田村保乃×大園玲
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
オフィスビルが立ち並ぶ街並み。
スマートフォンの画面をスクロールする指が、ふと止まる。
マッチングアプリ特有の「はじめまして!」から始まる、どこか形式的で、数回ラリーをすれば砂のように消えてしまう会話に、田村保乃はすっかり疲れ果てていた。
ほの「もう、これで最後にしよかな……」
そう呟いてアプリを消そうとしたその日、一つの通知が届いた。
お相手の名前は「れい」。
そこから始まったのは、驚くほど心地のいい、本当のキャッチボールのような会話だった。
ある日の仕事終わり、いつものように満員電車に揺られながら、ほのは何気なくアプリを開いた。
新しいメッセージが1件。
れい「はじめまして。れいと申します。プロフィールに書かれていた休日は美味しいパン屋さん巡りをするというのを見て、思わずメッセージしてしまいました。私もパンが大好きなんです。最近のほのさんの一押しはありますか?」
定型文ではない、自分のプロフィールをちゃんと読んでくれたことが伝わる丁寧な文章。
ほのは冷めかけていた心に、小さな灯がともるのを感じた。
ほの「れいさん、はじめまして!見つけてくれてありがとうございます。最近は、櫻駅の近くにある小さなクロワッサン専門店にはまってます!外はサクサクで中はもちもちなんです。れいさんは、どんなパンが好きですか?」
すぐには返ってこないだろう。
そう思ってスマホを鞄に仕舞おうとした瞬間、画面が震えた。
れい「そこ、気になっていたお店です!やっぱり美味しいんですね。私はハード系の、噛めば噛むほど味が染み出るようなパンが好きなんです。でも、ほのさんがお勧めしてくれたクロワッサン、すごく食べたくなってきました」
ほの「えっ、ほんまですか!?嬉しいなぁ。ハード系も美味しいですよね。あそこ、実はバゲットも絶品なんですよ!」
気がつけば、次の駅に着くまで、二人のメッセージは途切れることなく続いた。
それからの日々は、これまでのアプリ生活が嘘のように鮮やかだった。
仕事の合間、お昼休憩、お風呂上がり。連絡の頻度は多すぎず少なすぎず、お互いの生活リズムを尊重し合っているのが分かった。
なにより、ほのが嬉しかったのは会話のキャッチボールがしっかりと成立することだった。
ほの「今日、仕事でちょっと失敗しちゃって落ち込んでます〜泣」
これまでの相手なら「大変でしたね」「頑張ってください」の一言で終わっていたかもしれない。
けれど、れいは違った。
れい「それは大変でしたね。今日はお仕事、本当にお疲れ様でした。落ち込んだ時は、甘いものが一番ですよ。私はそういう時、コンビニのちょっと高いプリンを買って自分を甘やかします。ほのさんも、今夜は自分をたくさん労ってあげてくださいね」
ほの「れいさん……優しい泣。ありがとうございます。帰り道にプリン、絶対に買います!ちなみに何プリンが好きですか?」
れい「ふふ、私は固め派です。ほのさんは?」
言葉のボールが、綺麗な放物線を描いて自分の胸元に返ってくる。
画面の向こうにいるれいという女性の輪郭が、少しずつ、でも確実に、ほのの中で愛おしいものとして形作られていった。
マッチングしてから2週間が経った金曜日の夜。
いつも通り他愛のない会話を交わしていると、れいから少し緊張したような文章が届いた。
れい「あの、ほのさん。もしよければ……今度の日曜日、一緒に対面でキャッチボールしませんか?」
ほの「えっ、キャッチボールですか!?」
れい「あ、すみません!本物のボールじゃなくて笑。いつも文字でお話ししているのがすごく楽しくて。もしよければ、直接お会いして、あのクロワッサンのお店に一緒に行けたらな、なんて……。急でごめんなさい」
スマートフォンの前で、ほのは思わず顔を綻ばせた。
胸の奥がトクン、と跳ねる。
画面越しのキャッチボールは、もう十分に楽しんだ。
次は、その綺麗な瞳を見て、直接その声を聞いてみたい。
ほの「ふふ、びっくりしました!でも、めちゃくちゃ嬉しいです。私も、れいさんに直接お会いしてたくさんお話ししたいって思ってました。日曜日、ぜひ一緒に行きましょう!」
