長編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
距離が近づくほど、怖くなることがある。
それは、ひかる自身が一番よく知っていた。
放課後の廊下。
窓から差し込む夕方の光が、床に長い影を落としている。
保乃は、いつもより少しだけ近い距離で歩いていた。
肩が触れそうで、触れない。
その“触れなさ”が、ひかるの胸をざわつかせる。
ひかる(この距離……)
ほの「今日、一緒に帰る?」
保乃の声は、あくまで自然だった。
ひかるは一瞬、言葉に詰まる。
ひかる「……うん」
そう答えながら、心の奥が小さく揺れた。
校門を出て、並んで歩く。
街路樹の葉が、風に揺れる音だけが響く。
でも、気まずくはない。
……はずだった。
保乃が、ふと立ち止まった。
ほの「ね、ひーちゃん」
その声に、ひかるの心臓が跳ねる。
ほの「この前さ……」
一瞬の間。
ほの「屋上、来てくれて本当に嬉しかった」
ひかるは、視線を落とす。
ひかる「……私、また消えるかもしれない」
思わず、口から出た言葉。
保乃は、驚いた顔をしたあと、すぐに首を振った。
ほの「それでもいいよ」
ひかる「え……?」
ほの「消えたら、また戻ってくればいい」
あまりにも、簡単に言うから。
ひかるの胸が、きゅっと締め付けられる。
ひかる(そんな簡単じゃない……)
ひかるは、一歩、後ずさった。
無意識だった。
距離を取る、いつもの癖。
その仕草に、保乃は気づいた。
でも、追いかけない。
ただ、その場に立ったまま。
ほの「ひーちゃん」
呼び止める声。
ほの「私は、近づきたいけど……無理はしない」
その言葉が、ひかるには少しだけ救いだった。
触れない選択を、してくれること。
帰り道の途中。
二人は、少し距離をあけて歩いた。
肩も、手も、触れない。
でも――
ほの「今日の空、きれいだね」
保乃が言う。
ひかるは、空を見上げる。
ひかる「……うん」
ひかる(触れなくても……繋がってる、って思っていいのかな)
夜。
ひかるは、一人の部屋で、ベッドに横になる。
天井を見つめながら、今日のことを思い出す。
近づいたのに、離れた距離。
でも。
怖かったのは、触れられることじゃない。
――失うこと。
ひかるは、小さく息を吐いた。
ひかる(この距離でいい。今は、これでいい)
スマホが、小さく震える。
《今日は一緒に帰れて嬉しかった》
《おやすみ、ひかる》
保乃からだった。
ひかるは、しばらく画面を見つめてから、短く返す。
《……ありがとう。おやすみ》
画面を伏せて、胸に抱く。
ひかる(触れなくても。ここにいていいって、感じられる)
そう思えた夜だった。
それは、ひかる自身が一番よく知っていた。
放課後の廊下。
窓から差し込む夕方の光が、床に長い影を落としている。
保乃は、いつもより少しだけ近い距離で歩いていた。
肩が触れそうで、触れない。
その“触れなさ”が、ひかるの胸をざわつかせる。
ひかる(この距離……)
ほの「今日、一緒に帰る?」
保乃の声は、あくまで自然だった。
ひかるは一瞬、言葉に詰まる。
ひかる「……うん」
そう答えながら、心の奥が小さく揺れた。
校門を出て、並んで歩く。
街路樹の葉が、風に揺れる音だけが響く。
でも、気まずくはない。
……はずだった。
保乃が、ふと立ち止まった。
ほの「ね、ひーちゃん」
その声に、ひかるの心臓が跳ねる。
ほの「この前さ……」
一瞬の間。
ほの「屋上、来てくれて本当に嬉しかった」
ひかるは、視線を落とす。
ひかる「……私、また消えるかもしれない」
思わず、口から出た言葉。
保乃は、驚いた顔をしたあと、すぐに首を振った。
ほの「それでもいいよ」
ひかる「え……?」
ほの「消えたら、また戻ってくればいい」
あまりにも、簡単に言うから。
ひかるの胸が、きゅっと締め付けられる。
ひかる(そんな簡単じゃない……)
ひかるは、一歩、後ずさった。
無意識だった。
距離を取る、いつもの癖。
その仕草に、保乃は気づいた。
でも、追いかけない。
ただ、その場に立ったまま。
ほの「ひーちゃん」
呼び止める声。
ほの「私は、近づきたいけど……無理はしない」
その言葉が、ひかるには少しだけ救いだった。
触れない選択を、してくれること。
帰り道の途中。
二人は、少し距離をあけて歩いた。
肩も、手も、触れない。
でも――
ほの「今日の空、きれいだね」
保乃が言う。
ひかるは、空を見上げる。
ひかる「……うん」
ひかる(触れなくても……繋がってる、って思っていいのかな)
夜。
ひかるは、一人の部屋で、ベッドに横になる。
天井を見つめながら、今日のことを思い出す。
近づいたのに、離れた距離。
でも。
怖かったのは、触れられることじゃない。
――失うこと。
ひかるは、小さく息を吐いた。
ひかる(この距離でいい。今は、これでいい)
スマホが、小さく震える。
《今日は一緒に帰れて嬉しかった》
《おやすみ、ひかる》
保乃からだった。
ひかるは、しばらく画面を見つめてから、短く返す。
《……ありがとう。おやすみ》
画面を伏せて、胸に抱く。
ひかる(触れなくても。ここにいていいって、感じられる)
そう思えた夜だった。