山下瞳月
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櫻坂46のメンバーとして活動する私と瞳月が付き合い始めてから、今日でちょうど3ヶ月。
……なんだけど。
ゆめ(……やっぱり、なんか冷たいなぁ……)
付き合う前からもツンツンしている子ではあったけれど、最近の瞳月は拍車をかけて冷たい。
話しかけても生返事だし、すぐにどこかへ行ってしまう。
さらにそこから月日が経っても、状況は変わらなかった。
ゆめ(なんで付き合ってるんだろう。なんでこんなに苦しいんだろう……)
私の頭のなかは、ネガティブな思考でいっぱいになっていく。
付き合えたらもっと甘い毎日が待っていると思っていたのに、現実は思い描いていたものとはかなり違って。
胸がぎゅっと締め付けられて、今にも泣きそうだった。
そんな、ある日のこと。
ゆめ「あ、スマホ忘れた……」
お仕事を終えて一度スタジオを出た私は、忘れ物を取りに楽屋へと引き返した。
静かな廊下を進み、楽屋の扉に手をかけようとした、その時。
中から話し声が聞こえてきた。
声の主は、しづきと、りかと、ゆーづ。
鍵の開いたドアの隙間から、しづきの切なげな声が漏れてくる。
しづき「ほんとに日に日に冷たくなって行って、自分が本当にきらい……」
りか「確かに、かなり冷たいよねぇ。見ててちょっとハラハラするもん」
しづき「好きすぎて目合わせられへんし、好きすぎて逃げてまうし、もう!! ほんとにいやや……!」
ゆづき「あはは、その思い本人にぶつけたらいいのに〜。悩んでるの絶対伝わってないよ?」
しづき「言えてたらとっくに言ってる!!」
ドアの向こうで、しづきが頭を抱えて机に突っ伏す音が聞こえた気がした。
ゆめ「……っ。なんだよそれ……っ」
壁に背中を預け、私はその場にゆっくりとしゃがみ込んだ。
胸の奥を支配していた苦しさが、一瞬で消し飛んでいく。
代わりに、心臓がバクバクと激しく音を立て始めた。
ゆめ(好きすぎて冷たくなってるとか……可愛すぎるでしょ……っ!)
両手で顔を覆うけれど、耳まで真っ赤になっていくのが自分でもよく分かる。
悩んでいた自分がバカらしくなるくらい、愛おしさが爆発しそうだった。
でも、このまま放っておいたら、しづきは今日も一人で反省会を開いてしまう。
ゆめ「……よし」
私は意を決して立ち上がると、赤くなった顔を少し手で煽ってから、勢いよく楽屋の扉を開けた。
がちゃっ。
ゆめ「ただいまー! 忘れ物しちゃって!」
しづき「……っ!?」
あからさまにビクッと肩を跳ね上がらせて、顔を真っ赤にするしづき。
そんな彼女を見て、りかとゆーづがニヤニヤしながら「じゃ、私たちは先行くね〜」と、私に目配せをして楽屋を出て行った。
二人きりになった楽屋。
しづきは気まずそうに、ぷいっと私から視線をそらす。
しづき「……な、なに。忘れ物って」
いつも通りの、ちょっと冷たい声。
だけど今の私には、それが「好きすぎて緊張している声」にしか聞こえない。
ゆめ「ねぇ、しづき。こっち向いて?」
しづき「……嫌や。今、忙しい」
全然忙しそうじゃないのに、必死にメイクポーチをゴソゴソしている。
私はそんな愛しい彼女の背中に、後ろからぎゅっと抱きついた。
しづき「わっ!? ……な、なにするん、離れて……っ」
ゆめ「離れない。しづきが私のこと好きすぎて冷たくしちゃうって言うなら、私からいっぱい甘やかすからね?」
しづき「……え。……あ、今の、聞いて……っ」
