守屋麗奈
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「ごめんね、次からは絶対にしないから」
そんなゆめの言葉を信じて許したのは、これで何度目だろう。
付き合って一年、一緒に暮らし始めて半年の大学生生活。
ゆめは私のことが好きだと言うけれど、他の女の子からの誘いも絶対に断らない。
さすがに今回ばかりは、反省の態度も全く見られなくて愛想が尽きた。
だから私は、ゆめがサークルの飲み会に行っている間に自分の荷物を全部まとめて何も言わずに二人で住んでいたアパートを出ていった。
家を出てから三日目。
守屋麗奈は、新しく借りたワンルームの部屋で鳴り止まないスマホの画面を冷ややかな目で見つめていた。
画面に表示される『ゆめ』からの着信とメッセージの嵐をスワイプして消す。
れな「……いまさら焦ったって遅いもーん。浮気するゆめちゃんが百パーセント悪いんだからね。べーだっ」
画面には『どこにいるの?』『本当にごめん』『話を聞いて』と、必死なメッセージが溢れているけれど、すべて未読のまま無視。
だけど、スマホをベッドに放り投げた瞬間胸の奥がキュンと痛む。
こんなに酷いことをされているのにまだゆめのことが好きで、連絡を返したくなってしまう自分が本当に嫌になる。
れな「……バカみたい。なんでまだ好きなんだろ。次会ったら、絶対に泣かせてやるんだから」
翌日。
同じ大学のキャンパス。
中庭のベンチに座っていた麗奈の前に息を切らせたゆめが突然現れた。
髪はボサボサで、目の下にはクマがある。
ゆめは麗奈の姿を見つけると、泣きそうな顔で駆け寄ってきた。
ゆめ「れな……っ! やっと見つけた……。お願いだから無視しないで話を聞いて……っ」
ゆめのほうを一切見ず、手元の教科書に視線を落としたまま冷たく言い放つ。
れな「何か用ですか? 授業が始まるので、どいてください。」
ゆめ「れな、本当にごめん! 荷物が全部なくなってて、連絡もつかなくて、わたし頭がおかしくなりそうだった……。もう他の子と連絡も取らないし、飲み会も行かないから……!」
れな「……それ、前も聞いた。ゆめちゃんの言葉もう一ミリも信じられない」
いつもは優しい麗奈の、見たこともない冷たい視線にゆめは声を詰まらせてその場にへたり込んだ。
麗奈の手を震える手でぎゅっと握りしめてくる。
ゆめ「お願い、捨てないで……。れながいない部屋なんて、寂しくて居られないよ……。これからは、れなのことだけ、本気で、一番に大切にするから……っ」
ゆめの目から涙がこぼれ落ちる。
その必死な姿を見て、麗奈の頑なだった心の氷が、ほんの少しだけ溶けかけるのを感じた。
繋がれた手を振りほどかずに、じっとゆめの目を見つめる。
れな「……本気って、口先だけなら誰でも言えるよ。」
ゆめ「証明する……! スマホの連絡先も全部消すし、れなが安心するまで何でもするから……っ」
れな「……じゃあ、一ヶ月。ゆめちゃんがどれだけ変われるかここで見ててあげる。」
ゆめ「え……?」
れな「まだ許したわけじゃないからね。本当に本気で向き合ってくれるならまた一緒に住んであげてもいいけど……どうする?」
パッと顔を輝かせて、何度も頷くゆめ。
ゆめ「する! 絶対に裏切らないから、もう一度チャンスをちょうだい……!」
泣きじゃくりながら縋り付いてくる恋人を麗奈は少し呆れたようにだけど愛おしさを隠せない表情で見下ろした。
まだ甘やかすつもりはないけれど二人きりの本当の関係を取り戻すためのカウントダウンは今ここから始まったばかりだった。
麗奈が突きつけた「一ヶ月の執行猶予」から、今日でちょうど三十日目。
この一ヶ月、ゆめの激変ぶりは、大学内でも噂になるほどだった。
サークルの飲み会はすべて断り、講義が終われば真っ直ぐ帰宅。
女の子と連絡を取るどころか、すれ違うだけで一歩引くような徹底ぶり。
大学で見かけるたび、ゆめは捨てられた子犬のような目で麗奈を見つめてきたけれど麗奈は今日までずっと冷たい態度を崩さなかった。
そして約束の日の夜。
麗奈が一人で暮らす新しいアパートのチャイムが鳴った。
扉を開けると、そこには緊張でガチガチになったゆめが立っていた。
ゆめ「……こんばんは、れな。一ヶ月、経ったよ」
腕を組んで、ドアの隙間からじっと見つめる。
れな「……うん。入っていいよ」
部屋に入ったゆめは、ソファーの端っこに小さくなって座った。
その手には、自分のスマートフォンが握られている。
