守屋麗奈×的野美青
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カフェの扉を開けると、カランカランと涼やかな音が響く。
受験生としての焦りと、夏の終わりの気だるさを引きずったまま、的野美青はそのお気に入りのカフェの席についた。
まさかその場所が、自分にとって一番特別な場所に変わるなんて、この時の美青はまだ知る由もなかった。
式と格闘すること3時間。
みおは小さく息を吐き、ペンを置いた。
肩がガチガチに凝っている。
みお「あー……集中力切れた。ちょっと甘いもんでも飲んで休憩しよかな」
少し冷めてしまったお冷を飲み干し、近くを通りかかった店員さんに声をかける。
みお「すみません、注文いいですか?」
れな「はい!お伺いします」
振り返った店員さんと目が合った瞬間、みおの心臓がドクンと大きく跳ねた。
ゆるくウェーブがかった明るい髪、吸い込まれそうなほど大きな瞳そして、ひまわりが咲いたような、まぶしすぎる笑顔。
胸元に揺れる名札には、『守屋』と書かれていた。
れな「ご注文、お決まりですか?」
みお「あ、えっと……その、アイスキャラメルラテ、ひとつ、お願いします」
あまりの美しさに頭が真っ白になり、噛みそうになりながらもなんとか注文を伝える。
れな「アイスキャラメルラテですね、かしこまりました。お勉強、頑張ってくださいね!」
にこっと微笑んで去っていく背中を、みおは呆然と見つめていた。
手元に残された参考書の文字が、急に一切頭に入らなくなる。
みお「……何、今の綺麗な人。やばい、心臓止まるかと思った……」
それが、みおの初恋の瞬間だった。
その日以来、みおは毎週土曜日の同じ時間に、そのカフェへ通うようになった。
お目当てはもちろん、守屋さんのいるシフトの時間。
最初は緊張して注文するだけで精一杯だったけれど、毎週通ううちに、彼女のほうから声をかけてくれるようになった。
れな「あ、いらっしゃいませ!今日もいつもの席空いてますよ。お勉強、進んでますか?」
みお「あ、はい!おかげさまで……。あの、いつもお仕事お疲れ様です」
れな「ふふ、ありがとう。あ、私のことはれなって呼んでくださいね。守屋ってなんか堅苦しいから」
みお「れな、さん……。私は的野美青です。みおって呼んでください」
れな「みおちゃんね!よろしくね」
少しずつ、でも確実に二人の距離は縮まっていった。
注文を受ける時の短い会話。
トレイを片付ける時のちょっとした雑談。
れなさんの声を聞くだけで、その笑顔を見るだけで、みおの毎日の受験勉強の疲れは綺麗に吹き飛んでいった。
ある秋の日の夕暮れ。
店内が落ち着いた時間帯、みおは机の上に大学のパンフレットを広げていた。
そこに、注文の品を持ってきたれなが、お盆を胸に抱えて覗き込んできた。
れな「あ、そのパンフレット……。みおちゃん、櫻大学を目指してるの?」
みお「えっ、あ、はい。まだ判定は全然良くないんですけど、どうしても行きたくて」
すると、れなはパッと顔を輝かせた。
れな「本当!?実はね、私、櫻大学の1年生なの!」
みお「ええっ!?本当ですか!?」
れな「うん!経済学部だよ。そっかぁ、みおちゃん、私の後輩になってくれるかもしれないんだ。なんだかすごく嬉しいな」
れなは嬉しそうに、自分の大学生活の楽しさや、キャンパスの桜が綺麗なことをたくさん話してくれた。
憧れのれなさんが通う、櫻大学。
それまでは「なんとなく行きたい目標」だった場所が、一気に「絶対に合格しなければいけない場所」へと変わった。
みお「私……絶対に合格します。れなさんの、本当の後輩になります!」
れな「うん!応援してる。試験が近づいて大変だと思うけど、ここで息抜きしながら頑張ってね。みおちゃんなら、絶対に大丈夫!」
そう言って、れなはみおの頭を優しくぽんぽんと撫でた。
頭に残る手の温もりと、れなさんのシャンプーの甘い香りに、みおの顔は真っ赤になる。
みお(絶対に、合格してみせる。そして……大学生になったら、この気持ちをれなさんに伝えるんだ)
