守屋麗奈
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麗奈先輩と付き合えてから、私の毎日はピンク色の幸福感に包まれていた。
今日も放課後の図書室、一番奥の席で二人きり。
先輩の綺麗な横顔を眺めながら、私は心の中で「ふふん」と鼻高々になっていた。
ゆめ(すべては私の完璧な作戦のおかげ。不器用な私でも、頭脳戦なら先輩を落とせちゃうんだから!)
そんな風に、ちょっと調子に乗っていたのがいけなかった。
れな「ねぇ、ゆめちゃん。ちょっとこれ見て」
先輩がスマホの画面を私に見せてきた。
そこには、ある通販サイトの画面が映っている。
ゆめ「ん? イチゴ味のパックジュース……の、1ケースまとめ買いですか?」
れな「そう。これね、私が一番好きなやつなんだけど、うちの学校の購買だと週に1回、3本くらいしか入荷しない激レア商品なんだよね」
ゆめ「へ、へえ~……そうなんですか。先輩、本当にそれが好きなんですね」
私は引きつった笑顔を浮かべた。
背中にじわりと冷や汗が流れる。
知っている。
激レアなことなんて、誰よりも知っている。
だからこそ、私は毎週購買のおばちゃんにしがみつく勢いで入荷日に全力で買い占めていたのだ。
先輩に「買いすぎちゃって」と渡す、あの1本のために。
れな「うん。だからね、不思議だったの。なんでゆめちゃん、あんなに毎回『買いすぎちゃった』って私にイチゴ味をくれたのかなって」
ゆめ「そ、それは……たまたま、私がイチゴの気分だったというか……!」
れな「ふふ、そっかぁ。じゃあ、これはどう説明する?」
先輩が次に机の上に置いたのは、1冊のノートだった。
私の見覚えがありすぎる、スケジュール帳。
ゆめ「あ、あれ……!? なんでそれを先輩が!?」
れな「一昨日、ゆめちゃんが私の部屋に忘れていったんだよ。中身を見るつもりはなかったんだけど、付箋がはみ出てたから、つい……」
先輩がパタパタとページをめくる。
そこには、私の必死の血と汗と涙の結晶がびっしりと書き込まれていた。
『〇月〇日:先輩、木曜の6限後は図書室。前を歩くとき、わざとらしく本を落とすこと。視線誘導の角度、要練習』
『〇月〇日:購買のイチゴジュース争奪戦。ライバル多し。5分前行動必須』
『〇月〇日:目が合った時の微笑み方(鏡の前で30回練習済み。これで行く)』
ゆめ「あ、あああ……っ!!! 違うんです、これは、その……っ!」
顔が爆発しそうに熱い。
恥ずかしさのあまり、地球の裏側まで穴を掘って逃げ出したかった。
作戦ノート。
一番見られてはいけない、私の黒歴史だ。
ゆめ「う、嘘つきって嫌いですか……? 先輩に告白してもらうために、私、最低な計算ばっかりして……っ」
嫌われた。
絶対に幻滅された。
泣きそうになってうつむく私の頭にぽん、と優しい手が置かれた。
れな「あはは! もう、ゆめちゃん最高にかわいい!」
ゆめ「え……?」
顔を上げると、麗奈先輩は怒るどころかお腹を抱えて愛おしそうに笑っていた。
れな「ううん、全然嫌いじゃないよ。むしろ、すっごく嬉しい。私のために、そんなにたくさん頭使って、練習までしてくれてたんだって思ったら……愛おしすぎて心臓が痛いもん」
ゆめ「せ、先輩……」
れな「それにね? 実は私、ゆめちゃんが本を落としたときから、なんとなく気づいてたんだよ?」
ゆめ「えっ!? 気づいて……っ!?」
れな「だって、本を落としたゆめちゃん、顔が真っ赤でロボットみたいにガチガチだったんだもん。『あ、この子わざと落としたな』ってすぐ分かっちゃった」
嘘でしょ。
私の完璧な演技は、最初から見破られていたのだ。
れな「ジュースのときもね、『買いすぎちゃった』って言いながら、ゆめちゃんの手、緊張でプルプル震えてたでしょ? だから私、確信したの。あ、この子は私をおとそうとしてるんだなって。……だから、私も作戦に乗ってあげたの」
ゆめ「じゃあ、あの時の告白も……」
れな「うん。ゆめちゃんが一生懸命作ってくれた告白されるための舞台だもん。主役として、最高にかっこよくセリフを言わなきゃって、私の方こそドキドキしながら準備してたんだよ?」
先輩はいたずらっぽくウインクをして、私のノートの最新のページを開いた。
そこには、新しく書き込まれた『彼女としての作戦』の文字。
先輩はその下に、自分のシャーペンでサラサラと何かを書き加えた。
れな「ほら、これ。次の作戦に追加しておいて?」
手渡されたノートを見ると、先輩の綺麗な字でこう書かれていた。
次の作戦:恥ずかしがらずに、先輩からキスされること
ゆめ「先輩……っ! もう、いじわるです……!」
れな「ふふ、計算通りの放課後でしょ? ……おいで、ゆめちゃん」
夕暮れの図書室の影で、先輩の顔が近づいてくる。
私の不器用な罠は、最初から先輩の手のひらの上。
だけど、世界で一番幸せな敗北感に包まれながら、私はそっと目を閉じた。
今日も放課後の図書室、一番奥の席で二人きり。
先輩の綺麗な横顔を眺めながら、私は心の中で「ふふん」と鼻高々になっていた。
ゆめ(すべては私の完璧な作戦のおかげ。不器用な私でも、頭脳戦なら先輩を落とせちゃうんだから!)
