村山美羽
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日の落ちかけた図書室の最奥。
私は、目の前の光景に心臓が破裂しそうなほど脈打つのを感じていた。
みう「ねぇ、ゆめ。ここ、教えて?」
村山美羽――みうが、私の机に身を乗り出してノートを指差す。
その距離、わずか数センチ。
みうの綺麗な黒髪からかすかにシャンプーの甘い香りが漂ってきて、私は息をすることすら忘れてしまいそうになる。
ゆめ「あ、うん……ここは、公式をそのまま当てはめればよくて……」
みう「ふーん。ゆめの教え方、わかりやすいね」
みうはクスッと微笑むとさらに顔を近づけてきた。
私の視線が泳ぐのをその涼しげな瞳で見届けながら、楽しそうに目を細めている。
知っている。
みうは、私がみうをそういう目で見ていることをとうに気づいているのだ。
気づいた上であえてこうして触れそうな距離まで近づいてきて、私の動揺を見て楽しんでいる。
ゆめ「……みう、ちょっと近い、よ」
みう「え? そう? 私たち、友達なんだからこれくらい普通じゃん」
みうはわざとらしく小首をかしげて、私のブレザーの袖をちょんと引っ張った。
耳の奥が熱くなる。
みうのこういうずるさに、私はいつも振り回されてばかりだ。
みう「ねぇ、ゆめ。顔、赤いよ? 図書室、冷房効いてるのにね」
ゆめ「それは……みうが、急に近づくから……っ」
みう「ふふ、からかい甲斐があるなぁ〜」
みうは満足そうに笑うと私の髪にそっと触れ一筋の毛束を耳にかけた。
その指先が私の耳に触れた瞬間、ビクッと身体が強張る。
みうの視線が私の唇へとゆっくり落ちていく。
みう「そんなに緊張されたら、私まで変な気持ちになっちゃうじゃん」
冗談めかしたトーンだけど、その瞳の奥には、いつもと違う真剣な光が混ざっているように見えた。
からかわれているのは分かっている。
それでも、この心地いい罠から私はどうしても抜け出せない。
図書室を閉館のベルが包み込む。
私たちは荷物をまとめ、夕焼けで真っ赤に染まった渡り廊下を歩いていた。
ゆめ「……みう、今日はもう帰るの?」
みう「んー、どうしよっかな。ゆめは、もう帰りたい?」
みうは歩幅を緩めて、私の顔を覗き込んできた。
夕日に照らされたみうの横顔が綺麗すぎて、私は思わず視線を落としてしまう。
ゆめ「帰りたい、わけじゃないけど……」
みう「じゃあ、決まり。私のワガママに付き合って」
みうは当然のように私の左手首を掴むと、人気のない旧校舎の階段へと引っ張っていった。
カツカツとローファーの音が静かな校舎に響く。
掴まれた手首から、みうの体温がじりじりと伝わってきてそれだけで頭がどうにかなりそうだった。
階段の踊り場。
大きな窓から差し込む夕日の中に私たちは立ち止まる。
ゆめ「みう、ここ、誰も来ないよ……?」
みう「誰も来ないから、いいんじゃん」
みうは掴んでいた私の手首を離すと、今度は私の両肩を掴んで背後の壁へと軽く押し付けた。
いわゆる、壁ドン、というやつ。
私の背中が冷たい壁に触れると同時に、みうの身体がすぐ目の前まで迫る。
みう「ねぇ、ゆめ。さっき図書室で変な気持ちになるって言ったの、冗談だと思った?」
ゆめ「え……っ、だって、みうはいつも私をからかって……」
みう「からかってるよ。だって、ゆめの反応、可愛いんだもん。……でもね」
みうの声のトーンが、一段低くなる。
いつも私を弄ぶような余裕に満ちた瞳が、今は少しだけ熱を帯びて潤んでいるように見えた。
みう「可愛いから見ていたいだけなのに、最近それだけじゃ足りなくなってきた」
ゆめ「みう……?」
みうの顔が、さらに近づいてくる。
お互いの吐息が触れ合うほどの距離。
みうの視線は、私の目と唇を何度も往復していた。
みう「ゆめが私のこと好きなの知ってるよ。……じゃあ、私はゆめのこと、どう思ってると思う?」
ゆめ「それ、は……」
答えに詰まる私の唇に、みうは自分の人差し指をそっと当てて言葉を遮った。
いたずらっぽく、だけど酷く艶っぽく、みうが囁く。
みう「答えは、まだ教えてあげない。ゆめが、もっと余裕なくなるところ見たいから」
そう言って、みうは指を離すと私の耳元に唇を寄せた。
みう「でも……明日もこうして、私に振り回されてくれるよね?」
耳にかかる吐息と、確信犯なセリフ。
私の気持ちを知っていて、あえて逃がさないように囲い込むみう。
