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突然の雷雨(ペパーと夢主)
2023/08/18 20:55 今日は午後から雷雨となるでしょう──。
ロトムは今朝天気予報を教えてくれたけど、実際は予想より早く空気が変わり始めた。その事に気付いたのは、もちろんわたしではなくポケモン達だけれど。
「……ん?」
雷雨が来る前に、牧場の仕事を終わらせようと奮闘していたわたしは、ポケモン達が何やら慌ただしくなった事に気が付いた。炎タイプのポケモンは厩舎へ。逆に、強い日差しから避難していた水タイプ達は喜んで外へ。その様子は、これは仕事の優先順位を考える必要がありそうだと感じる程の慌ただしさだった。
「ウォッシュは後回しにしよう……」
外に出た子は、皆濡れて帰ってくる。それなら、厩舎の掃除や点検をした方が良さそうだ。雷に怯えるポケモンへのケアもしておかなくてはならない。
電気がショートしない様に設備点検、毛布やクッションの用意、怯えるポケモン達は、ハハコモリに世話を頼む事にしよう。
段取りを整えて、ようやく終わりが見えてきた頃。タイミング良く遠くで雷鳴の音が響いた。
「良かった。何とか間に合った」
待ち望んだ雨にはしゃぐポケモン達を横目に、仕事も一段落したわたしはホッと窓際に腰掛ける。
……早速泥まみれになっているポチエナが見えるけれど、とりあえず今は放っておこう。ウォッシュのやり甲斐がありそうだ。
そんな穏やかな午後を過ごすはずだったわたしの耳に、ロトムが着信を告げる声がした。
「はい、カインです」
『かっ、カイン!? ずびゃっ……! しゃ、シャワー貸してくれ!』
「ペパー!?」
何やら転んだ音が聞こえたけれど。慌てて牧場の入り口に目を向けると、ペパーとマフィティフが全力疾走していた。予想外に早く降り出した雨に降られて、彼らは雨宿りをするよりも目的地であるわたしの牧場へと急ぐ事にしたらしい。……その結果、ずぶ濡れになってしまった彼らは、到着前に連絡を入れてくれたと言う訳らしい。
「仕方ないなぁ君たちは!!」
そう言いながら、わたしはランクルスにシャワールームを温めるように指示する傍ら、玄関でペパー達を迎える為にタオルを何枚か手に取った。彼らの事だ。牧場を突っ切った勢いそのまま室内に飛び込んでくるだろう。衝突を回避する為が一つ、そしてそのままタオルで包む為だ。何なら、そのままシャワールームに連行もできる。
「さて、洗うとしようか!」
「どわっ、わぁー!!」
「おっとと……」
予想通り、ペパーとマフィティフが開け放った玄関に飛び込んできた。雨風がこれ以上入り込まないように、しっかり後ろ脚で扉を閉めることを忘れないマフィティフは、気が緩んだのか玄関先でその大きな体を震わせる。さながら竜巻の様に体を回転させた彼は、近くにいたペパーはもちろん、わたしも泥まみれにしてしまった。
「バゥルルルルッ……!」
「わっ…! ……ぷるるるる!」
「あはは。二人とも雨に濡れて体が重いだろう? 風邪を引く前にシャワーだね」
「オレ、自分でマフィティフも洗うからいいよ。シャワーだけ貸してくれ」
「おや、わたしも泥に汚れてしまったのだけど」
「……ごめんなさいっ!!」
「いいよ。さぁ、早く済ませてしまおうか」
「おう。……え? 何でカインも一緒に来るんだ?」
「何故って…。わたしもシャワーを浴びるからだよ」
「……えーっ!?」
何に驚く事があるのだろう。腕や足にかかった泥を落とすだけなのに。
はて、と首を傾げるわたしの疑問はさておき、今はペパーとマフィティフか風邪を引かない事が最優先。デンリュウやランクルスに、すっかり馴染みになった彼の着替えを用意しておくように頼めば、二匹は元気良く答えて家の奥へ消えていく。
「ほ、本当に一緒に入るのか……?」
