向井純葉×山崎天
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いとは「てんせんぱ〜い!!!」
遠くから賑やかな声が響いて、バタバタと廊下を走ってくる足音が聞こえる。
声の主は、私の大好きな後輩――向井純葉だ。
てん「朝から元気だね〜いとはは。学校では走らないの」
いとは「んひひ、朝からてん先輩に会えたからですよ〜! 走ってでも1秒でも早く追いつきたかったんです!」
パッと弾けるような笑顔で私の隣に並ぶ純葉。
朝の光を浴びてキラキラ輝くその顔を直視できなくて、私は少しだけ視線を逸らした。
てん「……はいはい。そんなお世辞言っても何にも出ないよ」
いとは「お世辞じゃないですよ〜! てん先輩、私のこと信じてないんですか〜?」
ぷくっと頬を膨らませて下から覗き込んでくる姿が可愛すぎて、心臓が跳ね上がる。
そんなこと言われると、ますます好きになっちゃうじゃん……。
てん「信じてる信じてる。ほら、もうすぐ予鈴鳴るから教室行きな?」
いとは「は〜い! あ、てん先輩! 一緒にお昼ご飯、屋上に行ってもいいですか?」
てん「んー、まあいいけど」
いとは「やった〜! じゃあまた後でね、てん先輩!」
純葉は満足そうに手を大きく振ると、自分の教室へ向かって嬉しそうに走っていった。
遠ざかる小さな後ろ姿を見送りながら、私は熱くなった自分の頬に手を当てる。
純葉のまっすぐな好意に振り回される毎日は大変だけど、やっぱり愛おしくてたまらないのだった。
4時間目の授業終了を告げるチャイムが鳴り響いた瞬間、私は手早く教科書を机に仕舞った。
てん「よしっ……」
お弁当箱を持って教室を出ようとすると、案の定、ドアの向こうから勢いよく人影が飛び出してきた。
いとは「てんせんぱ〜い! 一緒に行きましょ〜!」
てん「うおっ……いとは、早すぎでしょ。授業終わって何秒経ったと思ってんの?」
いとは「チャイムと同時にダッシュしてきました! てん先輩を待たせるわけにはいかないですからね!」
胸を張ってえっへん、と威張る純葉。
購買で買った焼きそばパンの袋を大事そうに抱えている。
その無邪気な姿を見ているだけで、朝からの授業の疲れが一気に吹き飛んでいく気がした。
ふたりで並んで階段を上り、少し重い屋上の扉を押す。
ガラガラと音を立てて開いた先には、澄み渡った青空と心地よい風が広がっていた。
いとは「うわぁ〜! 気持ちいい〜!」
てん「風、ちょっと強いけど陽当たり良くて最高だね」
ベンチに並んで腰を下ろし、私はお弁当箱を開けた。
純葉は嬉しそうに焼きそばパンの袋を破いている。
いとは「てん先輩、今日のお弁当も美味しそうですね〜! あ、それ卵焼きですか?」
てん「うん、ちょっと甘めのやつ。食べる?」
いとは「えっ、いいんですか!? 食べたいです!」
お箸で小さく切った卵焼きを差し出すと、純葉はなんの疑いもなく「あーん」と口を開けて待っている。
その無防備さに一瞬ドキッとしたけれど、悟られないように口元へ運んであげた。
いとは「ん〜〜! 美味しい! 甘くてふわふわです〜!」
てん「ふふ、良かった。いとははほんと美味しそうに食べるね」
いとは「てん先輩がくれたから、余計に美味しいんですよ!」
そう言って、純葉は私に向かって満面の笑みを向けた。
そんなこと、さらっと言わないでよ……。
胸の奥がぎゅっと締め付けられて、顔が熱くなるのを隠すために、私は慌てて自分の口におかずを押し込んだ。
てん「……純葉はさ、誰にでもそういう甘いこと言うの?」
いとは「え? なんのことですか?」
てん「ううん、なんでもない」
本当は「私だけにそんな顔見せてほしい」なんて言いたいけれど、この関係が壊れるのが怖くてどうしても言葉にできない。
いとは「あ、てん先輩! 頬っぺたに青のりついてます!」
てん「えっ、嘘、どこ?」
いとは「あはは、嘘ですよ〜! 引っかかりましたね!」
てん「ちょっといとは〜! 後輩のくせに先輩をからかわないの!」
いとは「きゃー! ごめんなさ〜い!」
追いかけっこをして笑い合う屋上の上。
無邪気に眩しく笑う純葉を見るたび、私の好きはどんどん溢れていってしまうのだった。
放課後。日直の仕事を終えて廊下を歩いていると、中庭の方から話し声が聞こえてきた。
ふと視線を向けると、そこには純葉と、同級生らしき生徒の姿。
生徒「向井さん、ずっと前から好きでした! 付き合ってください!」
っ……!
