田村保乃
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夕暮れ時の大学の講堂。
オレンジ色の光が差し込むベンチで、私――ゆめは、スマートフォンの画面を見つめていた。
画面に表示されているのは、恋人である田村保乃からのメッセージ。
『今日の夜、一緒にご飯食べよ? ゆめの好きなオムライス作るよ!』
いつも通りの、ひだまりのように温かい言葉。
それを見た瞬間、胸がキュッと締め付けられると同時に黒くて重い感情が心の底からせり上がってくるのを感じた。
ゆめ(……ダメだ。これ以上、ほのに甘えちゃいけない)
私は深呼吸をして、画面に文字を打ち込んだ。
『ごめん、今日は課題が忙しくて無理そう。また今度ね』
送信ボタンを押して、スマートフォンをバッグの奥に押し込む。
嘘をついてしまった罪悪感で、胸が痛い。
でも、こうするしかなかった。
保乃と付き合い始めてから、私の世界は保乃一色になった。
私は、自分で自分が嫌になるくらい恋愛に対して重い人間だ。
毎日いつでも一緒にいたいし、保乃の視線の先にいる人全員に嫉妬してしまう。
そんな私の面倒なところを、保乃はいつも笑顔で受け入れてくれていた。
ほの「ゆめのそういうところも、全部愛おしいよ。うち、ゆめにいっぱい頼られたいもん」
ぎゅっと抱きしめながらそう言ってくれた保乃の優しさは、本当に嬉しかった。
だけど、保乃が優しくしてくれればくれるほど、私の愛はどんどん膨らんで制御がきかなくなっていった。
昨日よりも今日、今日よりも明日。
保乃への独占欲と依存が大きくなっていくのが、自分でもハッキリと分かった。
ゆめ(このままじゃ、私の重さで保乃を壊してしまう。保乃の自由を、笑顔を、奪ってしまう……)
それが怖くて、私は保乃に何も言わないまま、少しずつ自分から距離を置くようになっていた。
デートを断る回数を増やし、連絡の返信をわざと遅らせる。
大好きな人を、大好きだからこそ遠ざける。
そんな矛盾した日々は、狂いそうなほど苦しかった。
ほの「ゆめ」
不意に、上から降ってきた声に心臓が跳ね上がった。
見上げると、そこには優しくだけどどこか悲しそうな瞳で私を見つめる保乃が立っていた。
メッセージで忙しいと断ったはずの相手が目の前にいる。
ゆめ「ほの……? どうしてここに……」
ほの「課題、忙しいんやろ? 差し入れ渡そうかなぁと思って。……でも、嘘やったんやね」
保乃の視線が、私の膝の上のノートも開かれていない綺麗なバッグに落ちる。
胸がズキリと痛んだ。
言い訳を探そうとする私を遮るように保乃は私の隣にゆっくりと腰を下ろした。
ほの「最近、ずっと避けられてる気がしてた。うちら、何かあった? うち、ゆめに嫌われるようなことしちゃった?」
泣きそうな声だった。
その声を聞いた瞬間、私の限界はとうに決壊していた。
ゆめ「ちがう、違うの、ほの……! 嫌いになったわけじゃない、むしろ逆なの……!」
叫ぶように言うと、保乃は驚いて目を丸くした。
ゆめ「私の愛が、どんどん大きくなっていっちゃうの。ほのが優しくしてくれるから、もっと欲しくなっちゃって、どんどん重くなって……。このままじゃほのを苦しめちゃうと思ったから、だから距離を置くしかなくて……っ」
涙がボロボロと溢れて止まらなくなる。
こんな重い本音をぶつけたら今度こそ呆れられて、終わってしまうかもしれない。
そう思って俯いた私の身体を大きな温もりが、あの日と変わらない強さでぎゅっと抱きしめた。
ほの「そんなこと考えてたん?」
耳元で、保乃がふふっと優しく笑った。
私の肩に、保乃の涙がポツリと落ちる。
ほの「うちが言ったこと、忘れた? 全部愛おしいって言ったやん。ゆめの愛が大きくなるなら、うちの愛はもっともっと大きくする。重くて上等やん。うちを潰せるくらい、もっと重く愛してよ」
ゆめ「ほの……っ」
ほの「勝手に一人で距離置くの、禁止。……ほら、今日のご飯はオムライス。一緒に帰るよ?」
保乃は私の涙を優しく指で拭うと、いつもの世界で一番大好きな笑顔を浮かべて私の手を握った。
繋がった手から伝わる確かな熱に、私はもう逃げるのをやめた。
この先どんなに愛が重くなろうとも、この人と一緒に生きていく。
