田村保乃
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試験終了のチャイム。
鉛筆を置いた瞬間、ゆめの指が震えた。
終わった。
長かった受験が、やっと。
教室を出ると、周りは友達同士で騒いでいる。
「解放だー!」
「カラオケ行こ!」
ゆめは少し笑う。
でも一番に浮かんだのは、ほのの顔。
スマホを取り出す。
【終わった】
すぐ既読がつく。
【おつかれ】
たったそれだけ。
らんは少し寂しくなって、校門を出た。
校門の外。
見慣れた景色。
でも今日は少し違う。
視線の先。
私服姿のほの。
壁にもたれて、少し緊張した顔。
ゆめは立ち止まる。
ゆめ「……ほの?」
ほのが顔を上げる。
目が合う。
少し照れた笑い。
ほの「ゆめ」
一瞬、時間が止まる。
ゆめ「なんで」
ほの「内緒で迎えにきた」
ゆめ「聞いてない」
ほの「言ったらサプライズにならないじゃん」
ゆめの喉が詰まる。
ゆめ「来ないと思ってた」
ほの「なんで」
ゆめ「忙しいって言ってたし」
ほのは一歩近づく。
ほの「らんの人生で大事な日なのに?」
その言葉で、涙が溢れた。
ゆめ「終わった」
ほの「うん」
ゆめ「怖かった」
ほの「うん」
ゆめ「ずっと不安だった」
ほのは何も言わず、ゆめを抱きしめる。
制服越しに伝わる体温。
ほの「頑張ったね」
その一言で、全部がほどける。
ゆめはほのの服をぎゅっと掴む。
ゆめ「会いたかった。毎日会いたかった」
ほの「わたしも」
少し離れて、ほのがゆめの顔を見る。
ほの「ゆめ、ちゃんと戦った顔してる」
ゆめ「ぼろぼろだよ」
ほの「それが好き」
ゆめは泣きながら笑う。
ゆめ「ほの」
ほの「なに」
ゆめ「もう置いてかれない?」
ほのは迷わない。
ほの「迎えにきたでしょ」
ゆめの目が揺れる。
ほの「これからは、一緒に進むよ」
静かな校門前。
夕日がふたりを包む。
ほの「ゆめ」
ゆめ「んー?」
ほの「受験終わったら甘えるって言ったよね」
ゆめは少し赤くなる。
ゆめ「……言った」
ほのが少し意地悪に笑う。
ほの「じゃあ今日は、わたしの番」
ゆめ「なにそれ」
ほの「いっぱい抱きしめる」
ゆめは照れながらも、ほのの胸に顔を埋める。
ほののアパートに行くことになった。
駅から歩いて数分。
アパートの前で、ゆめは少しだけ立ち止まる。
ゆめ「……入っていいの?」
ほの「今日の主役はゆめだから」
ゆめ「なにそれ」
ほの「受験おつかれ会」
鍵が回る音。
ドアが開く。
まだ少し新しい匂いのするワンルーム。
ゆめは靴を脱いで、きょろきょろと見渡す。
ゆめ「ここで、ほの生活してるんだ」
ほの「うん」
ゆめ「知らない場所だ」
ぽつりとこぼれる本音。
ほのはゆっくり近づく。
ほの「今日から、ゆめも知ってる場所」
その一言で、胸が熱くなる。
ベッドに並んで座る。
距離が、近い。
でも今日は、ゆめのほうから寄った。
ぎゅっと、ほのの腕にしがみつく。
ほの「ゆめ?」
ゆめ「……甘えていい日でしょ」
ほのは優しく笑う。
ほの「どうぞ」
ゆめはそのまま胸に顔を埋める。
制服のリボンがくしゃっとなる。
ゆめ「ほんとに怖かった」
ほの「うん」
ゆめ「ほの取られたらどうしようって」
ほの「取られないよ」
ゆめ「大学の人、距離近いし」
