番外編
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「あ、そうだ。ポケモンとの生活学を履修してるオヌシ達! カイン先生は本業ヘクティックだから、しばらく休講になるそうだよー。他の授業のお勉強するのもオッケー、遊んでてもオッケー。ただし、その間どんな事をしていたかのレポートは出すように、だそうだよー」
「セイジ先生! じゃあカイン先生は、しばらくアカデミーにも来れないんですか?」
「セイジはそう聞いてるよ。カイン先生に会えなくて寂しい間は、セイジとたくさんコミュニケーション取りたまえ!!」
「じゃあ先生! 今日のランチは食堂ね!!」
「オー……、ソーリー! 今日のセイジはワイフとランチデートが……」
「えー!」
朝のホームルームの終わりがけに、担任のセイジからの連絡事項が告げられた。
二年生クラスでその授業を取っている生徒はそう多くないが、それでも副担任であるカインの不在にざわついた。理由は聞かせてもらえなかったが、どうやらアカデミーにも来れないらしい。
あっという間に流れていく話題を聞きながら、ペパーはぼんやりと窓の外に目を向ける。
(……カイン、大丈夫なのかな……)
ペパーは、カインが忙しい理由を何となく察していた。きっちりと教えてもらった訳ではないが、最近出来たトラブルメーカーでもある友人絡みなのだろう。
もちろん彼女が何をした、という訳ではないが。チャンピオンランクの生徒達にまで声が掛かる事態だ。何か手伝えれば良いのだろうが、ペパーはただの一生徒。カインは何も教えてくれない。
こんな事なら、もっと早くチャンピオンランクを目指しておけば良かったと思ってしまう。
「───、……い。……ヘイヘイ、ペパー。他の者は授業に移動したよー」
そんな事を考えていたペパーは、前の席に座ったセイジに声を掛けられていた事もしばらく気付けなかった。目の前で手を振る担任に気付くと、驚きのあまり思い切り仰け反ってしまう。
「へ。……どわー!? あ、セイジせんせ、さんきゅ!!」
「ペパーはカイン先生の授業が空いた時間に、補習しちゃおう!」
「……え」
「ノンノン! え、じゃなくておー、だよ!!」
何か手伝える事が無いか、カインに連絡しようと考えていたペパーの肩に、補習という言葉がのしかかる。重みに耐え切れずガックリと肩を落としたペパーに、セイジはにんまりと笑った。
「空き時間にやれば、放課後フリータイム! セイジはどっちでもウェルカム! ……あ、ウソ。ワイフに早く会いたいから、セイジとしても空き時間にやりたい所存!」
「うう、分かったよぉ……」
「イエーイ、圧倒的サンクス!! じゃあ、二限目にまた会おう!」
そう笑って手を振ると、セイジは朗らかに教室を後にする。一人残されたペパーは、慌てて教材をまとめて一限目の授業に遅刻しない様に急いだ。
(……まぁ、補習が早く終われば確かにラッキーちゃんだもんな……)
そうは思うが、楽しみにしている授業の一つが休講になるのは寂しい。有事に備えて加減していると言っていた仕事量を調整出来なくなるくらい忙しいというのも気になる。
「だーっ! 考えても仕方がない! 休み時間に電話……、はカイン忙しいから迷惑かな……。メッセ入れてみよう」
そう決めて、ペパーは一限目の教室に滑り込んだ。その瞬間、授業開始の鐘が鳴る。
「おはようございます、ペパー君。あと一歩遅ければ、遅刻にするところでしたよ」
「ご、ごめんなさい……」
「次からはもっと余裕を持ちましょうね。はい、では席に座って。楽しい数学の授業を始めますよ」
「あ、危なかったぜ……」
タイムに微笑まれながら、親友のアオイが確保してくれていた隣の席に座る。
カインの事は気になるけれど、今は目の前の授業に集中しなければ。タイムは厳しい。ぼんやりしていると、すぐに当てられて解答を求められてしまうからだ。
(うおお……! 待っててくれよカイン……!!)
