エクストラホイップ
「ホワイトモカ豆乳に変更、ショット追加で」
「…………」
「おーい、山姥切、無視はないだろう、無視は。俺は客だぜ」
外見だけならこの時代のチャラ男風といえなくもない鶴丸国永を胡乱げに見る。白銀の髪に金の瞳、黙って大人しくしていれば……と注釈がつくことが多いお騒がせ好きな平安刀だ。
悪目立ちせぬようにか全身ユニクロか⁉ とも思える服装だがそのシンプルさがむしろ素材を引き立てている。下手にスーツなど着るとホストにしか見えなくなるのだ。同じく派手目な外見の山姥切はスーツを着たとしても良くて就活中の学生だというのに。
「……何しに来た」
「何ってもちろん陣中見舞だ」
「帰れ」
「冷たいな⁉ ちゃんと主からの伝言もあるし様子を見てこいって言われたんだぜ」
「……はぁ。トールエクストラショットソイホワイトモカだな」
「あ、ホイップましましにしてくれ」
苦くしたいのか甘くしたいのかどっちなんだ。
ため息を一つ落として山姥切はドリンクを作り始めた。ここで働きだして早数週間、カスタムも慣れたものだ。
山姥切は任務で西暦二〇二三年に遠征していた。
ここはとある美術館内にあるカフェだ。落ち着いたベージュが基本の内装は美術鑑賞を終え一息つくのには最適な空間だ。平日の開館してすぐの店内にはまだ客はいない。そもそも美術館に入って真っ先に茶店に寄る客は少数派だろう。
鶴丸が来るのは実は初めてではない。
突然やって来て「驚きの注文を君にもたらそう」などと言い出し、舌を噛みそうに長いフラペチーノを飲みに来たことがあったが一度でその遊びには飽きたらしい。
「で?」
「なぁ、ここ何時までだ?」
「主からの伝言を聞こう」
「せっかく会いに来たんだしちょっとくらい相手してくれよ」
「あいにくと俺は忙しい」
「塩対応!」
山姥切が無言で受取カウンターに出来上がったホワイトモカをドンと置いた。ご希望の通りホイップはましましになっている。まるで鶴丸のように白一色だ。
「つれないなぁ相変わらず。……ま、任務中だしな」
そんなところも好きだぜなんて爆弾を落っことして鶴丸はカップを片手に去って行った。主からの伝言がというが様子を見に来たのが主目的だろう。大層過保護なことだ。
山姥切だって向こうから恋刀が会いに来てくれたのだ。嬉しいか嬉しくないかと問われればそれは嬉しい。ちっとも汚れていないシンクをいつまでも磨きながら山姥切の頬の熱はなかなか冷めなかった。
山姥切のカフェ店員姿を見られてひとまず満足した鶴丸はソファ席を陣取った。
「やれやれっと。そういやあちらさんは……」
鶴丸が目を向けた先には己より更に派手な見た目の一文字則宗がいる。ユニクロでは到底隠せない気品と物腰だ。おなじく遠征任務に就いている恋刀、加州清光の陣中見舞いである。どこで聞きつけたのか鶴丸に便乗する形で帯同することになったのだ。
「ちょ、なんでいんの⁉」
「おー、坊主。制服とやらも似合っているな」
「へへっ、ありがと。じゃなくて!」
「なぁに気にするな。任務に励む坊主をちょいと見に来ただけだ」
「何? 視察ってこと? 心配しなくてもちゃんとやってるし。主にだってそう報告してるでしょ」
「それはそうだが自分の目で見ないと分からないこともたくさんあるだろう?」
「とにかく、まだ敵の動きはないしうまくやってるから心配ないってば」
「そうかそうか、それは何より。うはははは!」
「ちょっと静かにしてっ! ここ美術館なんだからね」
はたから見ればいちゃついているようにしか見えない一文字則宗と加州清光。他刀と比べてどうだとか普段本丸にいるときはあまり考えもしないがここには四振りだけ。しかも恋刀同士の二組だ。任務中に浮ついた心持ちになる刀ではないしそういうところにこそ惹かれたのだから仕方がないにしても。
「もうちょっと……なぁ」
「何がだ」
「うわっ!」
今のは少し驚いた。則宗たちの方ばかり見ていて山姥切の接近に気づかなかったとは不覚である。グラスにお冷を足しながら山姥切がぽつりと言った。
「……十七時だ」
「ん?」
「だから、上がる時間だ。それからなら」
「山姥切!」
「任務中だからな! 何もしないぞ。来たのならちょっとは手伝っていけ」
「やった! どこ行く? とりあえず山姥切の部屋を見たいしこのカヌレってのが食べたいんだが」
「あんた俺の話を……」
本丸の皆に頼まれたのか付箋の付いた雑誌を取り出している。前言撤回。会いに来たのではなく恋刀をだしにしてただ遊びに来ただけだ、鶴丸は。
「則宗たちはほっとくか。あっちはあっちでよろしくやるだろう」
「あんたら、ほんと何しに来たんだ」
鶴丸の視線の先ではスマホを取り出して加州を撮ろうとした則宗が頭をはたかれている。
「美術館はスマホ禁止だって言ってんだろ!このくそじじい!」
「…………」