ほのはゆめの頬に触れる。
ほの「近くても、選ぶのはゆめ」
ゆめ「毎回ちゃんと言って」
ほの「何回でも言う」
ゆめの目が潤む。
ゆめ「好き?」
ほの「好き」
ゆめ「大好き?」
ほの「大好き」
ゆめは我慢できなくなって、ほのに強く抱きつく。
ゆめ「わたし、ずっとほのの隣にいたい」
ほの「いるよ」
ゆめ「大学行っても?」
ほの「行っても」
ゆめ「可愛い子に囲まれても?」
ほのは少し笑う。
ほの「ゆめより可愛い子いない」
ゆめ「嘘」
ほの「ほんと」
ゆめは顔を上げる。
涙でぐしゃぐしゃ。
でも笑っている。
ゆめ「今日だけじゃなくてさ」
ほの「うん」
ゆめ「これからも、こうやって甘えていい?」
ほのは迷わず、ゆめの頭を撫でる。
ほの「ゆめは、甘える権利ある」
ゆめ「なにそれ」
ほの「わたしの恋人だから」
その言葉で、ゆめの理性がふっと溶ける。
ゆめ「ほの」
ほの「うん」
ゆめ「ぎゅーして」
ほのは強く、でも優しく抱きしめる。
制服越しに伝わる鼓動。
静かな部屋。
外の音も届かない。
ゆめは小さくつぶやく。
ゆめ「やっと追いついた」
ほのは首を横に振る。
ほの「追いつくとかじゃない」
ゆめ「じゃあなに」
ほの「並んだ」
ゆめの目からまた涙がこぼれる。
でも今度は、安心の涙。
受験も、不安も、嫉妬も。
全部抱えたままでもいい。
この腕の中があるなら。
ゆめは、まだほのに抱きついたまま。
制服のまま、ぴったりとくっついている。
ほの「ゆめ、あったかい」
ゆめ「そりゃ緊張してたから」
ほの「解けた?」
ゆめ「……うん」
少し静かになる。
ゆめが満たされて、落ち着いていくのが分かる。
そのとき。
ほのの指が、ゆめの制服の袖をきゅっと掴んだ。
ゆめ「ほの?」
返事がない。
代わりに、ほのの額がゆめの肩にこつんと当たる。
ゆめ「……ほの?」
小さな声。
ほの「ゆめ」
ゆめ「うん?」
ほの「ちょっとだけ」
ゆめ「なに」
ほの「わたしも、甘えていい?」
ゆめが息を止める。
今まで、強くて、余裕があって、
一歩先を歩いてるみたいだったほのが。
少し震えてる。
ゆめ「どうしたの」
ほのは顔を上げないまま、ぽつり。
ほの「ゆめが受験で頑張ってる間さ」
ゆめ「うん」
ほの「わたし、平気なふりしてたけど」
ゆめ「……」
ほの「ほんとは、めちゃくちゃ寂しかった」
ゆめの胸がぎゅっと締まる。
ほの「連絡控えたほうがいいかなとか」
ゆめ「え」
ほの「邪魔しちゃだめかなとか」
ゆめの手が、自然とほのの背中に回る。
ゆめ「そんなの……」
ほのが続ける。
ほの「大学で笑っててもさ」
ゆめ「うん」
ほの「帰ってくる部屋、ひとりで」
その言葉で、全部伝わる。
ほのも、ずっと不安だった。
ゆめが受験に集中して、自分の存在が重荷にならないかって。
ほの「ゆめ」
ゆめ「うん」
ほの「わたし、ちゃんと待ててた?」
ゆめは、ぎゅっと抱きしめる。
今度は、ゆめのほうから。
ゆめ「待っててくれた」
ほの「邪魔じゃなかった?」
ゆめ「支えだった」
ほのの呼吸が揺れる。
ほの「ゆめ」
ゆめ「なに」
ほの「ちょっとだけ、強いふり疲れた」
ゆめは、ほのの頭を胸に引き寄せる。
ゆめ「今日は、わたしが支える」
ほのが小さく笑う。
ほの「かっこいい」
ゆめ「受験生なめないで。もう終わったけど」