「はい、では何やらやる気に満ち溢れているペパー君」
「えっ……」
タイム先生って、"するどいめ"を持っているんじゃないだろうか。
内心そんな事を考えたペパーは、慌ててノートの上で計算式を組み立て始めた。
*
*
「カイン、返信どころか見てもいない……。電話にも出てくれない……」
くすん、と鼻を鳴らすと、マフィティフが大丈夫かと心配そうな顔でペパーを見上げてきた。そんな彼に大丈夫だと笑顔を浮かべて見せたが、すぐに維持出来なくなって机に突っ伏す。
休み時間に送ったメッセージには、既読が付かないまま。夜九時を過ぎた頃に電話をすれば、いつもは三回以内のコールで出てくれるのだが。今日は十回鳴らしても出てくれなかった。
「忙しくなるとは言ってたけど、メッセ確認する時間も無いのか……」
しばらく忙しくなる。電話口から固い声を聞いたけど、メッセージのやり取りをする時間くらいはあるだろうと思っていた。どうやら、そんな余裕は全く無いらしい。
「うう……。マフィティフ、もう寝ようぜ」
「バゥフ」
「ん。おやすみ……」
いつもより少し早いけれど、ベッドに潜り込んだ。
前もって忙しくなると教えてくれていたんだから、返事が無くても仕方がない事なんだ。それはそれとして、毎晩の様にペパーの話し相手を務めてくれていたカインと喋らずに一日が終わるのはとても寂しい。
そんな日が三日、一週間と続くと、我慢が得意なペパーも限界が近付いてくる。何度か返信はあったものの、それは全てせめて手伝いをと申し入れたペパーの提案をやんわりと辞退する物ばかり。
『大丈夫だよ、ありがとう。わたしはこれが仕事だから、気持ちだけ受け取っておく』
もちろん通話は出来ないままだし、アカデミーにも顔を出さない。だと言うのに、ネモはカインの牧場に呼ばれている。
ボロボロになったポケモンのリハビリに、軽くバトルの相手をしているのだとネモ本人が言っていたのだから間違いない。
「カイン、どんな感じだった……?」
「カイン先生? すっごく忙しそうだよ。それはそうだよね、一気にポケモンが四十匹以上増えたんだから」
「えっ」
「ボックスの運営は変わらずに並行しなきゃだから、まだ預かりをセーブ出来る分先生は他の人より保護してるポケモンが多いみたい。皆のご飯作るだけで午前中終わるって嘆いてたよ」
分かる範囲でネモにカインの近況を教えてもらうと、思っていたよりハードな仕事量を抱えていた。
基本的にアカデミーにいるのは半日だけとは言え、彼女の仕事は朝早くから始まる事をペパーは知っている。話を聞いただけで、カインがパンクしてしまいそうな状況だ。
「なぁ、次カインの所に行くのはいつだ?」
「え? 今日の放課後だよ。今日は小さめのポケモン達と相手をする約束……。……むむ、ちょっと待って」
「な、何だよ」
ネモは考える様に首を傾げる。行くつもりなのか、と咎められると思ったのも束の間、ネモはホッとした様に微笑んだ。
「実はね、小さいポケモンはリハビリバトルより、走り回る事がメインになりそうだから、ペパーがいてくれると助かるなって思って」
「……ん? それ、身代わり使おうとしてねぇか?」
ネモはバトルが強いが、その代わりなのか体力が少ない。すぐに肩で息をしてしまうネモが、仕事とは言え走り回るのは大変だろう。
ペパーもそれは理解出来るが、自分の中の優先順位がある。カインが仕事の量で倒れないか、それが一番の心配事なのだ。
「違うよ! ただ休憩が出来ると嬉しいなって」
「オレはカインに用事があって行きたいんだけど」
「じゃあ、わたしが仕事してる間カイン先生の所に行けば良いよ。……まぁ、先生にお喋りする余裕あるかは分かんないけど……。休憩したくなったら呼ぶね!!」
「……言いくるめられた気がする」
「気のせい気のせい! じゃあ、放課後アカデミーの正門前で待ち合わせしよう!!」
結局、ネモの休憩時間を確保する為の身代わりにされてしまった。