生徒の言葉が聞こえた瞬間、胸の奥がキュッと締め付けられた。
頭の中が真っ白になって、考えるより先に体が動いていた。
いとは「えっと……あの、私は――」
困ったように笑う純葉の手首を、私は後ろから強引に掴む。
てん「ごめん、純葉借りるね」
生徒「えっ、山崎先輩!?」
いとは「っ!? てん先輩……!?」
驚く生徒と純葉を置き去りにして、私は純葉の手を引いたまま早足で廊下を駆け抜けた。
理由なんて自分でも分からない。
ただ、純葉が誰かのものになってしまうかもしれないなんて、絶対に嫌だった。
ガラガラッ!
誰もいない空き教室に滑り込み、ドアを勢いよく閉めて鍵をかける。
いとは「はぁ……はぁ……っ、てん先輩、急にどうしたんですか……?」
手首を掴まれたまま、純葉が少し痛そうに、でも不思議そうに私を見上げてくる。
その息の上がった顔を見た瞬間、自分がどれだけ無茶なことをしたか理解して急に恥ずかしさと申し訳なさが込み上げてきた。
てん「……ごめん。痛かったよね……」
そっと手を離すと、純葉は掴まれていた手首を軽く擦りながら、首をかしげた。
いとは「痛くはないですけど……びっくりしました。てん先輩、あんなに焦った顔して……」
てん「だって……っ、断ろうとしてたとしても……誰かに告白されてるの見たら、居ても立っても居られなくなって……」
いとは「……てん先輩?」
言いたいことが溢れて止まらない。
壊れるのが怖くて隠してきた気持ちが、嫉妬と焦りで決壊しそうだった。
てん「私、嫌だったの。いとはが他の誰かと付き合っちゃうかもしれないって思ったら、胸が痛くて……おかしくなりそうだった」
いとは「……」
てん「後輩として可愛いからじゃない。私は……いとはのことが好き。一人の女の子として、大好きなの」
空き教室に私の告白が響く。
夕日が差し込む室内で、沈黙が痛いほど重く感じられた。
嫌われたかもしれない、と怖くなって視線を落とそうとしたその時――。
いとは「……ふふっ」
小さな笑い声が聞こえて、思わず顔を上げた。
そこには、涙目を浮かべながらも、今日一番の眩しい笑顔を浮かべる純葉の姿があった。
いとは「やっと言ってくれた……っ。私、ずっと待ってたんですよ?」
てん「え……?」
いとは「朝からてん先輩に会いに行くのも、お弁当一緒に食べるのも……全部、てん先輩に好きになってほしかったからです! 私も、てん先輩のことがずっと前から一番大好きです!」
純葉はそのまま私の胸に飛び込んでくると、ぎゅっと抱きついてきた。
てん「いとは……っ」
いとは「生徒さんの告白も、ちゃんとお断りするつもりだったんですから。てん先輩の嫉妬が見られて……なんだか得しちゃいました」
腕の中で悪戯っぽく微笑む純葉。
そのあまりの愛おしさに、私は力を込めて純葉を抱き返した。
夕暮れの空き教室で、ふたりの想いがようやく重なった瞬間だった。
遠くから賑やかな声が響いて、バタバタと廊下を走ってくる足音が聞こえる。
声の主は、私の大好きな後輩――向井純葉だ。
てん「朝から元気だね〜いとはは。学校では走らないの」
いとは「んひひ、朝からてん先輩に会えたからですよ〜! 走ってでも1秒でも早く追いつきたかったんです!」
パッと弾けるような笑顔で私の隣に並ぶ純葉。
朝の光を浴びてキラキラ輝くその顔を直視できなくて、私は少しだけ視線を逸らした。
てん「……はいはい。そんなお世辞言っても何にも出ないよ」
いとは「お世辞じゃないですよ〜! てん先輩、私のこと信じてないんですか〜?」
ぷくっと頬を膨らませて下から覗き込んでくる姿が可愛すぎて、心臓が跳ね上がる。
