山下瞳月×村井優
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楽屋のソファ。
いつもなら当たり前のように隣同士に座ってくっついていたのに、今の2人の間には数人分もの不自然な空白がある。
事の発端は、本当に些細なことだった。
どちらの言い分が正しいとか、そんなのどうでもいいくらい小さなすれ違い。
いつもなら「もー、しづきってば!」「ゆうが悪いんでしょ」なんて言って、その日のうちに笑い合って終わるはずだった。
なのに、今回はお互いに少しだけ意地を張り合ってしまった。
それが一日、二日とずるずる長引くうちに謝るタイミングを完全に失ってしまったのだ。
しづき「……はぁ」
小さくため息をついて、しづきはスマホに目を落とした。画面には何の通知もない。
頭が冷えて冷静になればなるほど、胸の奥を占めていくのは後悔と、ぽっかりと空いた寂しさだけだった。
リハーサルが終わり、メンバーがぽつぽつと帰り始める。
しづきがリハーサル室の隅で一人、片付けをしていると、すぐ近くに気配を感じた。
見上げると、そこにはレッスン着姿のゆうが立っていた。
いつもなら、弾けたような笑顔で「しづき、一緒に帰ろ!」と言ってくれるはずのゆうが今は少し怯えたような、でも決意を秘めたような目でしづきを見つめている。
ゆう「……しづき、ちょっと、いい?」
しづき「……うん」
2人きりになった広い空間。
鏡に映る2人の距離は、ここ数日の冷戦を物語るように少しだけ開いていた。
しづき「……あのさ、ゆう」
ゆう「あ、ごめん、私から言わせて!」
ゆうが慌てたように言葉を遮った。
その一生懸命な表情に、しづきの胸がちくりと痛む。
ゆう「私ね、この数日間、ずっと考えてたの。しづきと喋らなくなって……。お部屋にいても、楽屋にいても、なんか全然楽しくなくて」
しづき「……」
ゆう「いつも私が『ねえ聞いて!』って、本当にどうでもいいくだらない話ばっかりしてたじゃん? 今日のアイスが美味しかったとか、あの服が可愛いとか……。しづきはいつも『ふーん』って素っ気ない顔しながらも、ちゃんと聞いてくれてたでしょ? 喋らなくなって、初めて気づいたの。私、ただしづきの横にいて、私のくだらない話を聞いてもらってるだけで、それだけでめちゃくちゃ幸せだったんだなって」
ゆうの瞳に、うっすらと涙が浮かぶ。
その言葉は、しづきがこの数日間一人の部屋でずっと考えていた思いと、全く同じだった。
しづき「ゆう……」
ゆう「意地張って、ずるずる長引かせちゃってごめんね。私、やっぱりしづきが隣にいないの、嫌だよ……」
ぽろぽろと涙を流し始めたゆうを見てしづきの心の中にあった頑なな意地は、跡形もなく溶けて消えていった。
しづきは一歩、その距離を詰めて優の華奢な身体をそっと抱きしめた。
しづき「私の方こそ、ごめん。……ゆうが話しかけてくれないと静かすぎて変な感じだった。全然落ち着かなくて」
ゆう「しづき……っ」
しづき「私、ゆうのくだらない話、本当は全然退屈じゃなかったよ。むしろ、それ聞いてる時間が一番安心するっていうか、幸せだった。だから、もう泣かないで?」
ゆうの背中を優しくぽんぽんと叩くと、ゆうはしづきの胸に顔を埋めたまま、ふふっと小さく笑った。
ゆう「ほんと? じゃあさ、今日のご飯何食べたか、今から全部話してもいい?」
しづき「うん、全部聞く。どんなに長くなってもずっと付き合ってあげる」
ゆう「やった。……あのね、今日の朝ね……」
早速始まった優のマシンガントーク。
いつも通りの、なんてことない他愛のない時間。
だけど、一度失いかけたからこそその甘くて温かい日常が、2人にとって何よりも特別なものだと分かっていた。