オレンジ色の夕暮れの中、私たちは2人で手を繋いで歩き出した。
オレンジ色の光が差し込むベンチで、私――ゆめは、スマートフォンの画面を見つめていた。
画面に表示されているのは、恋人である田村保乃からのメッセージ。
『今日の夜、一緒にご飯食べよ? ゆめの好きなオムライス作るよ!』
いつも通りの、ひだまりのように温かい言葉。
それを見た瞬間、胸がキュッと締め付けられると同時に黒くて重い感情が心の底からせり上がってくるのを感じた。
ゆめ(……ダメだ。これ以上、ほのに甘えちゃいけない)
私は深呼吸をして、画面に文字を打ち込んだ。
『ごめん、今日は課題が忙しくて無理そう。また今度ね』
送信ボタンを押して、スマートフォンをバッグの奥に押し込む。
嘘をついてしまった罪悪感で、胸が痛い。
でも、こうするしかなかった。
保乃と付き合い始めてから、私の世界は保乃一色になった。
私は、自分で自分が嫌になるくらい恋愛に対して重い人間だ。
毎日いつでも一緒にいたいし、保乃の視線の先にいる人全員に嫉妬してしまう。
そんな私の面倒なところを、保乃はいつも笑顔で受け入れてくれていた。
ほの「ゆめのそういうところも、全部愛おしいよ。うち、ゆめにいっぱい頼られたいもん」
ぎゅっと抱きしめながらそう言ってくれた保乃の優しさは、本当に嬉しかった。
だけど、保乃が優しくしてくれればくれるほど、私の愛はどんどん膨らんで制御がきかなくなっていった。
昨日よりも今日、今日よりも明日。
保乃への独占欲と依存が大きくなっていくのが、自分でもハッキリと分かった。
ゆめ(このままじゃ、私の重さで保乃を壊してしまう。保乃の自由を、笑顔を、奪ってしまう……)
それが怖くて、私は保乃に何も言わないまま、少しずつ自分から距離を置くようになっていた。
デートを断る回数を増やし、連絡の返信をわざと遅らせる。
大好きな人を、大好きだからこそ遠ざける。
そんな矛盾した日々は、狂いそうなほど苦しかった。
ほの「ゆめ」
不意に、上から降ってきた声に心臓が跳ね上がった。
見上げると、そこには優しくだけどどこか悲しそうな瞳で私を見つめる保乃が立っていた。
メッセージで忙しいと断ったはずの相手が目の前にいる。
ゆめ「ほの……? どうしてここに……」
ほの「課題、忙しいんやろ? 差し入れ渡そうかなぁと思って。……でも、嘘やったんやね」
保乃の視線が、私の膝の上のノートも開かれていない綺麗なバッグに落ちる。
胸がズキリと痛んだ。
言い訳を探そうとする私を遮るように保乃は私の隣にゆっくりと腰を下ろした。
ほの「最近、ずっと避けられてる気がしてた。うちら、何かあった? うち、ゆめに嫌われるようなことしちゃった?」
泣きそうな声だった。
その声を聞いた瞬間、私の限界はとうに決壊していた。
ゆめ「ちがう、違うの、ほの……! 嫌いになったわけじゃない、むしろ逆なの……!」
叫ぶように言うと、保乃は驚いて目を丸くした。
ゆめ「私の愛が、どんどん大きくなっていっちゃうの。ほのが優しくしてくれるから、もっと欲しくなっちゃって、どんどん重くなって……。このままじゃほのを苦しめちゃうと思ったから、だから距離を置くしかなくて……っ」
涙がボロボロと溢れて止まらなくなる。
こんな重い本音をぶつけたら今度こそ呆れられて、終わってしまうかもしれない。
そう思って俯いた私の身体を大きな温もりが、あの日と変わらない強さでぎゅっと抱きしめた。
ほの「そんなこと考えてたん?」
耳元で、保乃がふふっと優しく笑った。
私の肩に、保乃の涙がポツリと落ちる。
ほの「うちが言ったこと、忘れた? 全部愛おしいって言ったやん。ゆめの愛が大きくなるなら、うちの愛はもっともっと大きくする。重くて上等やん。うちを潰せるくらい、もっと重く愛してよ」
ゆめ「ほの……っ」
ほの「勝手に一人で距離置くの、禁止。……ほら、今日のご飯はオムライス。一緒に帰るよ?」
保乃は私の涙を優しく指で拭うと、いつもの世界で一番大好きな笑顔を浮かべて私の手を握った。
繋がった手から伝わる確かな熱に、私はもう逃げるのをやめた。
この先どんなに愛が重くなろうとも、この人と一緒に生きていく。
オレンジ色の夕暮れの中、私たちは2人で手を繋いで歩き出した。