「もちろん。シャワールームが一つしか無い事、君も知っているだろう?」
「それは…」
「はい、じゃあ脱いで。せっかくだし洗ってあげよう」
「い!? いいいいいって!」
「マフィティフのついでだ」
「シャワー終わりのドライだけでいい!」
「そう言っている間に、ほら体温下がっているよ。早く早く」
「カイン〜!」
「ほら、マフィティフは自分で湯船に浸かってるよ」
そう言って指差した先には、ポケモン用の大きな湯船にざぶんと浸かったマフィティフ。体毛の長い彼は、しばらくお湯に浸かってもらって、汚れを浮かせなければならなかったから、自分でお湯に入ってくれたのは助かる。さすがマフィティフ、賢い。
「きみはどうかな? 剥いでもいいのだけど」
「うっ、ぐぬぅ……!」
「風邪、引くよ?」
「……ううっ」
「さぁ、脱いで。せめて湯船に入りなさい」
「か、カインも……、入るのか?」
「いや、わたしは……。ああ、なるほど。……ふふふ、健全で可愛いね」
「……はっ!?」
こみ上げる笑いを我慢できなくて肩を震わせると、ようやくペパーも認識の違いに気が付いたらしい。顔を真っ赤にして無言で制服を脱ぎ始めた彼に、わたしはそっと聞いてみた。
「一緒に入りたかった?」
「ちーがーうー! そこまで子供じゃないって話!!」
「そう? じゃあそういう事で。ペパーが温まっている間に、マフィティフを洗うから、きみはしばらく湯船にいなさい」
「……洗うのは洗うのかよ……」
「もちろんだとも。ふあふあのさらさらに仕上げてあげよう」
「ぶぶぶぶぶ……」
何やら不満を呟いたらしいが、その不満は言葉ではなく泡として消えて行った。鼻までお湯に浸かったペパーは、マフィティフを洗うわたしを恨めしそうな顔でじっと見ていた。
……そんなに一緒に入りたかったのだろうか。さすがに、人間二人が同じ湯船に入るのは狭いと思うのだけれど……。
まぁ、体が温まればペパーの機嫌も直るだろう。そう呑気に考えていたわたしは、数分後、自分で洗うと手を払い除けられて途方に暮れる事になった。
ロトムは今朝天気予報を教えてくれたけど、実際は予想より早く空気が変わり始めた。その事に気付いたのは、もちろんわたしではなくポケモン達だけれど。
「……ん?」
雷雨が来る前に、牧場の仕事を終わらせようと奮闘していたわたしは、ポケモン達が何やら慌ただしくなった事に気が付いた。炎タイプのポケモンは厩舎へ。逆に、強い日差しから避難していた水タイプ達は喜んで外へ。その様子は、これは仕事の優先順位を考える必要がありそうだと感じる程の慌ただしさだった。
「ウォッシュは後回しにしよう……」
外に出た子は、皆濡れて帰ってくる。それなら、厩舎の掃除や点検をした方が良さそうだ。雷に怯えるポケモンへのケアもしておかなくてはならない。
電気がショートしない様に設備点検、毛布やクッションの用意、怯えるポケモン達は、ハハコモリに世話を頼む事にしよう。
段取りを整えて、ようやく終わりが見えてきた頃。タイミング良く遠くで雷鳴の音が響いた。
「良かった。何とか間に合った」
待ち望んだ雨にはしゃぐポケモン達を横目に、仕事も一段落したわたしはホッと窓際に腰掛ける。
……早速泥まみれになっているポチエナが見えるけれど、とりあえず今は放っておこう。ウォッシュのやり甲斐がありそうだ。
そんな穏やかな午後を過ごすはずだったわたしの耳に、ロトムが着信を告げる声がした。
「はい、カインです」
『かっ、カイン!? ずびゃっ……! しゃ、シャワー貸してくれ!』
「ペパー!?」
何やら転んだ音が聞こえたけれど。慌てて牧場の入り口に目を向けると、ペパーとマフィティフが全力疾走していた。予想外に早く降り出した雨に降られて、彼らは雨宿りをするよりも目的地であるわたしの牧場へと急ぐ事にしたらしい。……その結果、ずぶ濡れになってしまった彼らは、到着前に連絡を入れてくれたと言う訳らしい。
