長編
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――それは、選ばれた言葉
夕方の校舎は、昼間よりも音が少ない。
部活の声も遠く、廊下に残るのは足音と風の音だけ。
森田ひかるは、階段の踊り場で立ち止まっていた。
窓から差し込むオレンジ色の光が、床に長い影を作っている。
「……来た」
背後から聞こえた声。
振り返ると、田村保乃がいた。
ほの「呼び出してごめん」
ひかる「ううん」
保乃は、少しだけ緊張したように笑った。
二人の間に、沈黙が落ちる。
ひかるは、指先を握りしめた。
ひかる(逃げないって、決めた)
ひかる「ねえ、保乃」
ひかるが先に口を開く。
ひかる「私さ……前は、誰かに近づくの、怖かった」
保乃は、黙って頷く。
ひかる「でもね」
ひかるは、保乃を見る。
ひかる「今は、離れたくない人がいる」
保乃の喉が、小さく鳴った。
ほの「それが、私だったら……」
言いかけて、保乃は一度言葉を切った。
そして、はっきりと続ける。
ほの「私は、ひーちゃんの隣にいたい」
ひかるの胸が、ぎゅっとなる。
ほの「守るとか、支えるとかじゃなくて」
保乃は、少し照れたように言う。
ほの「一緒に笑って、悩んで、立ち止まる人でいたい」
ひかるは、一歩近づいた。
ひかる「それって……」
ほの「うん」
保乃は、逃げなかった。
ほの「恋人になりたい、ってこと」
ひかるの目に、涙が滲む。
でも、これは苦しい涙じゃない。
ひかる「……私で、いいの?」
保乃は、少し困ったように笑う。
ほの「私が、ひかるがいい」
その言葉は、強くも派手でもない。
でも、揺るがなかった。
ひかるは、深く息を吸ってから言う。
ひかる「じゃあ……」
少しだけ間を置いて。
ひかる「一緒に、いてください」
保乃の表情が、一瞬でほどけた。
ほの「こちらこそ」
二人は、ゆっくり手を伸ばす。
指先が触れて、絡まる。
それは、今までより少しだけ違う。
「選んだ」温度。
保乃が、小さく言った。
ほの「これからは、聞かなくていいよ」
ひかる「なにを?」
ほの「ここにいていいか、なんて」
ひかるは、微笑んだ。
ひかる「……うん」
夕焼けの中、二人の影は並んで伸びていた。
恋人として、同じ場所に立つ影。
それはとても静かで、でも確かな始まりだった。
――変わらないふりの、特別
付き合ったからといって、世界が急に変わるわけじゃない。
朝の教室。
ひかる「おはよー」
森田ひかるは、いつもと同じ声で席に着いた。
ほの「おはよう」
田村保乃も、いつもと同じトーンで返す。
周りから見れば、何も変わっていない。
でも――
ひかるは知っている。
ひかる(今のは、“彼女”の声)
目が合う。
ほんの一瞬。
すぐに逸らす。
それだけで、胸が少しだけ跳ねた。
授業中。
ノートを取っていると、消しゴムが転がってきた。
拾い上げると、小さく折られたメモ。
『あとで、廊下』
ひかるは、何事もなかったように前を向く。
ひかる(廊下……)
昼休み。
人の少ない非常階段。
保乃は、壁にもたれて待っていた。
ほの「来てくれた」
ひかる「呼ばれたから」
声が、少しだけ柔らかい。
ひかる「……ね」
ひかるが、周囲を確認してから言う。
ひかる「今、誰もいないよね」
ほの「うん」
その一言で、ひかるは一歩近づいた。
肩が、そっと触れる。
手は、繋がない。
でも、離れない。
ひかる「これが、私たちの距離だね」
ひかるが小さく言う。
保乃は、ふっと笑った。
ほの「欲張りすぎない距離」
ひかる「……でも」
ひかるは、少しだけ不満そうに続ける。
