森田ひかる
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暗転した会場。
歓声が爆発する。
ステージに立つ、森田ひかる。
ひかる(今日もちゃんと届ける)
そう思って視線を流した、その瞬間。
ひかる(……え)
いた。
人混みの中。
見間違えるはずのない顔。
ゆめ。
しかも——
ペンライトを振りながら、全力で手を振っている相手は。
大園玲。
ひかる(……そっちなんだ)
胸の奥が、じわっと重くなる。
しかも。
ひかる(あの距離感…)
ただのファンじゃない、あの熱量。
ひかる(……まさか)
ふと、よぎる違和感。
ひかる(会ったこと、ある?)
でもステージは止まらない。
ひかる(あとで絶対聞く)
そう決めて、パフォーマンスを続けた。
ライブ後。
頭から離れない、あの光景。
そして、引っかかる違和感。
ひかる(あの目、見覚えある気がする)
ファンを見ることには慣れている。
でも。
ひかる(あれは“初めて見る人”の目じゃない)
確信に近い感覚。
ひかる「……会ってる」
ぽつりと呟く。
ひかる「絶対、会ってる」
その夜。
ゆめの家。
ピンポーン。
ゆめ「はーい!」
ドアが開く。
ゆめ「……え、ひかる!?」
ひかる「ねぇ」
すぐ本題に入る。
ひかる「今日、ライブ来てたよね」
ゆめ「……うん」
ひかる「誰見てたの?」
ゆめ「……」
ひかる「れいちゃんでしょ」
ゆめ「……うん」
ひかる「やっぱり」
一歩踏み込む。
ひかる「ねぇ、それだけじゃないよね」
ゆめ「え」
ひかる「会ってるでしょ」
ゆめ「……」
その顔で、確信する。
ひかる「ミーグリ」
ゆめ「……行った」
ひかる「リアル?」
ゆめ「……うん」
ひかる「……はぁ」
思わずため息が漏れる。
ひかる「いつから?」
ゆめ「付き合う前から…ずっと」
ひかる「付き合ってからは?」
ゆめ「……行った」
ひかる「何回」
ゆめ「……」
ひかる「正直に」
ゆめ「……3回」
ひかる「3回!?」
思わず声が上がる。
ひかる「普通にファンじゃん」
ゆめ「ファンだよ!!」
ひかる「いやそうだけど!」
ひかる「問題はそこじゃなくて!」
一瞬黙って、低い声で。
ひかる「……楽しそうだったね」
ゆめ「……」
ひかる「今日も」
ひかる「ミーグリの時も、そんな顔してたの?」
ゆめ「……してたと思う」
ひかる「……」
胸がチクっとする。
ひかる「私の前でも、そんな顔してる?」
ゆめ「してるよ!!」
即答。
ゆめ「むしろひかるの方が多い」
ひかる「……ほんとに?」
ゆめ「ほんと」
ひかる「でも隠してたよね」
ゆめ「……嫌われると思った」
ひかる「なんで」
ゆめ「だって」
ゆめ「ひかると付き合ってるのに、れいちゃんに会いに行ってるとか」
ゆめ「普通にアウトじゃん」
ひかる「……まぁ、気持ちは分かるけど」
ゆめ「だから言えなかった」
ゆめ「でも」
少し笑う。
ゆめ「今日見つかった瞬間、終わったって思った」
ひかる「終わらせないけど」
ゆめ「え」
ひかる「簡単に終わらせないから」
その目は、少しだけ意地悪で。
少しだけ寂しそう。
ひかる「ねぇ」
ゆめ「なに」
ひかる「ミーグリでさ」
ゆめ「うん」
ひかる「何話したの」
ゆめ「え」
ひかる「全部」
ゆめ「……かわいいって言ったり」
ゆめ「好きって言ったり」
ひかる「……へぇ」
ゆめ「あ」
ひかる「“好き”言ったんだ」
ゆめ「……ファンとして!」
ひかる「でも言ったんでしょ」
ゆめ「……うん」
ひかる「……そっか」
静かに目を逸らす。
その反応に、ゆめが焦る。
ゆめ「でも!!」
