ミーティア越境編
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「わたくしは悪くありません!」
ハッサクさんが、ハッサクさんのお父さんに渡したスマホ。その中には、いつの間にか昨日のあれやこれが記録されていて。
タンジー様さんは、ハッサクさんの手からスマホを奪い取ろうとしたから、ハッサクさんのお腰に付けたモンスターボールから飛び出してきたセグレイブに叩き落とされた。
そして今。ハッサクさんのお父さんが映像を再生しているんだけど……、音声が聞こえないくらいタンジー様さんが喚いている。
「何せ今は映像だって虚実を映せる時代ですもの! そんなもの証拠になりません!!」
「別の画角からの物もありますですよ」
「提出せよ」
「わたくしは何度も大切な物を奪われてきましたわ。その度に怒った。どなたもその怒りが悪い事だと仰らなかったではありませんか!! 何故今になって!!」
「……はぁ……。頭が痛くなってきますね」
押さえ付けられながらも、タンジー様さんの抗議は止まらない。
自分は悪くない。誰も言ってくれなかった。そう言うタンジー様さんの声に、お父さんの隣に座っていた女の人……、きっとハッサクさんのお母さんなんだろう人が、こめかみを指で叩いてため息を吐く。
「タンジー。あなたは悪意を持って里の秩序を破ったのです。その上、その罪を外の方に着せようなんて。怒りや悲しみには同調出来ますが、悪意はそうはいきません。……あなたは間違えたのです」
「間違え、た……?」
「追って沙汰を申し渡す。……連れて行け」
「待ってください……! ハッサク様、わたくしをここから連れ出して……」
指示を受けて、タンジー様さんを連れて行こうとカイリュー達がやって来た。それを見るなり、最後の足掻きなのかタンジー様さんがハッサクさん目掛けて走ってくる。
それを見て、セグレイブも「何度やっても同じだぞ」みたいな顔でハッサクさんの前に立ち塞がった。
でも、タンジー様さんが叩き落とされるその前に。
「ボァ、ァア……!」
ボーマンダが、タンジー様さんの行く手を阻んだ。「もう止めましょう」と言っているみたいに。
「何故お前まで止めるの……!」
ハッサクさんに拒否されても、ハッサクさんのお父さんに糾弾されても。諦めるという様子が無かったタンジー様さんは、パートナーのボーマンダにまで止められていよいよ崩れ落ちた。
もしかしたら、ボーマンダだけは最後まで自分に付き従ってくれると思っていたのかも知れない。
でも、結局タンジー様さんに賛同する人は誰もいなくなった。
「ううっ、どうして……? どこで間違えたと言うの……」
泣いているタンジー様さんに、カイリュー達の手が伸びる。そのまま連れて行かれるタンジー様さんの後に続いて、ボーマンダもこの大広間を出て行った。
「…………」
残された人達は、連行されるタンジー様さんを不安そうに見送っている。
その様子を見る限り、皆タンジー様さんの方を信用していたんだろうな。座っていた場所を見ても、どうやら偉いポジションの人だったみたいだし。
「残念な事だ」
お父さんの言葉に、タンジー様さんを見送っていた人達が一斉に姿勢を正した。
ひとまず、これで放火事件は終わった。
次は……、カラマさんはハッサクさんの、よ、よよ……、嫁取り……、の話なのではって言ってたけど……。ざわざわしている空気で、そんな話をする訳無い……、ですよね? そういうのって、何かこう……、個室で両家顔合わせみたいな。両家って言ってもハッサクさんファミリー三人に対して私一人なんですけどね。うーん、四者面談?
「誰しも物事を身誤る。ハッサクの決意とて、本人から見れば正解だろうが──」
「小生は誤ったとは思っていません」
「ええい喧しい! 話を遮るな!! ……タンジーもそうだ。選択を見誤った後悔に、下を向いている間も足は進めなければならない。立ち止まったままではおられん。引き返せる道もあったろうが、下を向いていて気付かぬまま……、もはや崖に落ちる道しか採れなかったのやも知れん」
「だから冤罪に掛けた件は和解に応じろとでも?」
「話を! 遮るな!!」
ハッサクさん反抗期なのかな。私も人が話してる途中で考えてる事をポロッと言ってしまう事が多いけど。ハッサクさん明らかに食い下がってる。
「此度の事、里の中で起こした放火だけで済む話ではない。殺人未遂、傷害、器物破損……。ジュンサー殿の世話になった後に、里から追放するしかあるまい」
"竜遣いの里から追放"。お父さんの口から出た言葉に、部屋の中が一気にざわついた。よっぽど重い罪なんだろうな。
「そんな危険人物、外に放逐するべきではないと思いますが。何故追放なのです?」