ひかふ「たまには、欲張ってもいいと思う」
保乃は、
一瞬だけ目を伏せてから――
ひかるの指先に、自分の小指を絡めた。
ほんの一瞬。
ほの「今は、これくらい」
ひかるの頬が、少し赤くなる。
ひかる「……ずるい」
放課後。
みんなで帰る道。
藤吉が、ひかるをちらっと見て言う。
かりん「最近、機嫌いいな」
ひかる「え、そう?」
かりん「うん」
藤吉は、保乃の方も一瞬見る。
かりん「二人とも」
ひかるは、何も言えなかった。
でも、保乃は否定もしなかった。
夜。
家に帰ってから、スマホが震える。
『今日の非常階段、よかった』
ひかるは、ベッドに転がりながら返信する。
『短すぎ』
少しして、また通知。
『じゃあ、明日は校門で』
ひかるは、画面を見つめてから打つ。
『……人多いよ?』
『だからいい』
ひかるは、小さく笑った。
(変わらないふり、してるけど)
(ちゃんと、恋人だ)
布団に潜りながら、ひかるは思う。
大きなことはいらない。
手を繋がなくても、
言葉にしなくても。
同じ場所で、同じ時間を選び続けること。
それが、今の二人の「付き合ってる」だった。
ひかるは、そっと目を閉じる。
明日も、隣にいられる。
それだけで、十分だった。
教室はいつも通りの喧騒。
でも、森田ひかるは、なんだか落ち着かない。
手元のノートに文字を走らせながらも、心は保乃にある。
ひかる(さっきの昼休み…廊下のとき、誰か見てないよね?)
視線を上げると、
向こうの席に天が座っていた。
山崎天。
いつも冷静で、でもよく周りを見ている子。
天は、ひかるを見ると、にやり、と笑った。
ひかる「……あれ?」
ひかるの心臓が、跳ねる。
まさか、気づかれた?
放課後。
帰りの準備をして、ひかると保乃は一緒に廊下を歩く。
手は自然に触れ合う距離。
でも、誰も手を繋ごうとはしない。
ひかる(まだ、みんなの前では秘密だ)
てん「ねえ、ひかる」
後ろから聞こえた声。
振り返ると、天がいる。
てん「ちょっといい?」
ひかるは、一瞬ドキッとする。
保乃の肩に軽く寄り添いながら、答える。
ひかる「な、なに?」
天は少しニヤついている。
てん「その……二人、付き合ってる?」
ひかるの心臓が止まるような気がした。
ひかる「えっ、えっと……」
保乃も少し顔を赤らめる。
てん「……やっぱりな」
天は、半笑いで頷く。
てん「昼休み、廊下で見たからさ。ひかる、恥ずかしそうにしてたでしょ」
ひかるは、うつむきながらも、手の距離を保つ。
ひかる「……あ、あの……」
てん「別に、言うつもりないよ」
天はそう言って、少し肩をすくめる。
てん「でも、二人が楽しそうなのは認める」
その瞬間、
ひかると保乃の頬が揃って赤くなる。
ひかる「……ありがとう」
ひかるが小さく言う。
天は、にこりと笑ったあと、後ろにさがる。
てん「じゃ、秘密だね。楽しんで」
ひかるは、深く息をついた。
ひかる(周りにはバレてない…でも、誰かに見られてるってわかるだけで、ドキドキする)
帰り道。
二人だけになると、保乃がひそひそとつぶやく。
ほの「……天にバレてたんだ」
ひかるは、小さく笑って、保乃の手にそっと触れる。
ひかる「秘密、守ってくれる?」
保乃は、真剣な表情で頷く。
ほの「もちろん」
その瞬間、二人の間の距離が、ほんの少しだけ近くなる。
ひかる「…やっぱり、ちょっとドキドキするね」
ひかるは笑った。
ひかる「隠しきれないくらい、私たちって楽しそうなんだ」
保乃も、笑顔を返す。
ほの「誰かに見られてるのも、悪くないかも」
桜の蕾が、まだ固い校庭を通り抜けながら、二人は手を自然に絡ませる。