そんな風に、ちょっと調子に乗っていたのがいけなかった。
れな「ねぇ、ゆめちゃん。ちょっとこれ見て」
先輩がスマホの画面を私に見せてきた。
そこには、ある通販サイトの画面が映っている。
ゆめ「ん? イチゴ味のパックジュース……の、1ケースまとめ買いですか?」
れな「そう。これね、私が一番好きなやつなんだけど、うちの学校の購買だと週に1回、3本くらいしか入荷しない激レア商品なんだよね」
ゆめ「へ、へえ~……そうなんですか。先輩、本当にそれが好きなんですね」
私は引きつった笑顔を浮かべた。
背中にじわりと冷や汗が流れる。
知っている。
激レアなことなんて、誰よりも知っている。
だからこそ、私は毎週購買のおばちゃんにしがみつく勢いで入荷日に全力で買い占めていたのだ。
先輩に「買いすぎちゃって」と渡す、あの1本のために。
れな「うん。だからね、不思議だったの。なんでゆめちゃん、あんなに毎回『買いすぎちゃった』って私にイチゴ味をくれたのかなって」
ゆめ「そ、それは……たまたま、私がイチゴの気分だったというか……!」
れな「ふふ、そっかぁ。じゃあ、これはどう説明する?」
先輩が次に机の上に置いたのは、1冊のノートだった。
私の見覚えがありすぎる、スケジュール帳。
ゆめ「あ、あれ……!? なんでそれを先輩が!?」
れな「一昨日、ゆめちゃんが私の部屋に忘れていったんだよ。中身を見るつもりはなかったんだけど、付箋がはみ出てたから、つい……」
先輩がパタパタとページをめくる。
そこには、私の必死の血と汗と涙の結晶がびっしりと書き込まれていた。
『〇月〇日:先輩、木曜の6限後は図書室。前を歩くとき、わざとらしく本を落とすこと。視線誘導の角度、要練習』
『〇月〇日:購買のイチゴジュース争奪戦。ライバル多し。5分前行動必須』
『〇月〇日:目が合った時の微笑み方(鏡の前で30回練習済み。これで行く)』
ゆめ「あ、あああ……っ!!! 違うんです、これは、その……っ!」
顔が爆発しそうに熱い。
恥ずかしさのあまり、地球の裏側まで穴を掘って逃げ出したかった。
作戦ノート。
一番見られてはいけない、私の黒歴史だ。
ゆめ「う、嘘つきって嫌いですか……? 先輩に告白してもらうために、私、最低な計算ばっかりして……っ」
嫌われた。
絶対に幻滅された。
泣きそうになってうつむく私の頭にぽん、と優しい手が置かれた。
れな「あはは! もう、ゆめちゃん最高にかわいい!」
ゆめ「え……?」
顔を上げると、麗奈先輩は怒るどころかお腹を抱えて愛おしそうに笑っていた。
れな「ううん、全然嫌いじゃないよ。むしろ、すっごく嬉しい。私のために、そんなにたくさん頭使って、練習までしてくれてたんだって思ったら……愛おしすぎて心臓が痛いもん」
ゆめ「せ、先輩……」
れな「それにね? 実は私、ゆめちゃんが本を落としたときから、なんとなく気づいてたんだよ?」
ゆめ「えっ!? 気づいて……っ!?」
れな「だって、本を落としたゆめちゃん、顔が真っ赤でロボットみたいにガチガチだったんだもん。『あ、この子わざと落としたな』ってすぐ分かっちゃった」
嘘でしょ。
私の完璧な演技は、最初から見破られていたのだ。
れな「ジュースのときもね、『買いすぎちゃった』って言いながら、ゆめちゃんの手、緊張でプルプル震えてたでしょ? だから私、確信したの。あ、この子は私をおとそうとしてるんだなって。……だから、私も作戦に乗ってあげたの」
ゆめ「じゃあ、あの時の告白も……」
れな「うん。ゆめちゃんが一生懸命作ってくれた告白されるための舞台だもん。主役として、最高にかっこよくセリフを言わなきゃって、私の方こそドキドキしながら準備してたんだよ?」
先輩はいたずらっぽくウインクをして、私のノートの最新のページを開いた。
そこには、新しく書き込まれた『彼女としての作戦』の文字。
先輩はその下に、自分のシャーペンでサラサラと何かを書き加えた。
れな「ほら、これ。次の作戦に追加しておいて?」
手渡されたノートを見ると、先輩の綺麗な字でこう書かれていた。
次の作戦:恥ずかしがらずに、先輩からキスされること
ゆめ「先輩……っ! もう、いじわるです……!」
れな「ふふ、計算通りの放課後でしょ? ……おいで、ゆめちゃん」
夕暮れの図書室の影で、先輩の顔が近づいてくる。
私の不器用な罠は、最初から先輩の手のひらの上。
だけど、世界で一番幸せな敗北感に包まれながら、私はそっと目を閉じた。