ひかる「なに」
ゆめ「意味違うから!」
ゆめ 「れいちゃんへの好きと、ひかるへの好き」
ゆめ「全然違う」
ひかる「どう違うの」
ゆめ「れいちゃんは憧れ」
ゆめ「ひかるは——」
少し詰まって。
ゆめ「一緒にいたい人」
ゆめ「触れたいし、隣にいたいし」
ゆめ「離れたくない人」
ひかるの視線が戻る。
ゆめ「だから一番は、ひかる」
ひかる「……」
数秒の沈黙。
ひかる「……ずるい」
ゆめ「え」
ひかる「そんなの」
ひかる「許すしかないじゃん」
ゆめ「……許してくれる?」
ひかる「全部は無理」
ゆめ「えぇ」
ひかる「だって悔しいもん」
ひかる「自分の彼女が、他のメンバーに会いに行って」
ひかる「“好き”って言ってるの」
ゆめ「……」
ひかる「だから」
一歩近づく。
ひかる「次のライブ」
ゆめ「うん」
ひかる「絶対、私しか見れなくする」
ゆめ「……」
ひかる「ミーグリも」
ゆめ「え」
ひかる「来たくなるくらい」
ひかる「全部、奪う」
真っ直ぐな目。
ゆめは少し笑って。
ゆめ「……もう奪われてるよ」
ひかる「足りない」
ゆめ「え」
ひかる「“一番好き”って言わせるまでやめない」
ゆめ「……もう一番だよ」
ひかる「証拠は?」
ゆめ「今、ひかるしか見てない」
ひかる「……ほんと?」
ゆめ「ほんと」
ひかる「ならいい」
少しだけ満足そうに笑う。
でもその奥には、ちゃんと独占欲。
ひかる「ねぇ」
ゆめ「なに」
ひかる「これからは隠さないで」
ゆめ「……うん」
ひかる「あと」
ゆめ「うん」
ひかる「ミーグリ行くなら」
ゆめ「え、いいの?」
ひかる「いいけど」
ひかる「帰ってきたら、全部報告して」
ゆめ「それ地獄じゃない?」
ひかる「ふふ」
ひかる「覚悟してね」
ゆめ「……はい」
その夜。
“推し”と“恋人”の境界線は、
少しだけ曖昧で、
でも確実に——
恋人の方が、強くなっていた。
歓声が爆発する。
ステージに立つ、森田ひかる。
ひかる(今日もちゃんと届ける)
そう思って視線を流した、その瞬間。
ひかる(……え)
いた。
人混みの中。
見間違えるはずのない顔。
ゆめ。
しかも——
ペンライトを振りながら、全力で手を振っている相手は。
大園玲。
ひかる(……そっちなんだ)
胸の奥が、じわっと重くなる。
しかも。
ひかる(あの距離感…)
ただのファンじゃない、あの熱量。
ひかる(……まさか)
ふと、よぎる違和感。
ひかる(会ったこと、ある?)
でもステージは止まらない。
ひかる(あとで絶対聞く)
そう決めて、パフォーマンスを続けた。
ライブ後。
頭から離れない、あの光景。
そして、引っかかる違和感。
ひかる(あの目、見覚えある気がする)
ファンを見ることには慣れている。
でも。
ひかる(あれは“初めて見る人”の目じゃない)
確信に近い感覚。
ひかる「……会ってる」
ぽつりと呟く。
ひかる「絶対、会ってる」
その夜。
ゆめの家。
ピンポーン。
ゆめ「はーい!」
ドアが開く。
ゆめ「……え、ひかる!?」
ひかる「ねぇ」
すぐ本題に入る。
ひかる「今日、ライブ来てたよね」
ゆめ「……うん」
ひかる「誰見てたの?」
ゆめ「……」
ひかる「れいちゃんでしょ」
ゆめ「……うん」
ひかる「やっぱり」
一歩踏み込む。
ひかる「ねぇ、それだけじゃないよね」
ゆめ「え」
ひかる「会ってるでしょ」
ゆめ「……」
その顔で、確信する。
ひかる「ミーグリ」
ゆめ「……行った」
ひかる「リアル?」
ゆめ「……うん」
ひかる「……はぁ」
思わずため息が漏れる。
ひかる「いつから?」
ゆめ「付き合う前から…ずっと」
ひかる「付き合ってからは?」