幼い頃、忙しくしている親の仕事場に行って軽くあしらわれた経験のあるペパー。カインにもその時と同じ対応をされたらどうしよう、という不安はあるが、それと同じくらい忙殺されている彼女が心配だった。
今のペパーなら、あの頃と違って手伝える事がある。昼休みの間に、冷たくなってもそれなりに美味しく食べられるサンドイッチを作る事にした。
一口ずつ食べられる様に小さくして、手が汚れない様にピックも刺した。
「飲み物……。スムージーちゃんでも付けるか!」
本当はもっと手が込んだ物を作りたかったけど、忙しいカインが食べる暇が無いのに、そんな物を用意しても困らせるだけだ。飲み物は、タクシーに乗る前に大急ぎで店に買いに行けば良い。
やり切ったペパーは、完成した弁当を一旦冷蔵庫にしまう。
「……ヨクバリス」
「ぢゃっ!」
「この弁当は、カインのだからな。絶対に、ぜーったいに手を付けるなよ」
「……ぢゅっ!!」
貰えるのかと目を輝かせたヨクバリスに良く言い聞かせると、何故かヨクバリスは任せろと言わんばかりに胸を張った。
「……食うなよ?」
不安になって念の為もう一度言い聞かせたペパーが午後の授業を終えて部屋に戻ってくると、何故かヨクバリスは冷蔵庫の前で勇ましい顔の見張り番になっていた。
*
*
「カイン先生! 来ました!!」
「…………」
「……あれ? せんせーい! ネモです! ペパーもいますよー!!」
「なっ……!」
タクシーのゴンドラからカインの牧場に降り立つと、確かにいつもの牧場の雰囲気とは全く違っていた。手持ちのポケモン達もあちこちに散らばって、何やら慌ただしい雰囲気の中、ネモは慣れた手付きでカイン宅の呼び鈴を鳴らす。
しかし、中から返事は無い。もう一度呼び鈴を鳴らして声を掛けると、ようやく来訪に気が付いたランクルスがふわふわと近付いてきた。
「あっ、ランクルス! こんにちは」
「くぅる……」
「何だかランクルスもお疲れちゃんだな……。ちゃんと食ってるか?」
「クックルゥ……」
「何だかダメそう……。カイン先生は? 小さい子達と約束があるんだけど……」
「クルル」
ネモとペパーの手を握ったランクルスが、牧場の奥へと進んでいく。人の姿を見るなり、草むらに身を隠すポケモンが目に付いた。
そんな光景を見ると、足の歩みも遅くなる。二歩、三歩遅れ始めたペパーに、心配そうに振り返ったネモとランクルスに、ぽつりと弱音が漏れる。
「……オレ、来て良かったのかな……」
「カイン先生に用事があるんじゃなかったの?」
「そうだけどよぉ……。オレ、弁当渡したらすぐに……」
すぐに帰る。そう言いかけたペパーの前に、カインが現れた。
「……やぁ、ネモ。いらっしゃ……、ペパー?」
「カイン……。あ、その……、久し振り……?」
ネモの後ろにいたペパーに気が付くと、目をぱちくりと開いたカインが幻でも見た様な顔になる。そのままフラフラと近付いてペタペタと存在を確かめる為に手を握られた。
そんな彼女に恐る恐る手を振って久し振りの挨拶を口にすると、カインはようやく目の前のペパーが幻ではないと理解したらしい。
「……本当にペパーだ……。来てしまったのかい? まぁ、わたしも来てはいけないとは言わなかったから、仕方ないね」
「わたしが連れて来ました。何だかペパーが先生に用事があるみたいだし、わたしも今日は体力使うだろうから手伝って欲しいなと思って……」
「ああ、うん……、うん。構わないよ。そうなると……、うーん、急な事でLPの用意が足りないな……。悪いけれど、今日の分を二人で分けてもらえるかな?」
「分かりました!」
「あの……、さ。カイン、そろそろ手を……」
ネモと話す間、 カインはずっとペパーの手を握ったまま。そろそろ気恥ずかしくなってきたペパーが小声で指摘すると、彼女は怪訝な顔をして手を見下ろす。
「あっ」
言われるまで気が付いていなかったのか、カインは慌ててペパーの手を解放した。
「すまない……。あー、えーっと……」
「ポケモン達を開けた場所に連れて行きますね! サーナイトとデンリュウ借ります!!」
