中嶋優月
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春休みの旅行。
みんなで来たはずの観光地は、人でごった返していた。
「ちょっと待って〜!」
誰かの声が聞こえた気がしたけど、気づいたときにはもう遅かった。
ゆめ「……あれ?」
隣にいるのは、ひとりだけ。
ゆづき「……あれ、みんなは?」
目が合う。
完全に、はぐれた。
ゆめ「やばくない?」
ゆづき「やばいね」
なのに、ゆづきは少し笑ってる。
ゆづき「まぁ、なんとかなるっしょ」
その余裕が、少しだけ羨ましい。
連絡を取ろうとしても、人混みでうまくいかない。
結局——
ゆづき「とりあえず、移動する?」
ゆめ「うん…」
2人で歩き出すことになった。
並んで歩く距離が、少しだけ近い。
普段も一緒にいることはあるのに、今日はなんか違う。
ゆめ(なんでこんなドキドキしてるんだろ)
理由なんて、分かってる。
ゆづき「ゆめ、こっち」
人混みの中で、手を引かれる。
ゆめ「え、ちょ…」
自然に繋がれた手。
ゆづき「はぐれたら困るでしょ」
当たり前みたいに言う。
でも、その“当たり前”が一番ずるい。
ゆめ(私だけじゃないのに)
きっと誰にでもこうする。
そう分かってるのに——
ゆめ「……ありがと」
小さく呟く。
ゆづき「ん?」
ゆめ「なんでもない」
顔が見られない。
しばらく歩いて、人が少ない場所に出る。
小さな神社みたいなところ。
ゆづき「ちょっと休む?」
ゆめ「うん」
やっと手が離れる。
少しだけ、名残惜しい。
ベンチに座る。
風が気持ちいい。
さっきまでの騒がしさが嘘みたい。
ゆづき「なんかさ」
ゆめ「ん?」
ゆづき「こうやって2人でいるの、珍しくない?」
ゆめ「……確かに」
胸が、少しざわつく。
ゆづき「新鮮だね」
そう言って笑う。
その笑顔に、また心臓がうるさくなる。
でも、嫌じゃない。
むしろ、心地いい。
ゆづき「ゆめさ」
ゆめ「うん?」
ゆづき「さっきからちょっと静かじゃない?」
ドキッとする。
ゆめ「そう?」
ゆづき「うん。いつももっと話すのに」
鋭い。
ゆめ「……ちょっと緊張してるだけ」
つい本音が漏れる。
ゆづき「え、なんで?」
不思議そうな顔。
ゆめ(なんでって…)
言えるわけない。
好きな人と2人きりだから、なんて。
ゆめ「……ゆづきと2人だから」
半分だけ、本音。
ゆづき「なにそれ笑」
少し笑う。
でも、次の言葉が出てこない。
このまま黙ってたら、ただの“楽しかった思い出”で終わる。
それは、ちょっとだけ嫌だった。
ゆめ「……ねぇ」
ゆづき「ん?」
ゆめ「もしさ」
声が震える。
ゆめ「こうやって2人でいるのが、特別だったらどうする?」
ゆづきが、少しだけ真顔になる。
ゆづき「特別って?」
ゆめ「……そのままの意味」
視線を逸らす。
逃げたくなる。
でも——
ゆづき「……ゆめ」
名前を呼ばれる。
優しい声。
ゆづき「それってさ」
少し間を置いて
ゆづき「私のこと、そういう風に見てるってこと?」
心臓が止まりそうになる。
ゆめ「……うん」
やっと出た一言。
もう、ごまかせない。
怖くて、顔が上げられない。
ゆづき「そっか」
その一言で、胸がぎゅっとなる。
でも、次の瞬間。
ゆづきの手が、そっと触れてきた。
ゆづき「じゃあさ」
ゆめ「……?」
ゆづき「今の時間、特別にしよっか」
顔を上げる。
ゆづきは、少し照れたように笑っていた。
ゆめ「……いいの?」
ゆづき「うん」
少しだけ、距離が近づく。
ゆづき「私も、ちょっとドキドキしてるし」
その言葉だけで、全部報われた気がした。
遠くで、みんなの声が聞こえる。
でも——
まだ、動きたくなかった。