そんなこと言われると、ますます好きになっちゃうじゃん……。
てん「信じてる信じてる。ほら、もうすぐ予鈴鳴るから教室行きな?」
いとは「は〜い! あ、てん先輩! 一緒にお昼ご飯、屋上に行ってもいいですか?」
てん「んー、まあいいけど」
いとは「やった〜! じゃあまた後でね、てん先輩!」
純葉は満足そうに手を大きく振ると、自分の教室へ向かって嬉しそうに走っていった。
遠ざかる小さな後ろ姿を見送りながら、私は熱くなった自分の頬に手を当てる。
純葉のまっすぐな好意に振り回される毎日は大変だけど、やっぱり愛おしくてたまらないのだった。
4時間目の授業終了を告げるチャイムが鳴り響いた瞬間、私は手早く教科書を机に仕舞った。
てん「よしっ……」
お弁当箱を持って教室を出ようとすると、案の定、ドアの向こうから勢いよく人影が飛び出してきた。
いとは「てんせんぱ〜い! 一緒に行きましょ〜!」
てん「うおっ……いとは、早すぎでしょ。授業終わって何秒経ったと思ってんの?」
いとは「チャイムと同時にダッシュしてきました! てん先輩を待たせるわけにはいかないですからね!」
胸を張ってえっへん、と威張る純葉。
購買で買った焼きそばパンの袋を大事そうに抱えている。
その無邪気な姿を見ているだけで、朝からの授業の疲れが一気に吹き飛んでいく気がした。
ふたりで並んで階段を上り、少し重い屋上の扉を押す。
ガラガラと音を立てて開いた先には、澄み渡った青空と心地よい風が広がっていた。
いとは「うわぁ〜! 気持ちいい〜!」
てん「風、ちょっと強いけど陽当たり良くて最高だね」
ベンチに並んで腰を下ろし、私はお弁当箱を開けた。
純葉は嬉しそうに焼きそばパンの袋を破いている。
いとは「てん先輩、今日のお弁当も美味しそうですね〜! あ、それ卵焼きですか?」
てん「うん、ちょっと甘めのやつ。食べる?」
いとは「えっ、いいんですか!? 食べたいです!」
お箸で小さく切った卵焼きを差し出すと、純葉はなんの疑いもなく「あーん」と口を開けて待っている。
その無防備さに一瞬ドキッとしたけれど、悟られないように口元へ運んであげた。
いとは「ん〜〜! 美味しい! 甘くてふわふわです〜!」
てん「ふふ、良かった。いとははほんと美味しそうに食べるね」
いとは「てん先輩がくれたから、余計に美味しいんですよ!」
そう言って、純葉は私に向かって満面の笑みを向けた。
そんなこと、さらっと言わないでよ……。
胸の奥がぎゅっと締め付けられて、顔が熱くなるのを隠すために、私は慌てて自分の口におかずを押し込んだ。
てん「……純葉はさ、誰にでもそういう甘いこと言うの?」
いとは「え? なんのことですか?」
てん「ううん、なんでもない」
本当は「私だけにそんな顔見せてほしい」なんて言いたいけれど、この関係が壊れるのが怖くてどうしても言葉にできない。
いとは「あ、てん先輩! 頬っぺたに青のりついてます!」
てん「えっ、嘘、どこ?」
いとは「あはは、嘘ですよ〜! 引っかかりましたね!」
てん「ちょっといとは〜! 後輩のくせに先輩をからかわないの!」
いとは「きゃー! ごめんなさ〜い!」
追いかけっこをして笑い合う屋上の上。
無邪気に眩しく笑う純葉を見るたび、私の好きはどんどん溢れていってしまうのだった。
放課後。日直の仕事を終えて廊下を歩いていると、中庭の方から話し声が聞こえてきた。
ふと視線を向けると、そこには純葉と、同級生らしき生徒の姿。
生徒「向井さん、ずっと前から好きでした! 付き合ってください!」
っ……!
