的野美青
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楽屋の隅、あたたかな光が差し込む特等席は、いつもあの二人だけのものだった。
みおの隣には、いつもりかがいる。
りかの細い指先がみおの髪に触れ、みおが少し照れたように目を細める。
その空気のすべてが、私にとっては猛毒だった。
ゆめ「……また、見てる」
小さく呟いた声は、誰の耳に届くこともなく喧騒に消えていく。
私はみおが好きだ。
いつから、なんて覚えていない。
気づいた時には、彼女の深い声も、不器用な優しさも、私のすべてを支配していた。
だけど、みおの特別は私じゃない。
りか「みお、次の曲の立ち位置なんだけどさ……」
みお「ん? ああ、そこは私とりかが目を合わせるところでしょ。任せて」
みおがりかに向ける笑顔を見るたび、胸の奥が鋭く痛む。
それは、私には絶対に二重にしても届かない、特別な熱を帯びた視線。
二人が付き合っているという事実は、グループ内では公然の秘密だった。
その日の夜。
降り出した雨のせいで、静まり返ったレッスン室に私は一人残っていた。
いや、一人だと思っていた。
みお「……あれ、ゆめ? まだ残ってたんだ」
振り返ると、濡れた髪をタオルで拭きながら、みおが立っていた。心臓が跳ね上がる。
ゆめ「あ、うん。ちょっと確認したいステップがあって。みおこそ、りかちゃんは?」
私の口から出たりかの名前に、みおは少しだけ眉を下げて困ったように笑った。
みお「りかは先に帰したよ。……なんかさ、最近ちょっと上手くいってないんだよね、私たち」
心臓が、今度は別の意味で大きく脈打った。
ゆめ「……そうなの?」
みお「うん。好きだからこそ、縛り付けちゃうっていうか。私の愛って、重いのかもね」
自嘲気味に笑うみおの瞳はひどく寂しげで、それでいて酷く綺麗だった。
チャンスだ、と思ってしまう自分が醜い。
彼女の弱みにつけ込んで、その心の隙間に滑り込みたいと思ってしまう。
これは悪い恋だ。
分かっているのに、止められない。
私はゆっくりと、みおの前に歩み寄った。
ゆめ「重くなんてないよ。私なら……もし私ならみおのそういうところも全部嬉しいって思う」
みお「え……?」
みおの瞳が驚きに揺れる。
私はもう、引き返せなかった。
彼女の濡れたシャツの袖を、ぎゅっと掴む。
ゆめ「私じゃ、ダメかな。りかちゃんじゃなくて私を見てよ。私ならみおを一人にしない。みおだけをもっともっと溺れるくらい愛せるよ」
一瞬の沈黙。
雨の音だけが、部屋の中に響いていた。
みおは驚いた表情のまま、じっと私を見つめている。
その視線が痛い。
拒絶される恐怖が、一気に押し寄せてくる。
しかし、みおは拒絶しなかった。
ゆっくりと手を伸ばし、私の頬に触れる。
その手は少し冷たくて、だけど心地よかった。
みお「ゆめ……。ずるいよ、そんなこと言うの」
ゆめ「ずるくてもいい。みおの特別になれるなら、なんだっていい」
みお「……本当に、後悔しない?」
その言葉は私への警告のようで同時にみお自身への言い訳のようにも聞こえた。
みおの目がどこか冷たくそして酷く歪んだ愛の形を孕んで光る。
彼女が本当に見ているのは私ではなく、私を通して感じるりかへの当てつけなのかもしれない。
それでも構わなかった。
私は静かに目を閉じ私を壊していく、甘くて苦い毒のような彼女の香りに、深く沈んでいった。
みおの隣には、いつもりかがいる。
りかの細い指先がみおの髪に触れ、みおが少し照れたように目を細める。
その空気のすべてが、私にとっては猛毒だった。
ゆめ「……また、見てる」
小さく呟いた声は、誰の耳に届くこともなく喧騒に消えていく。
私はみおが好きだ。
いつから、なんて覚えていない。
気づいた時には、彼女の深い声も、不器用な優しさも、私のすべてを支配していた。
だけど、みおの特別は私じゃない。
りか「みお、次の曲の立ち位置なんだけどさ……」
みお「ん? ああ、そこは私とりかが目を合わせるところでしょ。任せて」
みおがりかに向ける笑顔を見るたび、胸の奥が鋭く痛む。
それは、私には絶対に二重にしても届かない、特別な熱を帯びた視線。
二人が付き合っているという事実は、グループ内では公然の秘密だった。
その日の夜。
降り出した雨のせいで、静まり返ったレッスン室に私は一人残っていた。
いや、一人だと思っていた。
みお「……あれ、ゆめ? まだ残ってたんだ」
振り返ると、濡れた髪をタオルで拭きながら、みおが立っていた。心臓が跳ね上がる。
ゆめ「あ、うん。ちょっと確認したいステップがあって。みおこそ、りかちゃんは?」
私の口から出たりかの名前に、みおは少しだけ眉を下げて困ったように笑った。
みお「りかは先に帰したよ。……なんかさ、最近ちょっと上手くいってないんだよね、私たち」
心臓が、今度は別の意味で大きく脈打った。
ゆめ「……そうなの?」
みお「うん。好きだからこそ、縛り付けちゃうっていうか。私の愛って、重いのかもね」
自嘲気味に笑うみおの瞳はひどく寂しげで、それでいて酷く綺麗だった。
チャンスだ、と思ってしまう自分が醜い。
彼女の弱みにつけ込んで、その心の隙間に滑り込みたいと思ってしまう。
これは悪い恋だ。
分かっているのに、止められない。
私はゆっくりと、みおの前に歩み寄った。
ゆめ「重くなんてないよ。私なら……もし私ならみおのそういうところも全部嬉しいって思う」
みお「え……?」
みおの瞳が驚きに揺れる。
私はもう、引き返せなかった。
彼女の濡れたシャツの袖を、ぎゅっと掴む。
ゆめ「私じゃ、ダメかな。りかちゃんじゃなくて私を見てよ。私ならみおを一人にしない。みおだけをもっともっと溺れるくらい愛せるよ」
一瞬の沈黙。
雨の音だけが、部屋の中に響いていた。
みおは驚いた表情のまま、じっと私を見つめている。
その視線が痛い。
拒絶される恐怖が、一気に押し寄せてくる。
しかし、みおは拒絶しなかった。
ゆっくりと手を伸ばし、私の頬に触れる。
その手は少し冷たくて、だけど心地よかった。
みお「ゆめ……。ずるいよ、そんなこと言うの」
ゆめ「ずるくてもいい。みおの特別になれるなら、なんだっていい」
みお「……本当に、後悔しない?」
その言葉は私への警告のようで同時にみお自身への言い訳のようにも聞こえた。
みおの目がどこか冷たくそして酷く歪んだ愛の形を孕んで光る。
彼女が本当に見ているのは私ではなく、私を通して感じるりかへの当てつけなのかもしれない。
それでも構わなかった。
私は静かに目を閉じ私を壊していく、甘くて苦い毒のような彼女の香りに、深く沈んでいった。