練乳みぞれ×れもんみるく

「山姥切……これは?」
「かき氷だ」
「かき氷……」
「食べてみたいと言っていただろう」
 そう、確かにいった記憶はある。短刀たちと「夏と言えば!」と各々思いつくものをあげていく遊びをしていた時のことだ。

「向日葵!」
「花火!」
「蝉……」
「次は鶴丸さんの番ですよ?」
「俺か……そうだなぁ」
 この遊びも三巡目、粗方出尽くしてしまったように思う。顕現して初めての夏を過ごす鶴丸はネタ切れ降参だと運よく通りかかった山姥切国広に助けを求めた。
「夏と言えば……か。そうだな。かき氷、とか」
「かき氷? 聞いたことあるぞ。祭の時に出店にあるな。赤とか黄色とか派手な色の」
「それも良いが甘味処のも美味いぞ」
「へぇ、甘味処に売っているのか。そりゃ一度食べてみたいな」

 だが鶴丸のイメージしていたかき氷と今目の前にあるそれとはだいぶ隔たりがある。なによりその大きさだ。洗面器……とまではいわないが丼鉢以上は確実にある。ちょっと片手で持つのは難儀しそうだ。
 色も原色の赤、黄、青ではなく鶴を思わせる乳白色である。
 山姥切が選んでくれたので他意はない可能性の方が高いがもし鶴丸の色をと選んでくれたのなら面映ゆい気持ちになる。
 白玉、小豆、わらび餅が乗っていて器は違うが以前食べたぱふぇといった方が見た目は近そうである。てっぺんには白いくりーむがとぐろを巻いている。面積もそうだが高さも相当だった。

 存分に驚いた様子の鶴丸に若干ドヤ顔の山姥切が言う。
「速く食べないと溶けるぞ」
「いただきますっ」
 見るからに柔らかそうな新雪を思わせる細かい氷にスプーンを差し入れるとフワッと山が崩れた。口に含むとこれまた雪のように解けた。氷とは思えない舌ざわりだった。
「! これは美味いな」
「それはよかった」
 山姥切の前にはレモン味……なのだろうか。淡い黄色い雪山の上にこれまたホイップがたっぷりと乗っている。
 しばしお互い無言で氷の山に挑む。サクサクと山を削る音だけが響く。
「……しかし、さすがに大きすぎやしないか?」
「そうか? 溶ければ水だ」
 真夏の店内は冷房もガンガンに効いている。すくってもすくっても一向に減らない。山姥切の方はといえばもう山の半分は切り崩している。
鶴丸も負けてなるものかと匙を動かした。

「あー、驚きの大きさと冷たさだったなぁ。凍えたぜ」
 鶴丸の色素の薄い唇がいっそう白く見える。そうとう寒かったようで店から出た後もしきりに腕をさすっている。
 真夏なのに凍えそうなんてこれまた驚きだとご満悦の様子だ。いつもなら恨みたくなる熱い日向も今はちょうどよい。
「でも美味かったな! また来ようぜ。次はまんごーってやつと桃のやつが食べたい」
「また震えあがっても知らないぞ」
「……なら次は厚着して来ることにするか」
 なおも「寒い寒い」と言いながら本丸への道を二振りで歩く。
 山姥切は次の約束が出来たことに我知らず笑みを浮かべていた。
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