ゆめ「これ、見てほしい。女の子の連絡先、本当に仕事と家族以外ぜんぶ消した。通知もほら、れなからのやつしか来ないように設定したから……っ」
スマホを受け取り、画面を確認する。
本当に綺麗に整理された画面を見て、心の中で小さくガッツポーズをする。
れな「……ふーん。がんばったんだね。」
ゆめ「がんばったよ……! この一ヶ月、れなに会いたくて、声が聞きたくて、本当に死にそうだった……。ねぇ、わたしちゃんと変われたかな……?」
ゆめは泣きそうな顔で麗奈のスカートの裾をきゅっと握りしめて見上げてくる。
その必死な姿に、麗奈の胸の奥に溜まっていた意地悪な気持ちは一気に甘い愛おしさへと変わっていった。
握られた手をそっと自分の手で包み込んで、意地悪く微笑む。
れな「合格。……ゆめちゃん、よく耐えました」
ゆめ「え……っ!? じゃあ、じゃあ……っ」
れな「うん。戻ってきてあげてもいいよ。……っていうか、わたしも、ゆめちゃんがいなくて寂しかったんだからね?」
ゆめ「れな……っ!」
ゆめは我慢の限界を迎えたように麗奈の体に飛びついた。
勢いよく後ろのベッドに倒れ込む二人。
ゆめは麗奈を離さないようにきつく抱きしめて、顔中に何度も、ちゅ、ちゅ、とリップ音を響かせてキスをした。
れな「ん、もうっ、くすぐったいよぉ! ゆめちゃん、急に元気になりすぎ!」
ゆめ「だって、一ヶ月も我慢してたんだもん……っ。れな、大好き。本当に大好き。もう絶対に泣かせたりしないから」
ふふ、と嬉しそうに笑って、ゆめの首に腕を回す。
れな「おでこや頬じゃなくて、ちゃんとここに、本気のやつして?」
麗奈が唇を少し尖らせておねだりすると、ゆめは愛おしそうに目を細めゆっくりと唇を重ねた。
この一ヶ月の寂しさを全部埋めるような、甘くて、熱くて、どこまでも深いキス。
もうそこにはグレーの曖昧さなんてなくて、麗奈だけを見つめる真っ直ぐな体温だけがあった。
ゆめ「……ん、れな。明日、一緒にあのアパートに荷物、取りに行こうね」
れな「うん。……でも、もしまた怪しいことしたら、今度は本当に一生会えなくなるからね?」
ゆめ「絶対にしない! わたしの特別は、一生れなだけだよ」
ベッドの上で何度もキスを交わしながら、二人の新しい今度こそ本物の恋の生活が甘く始まろうとしていた。
そんなゆめの言葉を信じて許したのは、これで何度目だろう。
付き合って一年、一緒に暮らし始めて半年の大学生生活。
ゆめは私のことが好きだと言うけれど、他の女の子からの誘いも絶対に断らない。
さすがに今回ばかりは、反省の態度も全く見られなくて愛想が尽きた。
だから私は、ゆめがサークルの飲み会に行っている間に自分の荷物を全部まとめて何も言わずに二人で住んでいたアパートを出ていった。
家を出てから三日目。
守屋麗奈は、新しく借りたワンルームの部屋で鳴り止まないスマホの画面を冷ややかな目で見つめていた。
画面に表示される『ゆめ』からの着信とメッセージの嵐をスワイプして消す。
れな「……いまさら焦ったって遅いもーん。浮気するゆめちゃんが百パーセント悪いんだからね。べーだっ」
画面には『どこにいるの?』『本当にごめん』『話を聞いて』と、必死なメッセージが溢れているけれど、すべて未読のまま無視。
だけど、スマホをベッドに放り投げた瞬間胸の奥がキュンと痛む。
こんなに酷いことをされているのにまだゆめのことが好きで、連絡を返したくなってしまう自分が本当に嫌になる。
れな「……バカみたい。なんでまだ好きなんだろ。次会ったら、絶対に泣かせてやるんだから」
翌日。
同じ大学のキャンパス。
中庭のベンチに座っていた麗奈の前に息を切らせたゆめが突然現れた。
髪はボサボサで、目の下にはクマがある。
ゆめは麗奈の姿を見つけると、泣きそうな顔で駆け寄ってきた。
ゆめ「れな……っ! やっと見つけた……。お願いだから無視しないで話を聞いて……っ」
ゆめのほうを一切見ず、手元の教科書に視線を落としたまま冷たく言い放つ。
れな「何か用ですか? 授業が始まるので、どいてください。」
ゆめ「れな、本当にごめん! 荷物が全部なくなってて、連絡もつかなくて、わたし頭がおかしくなりそうだった……。もう他の子と連絡も取らないし、飲み会も行かないから……!」
れな「……それ、前も聞いた。ゆめちゃんの言葉もう一ミリも信じられない」
いつもは優しい麗奈の、見たこともない冷たい視線にゆめは声を詰まらせてその場にへたり込んだ。