鏡に映る2人の距離は、もう1ミリも開いていなかった。
いつもなら当たり前のように隣同士に座ってくっついていたのに、今の2人の間には数人分もの不自然な空白がある。
事の発端は、本当に些細なことだった。
どちらの言い分が正しいとか、そんなのどうでもいいくらい小さなすれ違い。
いつもなら「もー、しづきってば!」「ゆうが悪いんでしょ」なんて言って、その日のうちに笑い合って終わるはずだった。
なのに、今回はお互いに少しだけ意地を張り合ってしまった。
それが一日、二日とずるずる長引くうちに謝るタイミングを完全に失ってしまったのだ。
しづき「……はぁ」
小さくため息をついて、しづきはスマホに目を落とした。画面には何の通知もない。
頭が冷えて冷静になればなるほど、胸の奥を占めていくのは後悔と、ぽっかりと空いた寂しさだけだった。
リハーサルが終わり、メンバーがぽつぽつと帰り始める。
しづきがリハーサル室の隅で一人、片付けをしていると、すぐ近くに気配を感じた。
見上げると、そこにはレッスン着姿のゆうが立っていた。
いつもなら、弾けたような笑顔で「しづき、一緒に帰ろ!」と言ってくれるはずのゆうが今は少し怯えたような、でも決意を秘めたような目でしづきを見つめている。
ゆう「……しづき、ちょっと、いい?」
しづき「……うん」
2人きりになった広い空間。
鏡に映る2人の距離は、ここ数日の冷戦を物語るように少しだけ開いていた。
しづき「……あのさ、ゆう」
ゆう「あ、ごめん、私から言わせて!」
ゆうが慌てたように言葉を遮った。
その一生懸命な表情に、しづきの胸がちくりと痛む。
ゆう「私ね、この数日間、ずっと考えてたの。しづきと喋らなくなって……。お部屋にいても、楽屋にいても、なんか全然楽しくなくて」
しづき「……」
ゆう「いつも私が『ねえ聞いて!』って、本当にどうでもいいくだらない話ばっかりしてたじゃん? 今日のアイスが美味しかったとか、あの服が可愛いとか……。しづきはいつも『ふーん』って素っ気ない顔しながらも、ちゃんと聞いてくれてたでしょ? 喋らなくなって、初めて気づいたの。私、ただしづきの横にいて、私のくだらない話を聞いてもらってるだけで、それだけでめちゃくちゃ幸せだったんだなって」
ゆうの瞳に、うっすらと涙が浮かぶ。
その言葉は、しづきがこの数日間一人の部屋でずっと考えていた思いと、全く同じだった。
しづき「ゆう……」
ゆう「意地張って、ずるずる長引かせちゃってごめんね。私、やっぱりしづきが隣にいないの、嫌だよ……」
ぽろぽろと涙を流し始めたゆうを見てしづきの心の中にあった頑なな意地は、跡形もなく溶けて消えていった。
しづきは一歩、その距離を詰めて優の華奢な身体をそっと抱きしめた。
しづき「私の方こそ、ごめん。……ゆうが話しかけてくれないと静かすぎて変な感じだった。全然落ち着かなくて」
ゆう「しづき……っ」
しづき「私、ゆうのくだらない話、本当は全然退屈じゃなかったよ。むしろ、それ聞いてる時間が一番安心するっていうか、幸せだった。だから、もう泣かないで?」
ゆうの背中を優しくぽんぽんと叩くと、ゆうはしづきの胸に顔を埋めたまま、ふふっと小さく笑った。
ゆう「ほんと? じゃあさ、今日のご飯何食べたか、今から全部話してもいい?」
しづき「うん、全部聞く。どんなに長くなってもずっと付き合ってあげる」
ゆう「やった。……あのね、今日の朝ね……」
早速始まった優のマシンガントーク。
いつも通りの、なんてことない他愛のない時間。
だけど、一度失いかけたからこそその甘くて温かい日常が、2人にとって何よりも特別なものだと分かっていた。
鏡に映る2人の距離は、もう1ミリも開いていなかった。