ノートを開くみおの目に、これまで以上の強い光が宿っていた。
季節は巡り、冬の厳しい寒さを乗り越え、ついに春が訪れた。
カフェのいつもの席。
みおは、一枚のハガキを握りしめて、緊張した面持ちで座っていた。
そこへ、足取り軽く近づいてくる足音。
れな「みおちゃん!お疲れ様。……どうだった?」
心配そうに、でも信じているという目で覗き込んでくるれな。
みおは、ゆっくりとハガキを表に向け、満面の笑みを浮かべた。
みお「れなさん……合格しました!春から、櫻大学の学生です!」
れな「――っ!本当!?やったぁぁ!」
れなは自分のことのように喜び、思わずみおの体をぎゅっと抱きしめた。
突然の抱擁に驚きつつも、みおはれなさんの背中にそっと手を回す。
ずっと憧れていた温もりが、すぐそこにあった。
れな「本当に頑張ったね、みおちゃん。私、ずっとドキドキしてたんだから」
体を離したれなの目は、少し潤んでいた。
みおは深呼吸をして、握りしめた拳に力を込める。もう、受験生のみおじゃない。れなさんと同じ、大学生になるんだ。
みお「れなさん。私、れなさんが先輩になってくれたから、ここまで頑張れました。……一目惚れ、だったんです。最初に注文を聞いてくれたあの時から」
れな「え……?」
みお「大好きです。これからは後輩としてだけじゃなくて、一人の女の子として、れなさんの隣にいさせてくれませんか?」
真っ直ぐなみおの告白に、れなは驚いたように目を見開いた。
そして、みるみるうちに頬を桜色に染めて、ふにゃりと愛らしく微笑む。
れな「……ずるいなぁ、みおちゃん。そんな格好いいこと言われたら、先輩の威厳なくなっちゃうよ」
みお「え、それって……」
れな「私もね、毎週一生懸命勉強してるみおちゃんのこと、ずっと可愛いなって思ってたの。これからは大学でも、ずっと一緒だね。……よろしくね、私の可愛い恋人さん」
れなの手が、みおの手を優しく包み込む。
窓の外では、春の風に吹かれた桜の花びらが、ひらひらと舞い踊っていた。
二人の新しい季節が、今、ここから始まる。
受験生としての焦りと、夏の終わりの気だるさを引きずったまま、的野美青はそのお気に入りのカフェの席についた。
まさかその場所が、自分にとって一番特別な場所に変わるなんて、この時の美青はまだ知る由もなかった。
式と格闘すること3時間。
みおは小さく息を吐き、ペンを置いた。
肩がガチガチに凝っている。
みお「あー……集中力切れた。ちょっと甘いもんでも飲んで休憩しよかな」
少し冷めてしまったお冷を飲み干し、近くを通りかかった店員さんに声をかける。
みお「すみません、注文いいですか?」
れな「はい!お伺いします」
振り返った店員さんと目が合った瞬間、みおの心臓がドクンと大きく跳ねた。
ゆるくウェーブがかった明るい髪、吸い込まれそうなほど大きな瞳そして、ひまわりが咲いたような、まぶしすぎる笑顔。
胸元に揺れる名札には、『守屋』と書かれていた。
れな「ご注文、お決まりですか?」
みお「あ、えっと……その、アイスキャラメルラテ、ひとつ、お願いします」
あまりの美しさに頭が真っ白になり、噛みそうになりながらもなんとか注文を伝える。
れな「アイスキャラメルラテですね、かしこまりました。お勉強、頑張ってくださいね!」
にこっと微笑んで去っていく背中を、みおは呆然と見つめていた。
手元に残された参考書の文字が、急に一切頭に入らなくなる。
みお「……何、今の綺麗な人。やばい、心臓止まるかと思った……」
それが、みおの初恋の瞬間だった。
その日以来、みおは毎週土曜日の同じ時間に、そのカフェへ通うようになった。
お目当てはもちろん、守屋さんのいるシフトの時間。
最初は緊張して注文するだけで精一杯だったけれど、毎週通ううちに、彼女のほうから声をかけてくれるようになった。
れな「あ、いらっしゃいませ!今日もいつもの席空いてますよ。お勉強、進んでますか?」
みお「あ、はい!おかげさまで……。あの、いつもお仕事お疲れ様です」
