的野美青
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櫻坂46の楽屋の隅。
的野美青は、同期のゆめの隣で小さくため息をついていた。
ゆめはとにかく優しい。けれど、呆れるほどに人の好意に鈍感だった。
ある日のこと。美青がゆめの大好きなチョコレートを、わざわざ並んで買ってきたときの話。
みお「はい、これ。ゆめに食べてほしくて買ってきた」
ゆめ「わぁ、ありがとう! 美青って本当にマメだよね。ゆーづの分もある?」
みお「……ないよゆめの分だけ」
ゆめ「そっか、美青は私と好みが似てるもんね。半分こしよ!」
みお(違う、そうじゃない。特別だから買ってきたのに……)
また別の日、レッスン帰りに雨が降ったとき。傘を忘れたゆめに、美青は自分の傘を差し出した。
かなり小さめの折りたたみ傘。当然、相合傘をすれば二人の肩はぴったりと触れ合う。
みお「……ちょっと狭いね。もっとこっち寄って?」
ゆめ「あ、ごめん! 確かに狭いね。あ、そうだ、私が走ってコンビニで大きい傘買ってきて、美青入れてあげるよ!」
みお「……走らなくていいから、このまま歩こ?」
ゆめはいつだって全力で、そして純粋に、美青の特別なアプローチをただの友情としてスルーしてしまうのだった。
そんな二人だったが、美青の粘り強いアタックの末、ついに屋上で美青から想いを伝え、二人は付き合うことになった……はずだった。
しかし、付き合い始めてから一ヶ月が経っても、手を繋ぐことも、二人きりでデートをすることもない。
ある日、楽屋で二人で並んでお弁当を食べていると、同期の中嶋優月が不思議そうな顔をして近づいてきた。
ゆづき「ねぇ、ずっと気になってたんだけど……美青とゆめって、付き合ってるの?」
突然の質問に、美青は少し照れながらも胸を張って答えた。
みお「うん。付き合ってるよ」
しかし、ほぼ同時に隣の ゆめ が不思議そうに首を傾げた。
ゆめ「え? 付き合ってないよ?」
楽屋の空気が一瞬で凍りついた。優月は目を丸くし、美青はお箸を持ったまま固まる。
ゆづき「えっ……? ど、どっち……?」
みお「……ちょっと、ゆめ。今、なんて言った?」
ゆめ「え? だって、付き合ってないよね? 私たち、すごく仲良しの親友じゃん」
美青の頭のなかで、一ヶ月前のあの日の記憶がフラッシュバックする。
放課後の夕焼けのなか、美青は確かに ゆめ にこう言ったのだ。
『私、ゆめのことが大好きなの。これからずっと、一番近くにいてほしい。私だけのものになってほしいな』と。
あの時、ゆめは満面の笑みで『私も美青が大好き! もちろん、ずっと一番の親友だよ!』と答えていた。
みお(……まさか、あの告白、ただの友情の誓いだと思われてた!?)
あまりの衝撃に、美青はその場に崩れ落ちそうになった。
優月は「あ、察し……」という顔をして、そっとその場を離れていった。
その日の夜。
レッスンの居残りで、ダンススタジオには美青と ゆめ の二人きりだった。
美青は意を決して、鏡の前でストレッチをしているゆめの前に立った。
みお「ねぇ、ゆめ」
ゆめ「ん? どうしたの、美青? お腹すいた?」
みお「すいてない。……あのさ、一ヶ月前に私が言ったこと、覚えてる?」
ゆめ「うん、覚えてるよ。美青が私を一番の親友だって言ってくれた日。嬉しかったな」
やっぱりだ。
美青は額を押さえた。
この鈍感モンスターに、遠回しな表現は一切通用しない。
みお「あのね、ゆめ。私が言った大好きは、友達としてじゃないの」
ゆめ「え……?」
みお「女の子として、恋愛として、ゆめのことが好きなの。ゆーづとか他のメンバーに向ける好きとは、全然違うの。手を繋ぎたいし、デートもしたいし、……私だけの特別な恋人になってほしいって意味だったの!」
一気にまくし立てた美青の顔は、真っ赤に染まっていた。
ゆめは目を丸くして、しばらくフリーズしていた。
頭の中で、これまでの美青の行動——特別なお菓子、狭い相合傘、そしてあの日の言葉——が、すべて一本の線で繋がっていく。
ゆめ「あ……。えっ……じゃあ、美青は私と、その……恋人になりたかったの……?」
みお「なりたかった、じゃなくて、もうなってると思ってたの! 私は一ヶ月間、ずっと彼女面してたの!」
恥ずかしさのあまり顔を隠す美青を見て、ゆめの胸が急にトクン、と大きく鳴った。
友達だと思っていた。
でも、もし美青が他の誰かの「 彼女になったらと考えたら、胸の奥がチクリと痛む。
それに、今こうして真っ赤になって怒っている美青が、たまらなく愛おしく思えた。
ゆめは一歩歩み寄り、美青の隠された両手をそっと包み込んだ。
ゆめ「美青……ごめんね。私、本当にバカだった」
みお「……本当にバカだよ」
ゆめ「でもね、今、美青にそう言われて……すごくドキドキしてる。私、美青の特別な人になりたい。……ううん、させてください」
美青がゆっくりと顔を上げると、そこには少し耳を赤くしたゆめが、今度は「恋人の目」をして微笑んでいた。
みお「……本当に分かってる? これから、手も繋ぐし、毎日連絡するし、私のこと一番に考えてもらわなきゃ嫌だからね?」
ゆめ「うん、望むところだよ」
ゆめは繋いだ手に少しだけ力を込めた。
