中嶋優月
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ゆづきside.
同級生のゆめは、なぜかめちゃくちゃモテる。
無口で、いつもポーカーフェイスで、何を考えているのかさっぱりわからないやつなのに、女子からの人気が絶えない。
……いや、顔は確かにいいんだよ?
整った目鼻立ちに、さらさらの髪。
少女漫画のヒーローみたいだとは思う。
でも、それ以外に惹かれるところが本当にわからない。
だって、私と話す時だっていつもこんな感じだし。
ゆめ「へぇ〜。」
ゆづき「ちょっと! なんでいつもそんなに興味無さそうなの!! それだとモテないよ??」
ゆめ「別に困ってない。自分の心配すれば」
ゆづき「はぁ〜!? むかつく!!」
ゆめ「ふっ。笑」
ゆづき「あ、またそうやって鼻で笑った!!」
……ね? 仲はいいほうだと思うんだけど、とにかく一言一言が生意気でむかつくのだ。
こんなやつがモテるなんて、絶対に納得がいかない。
私は、ゆめがなぜモテるのか、その秘密を暴くために「観察」することにした。
観察1日目。放課後の教室。
あいつは無口なだけで、意外と気配りができて周りをしっかり見ていることに気づいた。
クラスメイトが落とした消しゴムを無言で拾ってあげたり、窓から差し込む西光が眩しそうな席の人のために、さりげなくカーテンを閉めてあげたり。
観察2日目。お昼休み。
あいつは頭がいい。
テスト前だからって、他のクラスの女子に勉強を頼まれて、嫌な顔ひとつせずに教えてあげていた。
しかも教え方がすごくわかりやすい。
観察3日目。授業中。
あいつは意外と授業中に寝ていない。
いつも気怠そうにしてるくせに、ノートはめちゃくちゃ綺麗に取っている。
ゆづき(な、なによ……。完璧超人かよ。……ん?)
その時、勉強を教えてもらっている女子と、楽しそうに笑い合うゆめの姿が目に入った。
ゆめ「あはは、そこは公式が違うよ」
その瞬間、心臓が跳ねた。
え……? なにそれ。
私と話す時は「ふっ」って鼻で笑うくらいなのに。
他の人と喋ってる時の方が、ずっと柔らかく笑ってない……? そんな風に、優しく笑うんだ。
ズキッ。
胸の奥が、ありえないくらい激しく痛んだ。
ゆづき「え、なにこれ……」
息が苦しくなって、私はその場から逃げるように立ち去った。
あいつが誰とどう笑おうが私の勝手なのに、なんでこんなに胸が苦しいの……?
ゆめside.
ゆづきが最近、あからさまに私をジロジロ見てくる。
本人は隠れて観察しているつもりみたいだけど、目が合うと大慌てでそっぽを向くからバレバレで本当に面白い。
ゆめ(あ〜、今日もゆづきかわいいな。すき)
そんなことを思いながら、机に頬杖をついてゆづきを見つめる。
ゆづき「ちょっと、何見てんの。私の顔になんか付いてる?」
眉をひそめて、ぷくーっと頬を膨らませるゆづき。
ゆめ「アホずらしてんな〜って思って」
ゆづき「はぁ!?!? そんな目で人の顔見ないでくれるかな???」
ゆめ「ふっ。」
ゆづき「またそうやって笑って〜! ほんっとむかつく!」
ゆづきの反応が、いちいち可愛くて面白くて、愛おしすぎてつい意地悪を言っていじっちゃう。
他の人には変に誤解されたくないから、愛想笑いか真面目な顔しか見せないようにしてる。
でも、ゆづきの前でだけは、どうしても素の自分が出ちゃうしニヤニヤが止まらなくなるんだよね。
ゆづきが「むかつく!」って言いながらも、ずっと私のことを見てくれているの、実はめちゃくちゃ嬉しい。
ゆめ(いつになったら、この視線の意味に気づいてくれるかな……)
激おこモードのゆづきを眺めながら私は心の中で、早くこの恋が進展するための作戦を練り始めるのだった。
ゆづきside.
あの日以来、私はゆめとまともに目を合わせられずにいた。
だって、あいつが他の女子と笑っているのを見て胸が痛むなんて、まるで私が――ゆめのことを好きみたいじゃないか。
ゆづき(いやいや、あり得ない! 私はただ、あいつのむかつく態度にイライラしてるだけ!)