ゆづき「戻る?」
ゆめ「……もうちょっとだけ」
ゆづき「いいよ」
優しく笑う。
さっきより、少しだけ近い距離。
少しだけ違う関係。
迷子になったはずなのに。
見つけたのは——
ずっと隠してた、この気持ちだった。
旅館の部屋。
みんなでわいわい騒いで、お風呂に入って、気づけばもう夜。
「明日も早いし寝よ〜!」
そんな声が飛び交う中、布団に入る。
でも——
眠れるわけがなかった。
ゆめ(今日のこと、夢じゃないよね)
昼間のあの時間。
ゆづきの言葉。
手の温度。
全部、頭から離れない。
そっと体を起こす。
周りを見渡すと、みんな寝ている。
静かに部屋を出ようとした、そのとき。
ゆづき「どこ行くの?」
びくっとして振り向く。
暗闇の中で、目が合う。
ゆめ「…ちょっと外の空気吸いに」
ゆづき「一緒に行く」
夜の旅館の外。
ひんやりした空気と、静かな風。
昼とは違う、落ち着いた世界。
ゆづき「なんかさ」
ゆめ「うん?」
ゆづき「今日、濃すぎない?」
少し笑う。
ゆめ「…確かに」
ゆづき「はぐれて、変なこと言われて」
ゆめ「変なことって…」
ゆづき「特別、とか」
少しだけ、照れた声。
沈黙。
でも、その沈黙は嫌じゃない。
むしろ——
続きを待ってるみたいな空気。
ゆづき「さ」
ゆめ「ん?」
ゆづき「昼のあれ、本気?」
まっすぐな質問。
ゆめ「……うん」
迷わず答える。
もう、隠すつもりはなかった。
ゆめ「ずっと好きだった」
夜だからか、少しだけ素直になれる。
ゆめ「言うつもりなかったけど」
ゆづきは、じっと聞いてる。
ゆめ「でも、今日2人でいて……このまま終わるの嫌だって思った」
胸がうるさい。
でも、止められない。
ゆめ「だから…言った」
静かに、息を吐く。
風の音だけが流れる。
ゆづき「……そっか」
小さな声。
その一言で、少しだけ不安になる。
でも——
ゆづき「じゃあさ」
顔を上げる。
ゆづき「私も、正直に言うね」
一歩、近づく。
ゆづき「今日ゆめと2人でいて楽しかったし、ドキドキした」
心臓が跳ねる。
ゆづき「たぶんね」
少しだけ笑って
ゆづき「これ、ただの“特別な日”で終わらせたくない」
ゆめ「……」
言葉が出ない。
ゆづき「だから」
さらに距離が近づく。
ゆづき「付き合ってみる?」
その言葉は軽く聞こえるのに、ちゃんと重かった。
ゆめ「…いいの?」
ゆづき「いいよ」
ゆづき「むしろ、付き合いたい」
少し照れた顔。
ゆめ「……うん」
気づいたら、頷いてた。
ゆづき「じゃあ決まり」
ふっと笑って、そっと手を伸ばしてくる。
指先が触れて、そのまま絡まる。
ゆづき「これから、よろしく」
ゆめ「こちらこそ」
少しだけ笑い合う。
ゆづき「なんかさ」
ゆめ「ん?」
ゆづき「昼より近くない?」
ゆめ「気のせいじゃない」
そのまま、少しだけ距離が縮まる。
ゆづきの顔が近い。
ゆづき「……嫌?」
ゆめ「嫌じゃない」
むしろ——
そのまま、そっと触れるだけのキス。
夜の静けさに溶けるみたいに、優しい。
離れたあと、少しだけ照れた空気。
ゆづき「やば」
ゆめ「なにが」
ゆづき「思ったより、ちゃんと恋っぽい」
ゆめ「今さら?笑」
ゆづき「今さら笑」
2人で小さく笑う。
遠くで、虫の音。
静かな夜。
ゆづき「明日から、どうする?」
ゆめ「どうするって?」
ゆづき「みんなの前」
ゆめ「…内緒にする?」
ゆづき「それもあり」
少し考えて
ゆづき「でも、たぶんバレる」
ゆめ「なんで」
ゆづき「顔に出るから」
ゆめ「どっちが」
ゆづき「両方」
また笑い合う。
迷子になった昼。
そして、夜。
偶然みたいで、ちゃんと繋がったこの気持ち。
ゆづき「ねぇ」
ゆめ「ん?」