「仕方ないなぁ君たちは!!」
そう言いながら、わたしはランクルスにシャワールームを温めるように指示する傍ら、玄関でペパー達を迎える為にタオルを何枚か手に取った。彼らの事だ。牧場を突っ切った勢いそのまま室内に飛び込んでくるだろう。衝突を回避する為が一つ、そしてそのままタオルで包む為だ。何なら、そのままシャワールームに連行もできる。
「さて、洗うとしようか!」
「どわっ、わぁー!!」
「おっとと……」
予想通り、ペパーとマフィティフが開け放った玄関に飛び込んできた。雨風がこれ以上入り込まないように、しっかり後ろ脚で扉を閉めることを忘れないマフィティフは、気が緩んだのか玄関先でその大きな体を震わせる。さながら竜巻の様に体を回転させた彼は、近くにいたペパーはもちろん、わたしも泥まみれにしてしまった。
「バゥルルルルッ……!」
「わっ…! ……ぷるるるる!」
「あはは。二人とも雨に濡れて体が重いだろう? 風邪を引く前にシャワーだね」
「オレ、自分でマフィティフも洗うからいいよ。シャワーだけ貸してくれ」
「おや、わたしも泥に汚れてしまったのだけど」
「……ごめんなさいっ!!」
「いいよ。さぁ、早く済ませてしまおうか」
「おう。……え? 何でカインも一緒に来るんだ?」
「何故って…。わたしもシャワーを浴びるからだよ」
「……えーっ!?」
何に驚く事があるのだろう。腕や足にかかった泥を落とすだけなのに。
はて、と首を傾げるわたしの疑問はさておき、今はペパーとマフィティフか風邪を引かない事が最優先。デンリュウやランクルスに、すっかり馴染みになった彼の着替えを用意しておくように頼めば、二匹は元気良く答えて家の奥へ消えていく。
「ほ、本当に一緒に入るのか……?」
「もちろん。シャワールームが一つしか無い事、君も知っているだろう?」
「それは…」
「はい、じゃあ脱いで。せっかくだし洗ってあげよう」
「い!? いいいいいって!」
「マフィティフのついでだ」
「シャワー終わりのドライだけでいい!」
「そう言っている間に、ほら体温下がっているよ。早く早く」
「カイン〜!」
「ほら、マフィティフは自分で湯船に浸かってるよ」
そう言って指差した先には、ポケモン用の大きな湯船にざぶんと浸かったマフィティフ。体毛の長い彼は、しばらくお湯に浸かってもらって、汚れを浮かせなければならなかったから、自分でお湯に入ってくれたのは助かる。さすがマフィティフ、賢い。
「きみはどうかな? 剥いでもいいのだけど」
「うっ、ぐぬぅ……!」
「風邪、引くよ?」
「……ううっ」
「さぁ、脱いで。せめて湯船に入りなさい」
「か、カインも……、入るのか?」
「いや、わたしは……。ああ、なるほど。……ふふふ、健全で可愛いね」
「……はっ!?」
こみ上げる笑いを我慢できなくて肩を震わせると、ようやくペパーも認識の違いに気が付いたらしい。顔を真っ赤にして無言で制服を脱ぎ始めた彼に、わたしはそっと聞いてみた。
「一緒に入りたかった?」
「ちーがーうー! そこまで子供じゃないって話!!」
「そう? じゃあそういう事で。ペパーが温まっている間に、マフィティフを洗うから、きみはしばらく湯船にいなさい」
「……洗うのは洗うのかよ……」
「もちろんだとも。ふあふあのさらさらに仕上げてあげよう」
「ぶぶぶぶぶ……」
何やら不満を呟いたらしいが、その不満は言葉ではなく泡として消えて行った。鼻までお湯に浸かったペパーは、マフィティフを洗うわたしを恨めしそうな顔でじっと見ていた。
……そんなに一緒に入りたかったのだろうか。さすがに、人間二人が同じ湯船に入るのは狭いと思うのだけれど……。
まぁ、体が温まればペパーの機嫌も直るだろう。そう呑気に考えていたわたしは、数分後、自分で洗うと手を払い除けられて途方に暮れる事になった。