もう、秘密を持っていることが恥ずかしいことじゃなくて、特別なことだって思える。
夕方の校舎は、昼間よりも音が少ない。
部活の声も遠く、廊下に残るのは足音と風の音だけ。
森田ひかるは、階段の踊り場で立ち止まっていた。
窓から差し込むオレンジ色の光が、床に長い影を作っている。
「……来た」
背後から聞こえた声。
振り返ると、田村保乃がいた。
ほの「呼び出してごめん」
ひかる「ううん」
保乃は、少しだけ緊張したように笑った。
二人の間に、沈黙が落ちる。
ひかるは、指先を握りしめた。
ひかる(逃げないって、決めた)
ひかる「ねえ、保乃」
ひかるが先に口を開く。
ひかる「私さ……前は、誰かに近づくの、怖かった」
保乃は、黙って頷く。
ひかる「でもね」
ひかるは、保乃を見る。
ひかる「今は、離れたくない人がいる」
保乃の喉が、小さく鳴った。
ほの「それが、私だったら……」
言いかけて、保乃は一度言葉を切った。
そして、はっきりと続ける。
ほの「私は、ひーちゃんの隣にいたい」
ひかるの胸が、ぎゅっとなる。
ほの「守るとか、支えるとかじゃなくて」
保乃は、少し照れたように言う。
ほの「一緒に笑って、悩んで、立ち止まる人でいたい」
ひかるは、一歩近づいた。
ひかる「それって……」
ほの「うん」
保乃は、逃げなかった。
ほの「恋人になりたい、ってこと」
ひかるの目に、涙が滲む。
でも、これは苦しい涙じゃない。
ひかる「……私で、いいの?」
保乃は、少し困ったように笑う。
ほの「私が、ひかるがいい」
その言葉は、強くも派手でもない。
でも、揺るがなかった。
ひかるは、深く息を吸ってから言う。
ひかる「じゃあ……」
少しだけ間を置いて。
ひかる「一緒に、いてください」
保乃の表情が、一瞬でほどけた。
ほの「こちらこそ」
二人は、ゆっくり手を伸ばす。
指先が触れて、絡まる。
それは、今までより少しだけ違う。
「選んだ」温度。
保乃が、小さく言った。
ほの「これからは、聞かなくていいよ」
ひかる「なにを?」
ほの「ここにいていいか、なんて」
ひかるは、微笑んだ。
ひかる「……うん」
夕焼けの中、二人の影は並んで伸びていた。
恋人として、同じ場所に立つ影。
それはとても静かで、でも確かな始まりだった。
――変わらないふりの、特別
付き合ったからといって、世界が急に変わるわけじゃない。
朝の教室。
ひかる「おはよー」
森田ひかるは、いつもと同じ声で席に着いた。
ほの「おはよう」
田村保乃も、いつもと同じトーンで返す。
周りから見れば、何も変わっていない。
でも――
ひかるは知っている。
ひかる(今のは、“彼女”の声)
目が合う。
ほんの一瞬。
すぐに逸らす。
それだけで、胸が少しだけ跳ねた。
授業中。
ノートを取っていると、消しゴムが転がってきた。
拾い上げると、小さく折られたメモ。
『あとで、廊下』
ひかるは、何事もなかったように前を向く。
ひかる(廊下……)
昼休み。
人の少ない非常階段。
保乃は、壁にもたれて待っていた。
ほの「来てくれた」
ひかる「呼ばれたから」
声が、少しだけ柔らかい。
ひかる「……ね」
ひかるが、周囲を確認してから言う。
ひかる「今、誰もいないよね」
ほの「うん」
その一言で、ひかるは一歩近づいた。
肩が、そっと触れる。
手は、繋がない。
でも、離れない。
ひかる「これが、私たちの距離だね」
ひかるが小さく言う。
保乃は、ふっと笑った。
ほの「欲張りすぎない距離」
ひかる「……でも」
ひかるは、少しだけ不満そうに続ける。
ひかふ「たまには、欲張ってもいいと思う」
保乃は、
一瞬だけ目を伏せてから――
