Twitter(X)ネタまとめ
ハッサクさん夢主 in キタカミ①
2023/09/24 19:48「ああ、もう帰れないんだな」
ずっと考えてた。私は、どうしてここにいるんだろうって。
フカマル先輩に起こされる前。いったい何をしていたのかさっぱり思い出せない。ゲームしてたのは覚えてるんだけど、どこでゲームしてたのか、それまで何をしてたのか、全然分からない。
……もしかしたら。そう、もしかしたら、私はベッドの中で重篤な状態なのかもしれない。そんな状態で幸せな夢を見ているのかもしれないって。
でも、パルデアにいる間はそんな事無いだろうって思えた。だって、夢の景色は少しでも知らないと夢に見れないから。
知ってるポケモンはいる。でも、知らないポケモンの方が多い説明が付かない。想像で新しいポケモンを作っちゃいました、なんて可能性もあるけど、私ってこんなに想像力豊かだったかな、とちょっと首を傾げてしまう。
それに何より、こっちに来てから出来た友達の説明ができない。
主人公の兄妹になりたい。ポケモンと話せるようになりたい。そんな私の願いが叶ったのだとしても、夢なんだから全部私で済ませて欲しい。別人格にする必要なんて無いんじゃない?
だから、これは夢じゃなくて。私はちゃんとここにいるんだって信じてた。──キタカミの里に来るまでは。
「ポケモンがいる……」
あまりにも馴染んだ風景に、あまりにも馴染みの無い生き物が生きてる。
それは、ずっと"こうだったらいいな"って思ってた事だったのに。いざ目の前にすると、私は動けなくなった。
「おい、人が多いんだから少し発言に気を付けろ」
「……はっ」
あるじま君にそう言われるまで、ほんの少しの時間しか無かったはず。けど、その短い時間で私の意識が少しだけ歪んだ。
「……、センセー。こっちも体調不良者がいまーす」
「え!? それは大変だ。移動時間も長かったからね……。誰か元気な子がいてくれるといいんだけど……」
「あ、わたしまだ元気です」
「お願い出来るかな……? この先の公民館に管理人さんがいるから、私達の到着と体調不良者がいる事を伝えてほしい」
「分かりました!」
アオイちゃんが元気良く走り出して行く。
……棚田。あぜ道、アスファルト。その少し奥に見える田舎町。走って行くアオイちゃんにビックリして道を空けるイトマルとウパー。軽快な走りに、何事かとヘイガニが顔を覗かせる。
全部知ってる。みんな知ってる。なのに、現実感が無い。
「……、何で今になって……」
「……紫音ちゃん、大丈夫? 水は飲めそう?」
「……しまちゃん……、ありがと……。たひゅかる……」
「座りっぱなしがよくなかったのかもね。アオイちゃんが戻るまで、簡単なストレッチしてみよっか」
「そうします……」
隣に座って、足首ストレッチのお手本を見せてくれるしまちゃんに倣って、同じ動きを試す。……かかとを地面に付けてるはずなのに、何故かふわふわした感覚が抜けない。そのせいで、勢い良く地面に足をぶつけてしまった。
「ふふ、アスファルトは蹴らなくていいよ」
「にへへ、座りっぱなしで元気が余ってるからなのかもしれない」
「楽しみな気持ちが空回りしてるのかもね! 私も新しいポケモンに会えるの楽しみだから!」
「そだね!」
「うん、パルデアにいないポケモンもちらほらいるからね。オリエンテーリングも含めて、このキタカミでの数日は楽しい体験になると思うよ」
「はーい!!」
ブライア先生の言葉に皆が元気に返事をする。バスに酔った男子生徒も、酔いが落ち着いてきたのか笑顔を浮かべていた。
「……そうだね……、そうだね!」
元気良く返事を絞り出した頃になって、やっとアスファルトに打ち付けたかかとが痛みを訴え始める。痛い。痛いけど、何とか立ち上がって皆と一緒に歩き始めた。
*
*
困った事になった。
村の中にも普通にポケモンがいる。屋根の上にロコン。塀の上にホーホー。ウリムーとお散歩しているおじさん。田舎の村に、ポケモンが当たり前みたいに存在している。……みたい、じゃなくて当たり前なんだろうけど。
「……訳分かんなくなってきた……」
あまりにも日本的。日本的な景色の中にポケモン。いよいよ夢と現実の境目が分かんなくなってきた。
「うん、一回寝よ。そうしよう!」
疲れてるからいろいろ考えるんだ! そう思って、振り分けられた部屋で早速布団に潜り込む。この近くにはどんポケモンがいるんだろう。そう言えば、バス停の近くにはポチエナもいたなぁ。夢の中とは言え、田舎にありがちな野犬ポジションなのかも!