そう自分に言い聞かせながら、文化祭の準備で居残った放課後の教室。
買い出しから戻ると、教室には誰もいなくて、窓際の席にゆめがぽつんと座ってスマホをいじっていた。
ゆづき「あれ……みんなは?」
ゆめ「あ、ゆづき。他のやつらはゴミ捨て。すぐ戻るって」
ゆづき「そ、そっか……」
気まずい。二人きりなんて、今の私には刺激が強すぎる。
逃げようと一歩下がった瞬間、ゆめがスマホを置いて私を見た。
ゆめ「ゆづき、最近私のこと避けてるでしょ」
ゆづき「えっ!? 避けて、ないし……!」
ゆめ「嘘。目が合ってもすぐそっぽ向くし、話しかけても生返事。……私、なんか怒らせることした?」
いつもなら「ふっ」って笑うくせに、今のゆめの顔は、見たこともないくらい真剣で、どこか寂しそうで。
その表情を見た瞬間、胸の奥のモヤモヤが溢れ出してしまった。
ゆづき「……だって、ゆめは私といるとき、いつも意地悪ばっかり言うじゃん! アホ面とか、むかつくことばっかり!」
ゆめ「それは……」
ゆづき「他の子と話してる時は、あんなに優しく楽しそうに笑うくせに……っ! 私といる時は、いつも冷たいじゃん。だから、私と話すの嫌なの
かなって……!」
あ、言っちゃった。
これじゃまるで、私があいつの笑顔を独り占めしたくて嫉妬してるみたいじゃん。
恥ずかしさで顔がカッと熱くなる。
でも、もう止まらない。
ゆづき「だから、もう観察するのやめたの! ゆめがモテる理由なんて、どうでもいい……っ!」
涙目で叫んだ私を、ゆめは目を見開いてフリーズしたように見つめていた。
沈黙が痛い。
やっぱり、めんどくさい奴って思われたよね。
ゆづき「……もういい。帰る」
カバンを掴んで走り去ろうとしたその時、後ろから手首を強く掴まれた。
ゆづき「きゃっ……!?」
引き戻されて、気づけば私はゆめに壁際に追い詰められていた。
あいつの綺麗な顔が、すぐ目の前にある。
心臓がうるさいくらいに脈打つ。
ゆめ「……勘違いしないで」
ゆづき「え……?」
ゆめの声は少し震えていて、その耳の先が真っ赤に染まっていることに気づいた。
ゆめ「他の人と話してる時は、ただの愛想笑い。変に誤解されたくないから、無難に笑顔作ってるだけ。……でも、ゆづきの前では、取り繕うの無理なんだよ」
ゆづき「え……それって……」
ゆめ「ゆづきが可愛くて、反応が面白くて、愛おしすぎて、つい意地悪言っちゃうの。……他の奴には、あんな引きつった顔も、怒った顔も、絶対に見せない。ゆづきにだけ、私の全部を見てほしいから」
ゆめのまっすぐな視線が私を射抜く。
いつも何を考えているかわからなかったあいつの瞳に今は、私への溢れんばかりの気持ちが映っていた。
ゆめ「他の子に笑いかけてるの見て怒るなんて……ゆづき、それってどういう意味か分かってる?」
さ
ゆづき「……っ、わ、わかんない……」
ゆめ「じゃあ、分かるまでちゃんと言う。……私、ゆづきが好きなの。ずっと前から」
ポーカーフェイスなアイツの、初めて見る必死な告白。
私の胸の痛みは、一瞬でとろけるような甘い熱へと変わっていった。
ゆづき「……っ、ほんとに、むかつく……」
ゆめ「ふっ。またそれ?」
ゆづき「だって……こんなの、私もゆめのことが好きだって認めるしかないじゃん……!」
私の言葉を聞いた瞬間、ゆめの顔がパッと輝いて、今まで見たこともないくらい世界で一番優しくて幸せそうな笑みを浮かべた。
ゆめ「あはは、やっと言わせた。私の勝ち、だね」
ゆづき「もう! またそうやってすぐ調子に乗る!」
ゆめ「いいじゃん、両想いなんだから。……ねぇ、これからは観察じゃなくて、特等席で私のこと見ててよ、ゆづき」
そう言って私の手を包み込んだゆめの手は、少しだけ汗ばんでいて。
意地悪だけど、誰よりも愛おしい私の恋人が、そこにはいた。
同級生のゆめは、なぜかめちゃくちゃモテる。
無口で、いつもポーカーフェイスで、何を考えているのかさっぱりわからないやつなのに、女子からの人気が絶えない。
……いや、顔は確かにいいんだよ?