れい「本当ですか……!嬉しいです。じゃあ、11時に櫻駅の改札前で。目印に、お気に入りの本を持って行きますね」
ほの「了解です!私は、れいさんに教えてもらったあの固めプリンの色のチャームを鞄につけていきます笑」
文字のやり取りなのに、お互いの高鳴る鼓動が伝わってくるようだった。
日曜日。
雲一つない青空が広がっていた。
ほのは、いつもより少し時間をかけて髪を整え、お気に入りのワンピースを選んだ。
約束の5分前。
駅の改札前は、休日を楽しむ人々で混雑している。
胸の鼓動が速くなるのを感じながら、ほのは周りを見渡した。
プリン色のチャームを握りしめ、誰かを探す。
ふと、改札の少し横、柱の陰に立つ一人の女性が目に留まった。
落ち着いたベージュのコートを着て、手元には一冊の文庫本。
品のある、どこか儚げで、でも芯の強そうな綺麗な女性。
ほのは確信を持って、一歩を踏み出した。
ほの「あの……、れいさん、ですか?」
声をかけると、その女性がハッとしたように顔を上げ、ゆっくりと目を丸くした。
そして、花の咲くような柔らかい笑顔を浮かべる。
れい「……ほのさん、ですか?」
ほの「はい!田村保乃です。やっと会えました!」
れいは持っていた本をそっと胸に抱きしめ、少し照れくさそうに、でも真っ直ぐにほのを見つめた。
れい「大園玲です。……イメージ通り、いえ、イメージ以上に素敵な方で、ちょっと緊張しちゃいます」
ほの「ふふ、それは私も同じです。あ、これ!約束のプリン色です」
ほのが鞄のチャームを見せると、れいは「ふふっ」と嬉しそうに声を立てて笑った。
その声が、耳に、心地よく響く。
れい「さぁ、行きましょうか。私、ほのさんと話したいこと、まだまだたくさんあるんです」
ほの「私もです!今日は一日、喋り倒しちゃいましょうね」
歩き出した二人の距離は、画面越しにいた時よりもずっと近い。
これから始まる、直接言葉を交わす新しいキャッチボール。
ほのは、隣を歩く大好きな人の横顔を見つめながら、これから始まる時間に、胸を深く躍らせるのだった。
スマートフォンの画面をスクロールする指が、ふと止まる。
マッチングアプリ特有の「はじめまして!」から始まる、どこか形式的で、数回ラリーをすれば砂のように消えてしまう会話に、田村保乃はすっかり疲れ果てていた。
ほの「もう、これで最後にしよかな……」
そう呟いてアプリを消そうとしたその日、一つの通知が届いた。
お相手の名前は「れい」。
そこから始まったのは、驚くほど心地のいい、本当のキャッチボールのような会話だった。
ある日の仕事終わり、いつものように満員電車に揺られながら、ほのは何気なくアプリを開いた。
新しいメッセージが1件。
れい「はじめまして。れいと申します。プロフィールに書かれていた休日は美味しいパン屋さん巡りをするというのを見て、思わずメッセージしてしまいました。私もパンが大好きなんです。最近のほのさんの一押しはありますか?」
定型文ではない、自分のプロフィールをちゃんと読んでくれたことが伝わる丁寧な文章。
ほのは冷めかけていた心に、小さな灯がともるのを感じた。
ほの「れいさん、はじめまして!見つけてくれてありがとうございます。最近は、櫻駅の近くにある小さなクロワッサン専門店にはまってます!外はサクサクで中はもちもちなんです。れいさんは、どんなパンが好きですか?」
すぐには返ってこないだろう。
そう思ってスマホを鞄に仕舞おうとした瞬間、画面が震えた。
れい「そこ、気になっていたお店です!やっぱり美味しいんですね。私はハード系の、噛めば噛むほど味が染み出るようなパンが好きなんです。でも、ほのさんがお勧めしてくれたクロワッサン、すごく食べたくなってきました」
ほの「えっ、ほんまですか!?嬉しいなぁ。ハード系も美味しいですよね。あそこ、実はバゲットも絶品なんですよ!」
気がつけば、次の駅に着くまで、二人のメッセージは途切れることなく続いた。
それからの日々は、これまでのアプリ生活が嘘のように鮮やかだった。
