山下瞳月
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楽屋では、いつも通り。
私はみんなに慕われるゆめを、少し離れた場所から眺めている。
優月が肩を抱き、玲さんが頭を撫で、ひかるさんが後ろから抱きつく。
そのたびに、私の心の中には冷たくて黒い澱が溜まっていく。
仕事が終わり、帰宅したリビング。
ゆめがソファに座って一息ついていると、瞳月は迷いのない足取りで近づいていった。
ゆめ「あ、しーちゃん、お疲れ様。今日のみんな、テンション高かった……わっ!?」
返事をする間もなく、しづきはゆめの膝の上に、向かい合うようにして跨った。
密着した体温。驚いて固まるゆめの首に、瞳月は細い腕を絡ませる。
しづき「……お疲れ様、じゃないよ」
ゆめ「し、しーちゃん? どうしたの、いきなり」
しづき「……今日、ずっと見てた。ゆーづとも、れいさんとも、ひかるさんとも。……ずっと、べたべたして」
ゆめ「あ、あれは、みんなが寄ってきてくれただけで……。私は別に、そんなつもりじゃ……」
瞳月は、ゆめの言い訳を遮るように、さらに顔を近づけた。
至近距離で見つめる瞳は、少し潤んでいて、それでいて逃がさないという強い意思を感じさせる。
しづき「……みんなのゆめなの?」
ゆめ「えっ……?」
しづき「あんなに嬉しそうに鼻の下伸ばして。しーが隣にいるのに、他の人に触られて、平気なんだ」
ゆめ「伸ばしてないよ! ……ごめん、嫌な思いさせたなら、次はちゃんと断るから」
瞳月は、ゆめの胸に顔を埋め、服をぎゅっと掴んだ。
少しだけ震えているその肩を見て、ゆめは彼女がどれほど我慢していたかを悟る。
しづき「……誰にも言えないから。付き合ってるって、しーの恋人だって、みんなの前で言えないから……。だから、せめて二人きりの時は、分からせてよ」
瞳月はゆっくりと顔を上げると、熱い視線でゆめを射抜いた。
しづき「……ゆめは、しーのやろ?」
ゆめ「……っ、うん。しーちゃんだけのものだよ」
しづき「……ほんまに?」
ゆめ「本当だよ。誰よりも、しーちゃんのことが好き」
その言葉を聞くと、瞳月は満足そうに、でも少しだけ泣きそうな顔で口角を上げた。
しづき「……当たり前。他の人に触られたところ、全部しーが上書きするから。……覚悟しといてね?」
そう言って、瞳月はゆめの首筋に深く顔を寄せた。
静かなリビングに、二人だけの甘く重い時間が流れていく。
昨夜、家で瞳月にたっぷり上書きされた翌日。
私は少し腰の重さを感じながら、楽屋の隅で台本をチェックしていた。
ゆづき「……ねぇ、ゆめ」
ゆめ「わっ、ゆづき!? 急に耳元で喋らないでよ、びっくりする」
ゆづき「あはは、ごめんごめん。……でもさ、今日なんかゆめ、隙だらけじゃない?」
優月がニヤニヤしながら、私の隣にどっかと腰を下ろした。
ゆめ「そんなことないよ。いつも通りだって」
ゆづき「ふーん。じゃあさ、なんで今日は私が肩組もうとした時、あんなにビクッとして、遠くにいるしづきの方を見たのかなーって」
ゆめ「っ、それは……!」
図星だった。
視線の先では、メンバーと話しているはずの瞳月が、こちらをじっと——いや、正しくは私の肩に置かれた優月の手を、射殺さんばかりの勢いで睨みつけていた。
ゆづき「……確信した。ねぇ、二人の空気、昨日までと全然違うんだけど」
優月は声を潜め、さらに顔を近づけてくる。
ゆづき「ゆめとしづき、付き合ってるでしょ?」
ゆめ「な、ななな、何を根拠に……!」
ゆづき「隠せてると思ってるのは本人たちだけ。しづきのあの私の獲物に触るなっていう顔、誰が見てもガチだよ」
慌てて否定しようとしたその時。
いつの間にか背後に立っていた瞳月が、優月の腕をひょいと持ち上げて、私から引き離した。
しづき「……ゆづき。あんまりゆめを困らせんといて」
ゆづき「あ、ほら出た! 噂をすれば独占欲の塊さん」
しづき「……何の話?」
瞳月は無表情を装っているけれど、その耳の先がほんのり赤い。
優月は面白そうに目を細めて、二人の顔を交互に見た。
ゆづき「隠さなくてもいいのに。……まあ、安心しなよ。私は味方だから。でも、あんまり楽屋でイチャイチャしてると、れいさんやひかるさんにもすぐバレるよ?」
ゆめ「イチャイチャなんてしてないから!」
ゆづき「はいはい。……あ、しづき。首元、髪で隠しきれてないよ。昨夜は激しかったんだねー?」
しづき「っ!! ……ゆーづのバカ!」
真っ赤になった瞳月が、私を連れて楽屋のさらに奥へと逃げ込む。
背後で優月の「お幸せにー!」という楽しげな声が響き、私たちは顔を見合わせることしかできなかった。
しづき「……ゆめ のせいだからね!」
ゆめ「ええっ、私のせい!?」
しづき「……しーが、我慢できんくなるようなこと言うから」
そう言って、瞳月は私の手を机の下でギュッと握りしめた。