「……ハッサクよ、些か反抗期が長過ぎやせんか?」
遂にお父さんもツッコんだ。やっぱりハッサクさんのこれ、反抗期なんだ……。
「それはともかく。無論、理由はある。タンジーは外へ修行へ出ていない。外に出ずとも、強くなれると証明するのだと。止める者もいなかった故に凝り固まった考えを改めさせる必要がある。お誂え向きに、"先生方"もいらっしゃる様だしなぁ?」
そう言いながら、お父さんはクラベル先生に視線を移す。ハッサクさんは教師をしてる事なんて、この場にいる人皆知っているんだろう。
「……確かにアカデミーは、年齢や性別、もちろん出身に区別無く生徒を受け入れていますが……」
「……自分が止めなかったツケを小生達に負わせようとするその思考が嫌いなのですよ。その辺り、タンジーはしっかりとした"後継者"ではないですか」
「言ってくれる」
おおぅ、すっごいバチバチしてるぞぉ。
親子喧嘩に巻き込まれた形になったクラベル先生も、ちょっと心配そうに二人の顔を交互に見ている。そして、助けを求める様に私を見た。私も助けて欲しい。
「そこのお嬢さん」
「へ。……あ、はい、紫音です」
「そう、そうね。紫音だと先程言っていたわね」
そんな時だった。ハッサクさんのお父さんの横にいたはずのお母さんが、二人から少し離れた場所に私を連れ出した。
てっきり親子喧嘩を止める話をするのかな、と思ったんだけど。
「ハッサクがあなたを……、パルデアを捨てたとは思わなかったの?」
「……はい?」
「一度この里を捨てたのだもの。リセット症候群とでも言いましょうか。とにかく、捨てられたと思わなかった?」
ハッサクさんのお母さんは何を言っているんだろう。
私としては、突拍子も無い事を言われて驚いてしまった。
「少しは思った、というところかしら」
「欠片も思わないです。四天王としての自分に会いに来て欲しいっていう約束を破る人には思えないので」
「でも、あの子は里長を継ぐ事を捨てたの」
「里長のあれそれは知らないのでノーコメントです。私にはハッサクさんとの約束は信じられるものだった。そんなハッサクさんが何も言わずにいなくなったから、どうにか探して事情を聞こうと思った。それだけです」
「そう……。ハッサクの為なら、竜の尾さえ踏むのね」
ハッサクさんの為なら、と言うか……。突き詰めると私の為なんですけどね! ハッサクさんがいないと寂しいので!!
「"次"を見据えて選んだ若い胎なのかと思ったけれど、あなたはきちんと根を張っているのね」
「"次"……?」
何やら嫌な響きが聞こえたけど、私の受け答えに満足したらしいお母さんが穏やかに微笑んだ。
「あの子は、我々が期待を掛けて育てた大切な息子です。あの才能では、この里の中では翼も伸ばせなかった事でしょう。高く飛ぶハッサクと共に飛ぶ気概はありますか?」
「頑張ります! 一緒にいたいので!!」
「……その気概が、タンジーには無かったのです……。あの子は飛べなかった……」
そう言って、悲しそうに笑ったお母さんは、一つ息を吐くともう穏やかな表情になっている。
「嫌な事を言ってごめんなさいね。ポケモンを引っ張り出す親子喧嘩になる前に黙らせます」
「黙らせます!?」
穏やかな笑顔でなんて物騒な事を!
でも、確かにハッサクさんとお父さんの手にはモンスターボールが握られている。人が大勢いる室内でポケモンバトル。こんな所でドラゴンポケモンが本気でぶつかったら部屋どころか建物まで吹っ飛んじゃうんじゃないかなぁ!? 怪我人たくさん、大変な事になりそうな……!
カラマさん達が間に入ろうとしているけど、相手は一番偉い人とその息子。もう、やんわりとした止め方で止まるレベルじゃなさそうだ。
「み、水でも被ったら落ち着きませんかね……?」
「水で頭を冷やすって訳ね。でも、ポケモンを出したらもう駄目。あなたも良く覚えておきなさいね。竜を止めるならこれが一番よ」
そう言って微笑んだお母さんの手には、年季の入ったボールが握られている。
「この指止まれ」
「ぴっぴぃ!」
睨み合う二人の間にすとん、と降り立ったのは、ピンク色の可愛いポケモンだった。
「ピピピッピ!?」
そう。ピッピ!
小さくて可愛い指を天高く掲げて、ドラゴン達を誘っている。トレーナーの指示を受けて、戦闘態勢に入っていた二匹の技が、真っ直ぐにピッピに向かう。
セグレイブの巨剣突撃。カイリューのげきりん。
ピッピがぺしゃんこになっちゃう、と思わず目を逸らす私の耳に、ペちん、と可愛らしい音が二回聞こえた。
「はぇ……?」
「ぴっぴぴ!」
恐る恐る目を開けると、ピッピがドラゴンポケモンを正座させてお説教している。小さいピッピに怒られるドラゴンポケモン……。凄い光景だなぁ……。じゃなくってぇ!!
