藤吉夏鈴
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ライブハウスの外。
人混みと、うるさい音。
ギターの音が漏れてくる中で、ゆめは少しだけ眉をひそめていた。
ゆめ(……こういうの、苦手)
友達に連れてこられただけ。
本当は、来るつもりなんてなかった。
ステージの上には――
夏鈴がいた。
派手な照明の中で、ギターをかき鳴らして、歌っている。
汗で少し乱れた髪、無表情に近いのに、どこか感情が滲む顔。
でも。
ゆめ(……なんか、軽そう)
チャラチャラしてる。
自由すぎる。
そういう人が、嫌い。
特に――ああいうタイプ。
――ライブが終わって、
外に出たとき。
「ねえ」
後ろから、声をかけられる。
振り返ると、そこにいたのは――
夏鈴「さっき、見てたよね」
さっきまでステージにいた人。
ゆめ「……見てたけど」
少しだけ警戒する。
かりん「どうだった」
ぶっきらぼうな声。
ゆめ「……別に」
そっけなく返す。
ゆめ「あんまり好きじゃない」
はっきり言う。
少しだけ空気が止まる。
でも、夏鈴は――
かりん「そっか」
それだけ。
怒るでもなく、笑うでもなく。
かりん「正直だね」
ぽつりと呟く。
その反応に、少しだけ拍子抜けする。
ゆめ「……なんで声かけたの」
かりん「気になったから」
真っ直ぐな目。
かりん「なんか、他と違った」
その言い方が、妙に引っかかる。
ゆめ「意味わかんない」
そう言って、その場を離れる。
でも――
ゆめ(……なんなの、あの人)
頭から離れなかった。
――数日後。
大学のキャンパス。
ベンチで一人、課題をやっていると。
「また会った」
顔を上げると、夏鈴。
ゆめ「……なんでいるの」
かりん「同じ大学」
当たり前のように言う。
かりん「隣、いい?」
勝手に座る。
ゆめ「……どうぞ」
少しだけため息。
かりん「まだ嫌い?」
急に聞いてくる。
ゆめ「……嫌い」
かりん「即答だね」
少しだけ笑う。
かりん「どこが嫌い」
真っ直ぐ聞いてくる。
ゆめ「……軽そうなとこ」
ゆめ「なんか、全部適当そう」
言い切る。
夏鈴は、少しだけ黙って。
かりん「……そっか」
小さく頷く。
かりん「でもさ」
少しだけ前を向いたまま。
かりん「音楽だけは、ちゃんとやってる」
その声だけは、少しだけ強かった。
ゆめ「……知らない」
かりん「そりゃそうだよね」
苦笑する。
かりん「じゃあ、知ってよ」
さらっと言う。
ゆめ「なんで」
かりん「知ってほしいから」
その言葉に、少しだけ言葉を失う。
――それから。
夏鈴はよく話しかけてくるようになった。
授業のあと、帰り道、ふとした瞬間に。
ゆめ「なんでそんな来るの」
かりん「暇だから」
適当な答え。
でも、どこか違う。
ゆめ(……ほんとに?)
ある日。
夏鈴のライブに、もう一度だけ行ってみた。
理由は、自分でもよく分からない。
でも――
音を聴いた瞬間、分かる。
ゆめ(……違う)
あの日よりも、ちゃんと聴こえる。
歌詞も、音も、全部が、まっすぐで。
ステージの上の夏鈴は、“軽い”なんてものじゃなかった。
真剣で、不器用で、でもまっすぐだった。
――ライブ後。
外で待っていると
かりん「来てたんだ」
少しだけ驚いた顔。
ゆめ「……うん」
目を逸らす。
かりん「どうだった」
同じ質問。
でも、今度は。
ゆめ「……悪くなかった」
少しだけ素直に言う。
かりん「それ、褒めてる?」
ゆめ「……たぶん」
小さく笑う。
夏鈴も、少しだけ笑う。
かりん「よかった」
その一言が、なんだか嬉しそうで。
ゆめ(……なんで)
胸が少しだけざわつく。
少しだけ近づく。
かりん「次の曲さ」
ゆめ「うん?」
かりん「君のために書く」
一瞬、意味が分からない。
ゆめ「……は?」
かりん「嫌いなやつを、好きにさせる曲」
真っ直ぐな目。
ゆめ「無理でしょ」
思わず笑う。
かりん「やってみる」
迷いがない。
ゆめ「……なんでそこまで」
かりん「好きだから」
さらっと言う。
時間が止まる。
ゆめ「……軽い」
かりん「軽くない」
すぐに否定。
かりん「今までで、一番ちゃんと好き」
その声は、あのステージと同じだった。
まっすぐで、嘘がない。
ゆめ「……ほんとに?」
少しだけ揺れる。
かりん「うん」
頷く。
かりん「だから、ちゃんと歌う」
静かな決意。
かりん「君のための歌」
その言葉に、胸が大きく鳴る。
ゆめ(……ずるい)
音楽で伝えてくるなんて。
逃げられない。
ゆめ「……じゃあさ」
少しだけ笑う。
ゆめ「ちゃんと好きにさせてよ」
夏鈴は、少しだけ目を細めて――
かりん「任せて」
