田村保乃
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最初に変わったのは、体だった。
朝起きるのが、つらい。
仕事終わりにほのと会う約束を入れるだけで、頭の奥が重くなる。
それでも、笑っていた。
ほのの前では、いつも通りのゆめでいようと決めていたから。
「ガンです」
その言葉を聞いた日の帰り道、真っ先に浮かんだのは、恋人の顔だった。
どうやって言えばいいんだろう。
どういう顔をさせてしまうんだろう。
――それを考えただけで、息が詰まった。
ゆめ(この人には、弱ってる姿を見せたくない)
それは強がりでも、優しさでもなく、
ただの恐怖だった。
ほの「最近、ちょっと元気ない?」
ゆめ「そう?仕事が忙しいだけ」
ほの「無理してない?」
ゆめ「してないよ」
嘘だった。
無理をしていたし、本当は会いたかった。
でも、会えば、きっと気づかれる。
距離を置き始めると、ほのは理由を聞いてこなかった。
ただ、少しだけ寂しそうな目をするようになった。
それが、胸に刺さった。
ゆめ「……距離、置こうか」
ほの「え?」
ゆめ「このまま付き合うの、しんどくて」
言葉は冷たくした。
感情を切り離さないと、言えなかった。
ほの「私、何かした?」
ゆめ「何も」
ほの「じゃあ、どうして」
ゆめ「……気持ちが変わった」
ほのの表情が、ゆっくり固まる。
それ以上は、何も言われなかった。
ドアを閉めたあと、その場にしゃがみこんだ。
ゆめ(最低だな)
でも、これしか方法がなかった。
一緒にいれば、支えられてしまう。
そうしたら、きっと甘えてしまう。
数週間後。
ほのは、理由のわからない別れの中で、何度も自分を振り返っていた。
嫌われたのか。
重かったのか。
それとも、心が離れただけなのか。
答えは、どこにもなかった。
そんな時、てんから連絡が来た。
てん「……ほの、聞いてほしいことがある」
ほの「なに?」
てん「ゆめ、病気なんだよ」
ほの「……え?」
てん「ガン。治療中」
言葉が、頭に入ってこなかった。
てん「弱ってる自分を見せたくなくて、突き放したんだと思う」
その瞬間、全部が、つながった。
ほの「……馬鹿だよ」
それはゆめに向けた言葉で、
同時に自分にも向けた言葉だった。
会いに行こう、と思った。
迷いはなかった。
インターホンが鳴った時、
ゆめは一瞬、居留守を使おうとした。
でも、画面に映った顔を見て、動けなくなった。
ほの「……久しぶり」
ゆめ「……どうして」
ほの「てんから聞いた」
ゆめは、視線を落とした。
ゆめ「……見せたくなかった」
ほの「何を?」
ゆめ「弱ってるところ」
ほのは、一歩近づいた。
ほの「それでも一人でいられるより、私はそばにいたい」
ゆめ「……重くなるよ」
ほの「なら、一緒に重くなろ」
その言葉で、張り詰めていたものが、切れた。
ゆめ「怖かった。嫌われるより、心配されるほうが」
ほのは、何も言わずに抱きしめた。
強くはないけど、逃げられない距離で。
ほの「離れられるほうが、ずっと怖かった。恋人でいさせて」
ゆめ「……そばに、いて」
治療は続く。
楽な日ばかりじゃないし、先のことは、まだ見えない。
でも。
ほの「今日、顔色いいよ」
ゆめ「ほんと?」
ほの「うん。ちょっと安心した」
それだけで、生きていける気がした。
逃げることで守ろうとした恋は、向き合うことで、もっと強くなった。
静かで、不器用で、それでも確かなハッピーエンド。
朝起きるのが、つらい。
仕事終わりにほのと会う約束を入れるだけで、頭の奥が重くなる。
それでも、笑っていた。
ほのの前では、いつも通りのゆめでいようと決めていたから。
「ガンです」
その言葉を聞いた日の帰り道、真っ先に浮かんだのは、恋人の顔だった。
どうやって言えばいいんだろう。
どういう顔をさせてしまうんだろう。
――それを考えただけで、息が詰まった。
ゆめ(この人には、弱ってる姿を見せたくない)
それは強がりでも、優しさでもなく、
ただの恐怖だった。
ほの「最近、ちょっと元気ない?」
ゆめ「そう?仕事が忙しいだけ」
ほの「無理してない?」
ゆめ「してないよ」
嘘だった。
無理をしていたし、本当は会いたかった。
でも、会えば、きっと気づかれる。
距離を置き始めると、ほのは理由を聞いてこなかった。
ただ、少しだけ寂しそうな目をするようになった。
それが、胸に刺さった。
ゆめ「……距離、置こうか」
ほの「え?」
ゆめ「このまま付き合うの、しんどくて」
言葉は冷たくした。
感情を切り離さないと、言えなかった。
ほの「私、何かした?」
ゆめ「何も」
ほの「じゃあ、どうして」
ゆめ「……気持ちが変わった」
ほのの表情が、ゆっくり固まる。
それ以上は、何も言われなかった。
ドアを閉めたあと、その場にしゃがみこんだ。
ゆめ(最低だな)
でも、これしか方法がなかった。
一緒にいれば、支えられてしまう。
そうしたら、きっと甘えてしまう。
数週間後。
ほのは、理由のわからない別れの中で、何度も自分を振り返っていた。
嫌われたのか。
重かったのか。
それとも、心が離れただけなのか。
答えは、どこにもなかった。
そんな時、てんから連絡が来た。
てん「……ほの、聞いてほしいことがある」
ほの「なに?」
てん「ゆめ、病気なんだよ」
ほの「……え?」
てん「ガン。治療中」
言葉が、頭に入ってこなかった。
てん「弱ってる自分を見せたくなくて、突き放したんだと思う」
その瞬間、全部が、つながった。
ほの「……馬鹿だよ」
それはゆめに向けた言葉で、
同時に自分にも向けた言葉だった。
会いに行こう、と思った。
迷いはなかった。
インターホンが鳴った時、
ゆめは一瞬、居留守を使おうとした。
でも、画面に映った顔を見て、動けなくなった。
ほの「……久しぶり」
ゆめ「……どうして」
ほの「てんから聞いた」
ゆめは、視線を落とした。
ゆめ「……見せたくなかった」
ほの「何を?」
ゆめ「弱ってるところ」
ほのは、一歩近づいた。
ほの「それでも一人でいられるより、私はそばにいたい」
ゆめ「……重くなるよ」
ほの「なら、一緒に重くなろ」
その言葉で、張り詰めていたものが、切れた。
ゆめ「怖かった。嫌われるより、心配されるほうが」
ほのは、何も言わずに抱きしめた。
強くはないけど、逃げられない距離で。
ほの「離れられるほうが、ずっと怖かった。恋人でいさせて」
ゆめ「……そばに、いて」
治療は続く。
楽な日ばかりじゃないし、先のことは、まだ見えない。
でも。
ほの「今日、顔色いいよ」
ゆめ「ほんと?」
ほの「うん。ちょっと安心した」
それだけで、生きていける気がした。
逃げることで守ろうとした恋は、向き合うことで、もっと強くなった。
静かで、不器用で、それでも確かなハッピーエンド。