完全にフリーズしたしづきが、耳まで真っ赤にしてロボットのようにゆっくりと振り返る。
潤んだ瞳がようやく私と合って、今度は逃げられないように、私はその綺麗な顔を両手で挟み込んだ。
ゆめ「もう逃がさないよ、ツンデレ彼女さん」
しづき「……意地悪。……もう、本当に大嫌い……っ」
そう言いながらも、私のシャツの裾をぎゅっと握りしめて離さないしづき。
「大嫌い」の言葉とは裏腹に、その瞳には愛おしさがこれでもかと溢れていた。
ゆめ「本当に大嫌いな人は、そんなに強く服を掴まないと思うな?」
しづき「……うるさい。口を開けば、からかってばっか……」
しづきは恥ずかしさに耐えかねたように、私の胸元にぽすんと額を預けてきた。
付き合ってからの数ヶ月間、ずっと感じていた心の距離が、嘘みたいにゼロになる。
ゆめ「ごめんね。でも、本当に嬉しかったんだよ。しづきが私のこと、そんなに好きでいてくれたんだって分かって」
しづき「……当たり前、やん。好きじゃなかったら、付き合ってへん」
小さな声が、私の胸にこもって響く。
その関西弁の響きが、いつもより何倍も甘く聴こえて、私の心臓の鼓動がまた速くなった。
ゆめ「あはは、そうだよね。……ねぇ、しづき?」
しづき「……なに」
ゆめ「そろそろ顔、見せてほしいな」
しづきは「ん……」と小さく唸ると、ゆっくりと顔を上げた。
上目遣いで私を見つめるその顔は、まだりんごみたいに真っ赤だ。
しづき「……ちゃんと、目、合ってる?」
ゆめ「うん、ばっちり合ってる」
しづき「……っ。やっぱり、心臓壊れそうやから無理……!」
ほんの数秒お互いの視線が絡み合っただけで、しづきは限界を迎えたように再び私の胸元に顔をうずめた。
耳まで真っ赤に染まっているのが愛おしくてたまらない。
ゆめ「ふふ、可愛い。今まで冷たくされて寂しかった分、これからはいっぱい目合わせてもらうし、いっぱいイチャイチャするからね?」
しづき「……冷たくしたのは、悪かったって思ってる。……傷つけて、ごめんなさい」
急に、しづきの声が真剣なトーンに変わった。
私の服を掴む手に、きゅっとさらに力がこもる。
しづき「自分でもどうしたらいいか分からへんくて……。ゆめの顔見ると、ドキドキしすぎて頭真っ白になって、変な態度取ってしまって……。毎日、夜ひとりで、大反省会してた。嫌われたらどうしようって……」
小さな肩が、不安げに少し震えている。
これまで彼女が一人で抱えていた不器用な葛藤が伝わってきて、私は愛おしさと愛おしさで胸がいっぱいになった。
ゆめ「ううん、もう気にしてないよ。むしろ、理由がそれなら大歓迎」
しづき「……歓迎したらあかん。私、もっとちゃんと可愛い彼女になりたい……」
ゆめ「今のままでも十分すぎるくらい可愛いよ? ……でも、どうしても反省しちゃうなら、これからは冷たくしそうになった瞬間、私に抱きついて。そうすれば、ツンツンがデレになるでしょ?」
しづき「なにそれ……無茶苦茶やん……」
呆れたように言いながらも、しづきはふっと柔らかく微笑んだ。
冷たかった氷が、すっかり溶けて温かい水に変わったような、そんな優しい笑顔。
しづき「……じゃあ、今から、練習する」
ゆめ「え?」
しづきは私の胸元から顔を離すと、今度は自分から、私の首の後ろに腕を回してきた。
すっと背伸びをして、私の耳元に顔を近づける。
しづき「……好きすぎて逃げそうになったから、捕まえといて」
耳元で囁かれた吐息混じりの声に、今度は私の頭が真っ白になる番だった。
ゆめ「……しづき、それは反則……っ」