ゆめ「……行った」
ひかる「何回」
ゆめ「……」
ひかる「正直に」
ゆめ「……3回」
ひかる「3回!?」
思わず声が上がる。
ひかる「普通にファンじゃん」
ゆめ「ファンだよ!!」
ひかる「いやそうだけど!」
ひかる「問題はそこじゃなくて!」
一瞬黙って、低い声で。
ひかる「……楽しそうだったね」
ゆめ「……」
ひかる「今日も」
ひかる「ミーグリの時も、そんな顔してたの?」
ゆめ「……してたと思う」
ひかる「……」
胸がチクっとする。
ひかる「私の前でも、そんな顔してる?」
ゆめ「してるよ!!」
即答。
ゆめ「むしろひかるの方が多い」
ひかる「……ほんとに?」
ゆめ「ほんと」
ひかる「でも隠してたよね」
ゆめ「……嫌われると思った」
ひかる「なんで」
ゆめ「だって」
ゆめ「ひかると付き合ってるのに、れいちゃんに会いに行ってるとか」
ゆめ「普通にアウトじゃん」
ひかる「……まぁ、気持ちは分かるけど」
ゆめ「だから言えなかった」
ゆめ「でも」
少し笑う。
ゆめ「今日見つかった瞬間、終わったって思った」
ひかる「終わらせないけど」
ゆめ「え」
ひかる「簡単に終わらせないから」
その目は、少しだけ意地悪で。
少しだけ寂しそう。
ひかる「ねぇ」
ゆめ「なに」
ひかる「ミーグリでさ」
ゆめ「うん」
ひかる「何話したの」
ゆめ「え」
ひかる「全部」
ゆめ「……かわいいって言ったり」
ゆめ「好きって言ったり」
ひかる「……へぇ」
ゆめ「あ」
ひかる「“好き”言ったんだ」
ゆめ「……ファンとして!」
ひかる「でも言ったんでしょ」
ゆめ「……うん」
ひかる「……そっか」
静かに目を逸らす。
その反応に、ゆめが焦る。
ゆめ「でも!!」
ひかる「なに」
ゆめ「意味違うから!」
ゆめ 「れいちゃんへの好きと、ひかるへの好き」
ゆめ「全然違う」
ひかる「どう違うの」
ゆめ「れいちゃんは憧れ」
ゆめ「ひかるは——」
少し詰まって。
ゆめ「一緒にいたい人」
ゆめ「触れたいし、隣にいたいし」
ゆめ「離れたくない人」
ひかるの視線が戻る。
ゆめ「だから一番は、ひかる」
ひかる「……」
数秒の沈黙。
ひかる「……ずるい」
ゆめ「え」
ひかる「そんなの」
ひかる「許すしかないじゃん」
ゆめ「……許してくれる?」
ひかる「全部は無理」
ゆめ「えぇ」
ひかる「だって悔しいもん」
ひかる「自分の彼女が、他のメンバーに会いに行って」
ひかる「“好き”って言ってるの」
ゆめ「……」
ひかる「だから」
一歩近づく。
ひかる「次のライブ」
ゆめ「うん」
ひかる「絶対、私しか見れなくする」
ゆめ「……」
ひかる「ミーグリも」
ゆめ「え」
ひかる「来たくなるくらい」
ひかる「全部、奪う」
真っ直ぐな目。
ゆめは少し笑って。
ゆめ「……もう奪われてるよ」
ひかる「足りない」
ゆめ「え」
ひかる「“一番好き”って言わせるまでやめない」
ゆめ「……もう一番だよ」
ひかる「証拠は?」
ゆめ「今、ひかるしか見てない」
ひかる「……ほんと?」
ゆめ「ほんと」
ひかる「ならいい」
少しだけ満足そうに笑う。
でもその奥には、ちゃんと独占欲。
ひかる「ねぇ」
ゆめ「なに」
ひかる「これからは隠さないで」
ゆめ「……うん」
ひかる「あと」
ゆめ「うん」
ひかる「ミーグリ行くなら」
ゆめ「え、いいの?」
ひかる「いいけど」
ひかる「帰ってきたら、全部報告して」
ゆめ「それ地獄じゃない?」
ひかる「ふふ」
ひかる「覚悟してね」
ゆめ「……はい」
その夜。
“推し”と“恋人”の境界線は、
少しだけ曖昧で、
でも確実に——
恋人の方が、強くなっていた。