守屋麗奈×的野美青
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みお「れな先輩、またその花ですか」
キャンパスの中庭。
木漏れ日が落ちるベンチで、守屋麗奈は小さな鉢植えを膝に乗せていた。
声をかけてきたのは、同じサークルの後輩である的野美青だ。
背が高くどこかわやわやとした雰囲気を纏いながらも、麗奈の前ではいつも少し緊張した面持ちを見せる。
れな「うん。ブルースターだよ。可愛いでしょ〜」
みお「あお……綺麗ですね。花言葉、知ってるんですか?」
れな「『幸福な愛』とか、『信じ合う心』だって。西洋では花嫁のブーケによく入れるらしいよ」
みお「……ふーん」
美青は少しだけ目を逸らし、隣に腰かけた。
彼女の長い足が折りたたまれる。
麗奈はふふっと微笑み、手元に視線を戻した。
実は、麗奈が美青に隠していることがある。
このブルースターをサークルの部室で見つけて世話をし始めたのは、美青が以前「青い花が好きだ」と呟いていたのを聞いたからだった。
けれど、素直になれないれなはそれを本人に言えないでいる。
れな「みおちゃんはさ、好きな花とかあるの?」
みお「私は……紫陽花ですかね。雨の中で静かに咲いてるところとか」
れな「紫陽花かぁ。紫陽花の花言葉は『移り気』とか『浮気』って言われがちだけど……本当は『団らん』とか『和気あいあい』、それに『辛抱強い愛情』っていう意味もあるんだよ」
みお「へぇ……先輩、詳しいんですね」
美青がじっとれなを見つめる。
その瞳はまっすぐで、どこか切なさを孕んでいた。
みお「辛抱強い愛情、か……」
れな「……なに? 急に真面目な顔して」
みお「れな先輩って、誰にでも優しいですよね。サークルの同期にも、他の後輩にも。だから、私だけが特別になりたいなんて思うの、わがままなのかなって」
れな「え……?」
風が吹き抜け、樹木がざわめく。
美青の手が少し震えながら、ベンチに置かれたれなの手に重なった。
大きな、けれど少し冷たい手。
みお「私、ずっと辛抱強く待ってるつもりだったんです。でも、先輩が誰かと楽しそうに話してるのを見るたび、胸がぎゅーって苦しくなって……。紫陽花みたいに、心が移ろいじゃいそうになるんです。嫌いになりたいのに、なれなくて」
れな「みおちゃん……」
麗奈は息をのんだ。
いつもクールで、一歩引いた場所にいると思っていた後輩がこんなにもまっすぐ自分に感情をぶつけてくれている。
麗奈は重ねられた手をギュッと握り返した。
れな「ううん、移ろわないで。どこにもいかないで」
みお「先輩……?」
れな「私ね、このブルースターを育て始めたの、みおちゃんが青い花が好きだって言ってたからなんだよ」
美青が目を見開く。
れな「『信じ合う心』って花言葉……本当は、みおちゃんと私で育てたかったの。私だって、みおちゃんにとっての特別になりたかった。ただの『頼れる先輩』じゃなくて……」
麗奈は恥ずかしさに顔を赤らめながら、視線をみおの瞳に合わせる。
みお「……それ、本当ですか?」
れな「嘘なんか言わないよ。……私、みおちゃんのこと、後輩としてじゃなくて……好きだよ」
沈黙が二人の間に降り積もる。
けれど、その空気は決して冷たいものではなく日だまりのようにあたたかかった。
美青はゆっくりと体を寄せ、麗奈の肩に額を預けた。
美青の髪から、ほんのりと雨上がりのような優しい香りがする。
みお「……ずるいです、れな先輩。そんなこと言われたら、もう離れられないじゃないですか」
れな「離れるつもりなんて、最初からないくせに」
みお「あはは、バレてましたか」
小さく笑い合う二人の手の中で、ブルースターの小さな青い花が陽の光を受けて誇らしげに揺れていた。