今度こそ、二人の「お付き合い」が、本当の意味で始まった瞬間だった。
的野美青は、同期のゆめの隣で小さくため息をついていた。
ゆめはとにかく優しい。けれど、呆れるほどに人の好意に鈍感だった。
ある日のこと。美青がゆめの大好きなチョコレートを、わざわざ並んで買ってきたときの話。
みお「はい、これ。ゆめに食べてほしくて買ってきた」
ゆめ「わぁ、ありがとう! 美青って本当にマメだよね。ゆーづの分もある?」
みお「……ないよゆめの分だけ」
ゆめ「そっか、美青は私と好みが似てるもんね。半分こしよ!」
みお(違う、そうじゃない。特別だから買ってきたのに……)
また別の日、レッスン帰りに雨が降ったとき。傘を忘れたゆめに、美青は自分の傘を差し出した。
かなり小さめの折りたたみ傘。当然、相合傘をすれば二人の肩はぴったりと触れ合う。
みお「……ちょっと狭いね。もっとこっち寄って?」
ゆめ「あ、ごめん! 確かに狭いね。あ、そうだ、私が走ってコンビニで大きい傘買ってきて、美青入れてあげるよ!」
みお「……走らなくていいから、このまま歩こ?」
ゆめはいつだって全力で、そして純粋に、美青の特別なアプローチをただの友情としてスルーしてしまうのだった。
そんな二人だったが、美青の粘り強いアタックの末、ついに屋上で美青から想いを伝え、二人は付き合うことになった……はずだった。
しかし、付き合い始めてから一ヶ月が経っても、手を繋ぐことも、二人きりでデートをすることもない。
ある日、楽屋で二人で並んでお弁当を食べていると、同期の中嶋優月が不思議そうな顔をして近づいてきた。
ゆづき「ねぇ、ずっと気になってたんだけど……美青とゆめって、付き合ってるの?」
突然の質問に、美青は少し照れながらも胸を張って答えた。
みお「うん。付き合ってるよ」
しかし、ほぼ同時に隣の ゆめ が不思議そうに首を傾げた。
ゆめ「え? 付き合ってないよ?」
楽屋の空気が一瞬で凍りついた。優月は目を丸くし、美青はお箸を持ったまま固まる。
ゆづき「えっ……? ど、どっち……?」
みお「……ちょっと、ゆめ。今、なんて言った?」
ゆめ「え? だって、付き合ってないよね? 私たち、すごく仲良しの親友じゃん」
美青の頭のなかで、一ヶ月前のあの日の記憶がフラッシュバックする。
放課後の夕焼けのなか、美青は確かに ゆめ にこう言ったのだ。
『私、ゆめのことが大好きなの。これからずっと、一番近くにいてほしい。私だけのものになってほしいな』と。
あの時、ゆめは満面の笑みで『私も美青が大好き! もちろん、ずっと一番の親友だよ!』と答えていた。
みお(……まさか、あの告白、ただの友情の誓いだと思われてた!?)
あまりの衝撃に、美青はその場に崩れ落ちそうになった。
優月は「あ、察し……」という顔をして、そっとその場を離れていった。
その日の夜。
レッスンの居残りで、ダンススタジオには美青と ゆめ の二人きりだった。
美青は意を決して、鏡の前でストレッチをしているゆめの前に立った。
みお「ねぇ、ゆめ」
ゆめ「ん? どうしたの、美青? お腹すいた?」
みお「すいてない。……あのさ、一ヶ月前に私が言ったこと、覚えてる?」
ゆめ「うん、覚えてるよ。美青が私を一番の親友だって言ってくれた日。嬉しかったな」
やっぱりだ。
美青は額を押さえた。
この鈍感モンスターに、遠回しな表現は一切通用しない。
みお「あのね、ゆめ。私が言った大好きは、友達としてじゃないの」
ゆめ「え……?」
みお「女の子として、恋愛として、ゆめのことが好きなの。ゆーづとか他のメンバーに向ける好きとは、全然違うの。手を繋ぎたいし、デートもしたいし、……私だけの特別な恋人になってほしいって意味だったの!」
一気にまくし立てた美青の顔は、真っ赤に染まっていた。
ゆめは目を丸くして、しばらくフリーズしていた。
頭の中で、これまでの美青の行動——特別なお菓子、狭い相合傘、そしてあの日の言葉——が、すべて一本の線で繋がっていく。
ゆめ「あ……。えっ……じゃあ、美青は私と、その……恋人になりたかったの……?」
みお「なりたかった、じゃなくて、もうなってると思ってたの! 私は一ヶ月間、ずっと彼女面してたの!」
恥ずかしさのあまり顔を隠す美青を見て、ゆめの胸が急にトクン、と大きく鳴った。
友達だと思っていた。
でも、もし美青が他の誰かの「 彼女になったらと考えたら、胸の奥がチクリと痛む。
それに、今こうして真っ赤になって怒っている美青が、たまらなく愛おしく思えた。
ゆめは一歩歩み寄り、美青の隠された両手をそっと包み込んだ。
ゆめ「美青……ごめんね。私、本当にバカだった」
みお「……本当にバカだよ」
ゆめ「でもね、今、美青にそう言われて……すごくドキドキしてる。私、美青の特別な人になりたい。……ううん、させてください」
美青がゆっくりと顔を上げると、そこには少し耳を赤くしたゆめが、今度は「恋人の目」をして微笑んでいた。
みお「……本当に分かってる? これから、手も繋ぐし、毎日連絡するし、私のこと一番に考えてもらわなきゃ嫌だからね?」
ゆめ「うん、望むところだよ」
ゆめは繋いだ手に少しだけ力を込めた。
今度こそ、二人の「お付き合い」が、本当の意味で始まった瞬間だった。