ゆめ「今日だけ特別」
ほのが小さくつぶやく。
ほの「ゆめ、離れないで」
それは、今までゆめが言っていた言葉。
ゆめの心臓が跳ねる。
ゆめ「離れない」
ほの「大学行っても?」
ゆめ「行っても」
ほの「可愛い子に囲まれても?」
ゆめ「またそれ笑」
でもゆめは真面目な顔で言う。
ゆめ「選ばれるの待つんじゃなくて、選ばせない」
ほのが吹き出す。
ほの「強い」
ゆめ「受験終わったから」
そして、少しだけ顔を近づける。
ゆめ「ほのは、わたしのだから」
ほのの目が揺れる。
今度は、ほのがゆめの服を掴む。
ほの「ゆめ」
ゆめ「うん」
ほの「好き」
ゆめ「知ってる」
ほの「大好き」
ゆめ「うん」
ほのが小さく笑う。
ほのが、ゆめの胸に顔をうずめている。
ゆめは、ふと気づく。
今、上にいるの自分だ。
ほの「ゆめ?」
ゆめ「……」
ほのが顔を上げる。
距離、近い。
近すぎる。
ほののまつ毛、唇、呼吸。
全部がはっきり見える。
ゆめの心臓が急にうるさくなる。
ゆめ(やばい)
でも、なぜか体が先に動いた。
ぐい、と肩を押す。
ほの「え」
ふわっと、ほのがベッドに倒れる。
ゆめ、覆いかぶさる形。
数秒、沈黙。
ほの「ゆめ?」
ゆめ「……」
やってしまった。
完全に勢い。
頭真っ白。
ほのは驚いた顔のまま、ゆめを見上げている。
ほの「どうしたの」
ゆめの耳が真っ赤になる。
ゆめ「ち、ちがう」
ほの「なにが」
ゆめ「押すつもりじゃなかった」
ほの「押したよ」
ゆめ「ちがうの!」
ほのが少し笑う。
ほの「ゆめ、顔真っ赤」
ゆめ「見ないで」
両手で顔を隠そうとする。
でも体勢はそのまま。
近い。
近い。
ほのが小さくつぶやく。
ほの「ゆめ」
ゆめ「なに」
ほの「今、ちょっとかっこよかった」
ゆめ「は?」
ほの「びっくりしたけど」
ゆめの心臓がさらに跳ねる。
ゆめ「ほのが甘えてきたから」
ほの「うん」
ゆめ「なんか、守りたくなっただけ」
ほの「それで押し倒す?」
ゆめ「言わないで」
ほのがくすっと笑う。
そして、そっとゆめの頬に触れる。
ほの「ゆめ」
ゆめ「……」
ほの「キスする?」
時間が止まる。
らんの思考が爆発。
ゆめ「しない!」
ほの「なんで」
ゆめ「心の準備が!」
ほのが笑う。
ほの「押し倒したのに?」
ゆめ「それは事故!」
ゆめは慌てて起き上がる。
ベッドの端まで下がる。
顔を両手で覆う。
ゆめ「むり、無理、むり」
ほのは起き上がって、隣に座る。
ほの「ゆめ」
ゆめ「見ないで」
ほの「かわいい」
ゆめ「やめて」
ほのは少しだけ真面目な声になる。
ほの「でもさ」
ゆめ「なに」
ほの「ゆめがそうやって素直に欲張るの、好きだよ」
ゆめの指がぴくっと動く。
ゆめ「欲張ってない」
ほの「ほのは、ゆめのなんでしょ?」
ゆめは、観念したみたいに小さく言う。
ゆめ「……うん」
ほのが少し近づく。
ほの「じゃあ、焦らなくていい」
ゆめの肩に頭を預ける。
ほの「今日は、ぎゅーだけで満足」
ゆめの心臓が落ち着いていく。
ゆめ「……びっくりした?」
ほの「うん」
ゆめ「嫌だった?」
ほのは即答。
ほの「全然」
ゆめの耳がまた赤くなる。
ゆめ「次やったら心の準備させて」
ほの「次あるの?」
ゆめ「あるかもね」
ゆめの手は自然とほのの手を握っていた。
