ミーティア越境編
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「私は……! 帰ってきたー!!!」
ジョウト地方からパルデア地方へ! 到着ロビーどころか、飛行機を降りた瞬間に両手を挙げて大きな伸びをした私の後ろから、ハッサクさんとクラベル先生も苦笑いで飛行機を降りてきた。
「小生もようやく帰ってくる事ができましたです……」
「長い帰省になりましたね……」
「ええ、本当に……」
ジョウト地方に行く時は、ハッサクさんが元気にしてるか心配だったのもあるし、ゲームで旅した地方へ自分が行けるんだっていうワクワクもあったからそんなに長いって感じなかったんだけどなぁ……。
今回のフライトは、安心したせいなのかとても長く感じた。寝て、起きて、ハッサクさんとちょっとお話してまた寝て……。ずつとウトウトしてた気がする……。どのくらいウトウトしてたかって言うと、窓の外に色違いのカイリューの背中に見覚えのあるふわふわお姉さんが見えた気がしたくらい。……さすがに気圧が地上と違い過ぎるし気のせいだよね?
閑話休題。
荷物を受け取る為に移動する人の流れに乗って、私達も到着ロビーへと向かう。歩きながら、クラベル先生はハッサクさんを振り返った。
「ポケモン達も移動で疲れているでしょうから、手短にお話します。……ハッサク先生」
「はい」
「私はこれからすぐアカデミーへ戻ります。戻った事は電話で伝えますが、先生方から報告があるかもしれませんから。ハッサク先生は、可能ならば明日から出勤をお願いしたいところではありますが、もちろん体力や状況次第でもう少し休みが必要なら……」
「いえ、明日には出勤しますです。生徒達の元気な声が恋しいですし、小生を待っている美術部の生徒もいるようですから」
疲れている顔をしながら、ハッサクさんはクラベル先生の提案を断った。メロコちゃんに限らず、ハッサクさんを待ってる生徒は多いはず。授業もそうだし、部活だってそう。ハッサクさんが、待ってる人の為に休んでいられないって言うなら、私がやる事は決まってる。
「よ〜し! じゃあ今日は、やる事はさくっと終わらせてゆっくりしましょう! せんせー、さよーなら!!」
「はい、さようなら。また明日」
ごうんごうんと音を立てて、話してる間に私達の荷物が流れてきた。ハッサクさんの軽い荷物と、私のちょっと大きい荷物を取ると、私はクラベル先生に手を振った。
荷物を手に、にこやかな笑顔で手を振り返してくれる先生に頭を下げると、ハッサクさんが手を振ってた私から荷物をかすめ取る。
「……あっ!? ハッサクさんの悪い手癖だっ!!」
「いいえ、これはトリックですよ」
「なんて鮮やかな……! じゃなくて!」
「はい、先に進みましょう」
「アッハイ」
話を流されてしまいました。くぅっ、荷物持ちするつもりだったのに!! 取り返すにも、ハッサクさんに余計な体力を使わせてしまうので、ここは一旦大人しく引き下がりましょう。戦略的撤退です。
「お疲れみたいですし、先に一度帰りましょう! 荷物置いてから、私がいろいろ用事済ませちゃいますね。ご飯買ってきたり、ポケモンの健康診断してもらったり……」
そう、帰ってきたらやる事がいっぱいある。数日の旅行ならそこまでタスクは溜まらないだろうけど、今回は一ヶ月近く家を空けたのです。
ご飯やポケモン達の事以外にも、電気や水道のライフライン再開通のお願いをしたり、部屋の換気や軽い掃除とかとか。やる事はいっぱい、荷物もいっぱい。
だから私は、先に家に帰ってからあれこれ飛び回るつもりだったんだけど……。
「その必要はありませんです」
「えっ」
何とハッサクさん帰宅拒否。あれー、と首を傾げた私に、ハッサクさんが困った顔を近付けてきた。
「……正直なことを言うとですね」
「は、はい」
何で小声なのかな? 吐息がくすぐったいでございますね。