バレてしまった焦燥感よりも、彼女と繋がっている安心感が勝ってしまうのは、きっと私も彼女に毒されているからだろう。
私はみんなに慕われるゆめを、少し離れた場所から眺めている。
優月が肩を抱き、玲さんが頭を撫で、ひかるさんが後ろから抱きつく。
そのたびに、私の心の中には冷たくて黒い澱が溜まっていく。
仕事が終わり、帰宅したリビング。
ゆめがソファに座って一息ついていると、瞳月は迷いのない足取りで近づいていった。
ゆめ「あ、しーちゃん、お疲れ様。今日のみんな、テンション高かった……わっ!?」
返事をする間もなく、しづきはゆめの膝の上に、向かい合うようにして跨った。
密着した体温。驚いて固まるゆめの首に、瞳月は細い腕を絡ませる。
しづき「……お疲れ様、じゃないよ」
ゆめ「し、しーちゃん? どうしたの、いきなり」
しづき「……今日、ずっと見てた。ゆーづとも、れいさんとも、ひかるさんとも。……ずっと、べたべたして」
ゆめ「あ、あれは、みんなが寄ってきてくれただけで……。私は別に、そんなつもりじゃ……」
瞳月は、ゆめの言い訳を遮るように、さらに顔を近づけた。
至近距離で見つめる瞳は、少し潤んでいて、それでいて逃がさないという強い意思を感じさせる。
しづき「……みんなのゆめなの?」
ゆめ「えっ……?」
しづき「あんなに嬉しそうに鼻の下伸ばして。しーが隣にいるのに、他の人に触られて、平気なんだ」
ゆめ「伸ばしてないよ! ……ごめん、嫌な思いさせたなら、次はちゃんと断るから」
瞳月は、ゆめの胸に顔を埋め、服をぎゅっと掴んだ。
少しだけ震えているその肩を見て、ゆめは彼女がどれほど我慢していたかを悟る。
しづき「……誰にも言えないから。付き合ってるって、しーの恋人だって、みんなの前で言えないから……。だから、せめて二人きりの時は、分からせてよ」
瞳月はゆっくりと顔を上げると、熱い視線でゆめを射抜いた。
しづき「……ゆめは、しーのやろ?」
ゆめ「……っ、うん。しーちゃんだけのものだよ」
しづき「……ほんまに?」
ゆめ「本当だよ。誰よりも、しーちゃんのことが好き」
その言葉を聞くと、瞳月は満足そうに、でも少しだけ泣きそうな顔で口角を上げた。
しづき「……当たり前。他の人に触られたところ、全部しーが上書きするから。……覚悟しといてね?」
そう言って、瞳月はゆめの首筋に深く顔を寄せた。
静かなリビングに、二人だけの甘く重い時間が流れていく。
昨夜、家で瞳月にたっぷり上書きされた翌日。
私は少し腰の重さを感じながら、楽屋の隅で台本をチェックしていた。
ゆづき「……ねぇ、ゆめ」
ゆめ「わっ、ゆづき!? 急に耳元で喋らないでよ、びっくりする」
ゆづき「あはは、ごめんごめん。……でもさ、今日なんかゆめ、隙だらけじゃない?」
優月がニヤニヤしながら、私の隣にどっかと腰を下ろした。
ゆめ「そんなことないよ。いつも通りだって」
ゆづき「ふーん。じゃあさ、なんで今日は私が肩組もうとした時、あんなにビクッとして、遠くにいるしづきの方を見たのかなーって」
ゆめ「っ、それは……!」
図星だった。
視線の先では、メンバーと話しているはずの瞳月が、こちらをじっと——いや、正しくは私の肩に置かれた優月の手を、射殺さんばかりの勢いで睨みつけていた。
ゆづき「……確信した。ねぇ、二人の空気、昨日までと全然違うんだけど」
優月は声を潜め、さらに顔を近づけてくる。
ゆづき「ゆめとしづき、付き合ってるでしょ?」
ゆめ「な、ななな、何を根拠に……!」
ゆづき「隠せてると思ってるのは本人たちだけ。しづきのあの私の獲物に触るなっていう顔、誰が見てもガチだよ」
慌てて否定しようとしたその時。
いつの間にか背後に立っていた瞳月が、優月の腕をひょいと持ち上げて、私から引き離した。
しづき「……ゆづき。あんまりゆめを困らせんといて」
ゆづき「あ、ほら出た! 噂をすれば独占欲の塊さん」
しづき「……何の話?」
瞳月は無表情を装っているけれど、その耳の先がほんのり赤い。
優月は面白そうに目を細めて、二人の顔を交互に見た。
ゆづき「隠さなくてもいいのに。……まあ、安心しなよ。私は味方だから。でも、あんまり楽屋でイチャイチャしてると、れいさんやひかるさんにもすぐバレるよ?」
ゆめ「イチャイチャなんてしてないから!」
ゆづき「はいはい。……あ、しづき。首元、髪で隠しきれてないよ。昨夜は激しかったんだねー?」
しづき「っ!! ……ゆーづのバカ!」
真っ赤になった瞳月が、私を連れて楽屋のさらに奥へと逃げ込む。
背後で優月の「お幸せにー!」という楽しげな声が響き、私たちは顔を見合わせることしかできなかった。
しづき「……ゆめ のせいだからね!」
ゆめ「ええっ、私のせい!?」
しづき「……しーが、我慢できんくなるようなこと言うから」
そう言って、瞳月は私の手を机の下でギュッと握りしめた。
バレてしまった焦燥感よりも、彼女と繋がっている安心感が勝ってしまうのは、きっと私も彼女に毒されているからだろう。