その少し歪んだ優越感に満ちた瞳に私はやっぱり、抗うことなんて出来そうになかった。
私は、目の前の光景に心臓が破裂しそうなほど脈打つのを感じていた。
みう「ねぇ、ゆめ。ここ、教えて?」
村山美羽――みうが、私の机に身を乗り出してノートを指差す。
その距離、わずか数センチ。
みうの綺麗な黒髪からかすかにシャンプーの甘い香りが漂ってきて、私は息をすることすら忘れてしまいそうになる。
ゆめ「あ、うん……ここは、公式をそのまま当てはめればよくて……」
みう「ふーん。ゆめの教え方、わかりやすいね」
みうはクスッと微笑むとさらに顔を近づけてきた。
私の視線が泳ぐのをその涼しげな瞳で見届けながら、楽しそうに目を細めている。
知っている。
みうは、私がみうをそういう目で見ていることをとうに気づいているのだ。
気づいた上であえてこうして触れそうな距離まで近づいてきて、私の動揺を見て楽しんでいる。
ゆめ「……みう、ちょっと近い、よ」
みう「え? そう? 私たち、友達なんだからこれくらい普通じゃん」
みうはわざとらしく小首をかしげて、私のブレザーの袖をちょんと引っ張った。
耳の奥が熱くなる。
みうのこういうずるさに、私はいつも振り回されてばかりだ。
みう「ねぇ、ゆめ。顔、赤いよ? 図書室、冷房効いてるのにね」
ゆめ「それは……みうが、急に近づくから……っ」
みう「ふふ、からかい甲斐があるなぁ〜」
みうは満足そうに笑うと私の髪にそっと触れ一筋の毛束を耳にかけた。
その指先が私の耳に触れた瞬間、ビクッと身体が強張る。
みうの視線が私の唇へとゆっくり落ちていく。
みう「そんなに緊張されたら、私まで変な気持ちになっちゃうじゃん」
冗談めかしたトーンだけど、その瞳の奥には、いつもと違う真剣な光が混ざっているように見えた。
からかわれているのは分かっている。
それでも、この心地いい罠から私はどうしても抜け出せない。
図書室を閉館のベルが包み込む。
私たちは荷物をまとめ、夕焼けで真っ赤に染まった渡り廊下を歩いていた。
ゆめ「……みう、今日はもう帰るの?」
みう「んー、どうしよっかな。ゆめは、もう帰りたい?」
みうは歩幅を緩めて、私の顔を覗き込んできた。
夕日に照らされたみうの横顔が綺麗すぎて、私は思わず視線を落としてしまう。
ゆめ「帰りたい、わけじゃないけど……」
みう「じゃあ、決まり。私のワガママに付き合って」
みうは当然のように私の左手首を掴むと、人気のない旧校舎の階段へと引っ張っていった。
カツカツとローファーの音が静かな校舎に響く。
掴まれた手首から、みうの体温がじりじりと伝わってきてそれだけで頭がどうにかなりそうだった。
階段の踊り場。
大きな窓から差し込む夕日の中に私たちは立ち止まる。
ゆめ「みう、ここ、誰も来ないよ……?」
みう「誰も来ないから、いいんじゃん」
みうは掴んでいた私の手首を離すと、今度は私の両肩を掴んで背後の壁へと軽く押し付けた。
いわゆる、壁ドン、というやつ。
私の背中が冷たい壁に触れると同時に、みうの身体がすぐ目の前まで迫る。
みう「ねぇ、ゆめ。さっき図書室で変な気持ちになるって言ったの、冗談だと思った?」
ゆめ「え……っ、だって、みうはいつも私をからかって……」
みう「からかってるよ。だって、ゆめの反応、可愛いんだもん。……でもね」
みうの声のトーンが、一段低くなる。
いつも私を弄ぶような余裕に満ちた瞳が、今は少しだけ熱を帯びて潤んでいるように見えた。
みう「可愛いから見ていたいだけなのに、最近それだけじゃ足りなくなってきた」
ゆめ「みう……?」
みうの顔が、さらに近づいてくる。
お互いの吐息が触れ合うほどの距離。
みうの視線は、私の目と唇を何度も往復していた。
みう「ゆめが私のこと好きなの知ってるよ。……じゃあ、私はゆめのこと、どう思ってると思う?」
ゆめ「それ、は……」
答えに詰まる私の唇に、みうは自分の人差し指をそっと当てて言葉を遮った。
いたずらっぽく、だけど酷く艶っぽく、みうが囁く。
みう「答えは、まだ教えてあげない。ゆめが、もっと余裕なくなるところ見たいから」
そう言って、みうは指を離すと私の耳元に唇を寄せた。
みう「でも……明日もこうして、私に振り回されてくれるよね?」
耳にかかる吐息と、確信犯なセリフ。
私の気持ちを知っていて、あえて逃がさないように囲い込むみう。
その少し歪んだ優越感に満ちた瞳に私はやっぱり、抗うことなんて出来そうになかった。