外殻大地編
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「おっ、やっと来たな。遅いぞジェイド、それに紫音も」
「私は、陛下に押し付けられた仕事と並行して自分の仕事も終わらせて来たのですが……、酷い言われようですね」
ブウサギと戯れながら、にっこりと二人を出迎えたピオニーだったが、ジェイドの冷たい返答にその笑顔も凍り付く。
「ぐぅ……! あ、紫音は俺の私室に来るのは初めてだよな? どうだ~? 可愛いだろう俺のブウサギは」
「ははは。確かに可愛いですがミズゴロウの可愛さには負けますね見てくださいこのつぶらな瞳を!」
「お、おぉ……」
逃げるように紫音に話を振ったものの、彼女は彼女でミズゴロウの愛らしさを息継ぎもせずに語り始めた。
「分かった! 分かったから俺に話をさせてくれ」
「手短にお願いします」
「何だよ二人して……。こうなったら、特殊任務は別の人間に任せるぞ!?」
「どうぞどうぞ」
ごねるピオニーにも、ジェイドは嫌そうに顔をしかめるだけだ。
言い合う横で話を聞く紫音は、『特殊任務』と言う言葉に、遂に物語が始まるのだと思わず唾を飲み込む。しかし……。
「いや、別に可愛くないジェイドじゃなくても問題無い。だが、これからの事を考えると、ジェイドと紫音に任せた方が……」
何やら一人でぶつぶつと考え込んだピオニーに、話は終わったとばかりに背中を向けたジェイドを見比べる。
あれ? いつの間に話終わったの?
そう言おうとした紫音は、早く部屋を出ようと急ぐジェイドに腕を掴まれて無理やり歩き始めた。
「わぁ! ちょ、おっとと……」
「嫌な予感がします」
「えぇ!?」
怪訝な顔でジェイドを見上げる紫音。歩く速度を緩めないジェイド。もう扉は目の前という所で、足元に群がるブウサギ達に足が止まる。
「導師イオンの奪還の任は他の者に任せるとして……、あーっ、しまったー!」
「ちっ……」
ピオニーが突然棒読みで喋り始めたかと思うと、ジェイドの眉間のしわが一段と深くなった。
彼の目論見に負けたジェイドは、大人しくピオニーの前に戻る。にんまりと笑う彼は、わざとらしく大きなため息を吐くジェイドに一枚の紙を手渡した。
渡されたそれを読み進めていくうちに、ジェイドの顔がどんどん険しくなっていく。
「はぁ……。何故あなたから直接来る任務は、こう面倒なものが多いんでしょうねぇ」
「お前にしか頼めないものを回してるからに決まってるだろ」
これでもかと大きなため息を吐いたジェイドは、その書類をそのまま紫音に渡す。しかし、まだこの世界の文字が読めない紫音には、これがどういう内容なのかさっぱり分からない。
逆から読んでも分からないだろう、とピオニーに笑われた紫音は、ふて腐れて書類を彼に突き返した。
「導師イオンが軟禁状態ですか……。マルクトからの使者になろうにも、まずはダアトから出られない事にはどうにもできない、と」
「警備は厳重だ。そう簡単に救出もできん」
ジェイドが眼鏡を押し上げながら言う。その横では、ピオニーも険しい表情でいい案を探している。
そんなピオニーの代わりにブウサギと戯れていた紫音は、突然立ち上がった。
「いい案ある!」
「ほぉ、聞かせてもらおう」
ピオニーの言葉に、紫音は満面の笑みで答える。
「サーナイトのテレポートを使えばいいんですよ!」
「……テレ、ポート……?」
相変わらず難しい顔をした成人男性がきょとんとしているのはなかなか見物だが、今は実践する方が先だ。
「テレポートと言うのは! まぁ簡単に言えば瞬間移動できる凄い技なんです! どんなに遠くにだって行けちゃう!!」
「へぇ、どこにでもか?」
「最後に使ったポケモンセンターにひとっ飛びです」
「ポケモン……? 何と言いました?」
「ポケモンセンター! この世界で使うとどうなるかはまだ分からないけど」
この世界にポケモンセンターは無い。セーブポイントになる場所がどこになるのか、使ってみなければ分からない。
そもそも、使えるのかどうかも分からないのだ。腰のボールからサーナイトを出した紫音は、優しく微笑むサーナイトに聞いた。
「サーナイト、テレポートってできる……?」
「ぽおぉ……?」
何を当然な事を、と言われた気がした。
実際にやってみようと、サーナイトと共に部屋の外に出て扉を閉める、この扉を開けないまま、部屋の中に戻って来ると言った時の二人の顔は傑作だった。
思い出してまた笑いそうになるのを何とかこらえて、紫音はサーナイトに声をかけた。
「じゃあ行きますよー! サーナイト、テレポート!」
その声と共に、部屋の外にいたはずの紫音が、サーナイトと共に部屋の中に現れた。
「これは……」
「これなら、導師救出も大きな危険を冒さなくて済みそうだ」
自分がやった訳ではないのに、何故か自慢げに笑う紫音は、後ろに控えるサーナイトの頭を優しく撫でる。
「セーブポイントがどこになるかまだはっきりしてないけど、これを使えば、導師だって連れ出せますよ?」
「……人数や移動範囲に制限は?」
「……サーナイト、どう?」
紫音が問いかけると、彼女はしばし考え込んだものの、快く頷いた。
「決まりだな! サーナイト、戦争を回避するため、俺達の協力してほしい」
サーナイトの瞳をじっと見詰めてそう言ったピオニーの目の前で、ひかえめな性格の彼女は紫音の後ろに逃げ込んでしまった。
「す、すまん……。怖がらないでくれ……!」
「陛下は駄目みたいですね」
「俺が駄目ってことは無いだろ! ……無いよな?」
「ひかえめな子で……、あまりグイグイ来られるの苦手みたいで……」
「やはり陛下が駄目だったようで……」
「おい!!」
これは失礼、と肩を竦めたジェイとは、とても楽しそうだった。
【テレポート】
最後に十分間以上いた場所に戻ることができる。
ポケットモンスターゲーム内では、最後に利用したポケモンセンターに戻ることできる技。戦闘時に使用すれば、戦闘から即離脱することが可能。