生徒の言葉が聞こえた瞬間、胸の奥がキュッと締め付けられた。
頭の中が真っ白になって、考えるより先に体が動いていた。
いとは「えっと……あの、私は――」
困ったように笑う純葉の手首を、私は後ろから強引に掴む。
てん「ごめん、純葉借りるね」
生徒「えっ、山崎先輩!?」
いとは「っ!? てん先輩……!?」
驚く生徒と純葉を置き去りにして、私は純葉の手を引いたまま早足で廊下を駆け抜けた。
理由なんて自分でも分からない。
ただ、純葉が誰かのものになってしまうかもしれないなんて、絶対に嫌だった。
ガラガラッ!
誰もいない空き教室に滑り込み、ドアを勢いよく閉めて鍵をかける。
いとは「はぁ……はぁ……っ、てん先輩、急にどうしたんですか……?」
手首を掴まれたまま、純葉が少し痛そうに、でも不思議そうに私を見上げてくる。
その息の上がった顔を見た瞬間、自分がどれだけ無茶なことをしたか理解して急に恥ずかしさと申し訳なさが込み上げてきた。
てん「……ごめん。痛かったよね……」
そっと手を離すと、純葉は掴まれていた手首を軽く擦りながら、首をかしげた。
いとは「痛くはないですけど……びっくりしました。てん先輩、あんなに焦った顔して……」
てん「だって……っ、断ろうとしてたとしても……誰かに告白されてるの見たら、居ても立っても居られなくなって……」
いとは「……てん先輩?」
言いたいことが溢れて止まらない。
壊れるのが怖くて隠してきた気持ちが、嫉妬と焦りで決壊しそうだった。
てん「私、嫌だったの。いとはが他の誰かと付き合っちゃうかもしれないって思ったら、胸が痛くて……おかしくなりそうだった」
いとは「……」
てん「後輩として可愛いからじゃない。私は……いとはのことが好き。一人の女の子として、大好きなの」
空き教室に私の告白が響く。
夕日が差し込む室内で、沈黙が痛いほど重く感じられた。
嫌われたかもしれない、と怖くなって視線を落とそうとしたその時――。
いとは「……ふふっ」
小さな笑い声が聞こえて、思わず顔を上げた。
そこには、涙目を浮かべながらも、今日一番の眩しい笑顔を浮かべる純葉の姿があった。
いとは「やっと言ってくれた……っ。私、ずっと待ってたんですよ?」
てん「え……?」
いとは「朝からてん先輩に会いに行くのも、お弁当一緒に食べるのも……全部、てん先輩に好きになってほしかったからです! 私も、てん先輩のことがずっと前から一番大好きです!」
純葉はそのまま私の胸に飛び込んでくると、ぎゅっと抱きついてきた。
てん「いとは……っ」
いとは「生徒さんの告白も、ちゃんとお断りするつもりだったんですから。てん先輩の嫉妬が見られて……なんだか得しちゃいました」
腕の中で悪戯っぽく微笑む純葉。
そのあまりの愛おしさに、私は力を込めて純葉を抱き返した。
夕暮れの空き教室で、ふたりの想いがようやく重なった瞬間だった。