仕事の合間、お昼休憩、お風呂上がり。連絡の頻度は多すぎず少なすぎず、お互いの生活リズムを尊重し合っているのが分かった。
なにより、ほのが嬉しかったのは会話のキャッチボールがしっかりと成立することだった。
ほの「今日、仕事でちょっと失敗しちゃって落ち込んでます〜泣」
これまでの相手なら「大変でしたね」「頑張ってください」の一言で終わっていたかもしれない。
けれど、れいは違った。
れい「それは大変でしたね。今日はお仕事、本当にお疲れ様でした。落ち込んだ時は、甘いものが一番ですよ。私はそういう時、コンビニのちょっと高いプリンを買って自分を甘やかします。ほのさんも、今夜は自分をたくさん労ってあげてくださいね」
ほの「れいさん……優しい泣。ありがとうございます。帰り道にプリン、絶対に買います!ちなみに何プリンが好きですか?」
れい「ふふ、私は固め派です。ほのさんは?」
言葉のボールが、綺麗な放物線を描いて自分の胸元に返ってくる。
画面の向こうにいるれいという女性の輪郭が、少しずつ、でも確実に、ほのの中で愛おしいものとして形作られていった。
マッチングしてから2週間が経った金曜日の夜。
いつも通り他愛のない会話を交わしていると、れいから少し緊張したような文章が届いた。
れい「あの、ほのさん。もしよければ……今度の日曜日、一緒に対面でキャッチボールしませんか?」
ほの「えっ、キャッチボールですか!?」
れい「あ、すみません!本物のボールじゃなくて笑。いつも文字でお話ししているのがすごく楽しくて。もしよければ、直接お会いして、あのクロワッサンのお店に一緒に行けたらな、なんて……。急でごめんなさい」
スマートフォンの前で、ほのは思わず顔を綻ばせた。
胸の奥がトクン、と跳ねる。
画面越しのキャッチボールは、もう十分に楽しんだ。
次は、その綺麗な瞳を見て、直接その声を聞いてみたい。
ほの「ふふ、びっくりしました!でも、めちゃくちゃ嬉しいです。私も、れいさんに直接お会いしてたくさんお話ししたいって思ってました。日曜日、ぜひ一緒に行きましょう!」
れい「本当ですか……!嬉しいです。じゃあ、11時に櫻駅の改札前で。目印に、お気に入りの本を持って行きますね」
ほの「了解です!私は、れいさんに教えてもらったあの固めプリンの色のチャームを鞄につけていきます笑」
文字のやり取りなのに、お互いの高鳴る鼓動が伝わってくるようだった。
日曜日。
雲一つない青空が広がっていた。
ほのは、いつもより少し時間をかけて髪を整え、お気に入りのワンピースを選んだ。
約束の5分前。
駅の改札前は、休日を楽しむ人々で混雑している。
胸の鼓動が速くなるのを感じながら、ほのは周りを見渡した。
プリン色のチャームを握りしめ、誰かを探す。
ふと、改札の少し横、柱の陰に立つ一人の女性が目に留まった。
落ち着いたベージュのコートを着て、手元には一冊の文庫本。
品のある、どこか儚げで、でも芯の強そうな綺麗な女性。
ほのは確信を持って、一歩を踏み出した。
ほの「あの……、れいさん、ですか?」
声をかけると、その女性がハッとしたように顔を上げ、ゆっくりと目を丸くした。
そして、花の咲くような柔らかい笑顔を浮かべる。
れい「……ほのさん、ですか?」
ほの「はい!田村保乃です。やっと会えました!」
れいは持っていた本をそっと胸に抱きしめ、少し照れくさそうに、でも真っ直ぐにほのを見つめた。
れい「大園玲です。……イメージ通り、いえ、イメージ以上に素敵な方で、ちょっと緊張しちゃいます」
ほの「ふふ、それは私も同じです。あ、これ!約束のプリン色です」
ほのが鞄のチャームを見せると、れいは「ふふっ」と嬉しそうに声を立てて笑った。
その声が、耳に、心地よく響く。
れい「さぁ、行きましょうか。私、ほのさんと話したいこと、まだまだたくさんあるんです」
ほの「私もです!今日は一日、喋り倒しちゃいましょうね」
歩き出した二人の距離は、画面越しにいた時よりもずっと近い。
これから始まる、直接言葉を交わす新しいキャッチボール。
ほのは、隣を歩く大好きな人の横顔を見つめながら、これから始まる時間に、胸を深く躍らせるのだった。