人が多くてざわざわしてるから、声が聞き取りづらいという事も特に無いんだけど……。私はそうでも、ハッサクさんはそうじゃなかったのかも知れない、なぁんて現実逃避してたら、ハッサクさんが爆弾を落とした。
「帰宅したら、しばらく君を離してやれそうにありません」
「……ひぇえ……」
「小生はまだ大丈夫ですから、先に用事を済ませてしまいましょうね」
「う……、ウッス!!」
ヤバい。帰ったら死にそう。
油が切れた鋼タイプみたいなぎこちない動きになった私は、タクシー乗り場へと迷いなく進んでいくハッサクさんから逃げられる訳も無く、ゴンドラへと収納されたのであった……。
*
*
「フユウちゃ……、うわぁーーーー!?!?!?」
ゴンドラの中で、フユウちゃんにメッセージを飛ばしていたので、彼女が運営するボックスに到着する前からポケモン達が待ち構えていた。
扉を開けてゴンドラから降りたら、目の前にヤヤコマのヤーコンが!! ヤーコン渾身の体当たりを顔に受けて思わずしゃがみ込むと、少し遅れて他のポケモン達も群がってきた。
「いつもの事ながら紫音ー! ……は、とりあえずええか。ハッサクさんも無事に帰ってきたんですね」
「ええ、皆さんと……、紫音のお陰で」
「ふはぁ」
ハッサクさんに持ち上げられる形で助け出された。ポケモンから揉みくちゃにされていた私は、いつもの事ながら大きく息を吸い込んだ。
「今日は違う用事なの……。ごめんねみんな……」
そう、今日フユウちゃんのボックスに来たのは、一ヶ月近く家を開けるから、フカマル先輩とセビエを預かってもらってたから。
私がジョウトに連れて行ければ良かったんだけど……。手持ちポケモンの数は六匹に制限されてるし、その中に先輩達を組み込む事がどうしても出来なくて、フユウちゃんに預かってもらう事になったんだ。ハッサクさんが帰ってきたし、二匹ともハッサクさんが恋しいだろうからと、一番にボックスに来たのです。
「フカー!」
「キュエー!!」
「……フカマル先輩とセビエが世話になりましたです」
「それが仕事ですから! アオキさんを早く帰してくれればそれでええですよ」
「小生の四天王としての仕事が、実質チリとアオキにのしかかっていた訳ですからね……。チリにも詫びなければいけませんね」
「よし、じゃあその分の慰謝料も里の方に吹っ掛けちゃいましょう!」
「ワルい事考えるなぁ!」
「へっへっへ」
紫音のわるだくみ! 特攻がぐーんと上がった!
……そんな風に戯れていると、待たせていたタクシーにフカマル先輩とセビエを載せたハッサクさんが私を呼ぶ。
「紫音、特攻を上げている時間はありませんですよ」
「そうだった! フユウちゃんまた来るね! 皆もまた今度ね!!」
遊んであげられなくてごめん! 悲しそうな顔で私を見送るポケモン達に後ろ髪を掴まれながら、私はゴンドラの扉を閉めた。
ううっ、みんなごめん! ペチンと頬を叩いて気持ちを切り替えた私は、早速スマホロトムでライフライン開通する為、業者さんに依頼しようとポチポチと操作を始めた。飛行機の中で出来れば良かったんだけど……、私、寝てたから!!
「…………」
インターネッツも発達したなぁ……。基本的に、何でも電話で依頼するってのが多かった。それが今や、相手の手が空いてる時間から選べる様になってるんだもん。
「………………」
まだ明るい時間だから、先に水道を開けてもらおうかなぁ。そんな事を考えながら画面を操作していると、ハッサクさんの左手がススス……、と私の肩に回ってきた。
はて? 隣を振り返ると、ハッサクさんは私の顔を見て優しく微笑む。手は肩を抱き寄せるみたいに力が込められた。突然だったから、対応出来ずにそのままハッサクさんの胸に頭突きをしてしまいました。
「わぶ」
「スマホはもういいのですか?」
「はっ。よくないです! 水道! 電気!! そしてご飯!!!」
冷蔵庫が冷えてないから、今日の私達のご飯はデリバリーだ。ポケモンフーズとか、その辺りも頼んどかなくっちゃ! やる事いっぱいだ!
