長編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それは、ほんの小さな出来事だった。
けれど、ひかるにとっては十分すぎるほどだった。
放課後、教室に残っていたひかるは、プリントをまとめていた。
誰かが落としたノートを拾おうと、机の間にしゃがみ込んだ、そのとき。
「ねえ、聞いた?」
「森田のこと?」
背後から聞こえた声に、身体が一瞬、固まる。
ひかる(……聞こえないふり)
そう思ったのに、耳は勝手に拾ってしまう。
「前の学校、途中でいなくなったらしいよ」
「なんか、重い事情あるって」
「田村、よく関わるよね」
指先が、ノートの角に引っかかった。
心臓が、少しだけ速くなる。
ひかる(……やっぱり)
噂は、形を変えて、戻ってくる。
教室を出ると、廊下の先に保乃がいた。
目が合う。
一瞬、
安心しかけて――
ひかるは、視線を逸らした。
ひかる(今は、近づいちゃだめ)
自分でも理由は、はっきりしない。
でも、これ以上、誰かを巻き込みたくなかった。
帰り道。
いつもなら並んで歩く道を、ひかるは一人で進んだ。
背中に、視線を感じる。
でも、振り返らなかった。
夜。
ベッドの中で、ひかるは天井を見つめる。
ひかる(ここにいていい)
そう思えていたはずなのに。
ひかる(……やっぱり、だめなのかな)
誰かと繋がると、必ず、痛みがついてくる。
それなら――
最初から、一人でいたほうが。
翌日。
ひかるは、いつもより早く家を出た。
誰とも話さず、授業も淡々と受ける。
昼休みも、屋上には行かない。
ただ、席で静かに過ごす。
「森田」
声をかけられても、笑顔だけ返す。
ひかる「大丈夫」
その一言で、会話を終わらせる。
保乃は、気づいていた。
距離が、また一段階、遠くなっていること。
でも、追いかけなかった。
ほの(今は森田が、自分で決めてる)
それを、奪うわけにはいかない。
放課後。
ひかるは、校門の前で立ち止まった。
空を見上げる。
曇っている。
ひかる(ここは……)
本当に、居場所なのだろうか。
そのとき、背後から声がした。
「無理しなくていい」
振り返ると、松田里奈が立っていた。
松田「ここ、休憩してもいい場所だから」
それだけ言って、笑って去っていく。
その言葉が、胸に残った。
ひかる(休憩しても、いい)
居場所って、ずっと立ち続ける場所じゃなくていい。
ひかるは、もう一度、校舎を振り返った。
誰かの声が聞こえる。
誰かが笑っている。
その中に、自分がいない時間があっても――
ひかる(……戻ってきても、いいのかな)
揺れる居場所。
それでも、完全には手放せなかった。
けれど、ひかるにとっては十分すぎるほどだった。
放課後、教室に残っていたひかるは、プリントをまとめていた。
誰かが落としたノートを拾おうと、机の間にしゃがみ込んだ、そのとき。
「ねえ、聞いた?」
「森田のこと?」
背後から聞こえた声に、身体が一瞬、固まる。
ひかる(……聞こえないふり)
そう思ったのに、耳は勝手に拾ってしまう。
「前の学校、途中でいなくなったらしいよ」
「なんか、重い事情あるって」
「田村、よく関わるよね」
指先が、ノートの角に引っかかった。
心臓が、少しだけ速くなる。
ひかる(……やっぱり)
噂は、形を変えて、戻ってくる。
教室を出ると、廊下の先に保乃がいた。
目が合う。
一瞬、
安心しかけて――
ひかるは、視線を逸らした。
ひかる(今は、近づいちゃだめ)
自分でも理由は、はっきりしない。
でも、これ以上、誰かを巻き込みたくなかった。
帰り道。
いつもなら並んで歩く道を、ひかるは一人で進んだ。
背中に、視線を感じる。
でも、振り返らなかった。
夜。
ベッドの中で、ひかるは天井を見つめる。
ひかる(ここにいていい)
そう思えていたはずなのに。
ひかる(……やっぱり、だめなのかな)
誰かと繋がると、必ず、痛みがついてくる。
それなら――
最初から、一人でいたほうが。
翌日。
ひかるは、いつもより早く家を出た。
誰とも話さず、授業も淡々と受ける。
昼休みも、屋上には行かない。
ただ、席で静かに過ごす。
「森田」
声をかけられても、笑顔だけ返す。
ひかる「大丈夫」
その一言で、会話を終わらせる。
保乃は、気づいていた。
距離が、また一段階、遠くなっていること。
でも、追いかけなかった。
ほの(今は森田が、自分で決めてる)
それを、奪うわけにはいかない。
放課後。
ひかるは、校門の前で立ち止まった。
空を見上げる。
曇っている。
ひかる(ここは……)
本当に、居場所なのだろうか。
そのとき、背後から声がした。
「無理しなくていい」
振り返ると、松田里奈が立っていた。
松田「ここ、休憩してもいい場所だから」
それだけ言って、笑って去っていく。
その言葉が、胸に残った。
ひかる(休憩しても、いい)
居場所って、ずっと立ち続ける場所じゃなくていい。
ひかるは、もう一度、校舎を振り返った。
誰かの声が聞こえる。
誰かが笑っている。
その中に、自分がいない時間があっても――
ひかる(……戻ってきても、いいのかな)
揺れる居場所。
それでも、完全には手放せなかった。