中編
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ゆめの透明な涙が収められたニューシングルのMVは、公開されるや否や世界中に凄まじい衝撃を与えた。
「CG加工ではないか」
「いや、彼女には感情がないんだ」
ネット上では無数の憶測と議論が飛び交い、櫻坂46を取り巻く環境はこれまで以上に混沌としていく。
感情を色でラベリングし、安心しきっていた大衆にとってゆめの存在は定義できない「未知」そのものだった。
それでも、彼女の隣にはいつも森田ひかるがいた。
どんなにカメラのフラッシュを浴びようとも、鋭い視線を向けられようともひかるはゆめの手を強く握り締めその光を遮るように隣に立ち続けた。
そして迎えた、大型音楽番組への生出演。
パフォーマンス前のトークセッションで、司会者が核心に触れる質問を投げかける。
司会「ゆめさん、今や世界中であなたの透明な涙が話題になっています。あの涙に色がなかった理由について、ご自身ではどう思われていますか?」
スタジオに緊張が走る。
カメラがゆめの表情をアップで捉えた。
一歩間違えれば、再び激しいバッシングに晒されかねない緊迫した空気。
ゆめは少しだけひかるの方を振り返り、優しく微笑みかけた。
その眼差しには、もう迷いも恐怖もない。
ゆめ「私の涙に色がないのは……きっと、この世界にある言葉や色だけでは、どうしても表しきれない想いがあるからだと思います」
ゆめはまっすぐに前を見据え、言葉を紡ぐ。
ゆめ「怒りや悲しみ、喜びをきれいに分けて、誰かに分かりやすく伝えることだけが正解じゃない。割り切れない想いも言葉にならない愛しさも全部混ざり合ったら……こんなふうに、ただ透明になるんだって教えてくれた人がいるから。だから私は、この涙を誇りに思っています」
その視線の先が誰を向いているのか、スタジオのそして画面の前の誰もが気づいていた。
ひかるは静かに胸を張り眩しそうにゆめを見つめ返す。
記号化された感情を消費するだけの世界に、二人は色を持たないという新しい強さを提示したのだ。
生放送を無事に終え、すべての衣装を脱ぎ捨てた深夜。
静まり返った楽屋で、二人は窓の外に広がる東京の夜景を眺めていた。
ビルの明かりや車のヘッドライトが、まるで万華鏡のようにカラフルにまたたいている。
ゆめ「……上手く、言えてたかな」
ゆめが少し照れくさそうに、ひかるの肩に寄りかかる。
ひかる「うん。すっごくかっこよかった。世界中の誰よりも、私のゆめが一番綺麗だったよ」
ひかるはそっとゆめの腰に腕を回し、自分の方へと引き寄せた。
ゆめ「ひかるがいてくれたから、私は私のままでいられたんだよ。ありがとう」
見上げるゆめの瞳が、月光を浴びてうるんだ。
彼女の目から、一滴の雫が滑り落ちる。
それはやっぱり、何の色もついていないどこまでも透き通った無色透明の涙。
だけど、ひかるがその雫を指先でそっと掬い上げたとき窓の外から差し込む街の光が涙に反射して、まるできらめくプリズムのように見たこともない七色の輝きを放った。
ひかる「見て、ゆめ」
ひかるは微笑み、その指先をゆめに見せる。
ひかる「色がないんじゃない。全部の色が、優しく溶け合ってただけなんだね」
ゆめ「ふふ、本当だ……」
お互いの吐息が触れ合うほどの距離で、二人は見つめ合う。
世界がどんな色で溢れようと、どんなルールで縛ろうと二人の間に流れるこの愛だけは誰にも染められない。
ひかるはゆっくりと目を閉じ、透明な輝きをまとうゆめの唇に深く、確かな熱を重ねた。
「CG加工ではないか」
「いや、彼女には感情がないんだ」
ネット上では無数の憶測と議論が飛び交い、櫻坂46を取り巻く環境はこれまで以上に混沌としていく。
感情を色でラベリングし、安心しきっていた大衆にとってゆめの存在は定義できない「未知」そのものだった。
それでも、彼女の隣にはいつも森田ひかるがいた。
どんなにカメラのフラッシュを浴びようとも、鋭い視線を向けられようともひかるはゆめの手を強く握り締めその光を遮るように隣に立ち続けた。
そして迎えた、大型音楽番組への生出演。
パフォーマンス前のトークセッションで、司会者が核心に触れる質問を投げかける。
司会「ゆめさん、今や世界中であなたの透明な涙が話題になっています。あの涙に色がなかった理由について、ご自身ではどう思われていますか?」
スタジオに緊張が走る。
カメラがゆめの表情をアップで捉えた。
一歩間違えれば、再び激しいバッシングに晒されかねない緊迫した空気。
ゆめは少しだけひかるの方を振り返り、優しく微笑みかけた。
その眼差しには、もう迷いも恐怖もない。
ゆめ「私の涙に色がないのは……きっと、この世界にある言葉や色だけでは、どうしても表しきれない想いがあるからだと思います」
ゆめはまっすぐに前を見据え、言葉を紡ぐ。
ゆめ「怒りや悲しみ、喜びをきれいに分けて、誰かに分かりやすく伝えることだけが正解じゃない。割り切れない想いも言葉にならない愛しさも全部混ざり合ったら……こんなふうに、ただ透明になるんだって教えてくれた人がいるから。だから私は、この涙を誇りに思っています」
その視線の先が誰を向いているのか、スタジオのそして画面の前の誰もが気づいていた。
ひかるは静かに胸を張り眩しそうにゆめを見つめ返す。
記号化された感情を消費するだけの世界に、二人は色を持たないという新しい強さを提示したのだ。
生放送を無事に終え、すべての衣装を脱ぎ捨てた深夜。
静まり返った楽屋で、二人は窓の外に広がる東京の夜景を眺めていた。
ビルの明かりや車のヘッドライトが、まるで万華鏡のようにカラフルにまたたいている。
ゆめ「……上手く、言えてたかな」
ゆめが少し照れくさそうに、ひかるの肩に寄りかかる。
ひかる「うん。すっごくかっこよかった。世界中の誰よりも、私のゆめが一番綺麗だったよ」
ひかるはそっとゆめの腰に腕を回し、自分の方へと引き寄せた。
ゆめ「ひかるがいてくれたから、私は私のままでいられたんだよ。ありがとう」
見上げるゆめの瞳が、月光を浴びてうるんだ。
彼女の目から、一滴の雫が滑り落ちる。
それはやっぱり、何の色もついていないどこまでも透き通った無色透明の涙。
だけど、ひかるがその雫を指先でそっと掬い上げたとき窓の外から差し込む街の光が涙に反射して、まるできらめくプリズムのように見たこともない七色の輝きを放った。
ひかる「見て、ゆめ」
ひかるは微笑み、その指先をゆめに見せる。
ひかる「色がないんじゃない。全部の色が、優しく溶け合ってただけなんだね」
ゆめ「ふふ、本当だ……」
お互いの吐息が触れ合うほどの距離で、二人は見つめ合う。
世界がどんな色で溢れようと、どんなルールで縛ろうと二人の間に流れるこの愛だけは誰にも染められない。
ひかるはゆっくりと目を閉じ、透明な輝きをまとうゆめの唇に深く、確かな熱を重ねた。