「ありがとう、ネモ。助かるよ」
言葉を探す様子のカインに、ネモはテキパキと今日の仕事分のポケモン達を引き連れて行く。ネモのパーモットを先頭にずらずらと行進する様子を眺めたのも一瞬。ペパーは真面目な顔でカインの肩を叩いた。
「カイン、ちゃんと食べてるか? 寝てるか?」
「……サプリメントと水で必要な栄養は摂っているとも」
「……」
「目の下ヤンチャムか?」
「…………」
「何だか今日はぼんやりちゃんだし……。そんなんじゃ事故起こすんじゃないか?」
「……返す言葉も無い……」
ペパーの容赦ない言葉に項垂れたカインは、大きなため息を吐いた。
傷付いたポケモンのメンタルを回復させる為には、こまめな世話が必要になる。その世話をこなしながら、増えた分のポケモンの食事を用意しなければならないのだから、寝る暇も惜しんで仕事をしているのだろう。
「……ポケモンの飯、オレが作る」
ペパーの言葉に、カインは目を見開いた。嬉しそうな顔になったのも一瞬、すぐに首を横に振ってそれは出来ないと言う。
「例えば、材料が切ってあるだけでも楽になるだろ? 後は鍋に入れてうおーって完成させるだけにしとくとか、オレにも出来る事はある」
「…………」
「……今カインが倒れたらどうするんだよ。それとも、出来ない理由があんのか?」
「君の言葉はもっともだ。君の提案はとても嬉しい。すぐにでも頷きたい気持ちでいっぱいだ」
「じゃあ……!」
「……ネモとペパー。二人を雇う余裕が無い。君達の時間を買う訳だからね」
「じゃあタダば……、う?」
タダ働きでも良い、と言いかけたペパーの言葉を察したのか、カインが険しい顔のまま指先でペパーの唇を塞いだ。強制的に言葉を封印されたペパーが頬を膨らませるのを他所に、カインは大きなため息を吐く。
「無給で、なんて言うものじゃない」
「そうは言うけど! じゃあオレがカインを心配だっていう気持ちはどうすれば良いんだよ! 言っとくけど、オレ、じゃあ諦めるなんて言わねーからな」
「……困ったな……。……うーん、でも余裕が……、これはさっき言ったね……。でも君は引かないと言う。そうなると……、……考えがまとまらない……」
疲労が溜まっているせいか、それに加えて寝不足のせいなのか。カインは同じ事を呟きながらぐるぐると考え始めた。
「……後払いって言うのは?」
「無給と言う訳にも……、え?」
ペパーの言葉に、カインが不意打ちされた様な顔で固まった。とんでもない事を言ったつもりは無かったので、もう一度彼女に言い聞かせる様に繰り返す。
「だから、後払い。オレ、別に金が欲しくて手伝いたい訳じゃないから。アレコレが落ち着いてからで良い。手伝ったら、カインも少しはラク出来るだろ?」
「……後払いか……! 全く思い付かなかった……」
「キッチリちゃんのカインでも、普段なら気が付くはずだぜ。ランクルスもヘロヘロちゃんだし、とりあえず今日は弁当作ってきたから……、これ食べてちょっと休んで欲しい」
「……サンドイッチだ……。ランクルス、君もお食べ」
「クルルぅ!!」
「あ」
それは全部カインの分のつもりだったのだが。
しかし、目の前で嬉しそうにサンドイッチを食べるランクルスにそんな事を言えるはずも無く。
「忙しくってもカインが食べやすいようにって、一口サイズにしたんだけど……」
「うぅ……、そんな事まで……! ……沁みる……」
「えっ!? マスタード辛かったか!?」
そんなにたくさん入れたつもりは無い。
慌てたペパーに、カインはランクルスとサンドイッチを食べながら首を振る。
「ああ、言い方が悪かったね。疲れた心に君の優しさとサンドイッチの美味しさが沁みるって事だよ」
「美味しい?」
「ああ、とっても」
「はぁ〜……、良かったぁ……」
ランクルスと幸せそうに食べるカインの様子に、ペパーは来て良かったとホッと胸を撫で下ろした。
(後でネモにも連れて来てくれてサンキューって言っとかないとな!)