整った目鼻立ちに、さらさらの髪。
少女漫画のヒーローみたいだとは思う。
でも、それ以外に惹かれるところが本当にわからない。
だって、私と話す時だっていつもこんな感じだし。
ゆめ「へぇ〜。」
ゆづき「ちょっと! なんでいつもそんなに興味無さそうなの!! それだとモテないよ??」
ゆめ「別に困ってない。自分の心配すれば」
ゆづき「はぁ〜!? むかつく!!」
ゆめ「ふっ。笑」
ゆづき「あ、またそうやって鼻で笑った!!」
……ね? 仲はいいほうだと思うんだけど、とにかく一言一言が生意気でむかつくのだ。
こんなやつがモテるなんて、絶対に納得がいかない。
私は、ゆめがなぜモテるのか、その秘密を暴くために「観察」することにした。
観察1日目。放課後の教室。
あいつは無口なだけで、意外と気配りができて周りをしっかり見ていることに気づいた。
クラスメイトが落とした消しゴムを無言で拾ってあげたり、窓から差し込む西光が眩しそうな席の人のために、さりげなくカーテンを閉めてあげたり。
観察2日目。お昼休み。
あいつは頭がいい。
テスト前だからって、他のクラスの女子に勉強を頼まれて、嫌な顔ひとつせずに教えてあげていた。
しかも教え方がすごくわかりやすい。
観察3日目。授業中。
あいつは意外と授業中に寝ていない。
いつも気怠そうにしてるくせに、ノートはめちゃくちゃ綺麗に取っている。
ゆづき(な、なによ……。完璧超人かよ。……ん?)
その時、勉強を教えてもらっている女子と、楽しそうに笑い合うゆめの姿が目に入った。
ゆめ「あはは、そこは公式が違うよ」
その瞬間、心臓が跳ねた。
え……? なにそれ。
私と話す時は「ふっ」って鼻で笑うくらいなのに。
他の人と喋ってる時の方が、ずっと柔らかく笑ってない……? そんな風に、優しく笑うんだ。
ズキッ。
胸の奥が、ありえないくらい激しく痛んだ。
ゆづき「え、なにこれ……」
息が苦しくなって、私はその場から逃げるように立ち去った。
あいつが誰とどう笑おうが私の勝手なのに、なんでこんなに胸が苦しいの……?
ゆめside.
ゆづきが最近、あからさまに私をジロジロ見てくる。
本人は隠れて観察しているつもりみたいだけど、目が合うと大慌てでそっぽを向くからバレバレで本当に面白い。
ゆめ(あ〜、今日もゆづきかわいいな。すき)
そんなことを思いながら、机に頬杖をついてゆづきを見つめる。
ゆづき「ちょっと、何見てんの。私の顔になんか付いてる?」
眉をひそめて、ぷくーっと頬を膨らませるゆづき。
ゆめ「アホずらしてんな〜って思って」
ゆづき「はぁ!?!? そんな目で人の顔見ないでくれるかな???」
ゆめ「ふっ。」
ゆづき「またそうやって笑って〜! ほんっとむかつく!」
ゆづきの反応が、いちいち可愛くて面白くて、愛おしすぎてつい意地悪を言っていじっちゃう。
他の人には変に誤解されたくないから、愛想笑いか真面目な顔しか見せないようにしてる。
でも、ゆづきの前でだけは、どうしても素の自分が出ちゃうしニヤニヤが止まらなくなるんだよね。
ゆづきが「むかつく!」って言いながらも、ずっと私のことを見てくれているの、実はめちゃくちゃ嬉しい。
ゆめ(いつになったら、この視線の意味に気づいてくれるかな……)
激おこモードのゆづきを眺めながら私は心の中で、早くこの恋が進展するための作戦を練り始めるのだった。
ゆづきside.
あの日以来、私はゆめとまともに目を合わせられずにいた。
だって、あいつが他の女子と笑っているのを見て胸が痛むなんて、まるで私が――ゆめのことを好きみたいじゃないか。
ゆづき(いやいや、あり得ない! 私はただ、あいつのむかつく態度にイライラしてるだけ!)