ゆづき「はぐれてよかったね」
ゆめ「そうだね」
心から、そう思えた。
みんなで来たはずの観光地は、人でごった返していた。
「ちょっと待って〜!」
誰かの声が聞こえた気がしたけど、気づいたときにはもう遅かった。
ゆめ「……あれ?」
隣にいるのは、ひとりだけ。
ゆづき「……あれ、みんなは?」
目が合う。
完全に、はぐれた。
ゆめ「やばくない?」
ゆづき「やばいね」
なのに、ゆづきは少し笑ってる。
ゆづき「まぁ、なんとかなるっしょ」
その余裕が、少しだけ羨ましい。
連絡を取ろうとしても、人混みでうまくいかない。
結局——
ゆづき「とりあえず、移動する?」
ゆめ「うん…」
2人で歩き出すことになった。
並んで歩く距離が、少しだけ近い。
普段も一緒にいることはあるのに、今日はなんか違う。
ゆめ(なんでこんなドキドキしてるんだろ)
理由なんて、分かってる。
ゆづき「ゆめ、こっち」
人混みの中で、手を引かれる。
ゆめ「え、ちょ…」
自然に繋がれた手。
ゆづき「はぐれたら困るでしょ」
当たり前みたいに言う。
でも、その“当たり前”が一番ずるい。
ゆめ(私だけじゃないのに)
きっと誰にでもこうする。
そう分かってるのに——
ゆめ「……ありがと」
小さく呟く。
ゆづき「ん?」
ゆめ「なんでもない」
顔が見られない。
しばらく歩いて、人が少ない場所に出る。
小さな神社みたいなところ。
ゆづき「ちょっと休む?」
ゆめ「うん」
やっと手が離れる。
少しだけ、名残惜しい。
ベンチに座る。
風が気持ちいい。
さっきまでの騒がしさが嘘みたい。
ゆづき「なんかさ」
ゆめ「ん?」
ゆづき「こうやって2人でいるの、珍しくない?」
ゆめ「……確かに」
胸が、少しざわつく。
ゆづき「新鮮だね」
そう言って笑う。
その笑顔に、また心臓がうるさくなる。
でも、嫌じゃない。
むしろ、心地いい。
ゆづき「ゆめさ」
ゆめ「うん?」
ゆづき「さっきからちょっと静かじゃない?」
ドキッとする。
ゆめ「そう?」
ゆづき「うん。いつももっと話すのに」
鋭い。
ゆめ「……ちょっと緊張してるだけ」
つい本音が漏れる。
ゆづき「え、なんで?」
不思議そうな顔。
ゆめ(なんでって…)
言えるわけない。
好きな人と2人きりだから、なんて。
ゆめ「……ゆづきと2人だから」
半分だけ、本音。
ゆづき「なにそれ笑」
少し笑う。
でも、次の言葉が出てこない。
このまま黙ってたら、ただの“楽しかった思い出”で終わる。
それは、ちょっとだけ嫌だった。
ゆめ「……ねぇ」
ゆづき「ん?」
ゆめ「もしさ」
声が震える。
ゆめ「こうやって2人でいるのが、特別だったらどうする?」
ゆづきが、少しだけ真顔になる。
ゆづき「特別って?」
ゆめ「……そのままの意味」
視線を逸らす。
逃げたくなる。
でも——
ゆづき「……ゆめ」
名前を呼ばれる。
優しい声。
ゆづき「それってさ」
少し間を置いて
ゆづき「私のこと、そういう風に見てるってこと?」
心臓が止まりそうになる。
ゆめ「……うん」
やっと出た一言。
もう、ごまかせない。
怖くて、顔が上げられない。
ゆづき「そっか」
その一言で、胸がぎゅっとなる。
でも、次の瞬間。
ゆづきの手が、そっと触れてきた。
ゆづき「じゃあさ」
ゆめ「……?」
ゆづき「今の時間、特別にしよっか」
顔を上げる。
ゆづきは、少し照れたように笑っていた。
ゆめ「……いいの?」
ゆづき「うん」
少しだけ、距離が近づく。
ゆづき「私も、ちょっとドキドキしてるし」
その言葉だけで、全部報われた気がした。
遠くで、みんなの声が聞こえる。
でも——
まだ、動きたくなかった。
ゆづき「戻る?」
ゆめ「……もうちょっとだけ」