ひかるの指先に、自分の小指を絡めた。
ほんの一瞬。
ほの「今は、これくらい」
ひかるの頬が、少し赤くなる。
ひかる「……ずるい」
放課後。
みんなで帰る道。
藤吉が、ひかるをちらっと見て言う。
かりん「最近、機嫌いいな」
ひかる「え、そう?」
かりん「うん」
藤吉は、保乃の方も一瞬見る。
かりん「二人とも」
ひかるは、何も言えなかった。
でも、保乃は否定もしなかった。
夜。
家に帰ってから、スマホが震える。
『今日の非常階段、よかった』
ひかるは、ベッドに転がりながら返信する。
『短すぎ』
少しして、また通知。
『じゃあ、明日は校門で』
ひかるは、画面を見つめてから打つ。
『……人多いよ?』
『だからいい』
ひかるは、小さく笑った。
(変わらないふり、してるけど)
(ちゃんと、恋人だ)
布団に潜りながら、ひかるは思う。
大きなことはいらない。
手を繋がなくても、
言葉にしなくても。
同じ場所で、同じ時間を選び続けること。
それが、今の二人の「付き合ってる」だった。
ひかるは、そっと目を閉じる。
明日も、隣にいられる。
それだけで、十分だった。
教室はいつも通りの喧騒。
でも、森田ひかるは、なんだか落ち着かない。
手元のノートに文字を走らせながらも、心は保乃にある。
ひかる(さっきの昼休み…廊下のとき、誰か見てないよね?)
視線を上げると、
向こうの席に天が座っていた。
山崎天。
いつも冷静で、でもよく周りを見ている子。
天は、ひかるを見ると、にやり、と笑った。
ひかる「……あれ?」
ひかるの心臓が、跳ねる。
まさか、気づかれた?
放課後。
帰りの準備をして、ひかると保乃は一緒に廊下を歩く。
手は自然に触れ合う距離。
でも、誰も手を繋ごうとはしない。
ひかる(まだ、みんなの前では秘密だ)
てん「ねえ、ひかる」
後ろから聞こえた声。
振り返ると、天がいる。
てん「ちょっといい?」
ひかるは、一瞬ドキッとする。
保乃の肩に軽く寄り添いながら、答える。
ひかる「な、なに?」
天は少しニヤついている。
てん「その……二人、付き合ってる?」
ひかるの心臓が止まるような気がした。
ひかる「えっ、えっと……」
保乃も少し顔を赤らめる。
てん「……やっぱりな」
天は、半笑いで頷く。
てん「昼休み、廊下で見たからさ。ひかる、恥ずかしそうにしてたでしょ」
ひかるは、うつむきながらも、手の距離を保つ。
ひかる「……あ、あの……」
てん「別に、言うつもりないよ」
天はそう言って、少し肩をすくめる。
てん「でも、二人が楽しそうなのは認める」
その瞬間、
ひかると保乃の頬が揃って赤くなる。
ひかる「……ありがとう」
ひかるが小さく言う。
天は、にこりと笑ったあと、後ろにさがる。
てん「じゃ、秘密だね。楽しんで」
ひかるは、深く息をついた。
ひかる(周りにはバレてない…でも、誰かに見られてるってわかるだけで、ドキドキする)
帰り道。
二人だけになると、保乃がひそひそとつぶやく。
ほの「……天にバレてたんだ」
ひかるは、小さく笑って、保乃の手にそっと触れる。
ひかる「秘密、守ってくれる?」
保乃は、真剣な表情で頷く。
ほの「もちろん」
その瞬間、二人の間の距離が、ほんの少しだけ近くなる。
ひかる「…やっぱり、ちょっとドキドキするね」
ひかるは笑った。
ひかる「隠しきれないくらい、私たちって楽しそうなんだ」
保乃も、笑顔を返す。
ほの「誰かに見られてるのも、悪くないかも」
桜の蕾が、まだ固い校庭を通り抜けながら、二人は手を自然に絡ませる。
もう、秘密を持っていることが恥ずかしいことじゃなくて、特別なことだって思える。