そう自分に言い聞かせながら、文化祭の準備で居残った放課後の教室。
買い出しから戻ると、教室には誰もいなくて、窓際の席にゆめがぽつんと座ってスマホをいじっていた。
ゆづき「あれ……みんなは?」
ゆめ「あ、ゆづき。他のやつらはゴミ捨て。すぐ戻るって」
ゆづき「そ、そっか……」
気まずい。二人きりなんて、今の私には刺激が強すぎる。
逃げようと一歩下がった瞬間、ゆめがスマホを置いて私を見た。
ゆめ「ゆづき、最近私のこと避けてるでしょ」
ゆづき「えっ!? 避けて、ないし……!」
ゆめ「嘘。目が合ってもすぐそっぽ向くし、話しかけても生返事。……私、なんか怒らせることした?」
いつもなら「ふっ」って笑うくせに、今のゆめの顔は、見たこともないくらい真剣で、どこか寂しそうで。
その表情を見た瞬間、胸の奥のモヤモヤが溢れ出してしまった。
ゆづき「……だって、ゆめは私といるとき、いつも意地悪ばっかり言うじゃん! アホ面とか、むかつくことばっかり!」
ゆめ「それは……」
ゆづき「他の子と話してる時は、あんなに優しく楽しそうに笑うくせに……っ! 私といる時は、いつも冷たいじゃん。だから、私と話すの嫌なの
かなって……!」
あ、言っちゃった。
これじゃまるで、私があいつの笑顔を独り占めしたくて嫉妬してるみたいじゃん。
恥ずかしさで顔がカッと熱くなる。
でも、もう止まらない。
ゆづき「だから、もう観察するのやめたの! ゆめがモテる理由なんて、どうでもいい……っ!」
涙目で叫んだ私を、ゆめは目を見開いてフリーズしたように見つめていた。
沈黙が痛い。
やっぱり、めんどくさい奴って思われたよね。
ゆづき「……もういい。帰る」
カバンを掴んで走り去ろうとしたその時、後ろから手首を強く掴まれた。
ゆづき「きゃっ……!?」
引き戻されて、気づけば私はゆめに壁際に追い詰められていた。
あいつの綺麗な顔が、すぐ目の前にある。
心臓がうるさいくらいに脈打つ。
ゆめ「……勘違いしないで」
ゆづき「え……?」
ゆめの声は少し震えていて、その耳の先が真っ赤に染まっていることに気づいた。
ゆめ「他の人と話してる時は、ただの愛想笑い。変に誤解されたくないから、無難に笑顔作ってるだけ。……でも、ゆづきの前では、取り繕うの無理なんだよ」
ゆづき「え……それって……」
ゆめ「ゆづきが可愛くて、反応が面白くて、愛おしすぎて、つい意地悪言っちゃうの。……他の奴には、あんな引きつった顔も、怒った顔も、絶対に見せない。ゆづきにだけ、私の全部を見てほしいから」
ゆめのまっすぐな視線が私を射抜く。
いつも何を考えているかわからなかったあいつの瞳に今は、私への溢れんばかりの気持ちが映っていた。
ゆめ「他の子に笑いかけてるの見て怒るなんて……ゆづき、それってどういう意味か分かってる?」
さ
ゆづき「……っ、わ、わかんない……」
ゆめ「じゃあ、分かるまでちゃんと言う。……私、ゆづきが好きなの。ずっと前から」
ポーカーフェイスなアイツの、初めて見る必死な告白。
私の胸の痛みは、一瞬でとろけるような甘い熱へと変わっていった。
ゆづき「……っ、ほんとに、むかつく……」
ゆめ「ふっ。またそれ?」
ゆづき「だって……こんなの、私もゆめのことが好きだって認めるしかないじゃん……!」
私の言葉を聞いた瞬間、ゆめの顔がパッと輝いて、今まで見たこともないくらい世界で一番優しくて幸せそうな笑みを浮かべた。
ゆめ「あはは、やっと言わせた。私の勝ち、だね」
ゆづき「もう! またそうやってすぐ調子に乗る!」
ゆめ「いいじゃん、両想いなんだから。……ねぇ、これからは観察じゃなくて、特等席で私のこと見ててよ、ゆづき」
そう言って私の手を包み込んだゆめの手は、少しだけ汗ばんでいて。
意地悪だけど、誰よりも愛おしい私の恋人が、そこにはいた。