「おーい、山姥切、無視はないだろう、無視は。俺は客だぜ」
外見だけならこの時代のチャラ男風といえなくもない鶴丸国永を胡乱げに見る。白銀の髪に金の瞳、黙って大人しくしていれば……と注釈がつくことが多いお騒がせ好きな平安刀だ。
悪目立ちせぬようにか全身ユニクロか⁉ とも思える服装だがそのシンプルさがむしろ素材を引き立てている。下手にスーツなど着るとホストにしか見えなくなるのだ。同じく派手目な外見の山姥切はスーツを着たとしても良くて就活中の学生だというのに。
「……何しに来た」
「何ってもちろん陣中見舞だ」
「帰れ」
「冷たいな⁉ ちゃんと主からの伝言もあるし様子を見てこいって言われたんだぜ」
「……はぁ。トールエクストラショットソイホワイトモカだな」
「あ、ホイップましましにしてくれ」
苦くしたいのか甘くしたいのかどっちなんだ。
ため息を一つ落として山姥切はドリンクを作り始めた。ここで働きだして早数週間、カスタムも慣れたものだ。
山姥切は任務で西暦二〇二三年に遠征していた。
ここはとある美術館内にあるカフェだ。落ち着いたベージュが基本の内装は美術鑑賞を終え一息つくのには最適な空間だ。平日の開館してすぐの店内にはまだ客はいない。そもそも美術館に入って真っ先に茶店に寄る客は少数派だろう。
鶴丸が来るのは実は初めてではない。
突然やって来て「驚きの注文を君にもたらそう」などと言い出し、舌を噛みそうに長いフラペチーノを飲みに来たことがあったが一度でその遊びには飽きたらしい。
「で?」
「なぁ、ここ何時までだ?」
「主からの伝言を聞こう」
「せっかく会いに来たんだしちょっとくらい相手してくれよ」
「あいにくと俺は忙しい」
「塩対応!」
山姥切が無言で受取カウンターに出来上がったホワイトモカをドンと置いた。ご希望の通りホイップはましましになっている。まるで鶴丸のように白一色だ。
「つれないなぁ相変わらず。……ま、任務中だしな」
そんなところも好きだぜなんて爆弾を落っことして鶴丸はカップを片手に去って行った。主からの伝言がというが様子を見に来たのが主目的だろう。大層過保護なことだ。
山姥切だって向こうから恋刀が会いに来てくれたのだ。嬉しいか嬉しくないかと問われればそれは嬉しい。ちっとも汚れていないシンクをいつまでも磨きながら山姥切の頬の熱はなかなか冷めなかった。
山姥切のカフェ店員姿を見られてひとまず満足した鶴丸はソファ席を陣取った。
「やれやれっと。そういやあちらさんは……」
鶴丸が目を向けた先には己より更に派手な見た目の一文字則宗がいる。ユニクロでは到底隠せない気品と物腰だ。おなじく遠征任務に就いている恋刀、加州清光の陣中見舞いである。どこで聞きつけたのか鶴丸に便乗する形で帯同することになったのだ。
「ちょ、なんでいんの⁉」
「おー、坊主。制服とやらも似合っているな」
「へへっ、ありがと。じゃなくて!」
「なぁに気にするな。任務に励む坊主をちょいと見に来ただけだ」
「何? 視察ってこと? 心配しなくてもちゃんとやってるし。主にだってそう報告してるでしょ」
「それはそうだが自分の目で見ないと分からないこともたくさんあるだろう?」
「とにかく、まだ敵の動きはないしうまくやってるから心配ないってば」
「そうかそうか、それは何より。うはははは!」
「ちょっと静かにしてっ! ここ美術館なんだからね」
はたから見ればいちゃついているようにしか見えない一文字則宗と加州清光。他刀と比べてどうだとか普段本丸にいるときはあまり考えもしないがここには四振りだけ。しかも恋刀同士の二組だ。任務中に浮ついた心持ちになる刀ではないしそういうところにこそ惹かれたのだから仕方がないにしても。
「もうちょっと……なぁ」
「何がだ」
「うわっ!」
今のは少し驚いた。則宗たちの方ばかり見ていて山姥切の接近に気づかなかったとは不覚である。グラスにお冷を足しながら山姥切がぽつりと言った。
「……十七時だ」
「ん?」
「だから、上がる時間だ。それからなら」
「山姥切!」
「任務中だからな! 何もしないぞ。来たのならちょっとは手伝っていけ」
「やった! どこ行く? とりあえず山姥切の部屋を見たいしこのカヌレってのが食べたいんだが」
「あんた俺の話を……」
本丸の皆に頼まれたのか付箋の付いた雑誌を取り出している。前言撤回。会いに来たのではなく恋刀をだしにしてただ遊びに来ただけだ、鶴丸は。
「則宗たちはほっとくか。あっちはあっちでよろしくやるだろう」
「あんたら、ほんと何しに来たんだ」
鶴丸の視線の先ではスマホを取り出して加州を撮ろうとした則宗が頭をはたかれている。
「美術館はスマホ禁止だって言ってんだろ!このくそじじい!」
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