少し強めに。
今度は押し倒さない。
でも、離さない。
鉛筆を置いた瞬間、ゆめの指が震えた。
終わった。
長かった受験が、やっと。
教室を出ると、周りは友達同士で騒いでいる。
「解放だー!」
「カラオケ行こ!」
ゆめは少し笑う。
でも一番に浮かんだのは、ほのの顔。
スマホを取り出す。
【終わった】
すぐ既読がつく。
【おつかれ】
たったそれだけ。
らんは少し寂しくなって、校門を出た。
校門の外。
見慣れた景色。
でも今日は少し違う。
視線の先。
私服姿のほの。
壁にもたれて、少し緊張した顔。
ゆめは立ち止まる。
ゆめ「……ほの?」
ほのが顔を上げる。
目が合う。
少し照れた笑い。
ほの「ゆめ」
一瞬、時間が止まる。
ゆめ「なんで」
ほの「内緒で迎えにきた」
ゆめ「聞いてない」
ほの「言ったらサプライズにならないじゃん」
ゆめの喉が詰まる。
ゆめ「来ないと思ってた」
ほの「なんで」
ゆめ「忙しいって言ってたし」
ほのは一歩近づく。
ほの「らんの人生で大事な日なのに?」
その言葉で、涙が溢れた。
ゆめ「終わった」
ほの「うん」
ゆめ「怖かった」
ほの「うん」
ゆめ「ずっと不安だった」
ほのは何も言わず、ゆめを抱きしめる。
制服越しに伝わる体温。
ほの「頑張ったね」
その一言で、全部がほどける。
ゆめはほのの服をぎゅっと掴む。
ゆめ「会いたかった。毎日会いたかった」
ほの「わたしも」
少し離れて、ほのがゆめの顔を見る。
ほの「ゆめ、ちゃんと戦った顔してる」
ゆめ「ぼろぼろだよ」
ほの「それが好き」
ゆめは泣きながら笑う。
ゆめ「ほの」
ほの「なに」
ゆめ「もう置いてかれない?」
ほのは迷わない。
ほの「迎えにきたでしょ」
ゆめの目が揺れる。
ほの「これからは、一緒に進むよ」
静かな校門前。
夕日がふたりを包む。
ほの「ゆめ」
ゆめ「んー?」
ほの「受験終わったら甘えるって言ったよね」
ゆめは少し赤くなる。
ゆめ「……言った」
ほのが少し意地悪に笑う。
ほの「じゃあ今日は、わたしの番」
ゆめ「なにそれ」
ほの「いっぱい抱きしめる」
ゆめは照れながらも、ほのの胸に顔を埋める。
ほののアパートに行くことになった。
駅から歩いて数分。
アパートの前で、ゆめは少しだけ立ち止まる。
ゆめ「……入っていいの?」
ほの「今日の主役はゆめだから」
ゆめ「なにそれ」
ほの「受験おつかれ会」
鍵が回る音。
ドアが開く。
まだ少し新しい匂いのするワンルーム。
ゆめは靴を脱いで、きょろきょろと見渡す。
ゆめ「ここで、ほの生活してるんだ」
ほの「うん」
ゆめ「知らない場所だ」
ぽつりとこぼれる本音。
ほのはゆっくり近づく。
ほの「今日から、ゆめも知ってる場所」
その一言で、胸が熱くなる。
ベッドに並んで座る。
距離が、近い。
でも今日は、ゆめのほうから寄った。
ぎゅっと、ほのの腕にしがみつく。
ほの「ゆめ?」
ゆめ「……甘えていい日でしょ」
ほのは優しく笑う。
ほの「どうぞ」
ゆめはそのまま胸に顔を埋める。
制服のリボンがくしゃっとなる。
ゆめ「ほんとに怖かった」
ほの「うん」
ゆめ「ほの取られたらどうしようって」
ほの「取られないよ」
ゆめ「大学の人、距離近いし」
ほのはゆめの頬に触れる。
ほの「近くても、選ぶのはゆめ」