しづき「ふふ。私の勝ち、だね」
いたずらっぽく笑う彼女の瞳は、もう私から一切逸れることはなかった。
……なんだけど。
ゆめ(……やっぱり、なんか冷たいなぁ……)
付き合う前からもツンツンしている子ではあったけれど、最近の瞳月は拍車をかけて冷たい。
話しかけても生返事だし、すぐにどこかへ行ってしまう。
さらにそこから月日が経っても、状況は変わらなかった。
ゆめ(なんで付き合ってるんだろう。なんでこんなに苦しいんだろう……)
私の頭のなかは、ネガティブな思考でいっぱいになっていく。
付き合えたらもっと甘い毎日が待っていると思っていたのに、現実は思い描いていたものとはかなり違って。
胸がぎゅっと締め付けられて、今にも泣きそうだった。
そんな、ある日のこと。
ゆめ「あ、スマホ忘れた……」
お仕事を終えて一度スタジオを出た私は、忘れ物を取りに楽屋へと引き返した。
静かな廊下を進み、楽屋の扉に手をかけようとした、その時。
中から話し声が聞こえてきた。
声の主は、しづきと、りかと、ゆーづ。
鍵の開いたドアの隙間から、しづきの切なげな声が漏れてくる。
しづき「ほんとに日に日に冷たくなって行って、自分が本当にきらい……」
りか「確かに、かなり冷たいよねぇ。見ててちょっとハラハラするもん」
しづき「好きすぎて目合わせられへんし、好きすぎて逃げてまうし、もう!! ほんとにいやや……!」
ゆづき「あはは、その思い本人にぶつけたらいいのに〜。悩んでるの絶対伝わってないよ?」
しづき「言えてたらとっくに言ってる!!」
ドアの向こうで、しづきが頭を抱えて机に突っ伏す音が聞こえた気がした。
ゆめ「……っ。なんだよそれ……っ」
壁に背中を預け、私はその場にゆっくりとしゃがみ込んだ。
胸の奥を支配していた苦しさが、一瞬で消し飛んでいく。
代わりに、心臓がバクバクと激しく音を立て始めた。
ゆめ(好きすぎて冷たくなってるとか……可愛すぎるでしょ……っ!)
両手で顔を覆うけれど、耳まで真っ赤になっていくのが自分でもよく分かる。
悩んでいた自分がバカらしくなるくらい、愛おしさが爆発しそうだった。
でも、このまま放っておいたら、しづきは今日も一人で反省会を開いてしまう。
ゆめ「……よし」
私は意を決して立ち上がると、赤くなった顔を少し手で煽ってから、勢いよく楽屋の扉を開けた。
がちゃっ。
ゆめ「ただいまー! 忘れ物しちゃって!」
しづき「……っ!?」
あからさまにビクッと肩を跳ね上がらせて、顔を真っ赤にするしづき。
そんな彼女を見て、りかとゆーづがニヤニヤしながら「じゃ、私たちは先行くね〜」と、私に目配せをして楽屋を出て行った。
二人きりになった楽屋。
しづきは気まずそうに、ぷいっと私から視線をそらす。
しづき「……な、なに。忘れ物って」
いつも通りの、ちょっと冷たい声。
だけど今の私には、それが「好きすぎて緊張している声」にしか聞こえない。
ゆめ「ねぇ、しづき。こっち向いて?」
しづき「……嫌や。今、忙しい」
全然忙しそうじゃないのに、必死にメイクポーチをゴソゴソしている。
私はそんな愛しい彼女の背中に、後ろからぎゅっと抱きついた。
しづき「わっ!? ……な、なにするん、離れて……っ」
ゆめ「離れない。しづきが私のこと好きすぎて冷たくしちゃうって言うなら、私からいっぱい甘やかすからね?」
しづき「……え。……あ、今の、聞いて……っ」
完全にフリーズしたしづきが、耳まで真っ赤にしてロボットのようにゆっくりと振り返る。