ゆづき「いいよ」
優しく笑う。
さっきより、少しだけ近い距離。
少しだけ違う関係。
迷子になったはずなのに。
見つけたのは——
ずっと隠してた、この気持ちだった。
旅館の部屋。
みんなでわいわい騒いで、お風呂に入って、気づけばもう夜。
「明日も早いし寝よ〜!」
そんな声が飛び交う中、布団に入る。
でも——
眠れるわけがなかった。
ゆめ(今日のこと、夢じゃないよね)
昼間のあの時間。
ゆづきの言葉。
手の温度。
全部、頭から離れない。
そっと体を起こす。
周りを見渡すと、みんな寝ている。
静かに部屋を出ようとした、そのとき。
ゆづき「どこ行くの?」
びくっとして振り向く。
暗闇の中で、目が合う。
ゆめ「…ちょっと外の空気吸いに」
ゆづき「一緒に行く」
夜の旅館の外。
ひんやりした空気と、静かな風。
昼とは違う、落ち着いた世界。
ゆづき「なんかさ」
ゆめ「うん?」
ゆづき「今日、濃すぎない?」
少し笑う。
ゆめ「…確かに」
ゆづき「はぐれて、変なこと言われて」
ゆめ「変なことって…」
ゆづき「特別、とか」
少しだけ、照れた声。
沈黙。
でも、その沈黙は嫌じゃない。
むしろ——
続きを待ってるみたいな空気。
ゆづき「さ」
ゆめ「ん?」
ゆづき「昼のあれ、本気?」
まっすぐな質問。
ゆめ「……うん」
迷わず答える。
もう、隠すつもりはなかった。
ゆめ「ずっと好きだった」
夜だからか、少しだけ素直になれる。
ゆめ「言うつもりなかったけど」
ゆづきは、じっと聞いてる。
ゆめ「でも、今日2人でいて……このまま終わるの嫌だって思った」
胸がうるさい。
でも、止められない。
ゆめ「だから…言った」
静かに、息を吐く。
風の音だけが流れる。
ゆづき「……そっか」
小さな声。
その一言で、少しだけ不安になる。
でも——
ゆづき「じゃあさ」
顔を上げる。
ゆづき「私も、正直に言うね」
一歩、近づく。
ゆづき「今日ゆめと2人でいて楽しかったし、ドキドキした」
心臓が跳ねる。
ゆづき「たぶんね」
少しだけ笑って
ゆづき「これ、ただの“特別な日”で終わらせたくない」
ゆめ「……」
言葉が出ない。
ゆづき「だから」
さらに距離が近づく。
ゆづき「付き合ってみる?」
その言葉は軽く聞こえるのに、ちゃんと重かった。
ゆめ「…いいの?」
ゆづき「いいよ」
ゆづき「むしろ、付き合いたい」
少し照れた顔。
ゆめ「……うん」
気づいたら、頷いてた。
ゆづき「じゃあ決まり」
ふっと笑って、そっと手を伸ばしてくる。
指先が触れて、そのまま絡まる。
ゆづき「これから、よろしく」
ゆめ「こちらこそ」
少しだけ笑い合う。
ゆづき「なんかさ」
ゆめ「ん?」
ゆづき「昼より近くない?」
ゆめ「気のせいじゃない」
そのまま、少しだけ距離が縮まる。
ゆづきの顔が近い。
ゆづき「……嫌?」
ゆめ「嫌じゃない」
むしろ——
そのまま、そっと触れるだけのキス。
夜の静けさに溶けるみたいに、優しい。
離れたあと、少しだけ照れた空気。
ゆづき「やば」
ゆめ「なにが」
ゆづき「思ったより、ちゃんと恋っぽい」
ゆめ「今さら?笑」
ゆづき「今さら笑」
2人で小さく笑う。
遠くで、虫の音。
静かな夜。
ゆづき「明日から、どうする?」
ゆめ「どうするって?」
ゆづき「みんなの前」
ゆめ「…内緒にする?」
ゆづき「それもあり」
少し考えて
ゆづき「でも、たぶんバレる」
ゆめ「なんで」
ゆづき「顔に出るから」
ゆめ「どっちが」
ゆづき「両方」
また笑い合う。
迷子になった昼。
そして、夜。
偶然みたいで、ちゃんと繋がったこの気持ち。
ゆづき「ねぇ」
ゆめ「ん?」
ゆづき「はぐれてよかったね」
ゆめ「そうだね」
心から、そう思えた。