ゆめ「毎回ちゃんと言って」
ほの「何回でも言う」
ゆめの目が潤む。
ゆめ「好き?」
ほの「好き」
ゆめ「大好き?」
ほの「大好き」
ゆめは我慢できなくなって、ほのに強く抱きつく。
ゆめ「わたし、ずっとほのの隣にいたい」
ほの「いるよ」
ゆめ「大学行っても?」
ほの「行っても」
ゆめ「可愛い子に囲まれても?」
ほのは少し笑う。
ほの「ゆめより可愛い子いない」
ゆめ「嘘」
ほの「ほんと」
ゆめは顔を上げる。
涙でぐしゃぐしゃ。
でも笑っている。
ゆめ「今日だけじゃなくてさ」
ほの「うん」
ゆめ「これからも、こうやって甘えていい?」
ほのは迷わず、ゆめの頭を撫でる。
ほの「ゆめは、甘える権利ある」
ゆめ「なにそれ」
ほの「わたしの恋人だから」
その言葉で、ゆめの理性がふっと溶ける。
ゆめ「ほの」
ほの「うん」
ゆめ「ぎゅーして」
ほのは強く、でも優しく抱きしめる。
制服越しに伝わる鼓動。
静かな部屋。
外の音も届かない。
ゆめは小さくつぶやく。
ゆめ「やっと追いついた」
ほのは首を横に振る。
ほの「追いつくとかじゃない」
ゆめ「じゃあなに」
ほの「並んだ」
ゆめの目からまた涙がこぼれる。
でも今度は、安心の涙。
受験も、不安も、嫉妬も。
全部抱えたままでもいい。
この腕の中があるなら。
ゆめは、まだほのに抱きついたまま。
制服のまま、ぴったりとくっついている。
ほの「ゆめ、あったかい」
ゆめ「そりゃ緊張してたから」
ほの「解けた?」
ゆめ「……うん」
少し静かになる。
ゆめが満たされて、落ち着いていくのが分かる。
そのとき。
ほのの指が、ゆめの制服の袖をきゅっと掴んだ。
ゆめ「ほの?」
返事がない。
代わりに、ほのの額がゆめの肩にこつんと当たる。
ゆめ「……ほの?」
小さな声。
ほの「ゆめ」
ゆめ「うん?」
ほの「ちょっとだけ」
ゆめ「なに」
ほの「わたしも、甘えていい?」
ゆめが息を止める。
今まで、強くて、余裕があって、
一歩先を歩いてるみたいだったほのが。
少し震えてる。
ゆめ「どうしたの」
ほのは顔を上げないまま、ぽつり。
ほの「ゆめが受験で頑張ってる間さ」
ゆめ「うん」
ほの「わたし、平気なふりしてたけど」
ゆめ「……」
ほの「ほんとは、めちゃくちゃ寂しかった」
ゆめの胸がぎゅっと締まる。
ほの「連絡控えたほうがいいかなとか」
ゆめ「え」
ほの「邪魔しちゃだめかなとか」
ゆめの手が、自然とほのの背中に回る。
ゆめ「そんなの……」
ほのが続ける。
ほの「大学で笑っててもさ」
ゆめ「うん」
ほの「帰ってくる部屋、ひとりで」
その言葉で、全部伝わる。
ほのも、ずっと不安だった。
ゆめが受験に集中して、自分の存在が重荷にならないかって。
ほの「ゆめ」
ゆめ「うん」
ほの「わたし、ちゃんと待ててた?」
ゆめは、ぎゅっと抱きしめる。
今度は、ゆめのほうから。
ゆめ「待っててくれた」
ほの「邪魔じゃなかった?」
ゆめ「支えだった」
ほのの呼吸が揺れる。
ほの「ゆめ」
ゆめ「なに」
ほの「ちょっとだけ、強いふり疲れた」
ゆめは、ほのの頭を胸に引き寄せる。
ゆめ「今日は、わたしが支える」
ほのが小さく笑う。
ほの「かっこいい」
ゆめ「受験生なめないで。もう終わったけど」
ゆめ「今日だけ特別」
ほのが小さくつぶやく。
