃん?」
保乃が一歩近づく。
ほの「顔赤いよ?」
ひかる「……暑いだけ」
思わず後ずさるひかる。
ひかる(無理……こんなの)
周りに人がいるのに、保乃だけが近すぎて、視界を占領する。
その様子を、少し離れた場所から見ていたのが——
藤吉夏鈴と守屋麗奈だった。
かりん「……ひかる、分かりやす」
ぽつりと呟く夏鈴。
れな「え?」
かりん「いや」
夏鈴は視線を逸らす。
かりん「田村、モテそうだなって」
視線を向けると、確かに保乃の周りには人が集まり始めていた。
「写真いいですか?」
「文化祭楽しみ〜」
その輪の外で、ひかるは一人、立ち尽くす。
ひかる(やだ……)
誰かに取られるわけじゃない。
なのに、胸が苦しい。
——その時。
かりん「ひかる」
夏鈴の声。
かりん「大丈夫?」
ひかる「……大丈夫」
そう答えたけど、心臓は全然言うことを聞いてくれなかった。
衣装合わせは、ただの準備のはずだった。
でもこの日、全員が気づき始めてしまった。
好きな人を“好きなまま見ていられない瞬間”が、確かに存在することを。
机の上には、レンタルのジャケット、シャツ、ネクタイ。
鏡の前では、髪をまとめたり、前髪を分けたりする姿があちこちにある。
れい「え、ちょっと待って。普通にかっこよくない?」
最初にざわつきを起こしたのは、村山美羽だった。
黒のジャケットに細身のパンツ。
ネクタイを緩めたその姿は、いつものふわっとした雰囲気とはまるで違う。
みう「……見すぎ」
低い声でそう言った村山美羽は、視線を逸らしながらも耳が赤い。
れい(やば……想像以上だ)
美羽を“男役”として見るのが、こんなにも落ち着かないなんて思ってなかった。
みう「玲はどうするの?」
れい「……私は執事系でいく」
そう言って袖を通した大園玲は、意外なほど様になっていた。
「ちょっと、2人とも並んで」
誰かが写真を撮る。
シャッター音の奥で、玲の心臓が早く鳴った。
れい(……隣に立たれるの、反則でしょ)
被服室の反対側。
いとは「天、ネクタイ逆!」
てん「え、ほんと?」
慌てて直す山崎天に、向井純葉が手を伸ばす。
いとは「貸して」
自然な動作で、ネクタイを結び直す純葉。
その距離が、やけに近い。
てん「……近くない?」
いとは「今さらでしょ」
そう言いながら、純葉は天の首に視線を落とした。
いとは(……男装、似合いすぎ)
王子様、って言葉が頭をよぎる。
クラスの誰かが言っていたのを思い出して、胸がちくりとした。
いとは「完成〜」
鏡に映る天は、確かに“王子”だった。
いとは「……やば」
思わず漏れた純葉の声に、天が振り返る。
てん「何が?」
いとは「……なんでもない」
でも、その瞬間から、純葉は天を直視できなくなった。
りか「……みおちゃん」
呼ばれて振り向いた的野美青は、短く整えた髪に、シンプルなシャツ姿。
余計な装飾はないのに、不思議と目を引く。
みお「どう、かな」
珍しく不安そうな声。
りか「……うん」
石森璃花は一瞬言葉を失ってから、ぎゅっと拳を握った。
りか「すごく、似合ってる」
それだけ言うのが精一杯だった。
りか(みおちゃん、こんな顔するんだ)
誰にも向けていないはずの表情なのに、自分だけが見てはいけないものを見ている気がして、胸が苦しくなる。
そして。
ひかる「ほの……」
誰よりも遅く、更衣室から出てきた田村保乃。
黒のベストに白シャツ。
前髪を軽く流し、いつもより少しだけ鋭い目つき。
一瞬、被服室の空気が止まった。
ひかる「……え」
声を失ったのは、森田ひかるだった。
ひかる(なに、これ)
かっこいい。
可愛い。
近づきたくて、でも見られたくない。
全部の感情が一気に押し寄せて、思考が追いつかない。
ほの「どう? 変じゃない?」
照れたように笑う保乃。
その笑顔が、ひかるの胸を決定的に締めつけた。
ひかる「……変じゃ、ない」
やっとのことで出た声は、少し震えていた。
ひかる「むしろ……」
そこで言葉が止まる。
“かっこいい”
その一言を言うのが、なぜか怖かった。
ほの「ひーちゃん?」
保乃が一歩近づく。
ほの「顔赤いよ?」
ひかる「……暑いだけ」
思わず後ずさるひかる。
ひかる(無理……こんなの)
周りに人がいるのに、保乃だけが近すぎて、視界を占領する。
その様子を、少し離れた場所から見ていたのが——
藤吉夏鈴と守屋麗奈だった。
かりん「……ひかる、分かりやす」
ぽつりと呟く夏鈴。
れな「え?」
かりん「いや」
夏鈴は視線を逸らす。
かりん「田村、モテそうだなって」
視線を向けると、確かに保乃の周りには人が集まり始めていた。
「写真いいですか?」
「文化祭楽しみ〜」
その輪の外で、ひかるは一人、立ち尽くす。
ひかる(やだ……)
誰かに取られるわけじゃない。
なのに、胸が苦しい。
——その時。
かりん「ひかる」
夏鈴の声。
かりん「大丈夫?」
ひかる「……大丈夫」
そう答えたけど、心臓は全然言うことを聞いてくれなかった。
衣装合わせは、ただの準備のはずだった。
でもこの日、全員が気づき始めてしまった。
好きな人を“好きなまま見ていられない瞬間”が、確かに存在することを。