潤んだ瞳がようやく私と合って、今度は逃げられないように、私はその綺麗な顔を両手で挟み込んだ。
ゆめ「もう逃がさないよ、ツンデレ彼女さん」
しづき「……意地悪。……もう、本当に大嫌い……っ」
そう言いながらも、私のシャツの裾をぎゅっと握りしめて離さないしづき。
「大嫌い」の言葉とは裏腹に、その瞳には愛おしさがこれでもかと溢れていた。
ゆめ「本当に大嫌いな人は、そんなに強く服を掴まないと思うな?」
しづき「……うるさい。口を開けば、からかってばっか……」
しづきは恥ずかしさに耐えかねたように、私の胸元にぽすんと額を預けてきた。
付き合ってからの数ヶ月間、ずっと感じていた心の距離が、嘘みたいにゼロになる。
ゆめ「ごめんね。でも、本当に嬉しかったんだよ。しづきが私のこと、そんなに好きでいてくれたんだって分かって」
しづき「……当たり前、やん。好きじゃなかったら、付き合ってへん」
小さな声が、私の胸にこもって響く。
その関西弁の響きが、いつもより何倍も甘く聴こえて、私の心臓の鼓動がまた速くなった。
ゆめ「あはは、そうだよね。……ねぇ、しづき?」
しづき「……なに」
ゆめ「そろそろ顔、見せてほしいな」
しづきは「ん……」と小さく唸ると、ゆっくりと顔を上げた。
上目遣いで私を見つめるその顔は、まだりんごみたいに真っ赤だ。
しづき「……ちゃんと、目、合ってる?」
ゆめ「うん、ばっちり合ってる」
しづき「……っ。やっぱり、心臓壊れそうやから無理……!」
ほんの数秒お互いの視線が絡み合っただけで、しづきは限界を迎えたように再び私の胸元に顔をうずめた。
耳まで真っ赤に染まっているのが愛おしくてたまらない。
ゆめ「ふふ、可愛い。今まで冷たくされて寂しかった分、これからはいっぱい目合わせてもらうし、いっぱいイチャイチャするからね?」
しづき「……冷たくしたのは、悪かったって思ってる。……傷つけて、ごめんなさい」
急に、しづきの声が真剣なトーンに変わった。
私の服を掴む手に、きゅっとさらに力がこもる。
しづき「自分でもどうしたらいいか分からへんくて……。ゆめの顔見ると、ドキドキしすぎて頭真っ白になって、変な態度取ってしまって……。毎日、夜ひとりで、大反省会してた。嫌われたらどうしようって……」
小さな肩が、不安げに少し震えている。
これまで彼女が一人で抱えていた不器用な葛藤が伝わってきて、私は愛おしさと愛おしさで胸がいっぱいになった。
ゆめ「ううん、もう気にしてないよ。むしろ、理由がそれなら大歓迎」
しづき「……歓迎したらあかん。私、もっとちゃんと可愛い彼女になりたい……」
ゆめ「今のままでも十分すぎるくらい可愛いよ? ……でも、どうしても反省しちゃうなら、これからは冷たくしそうになった瞬間、私に抱きついて。そうすれば、ツンツンがデレになるでしょ?」
しづき「なにそれ……無茶苦茶やん……」
呆れたように言いながらも、しづきはふっと柔らかく微笑んだ。
冷たかった氷が、すっかり溶けて温かい水に変わったような、そんな優しい笑顔。
しづき「……じゃあ、今から、練習する」
ゆめ「え?」
しづきは私の胸元から顔を離すと、今度は自分から、私の首の後ろに腕を回してきた。
すっと背伸びをして、私の耳元に顔を近づける。
しづき「……好きすぎて逃げそうになったから、捕まえといて」
耳元で囁かれた吐息混じりの声に、今度は私の頭が真っ白になる番だった。
ゆめ「……しづき、それは反則……っ」
しづき「ふふ。私の勝ち、だね」
いたずらっぽく笑う彼女の瞳は、もう私から一切逸れることはなかった。