……あれ。夢の中って眠れるんだっけ? いやいや、いつも眠ってるんだから眠れるはず! いつも通り目を閉じて、深呼吸して……。目を開けたら病室だった、ってなったらどうしよう。ううん、目を開けられたらまだいい。これが夢の終わりだったら? 全部終わっちゃったら?
「……うぅ、それは嫌だ」
もそもそと起き上がる。私のお腹の上でウトウトしてたラクシアは、布団に落っこちて不満そうに鳴いているけど、今の私はちょっとそれに応える余裕が無い。
「……うん……。私、起きる前何してたんだっけ……」
日本にいた。それは間違いない。
友達はいた? どこに住んでたっけ。……どんな家に住んでたっけ?
「……思い出せない……」
何なら両親の顔も思い出せない。あれ? 私、何でここにいるんだっけ?
ハッサクさん達に説明したのは、ただの方便だ。だって、私がいた世界にポケモンいないから。
……だけど、今いるこのキタカミにはポケモンがいる。私がよく知ってる田舎町に。知ってる風景に、知ってるポケモン。その中に知らないポケモンが少し。私の想像力が補える範囲になったって言われてもおかしくない。
「はは、寝たら終わったりして。もしかしたら、もう夢が覚めそうなのかな」
それならせめて、夢が終わるまでは起きていたい。最後まで楽しんでいたかった。
ずっと考えてた。私は、どうしてここにいるんだろうって。
フカマル先輩に起こされる前。いったい何をしていたのかさっぱり思い出せない。ゲームしてたのは覚えてるんだけど、どこでゲームしてたのか、それまで何をしてたのか、全然分からない。
……もしかしたら。そう、もしかしたら、私はベッドの中で重篤な状態なのかもしれない。そんな状態で幸せな夢を見ているのかもしれないって。
でも、パルデアにいる間はそんな事無いだろうって思えた。だって、夢の景色は少しでも知らないと夢に見れないから。
知ってるポケモンはいる。でも、知らないポケモンの方が多い説明が付かない。想像で新しいポケモンを作っちゃいました、なんて可能性もあるけど、私ってこんなに想像力豊かだったかな、とちょっと首を傾げてしまう。
それに何より、こっちに来てから出来た友達の説明ができない。
主人公の兄妹になりたい。ポケモンと話せるようになりたい。そんな私の願いが叶ったのだとしても、夢なんだから全部私で済ませて欲しい。別人格にする必要なんて無いんじゃない?