ほの「ゆめ、離れないで」
それは、今までゆめが言っていた言葉。
ゆめの心臓が跳ねる。
ゆめ「離れない」
ほの「大学行っても?」
ゆめ「行っても」
ほの「可愛い子に囲まれても?」
ゆめ「またそれ笑」
でもゆめは真面目な顔で言う。
ゆめ「選ばれるの待つんじゃなくて、選ばせない」
ほのが吹き出す。
ほの「強い」
ゆめ「受験終わったから」
そして、少しだけ顔を近づける。
ゆめ「ほのは、わたしのだから」
ほのの目が揺れる。
今度は、ほのがゆめの服を掴む。
ほの「ゆめ」
ゆめ「うん」
ほの「好き」
ゆめ「知ってる」
ほの「大好き」
ゆめ「うん」
ほのが小さく笑う。
ほのが、ゆめの胸に顔をうずめている。
ゆめは、ふと気づく。
今、上にいるの自分だ。
ほの「ゆめ?」
ゆめ「……」
ほのが顔を上げる。
距離、近い。
近すぎる。
ほののまつ毛、唇、呼吸。
全部がはっきり見える。
ゆめの心臓が急にうるさくなる。
ゆめ(やばい)
でも、なぜか体が先に動いた。
ぐい、と肩を押す。
ほの「え」
ふわっと、ほのがベッドに倒れる。
ゆめ、覆いかぶさる形。
数秒、沈黙。
ほの「ゆめ?」
ゆめ「……」
やってしまった。
完全に勢い。
頭真っ白。
ほのは驚いた顔のまま、ゆめを見上げている。
ほの「どうしたの」
ゆめの耳が真っ赤になる。
ゆめ「ち、ちがう」
ほの「なにが」
ゆめ「押すつもりじゃなかった」
ほの「押したよ」
ゆめ「ちがうの!」
ほのが少し笑う。
ほの「ゆめ、顔真っ赤」
ゆめ「見ないで」
両手で顔を隠そうとする。
でも体勢はそのまま。
近い。
近い。
ほのが小さくつぶやく。
ほの「ゆめ」
ゆめ「なに」
ほの「今、ちょっとかっこよかった」
ゆめ「は?」
ほの「びっくりしたけど」
ゆめの心臓がさらに跳ねる。
ゆめ「ほのが甘えてきたから」
ほの「うん」
ゆめ「なんか、守りたくなっただけ」
ほの「それで押し倒す?」
ゆめ「言わないで」
ほのがくすっと笑う。
そして、そっとゆめの頬に触れる。
ほの「ゆめ」
ゆめ「……」
ほの「キスする?」
時間が止まる。
らんの思考が爆発。
ゆめ「しない!」
ほの「なんで」
ゆめ「心の準備が!」
ほのが笑う。
ほの「押し倒したのに?」
ゆめ「それは事故!」
ゆめは慌てて起き上がる。
ベッドの端まで下がる。
顔を両手で覆う。
ゆめ「むり、無理、むり」
ほのは起き上がって、隣に座る。
ほの「ゆめ」
ゆめ「見ないで」
ほの「かわいい」
ゆめ「やめて」
ほのは少しだけ真面目な声になる。
ほの「でもさ」
ゆめ「なに」
ほの「ゆめがそうやって素直に欲張るの、好きだよ」
ゆめの指がぴくっと動く。
ゆめ「欲張ってない」
ほの「ほのは、ゆめのなんでしょ?」
ゆめは、観念したみたいに小さく言う。
ゆめ「……うん」
ほのが少し近づく。
ほの「じゃあ、焦らなくていい」
ゆめの肩に頭を預ける。
ほの「今日は、ぎゅーだけで満足」
ゆめの心臓が落ち着いていく。
ゆめ「……びっくりした?」
ほの「うん」
ゆめ「嫌だった?」
ほのは即答。
ほの「全然」
ゆめの耳がまた赤くなる。
ゆめ「次やったら心の準備させて」
ほの「次あるの?」
ゆめ「あるかもね」
ゆめの手は自然とほのの手を握っていた。
少し強めに。
今度は押し倒さない。
でも、離さない。