麗奈の手を震える手でぎゅっと握りしめてくる。
ゆめ「お願い、捨てないで……。れながいない部屋なんて、寂しくて居られないよ……。これからは、れなのことだけ、本気で、一番に大切にするから……っ」
ゆめの目から涙がこぼれ落ちる。
その必死な姿を見て、麗奈の頑なだった心の氷が、ほんの少しだけ溶けかけるのを感じた。
繋がれた手を振りほどかずに、じっとゆめの目を見つめる。
れな「……本気って、口先だけなら誰でも言えるよ。」
ゆめ「証明する……! スマホの連絡先も全部消すし、れなが安心するまで何でもするから……っ」
れな「……じゃあ、一ヶ月。ゆめちゃんがどれだけ変われるかここで見ててあげる。」
ゆめ「え……?」
れな「まだ許したわけじゃないからね。本当に本気で向き合ってくれるならまた一緒に住んであげてもいいけど……どうする?」
パッと顔を輝かせて、何度も頷くゆめ。
ゆめ「する! 絶対に裏切らないから、もう一度チャンスをちょうだい……!」
泣きじゃくりながら縋り付いてくる恋人を麗奈は少し呆れたようにだけど愛おしさを隠せない表情で見下ろした。
まだ甘やかすつもりはないけれど二人きりの本当の関係を取り戻すためのカウントダウンは今ここから始まったばかりだった。
麗奈が突きつけた「一ヶ月の執行猶予」から、今日でちょうど三十日目。
この一ヶ月、ゆめの激変ぶりは、大学内でも噂になるほどだった。
サークルの飲み会はすべて断り、講義が終われば真っ直ぐ帰宅。
女の子と連絡を取るどころか、すれ違うだけで一歩引くような徹底ぶり。
大学で見かけるたび、ゆめは捨てられた子犬のような目で麗奈を見つめてきたけれど麗奈は今日までずっと冷たい態度を崩さなかった。
そして約束の日の夜。
麗奈が一人で暮らす新しいアパートのチャイムが鳴った。
扉を開けると、そこには緊張でガチガチになったゆめが立っていた。
ゆめ「……こんばんは、れな。一ヶ月、経ったよ」
腕を組んで、ドアの隙間からじっと見つめる。
れな「……うん。入っていいよ」
部屋に入ったゆめは、ソファーの端っこに小さくなって座った。
その手には、自分のスマートフォンが握られている。
ゆめ「これ、見てほしい。女の子の連絡先、本当に仕事と家族以外ぜんぶ消した。通知もほら、れなからのやつしか来ないように設定したから……っ」
スマホを受け取り、画面を確認する。
本当に綺麗に整理された画面を見て、心の中で小さくガッツポーズをする。
れな「……ふーん。がんばったんだね。」
ゆめ「がんばったよ……! この一ヶ月、れなに会いたくて、声が聞きたくて、本当に死にそうだった……。ねぇ、わたしちゃんと変われたかな……?」
ゆめは泣きそうな顔で麗奈のスカートの裾をきゅっと握りしめて見上げてくる。
その必死な姿に、麗奈の胸の奥に溜まっていた意地悪な気持ちは一気に甘い愛おしさへと変わっていった。
握られた手をそっと自分の手で包み込んで、意地悪く微笑む。
れな「合格。……ゆめちゃん、よく耐えました」
ゆめ「え……っ!? じゃあ、じゃあ……っ」
れな「うん。戻ってきてあげてもいいよ。……っていうか、わたしも、ゆめちゃんがいなくて寂しかったんだからね?」
ゆめ「れな……っ!」
ゆめは我慢の限界を迎えたように麗奈の体に飛びついた。
勢いよく後ろのベッドに倒れ込む二人。
ゆめは麗奈を離さないようにきつく抱きしめて、顔中に何度も、ちゅ、ちゅ、とリップ音を響かせてキスをした。
れな「ん、もうっ、くすぐったいよぉ! ゆめちゃん、急に元気になりすぎ!」
ゆめ「だって、一ヶ月も我慢してたんだもん……っ。れな、大好き。本当に大好き。もう絶対に泣かせたりしないから」
ふふ、と嬉しそうに笑って、ゆめの首に腕を回す。
れな「おでこや頬じゃなくて、ちゃんとここに、本気のやつして?」
麗奈が唇を少し尖らせておねだりすると、ゆめは愛おしそうに目を細めゆっくりと唇を重ねた。
この一ヶ月の寂しさを全部埋めるような、甘くて、熱くて、どこまでも深いキス。
もうそこにはグレーの曖昧さなんてなくて、麗奈だけを見つめる真っ直ぐな体温だけがあった。
ゆめ「……ん、れな。明日、一緒にあのアパートに荷物、取りに行こうね」
れな「うん。……でも、もしまた怪しいことしたら、今度は本当に一生会えなくなるからね?」
ゆめ「絶対にしない! わたしの特別は、一生れなだけだよ」
ベッドの上で何度もキスを交わしながら、二人の新しい今度こそ本物の恋の生活が甘く始まろうとしていた。