だから、これは夢じゃなくて。私はちゃんとここにいるんだって信じてた。──キタカミの里に来るまでは。
「ポケモンがいる……」
あまりにも馴染んだ風景に、あまりにも馴染みの無い生き物が生きてる。
それは、ずっと"こうだったらいいな"って思ってた事だったのに。いざ目の前にすると、私は動けなくなった。
「おい、人が多いんだから少し発言に気を付けろ」
「……はっ」
あるじま君にそう言われるまで、ほんの少しの時間しか無かったはず。けど、その短い時間で私の意識が少しだけ歪んだ。
「……、センセー。こっちも体調不良者がいまーす」
「え!? それは大変だ。移動時間も長かったからね……。誰か元気な子がいてくれるといいんだけど……」
「あ、わたしまだ元気です」
「お願い出来るかな……? この先の公民館に管理人さんがいるから、私達の到着と体調不良者がいる事を伝えてほしい」
「分かりました!」
アオイちゃんが元気良く走り出して行く。
……棚田。あぜ道、アスファルト。その少し奥に見える田舎町。走って行くアオイちゃんにビックリして道を空けるイトマルとウパー。軽快な走りに、何事かとヘイガニが顔を覗かせる。
全部知ってる。みんな知ってる。なのに、現実感が無い。
「……、何で今になって……」
「……紫音ちゃん、大丈夫? 水は飲めそう?」
「……しまちゃん……、ありがと……。たひゅかる……」
「座りっぱなしがよくなかったのかもね。アオイちゃんが戻るまで、簡単なストレッチしてみよっか」
「そうします……」
隣に座って、足首ストレッチのお手本を見せてくれるしまちゃんに倣って、同じ動きを試す。……かかとを地面に付けてるはずなのに、何故かふわふわした感覚が抜けない。そのせいで、勢い良く地面に足をぶつけてしまった。
「ふふ、アスファルトは蹴らなくていいよ」
「にへへ、座りっぱなしで元気が余ってるからなのかもしれない」
「楽しみな気持ちが空回りしてるのかもね! 私も新しいポケモンに会えるの楽しみだから!」
「そだね!」
「うん、パルデアにいないポケモンもちらほらいるからね。オリエンテーリングも含めて、このキタカミでの数日は楽しい体験になると思うよ」
「はーい!!」
ブライア先生の言葉に皆が元気に返事をする。バスに酔った男子生徒も、酔いが落ち着いてきたのか笑顔を浮かべていた。
「……そうだね……、そうだね!」
元気良く返事を絞り出した頃になって、やっとアスファルトに打ち付けたかかとが痛みを訴え始める。痛い。痛いけど、何とか立ち上がって皆と一緒に歩き始めた。
*
*
困った事になった。
村の中にも普通にポケモンがいる。屋根の上にロコン。塀の上にホーホー。ウリムーとお散歩しているおじさん。田舎の村に、ポケモンが当たり前みたいに存在している。……みたい、じゃなくて当たり前なんだろうけど。
「……訳分かんなくなってきた……」
あまりにも日本的。日本的な景色の中にポケモン。いよいよ夢と現実の境目が分かんなくなってきた。
「うん、一回寝よ。そうしよう!」
疲れてるからいろいろ考えるんだ! そう思って、振り分けられた部屋で早速布団に潜り込む。この近くにはどんポケモンがいるんだろう。そう言えば、バス停の近くにはポチエナもいたなぁ。夢の中とは言え、田舎にありがちな野犬ポジションなのかも!
……あれ。夢の中って眠れるんだっけ? いやいや、いつも眠ってるんだから眠れるはず! いつも通り目を閉じて、深呼吸して……。目を開けたら病室だった、ってなったらどうしよう。ううん、目を開けられたらまだいい。これが夢の終わりだったら? 全部終わっちゃったら?
「……うぅ、それは嫌だ」
もそもそと起き上がる。私のお腹の上でウトウトしてたラクシアは、布団に落っこちて不満そうに鳴いているけど、今の私はちょっとそれに応える余裕が無い。
「……うん……。私、起きる前何してたんだっけ……」
日本にいた。それは間違いない。
友達はいた? どこに住んでたっけ。……どんな家に住んでたっけ?
「……思い出せない……」
何なら両親の顔も思い出せない。あれ? 私、何でここにいるんだっけ?
ハッサクさん達に説明したのは、ただの方便だ。だって、私がいた世界にポケモンいないから。
……だけど、今いるこのキタカミにはポケモンがいる。私がよく知ってる田舎町に。知ってる風景に、知ってるポケモン。その中に知らないポケモンが少し。私の想像力が補える範囲になったって言われてもおかしくない。
「はは、寝たら終わったりして。もしかしたら、もう夢が覚めそうなのかな」
それならせめて、夢が終わるまでは起きていたい。最後まで楽しんでいたかった。