待っててくれているロトムの前に座り直そうと、大急ぎで身体を元の態勢に戻そうとした。しかし、私の身体はびくとも動かないではありませんか!
「…………」
「ハッサクさんっ!」
「はい」
犯人はもちろんハッサクさんである。肩に回された腕が、私の身体を固定して動かない様にしているのです!
「着く前にやっとかなきゃ、今日中に電気点かないですよ〜!」
「……それは困りますですね……」
「そうですよね!? はい、肩を離してくださいね〜」
「……これは妥協案なのですが」
「はい?」
心の底から渋々、な様子で私の肩を離したハッサクさん。座り直してこれで続きを、と思っていたら、ハッサクさんの腕が再び背中から回ってきた。
「……ハッサクさん」
じーっと抗議の視線を向けると、ハッサクさんは罰が悪そうに苦笑いを浮かべながらも、手を引っ込める様子は無い。
「作業の邪魔はしませんですから。小生は、少しでも君に触れていたいのですよ」
「帰ったら離してやれないって言ってたのに?」
「……少々フライングと言いますか……」
「…………」
「紫音……」
そ、そんなしょんぼりした顔するなんて! しゅん……、なんて効果音が聞こえるくらいの落ち込み方をするものだから、私は思わず天井を見上げた。
私だってね! ハッサクさんの手は好きなんですからね!! ハッサクさんの体温、くっついてるとじんわり落ち着くから好きなんですからね!! 私だってくっついてたいに決まってるじゃないですか!!
「……くすぐったいのと、視界遮るのは禁止ですからね!」
ハッサクさんを相手に、あれもダメ、これもダメだなんて言える訳が無かった。
私が譲歩すると、ハッサクさんは途端に嬉しそうに顔を輝かせて私を抱き寄せる。そのままひょいっと膝の上に。
「……これなら、最大限君を感じられますですね」
「ふぃえやぁ」
耳元でそんな事を言うハッサクさん。くすぐったい罪で一つ有罪なのですが、それを指摘できる余裕は今の私には無かった!
「うう〜!」
あれこれやらなきゃいけない中でも、私の中で一番大事な事が残っているのに!
「まだ何かあるのですか?」
「……はっ。いつもの……?」
「はい。いつものです」
出ました、考えてる事全部喋り。
後ろから抱っこされた状態で会話をすると、やっぱり耳がくすぐったい。ハッサクさん、分かってやっているのではないですかね!?
「それで? フカマル先輩やセビエも迎えに行きましたし、ライフラインの開通依頼ももう終わりますですよね? 食料関係は帰宅後でも構わないでしょうし……。ポケモン達の健康診断、ですか? 数が多く、確かに時間は掛かるでしょうから、明日以降にしては?」
「ハッサクさんより先に家に入って、ハッサクさんにおかえりなさいって言うミッションが残っとるとです!」
「おかえ……、ふふっ。残っとるとですか」
「紫音です……。紫音です……。穴を掘って埋まりたいとです……」
締まらないなぁ! 後ろにいるハッサクさんから私の顔が見えないとは分かっていても、顔、隠さずにはいられない!!
呻く私を宥める様に、よしよしと頭を撫でるハッサクさん。もうされるがままだ。
『もうすぐ着きますよ』
コンコン、とタクシードライバーさんがゴンドラの窓が叩く。我に返って窓の外を見れば、いつもの街並みが見えてきた。
「……いっそ懐かしさすらあります。ようやく帰ってきた実感が湧いてきましたです」
そう呟いたハッサクさんに、私はうんうんと頷く。
「懐かしさなんて感じてる暇は無いですよ! やる事たくさんあるんですから!!」
それに、明日からはいつもの忙しい日常が待っているんだから。ハッサクさんと、私と、ポケモン達の賑やかで楽しい毎日が!
「さぁ、帰りましょう!」
「ええ、一緒に帰りましょうね」
そう笑うハッサクさんとしっかり手を繋いで、私は、私達は日常に帰ってきたのです。