そう言った。
その日から、音が少しだけ特別に聞こえるようになった。
人混みと、うるさい音。
ギターの音が漏れてくる中で、ゆめは少しだけ眉をひそめていた。
ゆめ(……こういうの、苦手)
友達に連れてこられただけ。
本当は、来るつもりなんてなかった。
ステージの上には――
夏鈴がいた。
派手な照明の中で、ギターをかき鳴らして、歌っている。
汗で少し乱れた髪、無表情に近いのに、どこか感情が滲む顔。
でも。
ゆめ(……なんか、軽そう)
チャラチャラしてる。
自由すぎる。
そういう人が、嫌い。
特に――ああいうタイプ。
――ライブが終わって、
外に出たとき。
「ねえ」
後ろから、声をかけられる。
振り返ると、そこにいたのは――
夏鈴「さっき、見てたよね」
さっきまでステージにいた人。
ゆめ「……見てたけど」
少しだけ警戒する。
かりん「どうだった」
ぶっきらぼうな声。
ゆめ「……別に」
そっけなく返す。
ゆめ「あんまり好きじゃない」
はっきり言う。
少しだけ空気が止まる。
でも、夏鈴は――
かりん「そっか」
それだけ。
怒るでもなく、笑うでもなく。
かりん「正直だね」
ぽつりと呟く。
その反応に、少しだけ拍子抜けする。
ゆめ「……なんで声かけたの」
かりん「気になったから」
真っ直ぐな目。
かりん「なんか、他と違った」
その言い方が、妙に引っかかる。
ゆめ「意味わかんない」
そう言って、その場を離れる。
でも――
ゆめ(……なんなの、あの人)
頭から離れなかった。
――数日後。
大学のキャンパス。
ベンチで一人、課題をやっていると。
「また会った」
顔を上げると、夏鈴。
ゆめ「……なんでいるの」
かりん「同じ大学」
当たり前のように言う。
かりん「隣、いい?」
勝手に座る。
ゆめ「……どうぞ」
少しだけため息。
かりん「まだ嫌い?」
急に聞いてくる。
ゆめ「……嫌い」
かりん「即答だね」
少しだけ笑う。
かりん「どこが嫌い」
真っ直ぐ聞いてくる。
ゆめ「……軽そうなとこ」
ゆめ「なんか、全部適当そう」
言い切る。
夏鈴は、少しだけ黙って。
かりん「……そっか」
小さく頷く。
かりん「でもさ」
少しだけ前を向いたまま。
かりん「音楽だけは、ちゃんとやってる」
その声だけは、少しだけ強かった。
ゆめ「……知らない」
かりん「そりゃそうだよね」
苦笑する。
かりん「じゃあ、知ってよ」
さらっと言う。
ゆめ「なんで」
かりん「知ってほしいから」
その言葉に、少しだけ言葉を失う。
――それから。
夏鈴はよく話しかけてくるようになった。
授業のあと、帰り道、ふとした瞬間に。
ゆめ「なんでそんな来るの」
かりん「暇だから」
適当な答え。
でも、どこか違う。
ゆめ(……ほんとに?)
ある日。
夏鈴のライブに、もう一度だけ行ってみた。
理由は、自分でもよく分からない。
でも――
音を聴いた瞬間、分かる。
ゆめ(……違う)
あの日よりも、ちゃんと聴こえる。
歌詞も、音も、全部が、まっすぐで。
ステージの上の夏鈴は、“軽い”なんてものじゃなかった。
真剣で、不器用で、でもまっすぐだった。
――ライブ後。
外で待っていると
かりん「来てたんだ」
少しだけ驚いた顔。
ゆめ「……うん」
目を逸らす。
かりん「どうだった」
同じ質問。
でも、今度は。
ゆめ「……悪くなかった」
少しだけ素直に言う。
かりん「それ、褒めてる?」
ゆめ「……たぶん」
小さく笑う。
夏鈴も、少しだけ笑う。
かりん「よかった」
その一言が、なんだか嬉しそうで。
ゆめ(……なんで)
胸が少しだけざわつく。
少しだけ近づく。
かりん「次の曲さ」
ゆめ「うん?」
かりん「君のために書く」
一瞬、意味が分からない。
ゆめ「……は?」
かりん「嫌いなやつを、好きにさせる曲」
真っ直ぐな目。
ゆめ「無理でしょ」
思わず笑う。
かりん「やってみる」
迷いがない。
ゆめ「……なんでそこまで」
かりん「好きだから」
さらっと言う。
時間が止まる。
ゆめ「……軽い」
かりん「軽くない」
すぐに否定。
かりん「今までで、一番ちゃんと好き」
その声は、あのステージと同じだった。
まっすぐで、嘘がない。
ゆめ「……ほんとに?」
少しだけ揺れる。
かりん「うん」
頷く。
かりん「だから、ちゃんと歌う」
静かな決意。
かりん「君のための歌」
その言葉に、胸が大きく鳴る。
ゆめ(……ずるい)
音楽で伝えてくるなんて。
逃げられない。
ゆめ「……じゃあさ」
少しだけ笑う。
ゆめ「ちゃんと好きにさせてよ」
夏鈴は、少しだけ目を細めて――
かりん「任せて」
そう言った。
その日から、音が少しだけ特別に聞こえるようになった。