まだ蕾を残したその鉢植えは、これから二人が紡いでいく「幸福な愛」の始まりを静かに見守っているようだった。
キャンパスの中庭。
木漏れ日が落ちるベンチで、守屋麗奈は小さな鉢植えを膝に乗せていた。
声をかけてきたのは、同じサークルの後輩である的野美青だ。
背が高くどこかわやわやとした雰囲気を纏いながらも、麗奈の前ではいつも少し緊張した面持ちを見せる。
れな「うん。ブルースターだよ。可愛いでしょ〜」
みお「あお……綺麗ですね。花言葉、知ってるんですか?」
れな「『幸福な愛』とか、『信じ合う心』だって。西洋では花嫁のブーケによく入れるらしいよ」
みお「……ふーん」
美青は少しだけ目を逸らし、隣に腰かけた。
彼女の長い足が折りたたまれる。
麗奈はふふっと微笑み、手元に視線を戻した。
実は、麗奈が美青に隠していることがある。
このブルースターをサークルの部室で見つけて世話をし始めたのは、美青が以前「青い花が好きだ」と呟いていたのを聞いたからだった。
けれど、素直になれないれなはそれを本人に言えないでいる。
れな「みおちゃんはさ、好きな花とかあるの?」
みお「私は……紫陽花ですかね。雨の中で静かに咲いてるところとか」
れな「紫陽花かぁ。紫陽花の花言葉は『移り気』とか『浮気』って言われがちだけど……本当は『団らん』とか『和気あいあい』、それに『辛抱強い愛情』っていう意味もあるんだよ」
みお「へぇ……先輩、詳しいんですね」
美青がじっとれなを見つめる。
その瞳はまっすぐで、どこか切なさを孕んでいた。
みお「辛抱強い愛情、か……」
れな「……なに? 急に真面目な顔して」
みお「れな先輩って、誰にでも優しいですよね。サークルの同期にも、他の後輩にも。だから、私だけが特別になりたいなんて思うの、わがままなのかなって」
れな「え……?」
風が吹き抜け、樹木がざわめく。
美青の手が少し震えながら、ベンチに置かれたれなの手に重なった。
大きな、けれど少し冷たい手。
みお「私、ずっと辛抱強く待ってるつもりだったんです。でも、先輩が誰かと楽しそうに話してるのを見るたび、胸がぎゅーって苦しくなって……。紫陽花みたいに、心が移ろいじゃいそうになるんです。嫌いになりたいのに、なれなくて」
れな「みおちゃん……」
麗奈は息をのんだ。
いつもクールで、一歩引いた場所にいると思っていた後輩がこんなにもまっすぐ自分に感情をぶつけてくれている。
麗奈は重ねられた手をギュッと握り返した。
れな「ううん、移ろわないで。どこにもいかないで」
みお「先輩……?」
れな「私ね、このブルースターを育て始めたの、みおちゃんが青い花が好きだって言ってたからなんだよ」
美青が目を見開く。
れな「『信じ合う心』って花言葉……本当は、みおちゃんと私で育てたかったの。私だって、みおちゃんにとっての特別になりたかった。ただの『頼れる先輩』じゃなくて……」
麗奈は恥ずかしさに顔を赤らめながら、視線をみおの瞳に合わせる。
みお「……それ、本当ですか?」
れな「嘘なんか言わないよ。……私、みおちゃんのこと、後輩としてじゃなくて……好きだよ」
沈黙が二人の間に降り積もる。
けれど、その空気は決して冷たいものではなく日だまりのようにあたたかかった。
美青はゆっくりと体を寄せ、麗奈の肩に額を預けた。
美青の髪から、ほんのりと雨上がりのような優しい香りがする。
みお「……ずるいです、れな先輩。そんなこと言われたら、もう離れられないじゃないですか」
れな「離れるつもりなんて、最初からないくせに」
みお「あはは、バレてましたか」
小さく笑い合う二人の手の中で、ブルースターの小さな青い花が陽の光を受けて誇らしげに揺れていた。
まだ蕾を残したその鉢植えは、これから二人が紡いでいく「幸福な愛」の始まりを静かに見守っているようだった。