一人だと、勇気が出なかったかも知れない。
こんな状態だと知らなければ、カインが過労で倒れた、と聞かされる可能性だってあった。
「……とりあえず、今日はネモのヘルプだったね。帰り際でも構わないから、調理場を確認してペパーが必要だと思う物をピックアップしておいて欲しい。牧場に来れる曜日や時間も」
「ちょっとは元気出たみたいだな!」
「ペパーが来てくれて、元気にならない訳が無いじゃないか」
「全力お疲れちゃんだったけどな」
「……返す言葉も無い……」
苦笑いを浮かべたカインが、最後のサンドイッチをランクルスから受け取って完食した。洗って返す、と言う彼女に首を振って、ペパーは半ば無理やり弁当箱を取り返す。
「仕事増やす為に来たんじゃないからな。……晩飯、用意が無いならオレが作るけど」
「それは出来ないんだ」
「……何でだよ」
「……ポケモンの為の食料はあるけれど、それ以外はゼリー飲料が入っているだけで冷蔵庫が空っぽだから、何も作れない」
「………………」
マフィティフと世話になった当初よりも悪化していて、ペパーは思わず言葉を失った。
あの時は、いつから入っているか分からない加工肉はともかく、少なくとも果物も食べていたはず。それすら入っていないとなると、今のカインは水とゼリー飲料で生きている事になる。
「……よし。買い物……、の前にそろそろネモが休憩か。それ終わったら買い物行ってくる」
「え!?」
「カインは自分を後回しにし過ぎ! 晩ご飯はカインと一緒に食わねぇならオレも食わない!!」
「駄目だ。ペパーは成長期なんだからしっかり食べなければ……」
「オレに食べさせたければ、カインもオレと一緒にご飯だぜ」
ポケモン達の食事を仕込むついでにカインの分も用意した所で、今の多忙な彼女は後回しにしてそのまま食べずに終わる可能性の方が高い。それなら、最初から一緒に食べた方が確実だ。
更に言えば、ペパーがカインと久し振りに一緒に食事をしたかったという理由もある。
「……そう来たか……」
「ゴネるなら一緒に寝なきゃオレも寝ないって付け加える」
「……悪タイプのマフィティフが相棒なだけある。いつの間にそんな悪い事を考え付く様になったんだ……!」
「成長期だからな!!」
「……はぁ、わたしの負けだ。分かったよ……、その分も含めて後日まとめて払う……」
「よーし! 初めての仕事だ! このオレにお任せちゃんだぜ!!」
何とかカインを説得する事が出来た。
誰かと晩ご飯を食べるのは久し振りだ。例えそれが、仕事の一環としての食事だったとしても。
『ペパー! ごめん、そろそろ代わって!!』
「お。了解! じゃあ、カイン、ちょっと行ってくる!!」
「ああ、優しくしてやってくれ」
話がまとまったところで、タイミングを見計らったかの様にネモから交代要請が入る。走り出したペパーを見送るカインは、少しだけ元気を取り戻した様だった。
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