れな「ふふ、ありがとう。あ、私のことはれなって呼んでくださいね。守屋ってなんか堅苦しいから」
みお「れな、さん……。私は的野美青です。みおって呼んでください」
れな「みおちゃんね!よろしくね」
少しずつ、でも確実に二人の距離は縮まっていった。
注文を受ける時の短い会話。
トレイを片付ける時のちょっとした雑談。
れなさんの声を聞くだけで、その笑顔を見るだけで、みおの毎日の受験勉強の疲れは綺麗に吹き飛んでいった。
ある秋の日の夕暮れ。
店内が落ち着いた時間帯、みおは机の上に大学のパンフレットを広げていた。
そこに、注文の品を持ってきたれなが、お盆を胸に抱えて覗き込んできた。
れな「あ、そのパンフレット……。みおちゃん、櫻大学を目指してるの?」
みお「えっ、あ、はい。まだ判定は全然良くないんですけど、どうしても行きたくて」
すると、れなはパッと顔を輝かせた。
れな「本当!?実はね、私、櫻大学の1年生なの!」
みお「ええっ!?本当ですか!?」
れな「うん!経済学部だよ。そっかぁ、みおちゃん、私の後輩になってくれるかもしれないんだ。なんだかすごく嬉しいな」
れなは嬉しそうに、自分の大学生活の楽しさや、キャンパスの桜が綺麗なことをたくさん話してくれた。
憧れのれなさんが通う、櫻大学。
それまでは「なんとなく行きたい目標」だった場所が、一気に「絶対に合格しなければいけない場所」へと変わった。
みお「私……絶対に合格します。れなさんの、本当の後輩になります!」
れな「うん!応援してる。試験が近づいて大変だと思うけど、ここで息抜きしながら頑張ってね。みおちゃんなら、絶対に大丈夫!」
そう言って、れなはみおの頭を優しくぽんぽんと撫でた。
頭に残る手の温もりと、れなさんのシャンプーの甘い香りに、みおの顔は真っ赤になる。
みお(絶対に、合格してみせる。そして……大学生になったら、この気持ちをれなさんに伝えるんだ)
ノートを開くみおの目に、これまで以上の強い光が宿っていた。
季節は巡り、冬の厳しい寒さを乗り越え、ついに春が訪れた。
カフェのいつもの席。
みおは、一枚のハガキを握りしめて、緊張した面持ちで座っていた。
そこへ、足取り軽く近づいてくる足音。
れな「みおちゃん!お疲れ様。……どうだった?」
心配そうに、でも信じているという目で覗き込んでくるれな。
みおは、ゆっくりとハガキを表に向け、満面の笑みを浮かべた。
みお「れなさん……合格しました!春から、櫻大学の学生です!」
れな「――っ!本当!?やったぁぁ!」
れなは自分のことのように喜び、思わずみおの体をぎゅっと抱きしめた。
突然の抱擁に驚きつつも、みおはれなさんの背中にそっと手を回す。
ずっと憧れていた温もりが、すぐそこにあった。
れな「本当に頑張ったね、みおちゃん。私、ずっとドキドキしてたんだから」
体を離したれなの目は、少し潤んでいた。
みおは深呼吸をして、握りしめた拳に力を込める。もう、受験生のみおじゃない。れなさんと同じ、大学生になるんだ。
みお「れなさん。私、れなさんが先輩になってくれたから、ここまで頑張れました。……一目惚れ、だったんです。最初に注文を聞いてくれたあの時から」
れな「え……?」
みお「大好きです。これからは後輩としてだけじゃなくて、一人の女の子として、れなさんの隣にいさせてくれませんか?」
真っ直ぐなみおの告白に、れなは驚いたように目を見開いた。
そして、みるみるうちに頬を桜色に染めて、ふにゃりと愛らしく微笑む。
れな「……ずるいなぁ、みおちゃん。そんな格好いいこと言われたら、先輩の威厳なくなっちゃうよ」
みお「え、それって……」
れな「私もね、毎週一生懸命勉強してるみおちゃんのこと、ずっと可愛いなって思ってたの。これからは大学でも、ずっと一緒だね。……よろしくね、私の可愛い恋人さん」
れなの手が、みおの手を優しく包み込む。
窓の外では、春の風に吹かれた桜の花びらが、ひらひらと舞い踊っていた。
二人の新しい季節が、今、ここから始まる。