山下瞳月×村井優
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大学生になってからの山下瞳月は、いつ見ても誰かしら違う女の子と楽しそうに歩いていた。
元々可愛くて目立つタイプだったけれど、大学デビューなんて言葉じゃ足りないくらいすっかりそっち側の人。
同級生として、そして密かに彼女に恋心を抱く一人の人間として私はずっと思っていた。
絶対に、あの子のその他大勢にだけはなりたくない。
だから、偶然二人でご飯に行くことになった時も、私は心のなかに頑丈な防波堤を築いていた。
楽しくて、美味しくて、それだけで終わりにすれば綺麗だったのに。
ゆう「ごちそうさま。じゃあ、私は駅の方だから……」
しづき「ねぇ、ゆう。このあと、うち来て欲しいな」
街灯の光に照らされたしづきの瞳はいつも色んな子に向けているものと同じ人懐っこくて、どこかずるい温度をしていた。
断るべきだった。
でも、好きな人に引き止められて帰れるほど私は強くない。
結局、彼女の部屋のソファーに座ってテレビに映るどうでもいいドラマを眺めていた。
心臓の音がうるさい。
沈黙に耐えかねてお茶に手を伸ばそうとしたその時。
不意に視界がぐにゃりと歪んだ。
気がつけば、私はソファーに押し倒されていて目の前にはしづきの顔があった。
驚くほど近くにある綺麗な顔。
いつも香る、甘くて少し煙たい香水の匂い。
ゆう(やっぱり、この子はこういうやり方でたくさんの女の子を落としてきたんだ)
胸がキリキリと痛む。
悲しくて、悔しくて、私はしづきの肩を精一杯の力で拒絶するように押し返した。
ゆう「……そのつもりはないよ??」
私の声は、自分で思うよりもずっと冷たくて固かった。
「都合のいい女にはならない」という、私の最後のプライドだった。
拒まれたしづきは、すぐに動きを止めた。
いつもなら「冗談だよ〜」なんて軽いノリでかわすはずの彼女が見たこともないような今にも泣き出しそうな表情を浮かべて私を見つめている。
しづき「……あ」
しづきは小さく声を漏らすと、弾かれたように私から離れてソファーの端っこで膝を抱えて俯いてしまった。
しづき「ごめん、なさい……」
ゆう「しづき……?」
しづき「違うの。違う、そんな風に、誰にでも、とかじゃなくて……」
消え入りそうな声でしづきはぽつりぽつりと話し始めた。
しづき「ゆうのこと、ずっと好きだった。でも、うち、いつもチャラチャラしてるって思われてるの知ってたから……どうやって普通に誘えばいいか分からんくて……。映画見よ、とか、ご飯行こ、とかそういうのゆうは友達としてしか来てくれないと思って……」
ぎゅっと自分の服の裾を握りしめるしづきの指先が、小さく震えている。
しづき「順番、間違えた……。嫌われたよね。ごめん……」
いつだって余裕そうに笑っていたはずの彼女が、私の前で、迷子の子どものように縮こまっている。
色んな子と関係を持っていたのは、本当は誰のことも本気にさせないためのそして本気にならないための彼女なりの防衛線だったのかもしれない。
私と同じように、傷つくのが怖くてチャラい仮面を被っていたのだ。
ゆう「……本当に、バカじゃないの」
私は小さくため息をついてソファーの端っこにいるしづきの方へ一歩近づいた。
間違えてしまった順番は、これから二人でゆっくり直していけばいい。
元々可愛くて目立つタイプだったけれど、大学デビューなんて言葉じゃ足りないくらいすっかりそっち側の人。
同級生として、そして密かに彼女に恋心を抱く一人の人間として私はずっと思っていた。
絶対に、あの子のその他大勢にだけはなりたくない。
だから、偶然二人でご飯に行くことになった時も、私は心のなかに頑丈な防波堤を築いていた。
楽しくて、美味しくて、それだけで終わりにすれば綺麗だったのに。
ゆう「ごちそうさま。じゃあ、私は駅の方だから……」
しづき「ねぇ、ゆう。このあと、うち来て欲しいな」
街灯の光に照らされたしづきの瞳はいつも色んな子に向けているものと同じ人懐っこくて、どこかずるい温度をしていた。
断るべきだった。
でも、好きな人に引き止められて帰れるほど私は強くない。
結局、彼女の部屋のソファーに座ってテレビに映るどうでもいいドラマを眺めていた。
心臓の音がうるさい。
沈黙に耐えかねてお茶に手を伸ばそうとしたその時。
不意に視界がぐにゃりと歪んだ。
気がつけば、私はソファーに押し倒されていて目の前にはしづきの顔があった。
驚くほど近くにある綺麗な顔。
いつも香る、甘くて少し煙たい香水の匂い。
ゆう(やっぱり、この子はこういうやり方でたくさんの女の子を落としてきたんだ)
胸がキリキリと痛む。
悲しくて、悔しくて、私はしづきの肩を精一杯の力で拒絶するように押し返した。
ゆう「……そのつもりはないよ??」
私の声は、自分で思うよりもずっと冷たくて固かった。
「都合のいい女にはならない」という、私の最後のプライドだった。
拒まれたしづきは、すぐに動きを止めた。
いつもなら「冗談だよ〜」なんて軽いノリでかわすはずの彼女が見たこともないような今にも泣き出しそうな表情を浮かべて私を見つめている。
しづき「……あ」
しづきは小さく声を漏らすと、弾かれたように私から離れてソファーの端っこで膝を抱えて俯いてしまった。
しづき「ごめん、なさい……」
ゆう「しづき……?」
しづき「違うの。違う、そんな風に、誰にでも、とかじゃなくて……」
消え入りそうな声でしづきはぽつりぽつりと話し始めた。
しづき「ゆうのこと、ずっと好きだった。でも、うち、いつもチャラチャラしてるって思われてるの知ってたから……どうやって普通に誘えばいいか分からんくて……。映画見よ、とか、ご飯行こ、とかそういうのゆうは友達としてしか来てくれないと思って……」
ぎゅっと自分の服の裾を握りしめるしづきの指先が、小さく震えている。
しづき「順番、間違えた……。嫌われたよね。ごめん……」
いつだって余裕そうに笑っていたはずの彼女が、私の前で、迷子の子どものように縮こまっている。
色んな子と関係を持っていたのは、本当は誰のことも本気にさせないためのそして本気にならないための彼女なりの防衛線だったのかもしれない。
私と同じように、傷つくのが怖くてチャラい仮面を被っていたのだ。
ゆう「……本当に、バカじゃないの」
私は小さくため息をついてソファーの端っこにいるしづきの方へ一歩近づいた。
間違えてしまった順番は、これから二人でゆっくり直していけばいい。