「学校のお勉強が足りないのかしら? ドラゴンタイプは、フェアリータイプには効かないのよ」
「ピッピってノーマルタイプじゃなかったの!?」
パルデア地方にはピッピがいない。つまり、パルデア図鑑には載っていない。そうなると、私の知識の更新も無いと言う事。
ピッピってフェアリータイプなんだぁ……。進化後のピクシーって"妖精"だもんね……。そりゃそうだ。
「あらあら? いつのお話をしているの?」
「……彼女は……、紫音は二十年程の時を渡っていまして……」
「まぁ! セレビィのお話は聞いた事があるけれど……?」
「あー、えっと。シンオウから落っこちてパルデアに出たので、多分セレビィじゃなくてギラティナです……」
「あらあらまぁまぁ! 時渡りどころか、時空ごと超えてしまったのね」
ふむふむ、と納得した様に頷いたお母さんは、ピッピと同じくハッサクさんとお父さんを床に座らせた。
「詳しいお話はまた後で聞かせてもらうけれど。……外から娘を迎える日が来るなんて、反発し合っていても親子なのですね」
「……それを里に迎えると認めた訳では……」
「小生は里に戻るつもりも、紫音を里に入れるつもりも毛頭ありませんですよ」
真っ向から反論するハッサクさんの隣で、もにょもにょ反論するお父さん。……もしかしてこれ、家庭の中では奥様の方が強いとかそういうアレなのでは?
「そんなややこしい話をしているのではありません! 息子が嫁を連れてきた。まずはそれだけの話ではありませんか」
「だから嫁にする訳には……」
「あなた、そうは言うけれど……。わたし達が勝手をしたツケを、ハッサクに背負わせるのはどうなのかしら」
「……ぐぬぅ……」
どういう事なんだろう。はて、と首を傾げる私の様子に、お母さんはにこやかに微笑む。
「ピッピと一緒にいるから、察しは付いているかもしれないけれど。実はわたしも、里の外から嫁いで来たの。当時、ハッサクのお祖父様にきつく言われたものです。次は里の者から番わせるようにと。そうしたら、ハッサクったら里どころかジョウトの外まで飛び出した上に、彼と同じく外から嫁取りするんだもの!」
「おいっ! 余計な事を……!!」
へぇ〜、そうだったのかぁ〜。
ピッピとそっくりな笑顔であれこれ暴露するお母さんに、ハッサクさんのお父さんも大慌てだ。正座していた足で立ち上がって、どうにかお母さんの暴露を止めようとしているけど、やっぱりお母さんの方が強い。
肩に伸びてきた手を叩き落として、威厳も何も無くなってしまったお父さんをもう一度座らせた。
「自分達に課せられたしがらみを、ハッサクに押し付けるのは良くありません。その様に取り決めたお義父様はもういらっしゃらないのだし」
「しかし、父上の取り決めだぞ……?」
「ハッサクが是と言わなければ同じ事ですよ。……ハッサク」
「……はい……」
「ハッサクさんが萎れてる……!」
「紫音さん?」
「アッハイ」
感想をポロッと落としてしまったせいで、私の名前も呼ばれた。その場の雰囲気に流されて、私も思わずハッサクさんの隣で正座してしまう。
……冷静に考えると、おかしな光景ですよね!
「紫音さん以外の者を嫁取りする気はありますか?」
「ありません」
「…………ハッサク……」
「紫音さん」
「へぁ? は、はいっ!?」
「ハッサクと共に飛ぶ決意は変わりませんね?」
「それはもちろんです!」
「紫音っ……」
ハッサクさんの嬉しそうな声に、隣を振り向く。少し目が赤くなった目から、涙が少し頬を伝っていた。
「な、泣かせた!?」
「ま"だ"泣"い"て"い"ま"せ"ん"で"す"ぅ"……」
「その状態を人は泣いてるって言うんですよ」
慌ててハンカチを取り出してハッサクさんに渡すと、いつものように大きな声じゃなくて歯を食いしばる様に泣き始めた。本格的に泣いてるハッサクさんを宥めようと背中を擦っていたら、大きな咳払いが一つ響く。
「……あー……。水を差して悪いが」
「…………」
「ハッサク、そう睨むな。これを見ては、誰も取り上げようとは思わん」
「………………」
「お前達の沙汰を言い渡す。……ハッサクは、もう死んだものとする。しかし……、その、だな……。息子としてならば、いつでも帰って来れば良い」
「はい? 紫音を傷付ける様な者がいる場所に帰って来る気はもうありませんですが」
「…………」
「………………」
「ハッサク……」
「罰を受ける事と、小生が許すかは別の話です」
ハッサクさんの言葉に、助けを求める様な視線が私に向けられる。
いやぁ……、確かに被害者である私が許しますって一言添えれば、ハッサクさんも不満はあるだろうけどひとまず矛は引っ込めるはず。
でもなぁ……。振り回されたのを見たカラマさんは許してもいっかなって気持ちはあるけど、タンジー様さんはなぁ……。少なくとも、ハッサクさん軟禁してた部分が許せないし……!
「……との事ですので」
「……はっ。お口でストップ!!」
「面白い子なのねぇ」
しまったぁー! 慌てて口を抑えたけど、全部手遅れ! 時は戻らない、それが自然の摂理! やらかしは消えないのだ!!
「ハッサクを頼みますよ」
「……は、はいっ!」
どちらかと言わなくても、私があれこれ巻き起こしている側なんですけれども。ハッサクさんを頼る側なんですが! それはここで言わないでおこう!